株式の情報を調べているときに目にした広告から、大手証券会社の社員を名乗る人物につながり、LINEで投資を勧められる。警察庁の集計でも、SNS型投資詐欺の入口はバナー等広告が最多となっています。
本記事で取り上げる「apps.taveroqi.net」は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の名前とロゴを使った取引サイトです。個人名義や法人名義の口座へ振込を重ねたあと、出金を申し出ると保証金や本人確認などの名目で次々に追加の送金を求められました。
調べると、ログイン後の画面には金融庁やイングランド銀行のロゴが「パートナー」として並び、画面の文言はすべて簡体字中国語から訳されたものでした。同社自身も、本件とよく似た偽アプリの画面を公式サイトに載せて注意を呼びかけています。
この記事では、ドメインの記録、サイトのプログラム、同社や金融庁の公開情報から分かったことを順に取り上げます。あわせて、名前を使われた会社の公式情報と見比べる方法など、送金の前に確かめたい点を弁護士の視点から解説します。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券を装う偽サイトに関するトラブルの概要

今回のトラブルは、インターネットで優良株の情報を調べていた際に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の社員を名乗る人物らの投資広告を目にしたことから始まっています。広告から案内されたLINEグループでは、アシスタントを名乗る人物から資産を増やすプランを勧められました。
その後、指示に従って「apps.taveroqi.net」というサイトで口座を開設し、個人名義や法人名義の口座へ振込を重ねています。出金を申し出ると保証金やサービス費用などの名目で次々に追加の送金を求められ、最終的にはLINEの連絡も途絶えました。
投資広告をきっかけに証券会社の社員を名乗る人物と接触するトラブル
本件の入口は、検索の途中で表示された投資の広告でした。広告をきっかけとする被害は、統計のうえでも目立っています。警察庁が半期ごとに公表している資料によると、令和8年(2026年)上半期のSNS型投資詐欺の認知件数は5,893件、被害額は797.9億円です。
同じ資料は、被害者が最初に接触した手段としてバナー等広告が最多だと示しています。被害額でみると前年同期比で252.5%増加しており、本件のように広告から勧誘が始まる形は、統計のうえでも最も多い入口にあたります。
名称をかたられた三菱UFJモルガン・スタンレー証券の実在状況
勧誘の中で名前が使われた三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、東京都千代田区に本店を置く実在の証券会社です。関東財務局に金融商品取引業者として登録されており、登録番号や加入協会は同社の会社概要で公開されています。
| 商号 | 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 |
|---|---|
| 本店所在地 | 東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ |
| 創業 | 1948年3月4日(現法人の設立は2009年12月1日) |
| 資本金 | 405億円 |
| 登録 | 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2336号 |
| 加入協会 | 日本証券業協会、一般社団法人資産運用業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本STO協会 |
| 公式サイト | www.sc.mufg.jp |
▼三菱UFJモルガン・スタンレー証券の会社概要(赤枠は登録番号と加入協会)

出典:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
一方、案内されたサイトのアドレスは「apps.taveroqi.net」で、同社の公式サイトとは別のドメインです。このサイトが同社によって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。加入協会の記載は、後の章でサイト側の表示と突き合わせます。
同社が自社や役職員を装う勧誘に注意喚起している
三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、2026年7月15日付で自社や役職員の名前を使った偽の投資勧誘への注意喚起を公式サイトに掲載しています。その中では、SNSを通じた個別の投資勧誘も、個人名義口座への振込の依頼も行わないと明記されています。
▼三菱UFJモルガン・スタンレー証券が掲載している注意喚起(赤枠は最近確認されている手口)

出典:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
最近確認されている手口として挙げられているのは、偽のSNSアカウント(LINEグループ等)への招待、「特別な投資案件」などをうたう勧誘、個人名義口座を指定した資金振込の要求、追加振込の繰り返しの4つです。いずれも本件の経緯と重なります。
同じページには「偽ログイン画面の例」として、偽アプリの画面も掲載されています。そこに写る看板の写真と「板寄せ取引」「IPO(新規上場)」などのメニュー名は、本件のサイトのプログラムに含まれるものと一致しました。
▼同社が偽アプリの画面として掲載している例

