マッチングアプリで知り合った相手に暗号資産の取引を勧められ、少額の利益を受け取った後、まとめて引き出そうとすると支払いを求められる。金融庁の注意喚起も、この流れを取り上げています。
警察庁の令和7年の統計でも、SNS型ロマンス詐欺の最初の接触手段はマッチングアプリが最も多く、3割余りを占めました。
本記事で取り上げる「weexjp.vip」は、実在の暗号資産取引所「WEEX」の名前とロゴを掲げた取引サイトです。ペアーズで知り合った人物の勧めで入金を重ねた相談者は、出金の段階で保証金、続いて税金の支払いを求められました。
実在のWEEXの公式確認ツールは、このアドレスを公式のものと認めていません。調べると、運営側の管理画面は中国語で作られ、そこから開ける取引所システムの販売元のページには、weexjp.vipと同じ画面の見本と、利用者ごとに勝ち負けを指定する設定が載っていました。
登録記録や当局の資料も照らし合わせ、実在の取引所の名前で勧められたサイトを確かめる方法を弁護士が解説します。
WEEXを装う偽サイトに関するトラブルの概要

今回の相談は、マッチングアプリ「ペアーズ」で知り合った人物から暗号資産の取引を勧められ、「WEEX」を名乗る取引サイト(weexjp.vip)に登録したことから始まりました。入金は銀行振込で複数回に分けて行い、初めのうちは少額の利益が実際に振り込まれたことで、相談者は入金を重ねていきます。
ところが出金を申し出ると保証金を求められ、それを振り込むと今度は税金の支払いを求められました。相談者は税金を振り込まずに相談に至り、その時点で勧誘した人物のアカウントはペアーズを強制退会になっていました。
マッチングアプリが入口になる暗号資産の投資勧誘
マッチングアプリは、交際や結婚の相手を探す場として広く使われています。プロフィールを見てメッセージを重ねるうちに、相手を身近な存在と感じるようになり、その信頼を足がかりに恋愛とは関係のない投資の話へ移っていくのがこの種の被害の入口です。
警察庁が令和8年5月22日に公表した令和7年の確定値によると、恋愛感情や親近感を抱かせて金銭をだまし取る「SNS型ロマンス詐欺」の認知件数は5,645件でした。最初に接触した手段はマッチングアプリが1,846件(前年比40.8%増)で最も多く、全体の32.7%を占めています。
▼マッチングアプリが最多を占める当初接触ツールの統計

出典:警察庁
金融庁も、マッチングアプリなどで知り合った相手から暗号資産やFXへの投資を勧められ、「返金を申し出ても返金されない」「相手と連絡が取れなくなった」という相談が多く寄せられているとして、注意を呼びかけています。
少額の出金で信用させてから保証金や税金を求める流れ
金融庁の同じ注意喚起は、投資を始めた後に被害が進んでいく流れを次のように説明しています。利益が出ているように見せる段階と、出金の段階で支払いを求める段階が、一続きの手口として書かれています。
その後、しばらくは利益が出たように装うこともありますが、安心して高額な入金をした後に連絡が取れなくなったり、出金時に高額な手数料や税金の支払いといった名目の口座入金を要求され、入金した直後に連絡が取れなくなることもあります。
▼出金時の税金の請求に触れた金融庁の注意喚起