出典:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
同じドメインのサイトであるかまでは確認できませんが、同じ仕組みを使った画面とみられます。名前をかたられた会社自身が、本件とよく似た画面を偽物として示し、利用しないよう注意を呼びかけていることになります。
公的機関が同種の手口に注意喚起している
金融庁は「SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!」と題したページで、SNSを通じた投資勧誘をめぐる相談が多く寄せられていることを公表しています。
▼金融庁が公表しているSNS等を通じた投資勧誘への注意喚起

出典:金融庁
そこでは「返金を申し出ても返金されない」「(相手に送金後に)相手と連絡が取れなくなった」といった相談に加え、著名人を騙る広告を通じて投資した結果、出金できなくなったという相談も寄せられていると説明されています。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、広告やLINEで知り合った相手に口座の開設や振込を求められたときは、振り込む前に家族や専門家など信頼できる第三者へ状況を話してください。
【参考】
・apps.taveroqi.net(https://apps.taveroqi.net/)
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券-会社概要(https://www.sc.mufg.jp/company/profile/outline.html)
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券-【重要】当社や当社役職員を装ったSNSによる勧誘等にご注意ください(https://www.sc.mufg.jp/company/news/crime/crime20200323.html)
・警察庁-令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)
・金融庁-SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!
apps.taveroqi.netへ誘導され被害につながるまでの経緯

本件は、検索中に目にした広告から始まり、LINEグループ、取引サイトでの口座開設、振込、出金の申し出へと段階を追って進んでいます。途中で銀行と警察が関わる場面がありながら、送金は止まりませんでした。その流れを順に整理します。
優良株を調べていて社員を名乗る人物の広告に接触する
最初の接点は、インターネットで優良株を調べていたときに表示された投資の広告でした。広告には三菱UFJモルガン・スタンレー証券の社員を名乗る人物らが登場し、そこからLINEでのやり取りへ案内されています。
自分から株式の情報を探している最中に出てくる広告は、求めていた情報の続きのように見えやすいものです。名の知れた証券会社の社員という肩書きが添えられていたことも、警戒を下げる方向に働いたとみられます。
LINEグループで資産成長プランの提案を受ける
案内された先はLINEのグループでした。グループ内では、アシスタントを名乗る人物から「資産成長プラン」と称する運用の提案を受けています。ここから取引サイトでの口座開設へと話が進みました。
前章で触れた同社の注意喚起では、自社や役職員を騙る偽のSNSアカウントがLINEグループなどへ招待する手口が挙げられています。本件の入口はその記載と同じ形でした。同様に広告からLINEグループへ誘導する例として、資産運用会社を騙って投資ゼミへ招く勧誘の流れも確認できます。
体験資金で利益が出る画面を見せられ振込先の口座へ入金する
プランに従い、「apps.taveroqi.net」というサイトで口座を開設しています。最初は体験資金などを使った取引で、画面上に利益が出る様子を見せられ、そのうえで実際の資金による投資を促されました。
入金は指定された口座への振込で行われ、振込先には複数の個人名義や法人名義の口座が使われています。証券会社への入金でありながら、会社名義の決まった口座が示されることはありませんでした。
銀行と警察の対応を受けたあとも送金を続ける
振込を重ねるなかで、銀行が詐欺の疑いを検知して警察へ通報し、振込先の口座は凍結されました。あわせて被害届も作成されています。送金を止める機会が外から一度示されていたことになります。
それでも、サイトの画面では資産が増えて見えていたことから、投資そのものは本物だと考え、その後も追加の振込を行っています。銀行や警察の指摘よりも、毎日目にする画面の数字のほうが確かに感じられる状況だったとみられます。
出金しようとすると次々に別の費用を求められる
その後に出金を申し出ると、保証金、本人確認、マネーロンダリングの解除、サービス費用といった名目で次々に追加の送金を求められました。一つの条件を満たしても、次の名目が示される流れです。追加請求の例として、口座凍結の解除料を求められて出金できない事例も確認できます。
2026年9月23日の時点でサイトのカスタマーサポート画面を開くと、「LINE」と「オンラインサポート」の2つの入口が並ぶだけで、電話番号や所在地はどこにも示されていませんでした。
▼apps.taveroqi.netのカスタマーサポート画面(2026年9月23日時点)

出典:apps.taveroqi.net
そして2026年9月中旬ごろにLINEの連絡がつながらなくなりました。出金のために別の支払いが必要だと言われた時点で、それ以上は振り込まず、振込の控えとLINEの画面を保存したうえで弁護士などの専門家に相談してください。
【参考】
・apps.taveroqi.net(https://apps.taveroqi.net/)
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券-【重要】当社や当社役職員を装ったSNSによる勧誘等にご注意ください(https://www.sc.mufg.jp/company/news/crime/crime20200323.html)
apps.taveroqi.netの関連サイトの情報を調査した結果

この章では、誰でも照会できる公開の記録を使って、サイトの成り立ちを確かめます。見ていくのは、ドメインの登録記録、同じ日に登録された別の2つのドメイン、サイトに発行された証明書、そして金融庁が公開している業者の一覧の4つです。
apps.taveroqi.netのドメイン情報
案内されたサイトのアドレスは「apps.taveroqi.net」で、その土台になっているのが「taveroqi.net」というドメインです。登録日や有効期限は、RDAPと呼ばれる公開の照会窓口から誰でも確かめられます。
| ドメイン | taveroqi.net |
|---|---|
| 登録日 | 2026年7月7日 |
| 有効期限 | 2027年7月7日 |
| レジストラ | Gname.com Pte. Ltd. |
| ネームサーバー | coby.ns.cloudflare.com/daisy.ns.cloudflare.com |
| 証明書の初回発行日 | 2026年7月7日 |
| 2026年9月24日時点の状態 | 接続できない |
▼taveroqi.netのドメイン登録記録

出典:Verisign(RDAP)
記録上の登録は2026年7月7日で、期限は翌年の同じ日までの1年間です。登録者の名前や連絡先は公開されておらず、記録から分かるのは登録を取り次いだ事業者までです。
9月23日の時点で動いていたサイトは、翌24日の朝には応答しなくなっていました。ドメインの登録から数えて79日目です。ドメイン自体は有効なまま残っており、サーバーだけが止められた状態です。
一方でサイトが呼び出していた設定のデータには、日本市場の設定が「2025-03-10」に作られたと記録されていました。ドメインの登録より1年4か月も前の日付で、サイトの仕組みそのものは、このドメインが用意される前から別の場所で使われていたとみられます。
▼サイトが読み込んでいた市場の設定(2026年9月23日時点。日本市場の作成日が記録されている。)

出典:apps.taveroqi.net
30分の間に登録された3つのドメイン
サイトのプログラムを調べると、画面の表示に使うデータを「safamlk.com」という別のドメインから取り寄せていました。証明書の記録からは、「taveroqi.cc」というドメインも見つかります。3つの記録を表にまとめました。
| ドメイン | 登録日時(協定世界時) | レジストラ | 役割 |
|---|---|---|---|
| taveroqi.net | 2026年7月7日 7時31分52秒 | Gname.com Pte. Ltd. | 案内されたサイト |
| taveroqi.cc | 2026年7月7日 7時32分00秒 | Dynadot Inc | 同じ内容のサイト |
| safamlk.com | 2026年7月7日 8時01分46秒 | Realtime Register B.V. | 画面に表示するデータの配信 |
3つのドメインは、同じ日の約30分の間にそれぞれ別のレジストラで登録されています。ネームサーバーは3つとも同じ組み合わせで、有効期限もそろって2027年7月7日です。
登録先を分けると、記録を1か所から一度にたどることが難しくなります。ただ、ネームサーバーと日付がそろっているため、同じ運営者が同時に用意したものと読むのが自然です。
証明書に並記された別のドメインと配信内容の一致
2026年7月7日には、「apps.taveroqi.cc」と「apps.taveroqi.net」の2つを1枚にまとめた証明書が発行されています。証明書は、そのドメインを管理していることを示せなければ発行されません。
9月23日の時点で2つのアドレスを開くと、配信されていたページのデータは1文字も違わず一致しました。同じサイトが2つのアドレスで公開され、24日には2つとも応答しなくなっています。
日本での登録状況
投資を勧めたり、利用者の資金を預かって株式の売買を仲立ちしたりするには、金融商品取引業の登録を受けていなければなりません。そこで、サイトの名前とドメインを金融庁の公開情報で照会しました。
| 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」 | 「taveroqi」「safamlk」ともに該当なし |
|---|---|
| 金融庁「金融事業者一括検索」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券で検索) | 正規の同社1件のみ |
▼金融庁の無登録業者一覧を「taveroqi」でページ内検索した結果