出典:金融庁
本件でも、初めのうちに少額の利益が実際に振り込まれています。一度でも引き出せたという経験は、「このサイトは本物だ」という確信につながりやすいものです。その後に大きな金額を入金し、まとめて引き出そうとした段階で、保証金、続いて税金と支払いの名目が変わっていきました。異なる請求名目の例として、信用スコアの回復を理由に銀行振込やPayPay送金を求める事例も確認できます。
警察庁の特殊詐欺対策ページも、出金のために「保証金」や「税金」が必要だと言って振り込みを求めてくる事例を紹介しています。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、利益を受け取るためにお金を払えと言われた時点でその請求をいったん止めて専門家に相談してください。
実在のWEEXはweexjp.vipを公式のサイトと認めていない
WEEXは、海外で運営されている実在の暗号資産取引所で、公式サイトのアドレスは「weex.com」です。以下では、海外で営業している本物の取引所を「実在のWEEX」、相談者が案内されたサイトをアドレスのまま「weexjp.vip」と書き分けます。
実在のWEEXは、ウェブサイトやSNSのアカウントが自社の公式のものかを調べられる「WEEX公式確認ツール」を日本語で公開しています。このツールで「weexjp.vip」を照会すると、「weexjp.vip」はWEEXの公式チャネルではありませんと表示されました。
▼weexjp.vipを公式と認めないWEEX公式確認ツールの結果

出典:WEEX
同じページの注記には、次の一文があります。相談者は、WEEXの名前を掲げたサイトで利益を引き出そうとした際に、その条件として保証金や税金の振り込みを求められていました。
また、WEEX関係者がお客様に対し、資金や暗号資産を自身または第三者に送金・振込するよう求めることも絶対にありません。
なお、実在のWEEXも、金融庁の暗号資産交換業者登録一覧には名前がなく、日本で登録を受けた業者ではありません。そのうえで、weexjp.vipについては、正規のWEEXによって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
【参考】
・weexjp.vip(https://weexjp.vip/)
・WEEX-WEEX公式確認ツール(https://www.weex.com/ja/official-verification)
・警察庁-令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)
・金融庁-SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!
WEEXの偽サイトへ誘導され被害につながるまでの経緯

相談者がweexjp.vipを知ったのは、マッチングアプリで知り合った相手からの紹介でした。最初は少額の利益が戻ってくるなど順調に見えた取引は、まとまった額を引き出そうとした段階で、保証金と税金の請求に変わっています。
ここでは、アプリでの出会いから入金、少額の払い戻し、出金時の請求、そして相談に至るまでを、5つの段階に分けて順にたどります。サイトの画面に表示された内容と、相談者が実際に求められた支払いとを区別しながら整理します。
ペアーズでのやりとりの中で暗号資産の取引を勧められる
相談者は、マッチングアプリ「ペアーズ」で知り合った人物とメッセージを重ねるうちに、暗号資産の取引を勧められました。その人物が取引の場として示したのが、「WEEX Crypto Exchange」の名前を掲げるweexjp.vipです。
ペアーズを運営する会社は、交際を目的としないやりとりへの対策をヘルプページで説明しています。外部のSNSへ誘導するメッセージなどを自動で検知し、送信そのものを止める仕組みを設けているとしています。
▼外部SNSへの誘導を自動で検知するペアーズの説明

出典:ペアーズ
こうした仕組みがあっても、アプリの中で投資の話が始まれば、相手の案内でアプリの外のサイトへ移ってしまいます。アプリの運営会社が見守れるのは、あくまでアプリの中のやりとりに限られます。
WEEXを名乗るサイトに登録して銀行振込で入金を重ねる
weexjp.vipのトップ画面には、「世界をリードする暗号資産取引所」という見出しと、実在のWEEXと同じ図柄のロゴが並びます。表示は日本語に切り替えられ、画面の作りだけを見て実在のWEEXのサイトではないと見抜くのは難しい状態です。
▼暗号資産取引所を名乗るweexjp.vipのトップ画面