出典:金融庁
無登録業者の一覧に「taveroqi」の文字はありませんでした。一覧に載るのは、金融庁が警告書を出すなどして存在を把握した業者に限られます。載っていないことは、安全であることの裏付けにはなりません。
▼金融庁の金融事業者一括検索の結果

出典:金融庁
金融事業者の検索で表示されるのは、正規の三菱UFJモルガン・スタンレー証券だけです。検索結果の上には「実在の事業者を騙った詐欺もありますのでご注意ください。」という一文も添えられています。登録があるのは実在の同社であり、案内されたサイトではありません。
【参考】
・apps.taveroqi.net(https://apps.taveroqi.net/)
・apps.taveroqi.cc(https://apps.taveroqi.cc/)
apps.taveroqi.netに関する不審点

サイトの画面とプログラムの両方から、見過ごせない点が6つ出てきました。パートナーとして並ぶロゴ、加入協会の一覧、文言の翻訳元、利用規約、入金画面の注意書き、出金の条件です。いずれも、実在する三菱UFJモルガン・スタンレー証券の姿とは結びつかないものでした。
監督官庁である金融庁がパートナーとして掲げられている
サイトのプログラムを調べると、ログイン後のホーム画面に「パートナー」の欄があり、8つのロゴが横に流れる作りになっていました。MUFGや同社のロゴに加えて、ゆうちょ銀行、日本生命、三井住友トラスト・ホールディングス、三菱HCキャピタルが並びます。
残る2つは、金融庁と、英国の中央銀行であるイングランド銀行のロゴでした。証券会社を監督する立場の官庁や他国の中央銀行が、一つの証券会社の取引相手として名を連ねることは考えにくい並びです。
▼サイトの「パートナー」欄に使われていた金融庁のロゴ(2026年9月23日時点)

出典:apps.taveroqi.net(/assets/8.DLbiHfVf.png)
▼同じ欄に使われていたイングランド銀行のロゴ(2026年9月23日時点)

出典:apps.taveroqi.net(/assets/7.BCRx9lPH.png)
これらの画像は、9月23日の時点では登録をしなくても直接開ける状態でした。名前の知られた組織のロゴを集めて並べるだけで、信用できそうな見た目が作れてしまうことが分かります。
掲示されている加入協会が正規の同社のものと食い違う
同じホーム画面では、「パートナー」のロゴの下に6つの協会の名前が並ぶよう組まれていました。証券会社の画面で協会名が並べば、加入先の一覧として読まれます。冒頭の章で示した正規の同社の加入協会と比べると次のとおりです。
| 団体名 | サイトの表示 | 正規の同社 |
|---|---|---|
| 日本証券業協会 | あり | あり |
| 一般社団法人資産運用業協会 | なし | あり |
| 一般社団法人金融先物取引業協会 | あり | あり |
| 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 | あり | あり |
| 一般社団法人日本STO協会 | あり | あり |
| 一般社団法人日本暗号資産等取引業協会 | あり | なし |
| 一般社団法人日本投資顧問業協会 | あり | なし |
サイト側は正規の同社が加入していない2つの団体を掲げ、同社が加入している資産運用業協会が抜けています。会社の名前は借りていても、公式の会社概要と突き合わせるとすぐに分かる違いが残っていました。
画面の文言がすべて簡体字中国語から訳されている
画面に表示される日本語は、プログラムの中では簡体字中国語の文を見出しにして、その訳として登録されていました。たとえば「ログイン状態を保持」は「记住我」、「本人確認済み」は「已实名认证」の訳にあたります。
用意された939の文言は、見出しがすべて簡体字です。ページのソースを開くと、プログラムの説明書きも簡体字で書かれていました。前章で見た市場の設定でも、米国は「美国」と記されています。
▼ページのソースに残っていた簡体字の説明書き(2026年9月23日時点)

出典:apps.taveroqi.net
日本の証券会社の画面として作られたものではなく、中国語で作られた仕組みを日本語に置き換えたものとみられます。同社の名前やロゴは、後から載せられたものと考えられます。
規約に入金と出金に関する条項が一つもない
サイトの利用規約は「三菱UFJモルガン・スタンレー証券 取引口座 利用規約」と題され、9月23日の時点ではサイトのデータ配信用のアドレスから読むことができました。全8条で、見出しは次のとおりです。
第1条(適用範囲)/第2条(登録)/第3条(サービス内容)/第4条(禁止事項)/第5条(リスクについての警告)/第6条(免責事項)/第7条(規約の変更)/第8条(準拠法および管轄裁判所)
取引口座の規約でありながら、入金、出金、預かった資産の扱いを定めた条項が一つもありません。運営する会社の所在地や、金融商品取引業の登録番号も書かれていませんでした。
新規登録の画面にも、この規約への同意を求める欄や規約へのリンクはありません。入力欄は電話番号、パスワード、招待コードなどに限られ、契約の中身を示さないまま口座が作られる仕組みです。
▼apps.taveroqi.netの新規登録画面(2026年9月23日時点)

出典:apps.taveroqi.net
入金画面に送金で生じた損失の責任を負わないと書かれている
プログラムを調べると、入金の画面には、送金先のアカウントと表示されているユーザー名が一致しているか確かめるよう促す注意書きが表示される作りでした。その締めくくりに置かれているのが、次の一文です。
指示された送金案内以外による損失については、当プラットフォームでは一切の責任を負いかねます。
別の画面では「入金確認を早めるため、振込証明書をアップロードしてください」とも求めています。振込先を画面で示し、振り込んだ証明を出させたうえで、損失が出ても責任は負わないと先に断っていることになります。
本件で振り込みに使われたのも、複数の個人名義や法人名義の口座でした。正規の同社は、個人名義口座への振込を依頼しないと明言しています。振込先が会社の名義でない時点で、正規の取引ではないと判断できます。
出金を止めるための文言が先に用意されている
出金を申し込む画面のプログラムを見ると、引き出しを断る理由になる条件がいくつも並んでいます。「保有ポジションがある状態では出金できません。」「出金前に本人確認と口座登録を完了してください。」といった注意書きがその例です。
別の画面には、氏名が出金用の銀行口座の名義と一致している必要があるとの表示もあります。申請の状態としては「審査中」「審査却下」が用意され、出金できるかどうかは運営側の審査しだいという作りです。
さらに、利用者ごとの「信用スコア」を表示する画面まであります。本件で本人確認やマネーロンダリングの解除を理由に追加の送金を求められたことも、こうした仕組みと重なります。
【参考】
・apps.taveroqi.net(https://apps.taveroqi.net/)
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券-会社概要(https://www.sc.mufg.jp/company/profile/outline.html) ・三菱UFJモルガン・スタンレー証券-【重要】当社や当社役職員を装ったSNSによる勧誘等にご注意ください(https://www.sc.mufg.jp/company/news/crime/crime20200323.html)
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
apps.taveroqi.netのようなサイトが信用されやすい理由

ここまでに挙げた不審な点は、プログラムや公開の記録まで調べて、ようやく見えてくるものでした。利用者の目に入る範囲では、正規のロゴ、大手金融機関の名前、整った日本語、登録しないと開かない画面の4つが、疑いを持ちにくくしています。
起動した最初の画面に正規のロゴが置かれている
アドレスを開いて最初に表示されるのは、MUFGのロゴと「ログイン」「新規登録」の2つのボタンだけです。ロゴは、三菱UFJフィナンシャル・グループが使っている赤い円のマークと「MUFG」の文字と同じ図柄でした。
▼apps.taveroqi.netを開いて最初に表示される画面(2026年9月23日時点)

出典:apps.taveroqi.net
ロゴのほかに情報が何もないため、利用者はロゴを見て相手を判断するしかありません。見慣れたマークが最初に目に入ると、その先の画面も同じ会社のものだと受け取りやすくなります。
名前の知られた金融機関のロゴが並ぶと確認の手が止まる
ログイン後のホーム画面では、同社の名前を掲げた大きな看板の写真が上部に表示され、下のほうには前章で触れた8つのロゴが流れていました。どちらも、大手の金融機関に囲まれた会社だという印象を与える作りです。
▼ホーム画面の上部に表示される看板の写真(2026年9月23日時点)

出典:apps.taveroqi.net(/assets/swipe1.Dwoaz_nY.jpg)
この看板の写真は、同社が偽アプリの画面として注意喚起に載せている画像にも写っているものです。見た目が本物らしいほど、登録番号や会社概要まで確かめようという気持ちは起きにくくなります。
文章が日本語として整っているため訳された画面だと分かりにくい
画面の文言は中国語から訳されたものですが、ログイン画面の注意書きは、日本の金融機関の案内として読んでも違和感のない文章に整えられていました。「ご利用にあたってのご注意」として、ログイン、口座の安全管理、取引の安全対策の3項目が並びます。
▼ログイン画面に表示される「ご利用にあたってのご注意」(2026年9月23日時点)