出典:weexjp.vip
相談者はこのサイトに登録し、指定された銀行口座へ複数回に分けて入金しました。サイトのメニューには入金、出金、支払設定の項目がありますが、いずれも登録してログインしないと開けず、登録前の利用者が振込先や手続きの条件を確かめる手段はありません。
少額の利益が振り込まれたことで相手を信用する
入金を続けていた初めのうちに、相談者の口座へ2回、少額の利益が振り込まれています。取引画面に表示される数字だけでなく、実際にお金が手元に戻ってきたことで、サイトと勧めた相手への疑いは薄れていきました。
この払い戻しの後も、相談者は入金を重ねています。少額でも引き出せたという実績は、それより大きな金額を預けても引き出せるはずだという見通しの裏付けとして受け止められやすく、次の入金をためらう理由をなくしてしまいます。
出金のための保証金を振り込むと今度は税金を求められる
入金を重ねたあと、相談者がまとまった利益を引き出そうとすると、出金の前に保証金を納めるよう求められました。相談者はこれに応じ、出金のための保証金として求められた額を振り込んでいます。
ところが出金は進まず、その後、サイトのカスタマーサポートから、今度は出金のための税金として新たな支払いを求められました。保証金を納めれば出金できるという前提は、次の請求によって崩れたことになります。相談者はこの税金を振り込まずに相談に至りました。支払っても出金できない例として、出金費用を払った後に連絡が途絶えた副業の事例もあります。
勧誘した相手はペアーズを強制退会になっていた
相談の時点で確かめると、取引を勧めた人物のアカウントは、ペアーズで「強制退会」の扱いになっていました。ペアーズのヘルプページは、この表示について「利用規約違反などの理由により、強制退会の処理が行われている状況」と説明しています。
強制退会となった相手とは、アプリでメッセージを続けることもできません。アプリで知り合った人物に勧められたサイトで入金を重ね、出金の段階で保証金と税金を求められるという流れが、本件で被害につながった経緯です。
【参考】
・weexjp.vip(https://weexjp.vip/)
・ペアーズ-「メッセージの送信を停止しました」と表示される(https://support.pairs.lv/hc/ja/articles/15554256281241)
・ペアーズ-お相手が「強制退会済み」となっている(https://support.pairs.lv/hc/ja/articles/37555447124889)
WEEXを装う偽サイトの関連サイトの情報を調査した結果

weexjp.vipについて、ドメインの登録記録とサイトの通信を暗号化する証明書の発行記録を照会しました。証明書の記録からは、weexjp.vipと同じ管理者のもとにある別のドメインと相談の後に加えられたサブドメインが見つかっています。
あわせて実在のWEEXが日本で登録を受けているかを、金融庁の公表資料で確かめました。表には関係するアドレスと、比較のために実在のWEEXの公式サイトを並べています。
| ドメイン | 登録日時(世界標準時) | 登録機関 | 役割 |
|---|---|---|---|
| weexjp.vip | 2026年1月4日 15:56 | Gname.com(シンガポール) | 取引サイト「WEEX Crypto Exchange」 |
| weejp.vip | 2026年1月4日 15:54 | Gname.com(シンガポール) | weexjp.vipと同じ証明書に載るドメイン |
| facai.weexjp.vip | (weexjp.vipのサブドメイン。証明書の発行は2026年9月24日) | - | 運営側の管理画面 |
| weex.com | 2003年12月20日 | GoDaddy(米国) | 実在のWEEXの公式サイト |
weexjp.vipは2026年1月に登録され5月には稼働していた
ドメインの登録情報を公開するRDAPという仕組みで調べると、weexjp.vipが登録されたのは2026年1月4日15時56分(世界標準時)で、手続きを担ったのはシンガポールのGname.comでした。誰の名義で登録されたのかは公開されていません。
▼weexjp.vipとweejp.vipの登録日時を示すRDAPの記録

出典:RDAP(rdap.nic.vip)
公開されているウェブサイトを第三者が調べて記録を残すサービス(urlscan.io)には、2026年5月14日にweexjp.vipを調べた記録があり、英語表示の今と同じ構成のトップ画面が残っています。相談者が入金を始めるより前から、このサイトは同じ姿で動いていたことになります。
同じ証明書に並ぶweejp.vipは約2分前に登録されている
サイトの通信を暗号化する証明書は、発行を申し込んだ人が管理権限を示せたドメインにしか出されません。公開されている発行記録を調べると、2026年9月5日に発行された証明書にweexjp.vipと並んで「weejp.vip」というドメインが載っていました。
▼weejp.vipとweexjp.vipが並ぶ証明書の記録

出典:crt.sh
weejp.vipは、「weex」から「x」を1文字落とした名前で、登録はweexjp.vipの約2分前、登録機関も同じGname.comです。このほかにも、weejp.vipと同じ時間に登録された、名前のよく似たドメインがもう1つあります。現在、weejp.vipを開いても画面は表示されません。
相談の後に管理画面用のサブドメインが追加された
先ほどのweexjp.vipの登録記録で、最後に内容が変更された日時は2026年9月24日でした。同じ日に、「facai.weexjp.vip」というサブドメインの証明書が新たに発行されています。相談者が相談に至った後もサイトの運営は続き、構成が変えられていることが分かります。
「facai」は、中国語で「金持ちになる」を意味する「发财」をローマ字で書いた綴りと同じです。このアドレスを開くと、運営側が使う管理画面のログインページに移ります。管理画面の中身は、次の章で詳しく見ていきます。
WEEXは日本で暗号資産交換業の登録を受けていない
暗号資産の売買や交換を仲介する事業者は、日本で営業するには金融庁の登録が必要です。金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」(令和8年9月1日現在、全27業者)で「WEEX」を探しましたが、実在のWEEXの名前も見当たりませんでした。
▼WEEXの名前が見当たらない暗号資産交換業者登録一覧

出典:金融庁
金融庁の相談室は、暗号資産に関する相談事例をまとめたページで、海外の事業者のサイトに勧誘されたという相談に次のように答えています。
海外の事業者であっても、日本の居住者に対して暗号資産交換業を行うのであれば、金融庁に登録が必要になります。マッチングアプリやSNS等で知り合った者に登録のない業者との取引を勧められ被害に遭う事例が多発しており、金融庁でも注意喚起をしているところです。また、取引後に、出金を求めたところ、保証金や税金等の名目で金銭等をだまし取られた被害も多発しております。
この回答が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、マッチングアプリでの勧誘から出金時の保証金や税金まで、本件と同じ流れが書かれています。回答は「事業者には保証金や税金等を納めず、今後一切関わらないようにしてください。」と続きます。
このほか、ブラウザの警告の有無、過去の画面の保存記録、サイト上の運営者の表示についても次のとおり確かめています。
- Googleセーフブラウジングの判定は、weexjp.vipが「安全ではないコンテンツは見つかりませんでした」で、開いてもブラウザの警告は出ない(2026年9月28日更新の情報)
- Internet Archiveには、weexjp.vipの画面が一度も保存されていない
- weexjp.vipのどのページにも、運営会社の名前、所在地、登録番号が書かれていない
【参考】
・weexjp.vip(https://weexjp.vip/)
・WEEX(https://www.weex.com/)
・RDAP(https://rdap.nic.vip/domain/weexjp.vip)
・RDAP(https://rdap.nic.vip/domain/weejp.vip)
・crt.sh(https://crt.sh/?id=29379556015)
・Cert Spotter(https://api.certspotter.com/v1/issuances?domain=facai.weexjp.vip&expand=dns_names)
・urlscan.io(https://urlscan.io/result/019e2500-c29b-752d-b2ed-63c476706b3e/)
・Google-透明性レポート(セーフブラウジングのサイト ステータス)
WEEXを装う偽サイトに関する不審点

ここからは、weexjp.vipの画面とページのソース、運営側の管理画面、そして管理画面が「技術支持」として名前を挙げる取引所システムの販売元のページから見つかった不審点を6つ挙げます。取引の仕組み、利用規約、C2C取引の出品者についても順に見ていきます。
6つに共通するのは、利用者が見る画面は日本語で整えられている一方、その裏側では中国語で作られた既製の取引所システムがWEEXの名前を載せて動いているという事実です。
管理画面は中国語で取引所システムの販売元へのリンクがある
facai.weexjp.vipを開くと、運営側が使う管理画面のログインページが表示されます。見出しは「一个NB的交易所」で、入力欄の名前は「邮箱地址」(メールアドレス)、「密码」(パスワード)、「谷歌验证码」(Googleの認証コード)と、すべて中国語の簡体字で書かれています。
▼中国語で作られたweexjp.vipの管理画面のログインページ