出典:apps.taveroqi.net
その1つめには「ログインは必ず当社の公式ログインページから行ってください。公式サイト以外からのアクセスはお控えください。」とあります。公式ではないサイトが、公式のページを使うよう呼びかけているわけです。
誤字や不自然な言い回しは偽サイトを見分ける手がかりになりますが、訳文が整えられていると、その手がかりは使えません。文章の出来よりも、運営者の商号と登録番号が画面のどこに書かれているかを探すほうが確実です。
画面のほとんどが登録しないと開かない
登録をしないまま開けたのは、最初の画面、ログイン、新規登録、パスワードの再設定、カスタマーサポートの5つだけでした。入金や出金、利用規約、会社の情報を載せた画面は、いずれもログインしなければ表示されません。
新規登録の画面には招待コードを入れる欄もあり、中身を確かめるには、勧誘した側とつながって登録を済ませることが前提になっています。しかもサイトは9月24日に止まり、後から第三者が画面を確かめる手段も残っていません。
【参考】
・apps.taveroqi.net(https://apps.taveroqi.net/)
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券-【重要】当社や当社役職員を装ったSNSによる勧誘等にご注意ください(https://www.sc.mufg.jp/company/news/crime/crime20200323.html)
apps.taveroqi.netの不審点を見抜く方法

大手の証券会社を名乗るサイトに案内されたとき、送金の前に確かめたいことを6つにまとめました。どれも費用はかからず、数分あれば確かめられます。比べる相手は、いつも名前を使われた会社の公式の情報です。
- 名前を使われた会社の公式サイトで、注意喚起と偽画面の例を見る
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、自社を騙る勧誘の手口と偽アプリの画面を公式サイトに載せています。案内されたアプリの画面が、そこに並ぶ例と似ていないかを見比べてください。
- パートナーや協会として並ぶ名前を、会社概要と突き合わせる
- 証券会社の加入協会は、公式の会社概要に記載されています。本件では2つの協会が余分に並び、1つが抜けていました。監督官庁の金融庁がパートナーとして並ぶこと自体がありえない並びです。
- 規約と登録画面に、運営会社の商号と登録番号があるかを見る
- 金融商品取引業の登録を受けた会社なら、商号と登録番号を示すのが普通です。本件の規約には商号も登録番号も入出金の条項もなく、登録画面には規約への同意欄さえありませんでした。
- 振込先を示されたら、その口座の名義が会社のものかを確かめる
- 名義が個人や別の法人であれば、その時点で振り込まないでください。正規の同社は、個人名義口座への振込を依頼しないと公表しています。名義が振込のたびに変わるのも、証券会社の入金ではまず起きないことです。
- パソコンでページのソースを開き、説明書きの言語を見る
- アドレスの先頭に「view-source:」を付けて開くと、ページのソースが表示されます。日本の証券会社のサイトに、簡体字の説明書きが並ぶことは通常ありません。本件ではソースを開いてすぐの行に残っていました。
- 案内されたアドレスで、ドメインが登録された日を調べる
- 照会窓口「https://rdap.org/domain/」にドメイン名を続けて開き、「registration」と書かれた日付を探します。会社の歴史は数十年でも、アドレスは数か月前に取られたばかりということがあります。本件のドメインは2026年7月7日に取得されていました。
すでに振込を済ませている場合は、出金のための費用を求められても、それ以上は払わないことが先決です。保証金や本人確認などの名目で次々に費用を求められたのは、ここまで見てきたとおりです。
本件のサイトは9月24日に止まり、画面を見返すことはもうできません。サイトの画面、振込の控え、LINEのやり取りは、消える前に自分の手元へ保存し、弁護士などの専門家に見せられる形でそろえておいてください。
【参考】
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券-【重要】当社や当社役職員を装ったSNSによる勧誘等にご注意ください(https://www.sc.mufg.jp/company/news/crime/crime20200323.html)
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券-会社概要(https://www.sc.mufg.jp/company/profile/outline.html)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券をかたる勧誘に関する口コミや被害事例