出典:weexjp.vip
ページの下部には「技術支持 「819x交易所系统」」とあり、文字を押すと取引所システムの販売元とみられるページが開きます。利用者に向けた画面は日本語で用意されていても、運営側の画面は日本語に直されておらず、中国語のまま使われていることが分かります。
販売元のデモ画像にweexjp.vipと同じ画面が載っている
販売元とみられるページは、このシステムを「ホワイトラベル型取引所フレームワーク製品」と紹介し、「ブランド名を受け取ってから対外公開まで、最短1日で対応可能です。」と書いています。中国語の部分では、ロゴや色、ドメインのほか、「客服话术」(サポート担当の応対の台本)まで差し替えるとしています。
▼最短1日で公開できるとうたう取引所システムの紹介

出典:取引所システムの販売元とみられるページ
同じページには、このシステムで作った取引所の見本の画面が並んでいます。日本語で作られたトップ画面の見本は、見出しもボタンの配置もweexjp.vipと同じで、ロゴの部分がぼかされています。
▼販売元の紹介ページに載る日本語のデモ画面

出典:取引所システムの販売元とみられるページ
見本の足元には「Copyright ©2026 WEEX Crypto Exchange.」の文字があり、ぼかされた連絡先の間からも「(732)80」「…p.vip」という文字が読み取れます。
▼WEEXの名前と連絡先の一部が残るデモ画面の足元

出典:取引所システムの販売元とみられるページ
weexjp.vipのフッターの連絡先は「1+(732)8068685」と「[email protected]」で見本と一致します。見本は、weexjp.vipそのものを販売元が製品の例として載せたものとみられ、見本の管理画面の見出しもfacai.weexjp.vipと同じ「一个NB的交易所」です。
利用者ごとに勝ち負けを指定する設定が機能として案内されている
販売元のページの製品一覧には、「二元期权秒合约」(秒単位で結果が決まる二択の取引)と並んで、「单控合约」(個別に制御する契約取引)や「冻结/解冻资金/封号」(資金の凍結と凍結の解除、アカウントの停止)が挙げられています。
▼二元期权秒合约と单控合约を並べる製品の一覧

出典:取引所システムの販売元とみられるページ
見本の管理画面のうち「创建 风控策略」の画面では、利用者のIDかメールアドレスで相手を選び、「控制方向」として「必赢 (Win)」か「必输 (Loss)」を指定します。有効期限の欄には「留空则代表永久生效」(空欄なら無期限で有効)とあります。
▼必赢と必输を選ばせる风控策略のデモ画面

出典:取引所システムの販売元とみられるページ
利用者ごとに「必ず勝つ」「必ず負ける」を運営側が決められる設定が、このシステムの機能として案内されていることになります。
運営側の画面には入れないため、本件のサイトでこの設定が使われたかどうかまでは確認できませんが、表示される勝ち負けや利益を運営側が決められる仕組みを備えたシステムです。
30秒で30%の利益をうたう取引の勝敗はサーバーから返される
weexjp.vipの「契約取引」は、30秒、60秒、90秒、180秒のいずれかを選び、その間に値段が上がるか下がるかを当てる形式です。販売元の製品一覧にある「秒合约」と同じ形の取引とみられます。
▼30秒から180秒で勝敗が決まる契約取引の画面

出典:weexjp.vip
ページのソースを開くと、時間のボタンごとに利益率が書かれています。30秒で30%、60秒で50%、90秒で75%、180秒で90%です。プログラムを調べたところ、画面は勝ち負けを自分では計算せず、時間が過ぎた後に運営側のサーバーから「勝」「負」の結果を受け取る作りでした。
▼時間ごとの利益率が書かれた契約取引のソース