「apps.taveroqi.net」と「apps.taveroqi.cc」の2つのアドレスで、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、掲示板を調べました。このサイトを名指しした書き込みは、どこにも見当たりませんでした。
その代わりに出てくるのが、同社や、名前の一部が重なる証券会社をかたった勧誘の相談です。書き込みにサイトの名前は出てきませんが、LINEへの誘導や振込先の指定など、勧誘の進め方は本件とよく似ています。
X(旧Twitter)の口コミ
Xでは、本件の2つのアドレスについても、同社の名前をかたった勧誘についても、利用者の投稿は確認できませんでした。目に入ったのは、グループ会社の三菱UFJアセットマネジメントが公式アカウントで出した注意喚起です。
2025年8月4日の投稿で、「三菱UFJアセットマネジメントやその役職員および関係者をかたった不審な勧誘にご注意ください」と呼びかけています。MUFGの名を冠した会社の名前を使う勧誘に、グループの会社自身が1年以上前から警戒を呼びかけていたことになります。
Yahoo!知恵袋の口コミ
2026年1月28日の質問では、参加したLINEのグループで大手証券会社の特別な口座を作れると持ちかけられた経緯が書かれています。質問者は、口座の開設に個人情報が必要なことにも不安を感じていました。
モルガン・スタンレーのプライマリー市場取引口座を作れるというLINEグループに参加したんですが、これって詐欺でしょうか?プライマリー市場取引口座枠を取ったから口座開設と入金するように言われてます。
ここで名前が使われているのはモルガン・スタンレーで、三菱UFJモルガン・スタンレー証券とは別の会社です。ただ、LINEのグループで特別な口座を持ちかけ、口座の開設と入金を求める流れは本件と重なります。
掲示板の口コミ
Yahoo!ファイナンスの質問掲示板「教えて!お金の先生」には、2026年5月12日に、同社の役員を名乗る人物からLINEで出資を持ちかけられたという相談が寄せられています。
LINEで板寄せ取り引きが儲かるからという事で、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社に口座を持って、出資してほしいという事で、出資しようとしたら、振り込み先が、郵便局の個人名義なんですけど、三菱UFJ銀行の店員さんが、証券会社に振り込みするのに、振り込み先が個人名義というのはおかしいから、詐欺だと言われました。
「板寄せ取引」は、本件のサイトのメニューにも、同社が掲げる偽アプリの画面にも並んでいた言葉です。同じ案件かどうかまでは分かりませんが、振込の手続きの場で振込先の名義を見た銀行員が詐欺の疑いを指摘した例です。
【参考】
・apps.taveroqi.net(https://apps.taveroqi.net/)
・apps.taveroqi.cc(https://apps.taveroqi.cc/)
・Yahoo!知恵袋-モルガン・スタンレーのプライマリー市場取引口座を作れるというLINEグループに参加したんですが…(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11324759446)
・Yahoo!ファイナンス-教えて!お金の先生(https://finance.yahoo.co.jp/brokers-hikaku/experts/questions/q11328014956)
・三菱UFJアセットマネジメント公式X(https://x.com/am_mufg_jp/status/1952280730052292662)
apps.taveroqi.netの口コミが少ない理由

本件のやり取りは、広告から案内されたLINEのグループの中で進んでいました。サイトのカスタマーサポートも、開けばLINEへ案内される作りです。
勧誘から出金の相談まで、外の人の目に触れる場所を一度も通らないため、サイトの名前が書き込まれる機会がそもそも生まれにくくなります。
被害に気づいた人が検索しても、出てくるのは同社の公式サイトや、同社についての一般的な情報です。
名前をかたられた会社の情報が多いほど、案内されたサイトそのものの評判にはたどり着きにくくなります。「taveroqi」のようにアドレスにしかない文字列で探すと、別の会社の情報が混ざりにくくなります。
サイトの中身を見られた人が少ないことも理由の一つです。登録しなければほとんどの画面は開かず、サイトはドメインの登録から79日で止まりました。Internet Archiveにも記録は残っていません。
書き込みが少ないのは、利用者が少ないからではなく、書ける立場の人が限られていたためとみられます。
同じような勧誘を受けていて判断に迷うときや、すでに振り込んでしまったときは、手元の記録をそろえたうえで、弁護士などの専門家や信頼できる第三者に早めに相談してください。
【参考】
・apps.taveroqi.net(https://apps.taveroqi.net/)
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券公式サイト(https://www.sc.mufg.jp/)