出典:weexjp.vip
同じソースでは、中国語の開発メモのすぐ下に、日本語のエラー文として「結算タイムアウト。再度ご確認ください。」が用意されています。「結算」は中国語で「決済」を意味する言葉で、日本語としては見慣れない表現です。
利用規約に同意させる欄があるのに規約そのものがない
会員登録の画面には「利用規約に同意します」の欄があり、最初からチェックが入っています。ところが「利用規約」の文字を押しても、アドレスの末尾に「#」が付くだけで規約の本文はどこにも表示されません。
▼最初からチェックが入った利用規約への同意欄

出典:weexjp.vip
ページの下部の「利用規約」「プライバシーポリシー」「オンラインサポート」も同じで、押しても移動しません。連絡先として並ぶのは、米国の電話番号の形をした番号とメールアドレスだけで、運営会社の名前や所在地は書かれていません。
誰とどのような契約を結ぶのかが示されないまま、入金だけを受け付ける作りです。
▼運営会社の名前がないweexjp.vipのフッター

出典:weexjp.vip
C2C取引の出品者はページに書き込まれた模擬データ
C2C取引は、利用者どうしが暗号資産を売り買いする場として紹介されている画面です。「FastCrypto」「GlobalTrader」などの出品者が、取引件数や成約率とともに並びますが、日本語で表示しても、法定通貨の初期値は「RMB」(人民元)になっています。
▼法定通貨の初期値がRMBのC2C取引の画面

出典:weexjp.vip
ソースを開くと、出品者の一覧の直前に「// 20条模拟数据 (基础价格为 USD)」(20件の模擬データ、基準の価格は米ドル)と書かれています。画面に並ぶ出品者は実際の利用者ではなく、ページに書き込まれた作り物です。
▼出品者を「模擬データ」と記すC2C取引のソース

出典:weexjp.vip
会員登録のページのソースにも、「客户「多次输入恒错无法注册」」(顧客から「何度入力しても誤りと判定され登録できない」)と、運営側から見た利用者の声が中国語で残っています。資産運用の画面は、8つの商品すべてに同じ「日次利回り2.2%〜2.4%」を掲げています。
【参考】
・weexjp.vip(https://weexjp.vip/)
・weexjp.vip-管理画面(https://facai.weexjp.vip/admin)
・weexjp.vip-会員登録(https://weexjp.vip/register)
・weexjp.vip-契約取引(https://weexjp.vip/contract/trading)
・weexjp.vip-C2C取引(https://weexjp.vip/c2c)
WEEXを装う偽サイトが悪用されやすい理由

weexjp.vipのようなサイトが利用者に信じられてしまう背景には、4つの事情があります。
実在の取引所の名前を調べると本物が見つかること、既製のシステムで見栄えのよい画面がすぐに用意できること、数十秒で結果が出る取引の形、そしてマッチングアプリで生まれた相手への信頼です。
いずれも、利用者が「確かめたつもり」になりやすい点を突いています。名前、画面、利益の表示、相手の人柄のどれを確かめても、お金を預けるサイトの運営者がだれなのかは分からないという点は変わりません。
実在する海外の取引所の名前は調べると本物が見つかる
勧められた取引所の名前を検索すると、実在のWEEXの公式サイトや紹介記事が見つかります。
そのため、勧められた側は「実在する大きな取引所だ」と受け止めやすくなります。weexjp.vipは、名前に「jp」を足すことで日本向けの窓口のようにも見えるアドレスになっています。
実在のWEEXは、2025年12月3日付の日本語のお知らせで、なりすましの手口の一つとして「詐欺師が公式ウェブサイトに酷似したドメイン名を登録し、プラットフォームになりすまします」と注意を呼びかけています。同じお知らせには、次の一文もあります。
WEEXが、追加手数料を請求したり、いかなる種類の入金をも要求したりすることは決してありません。
▼酷似したドメインへの注意を促すWEEXのお知らせ

出典:WEEX
名前で調べて本物が見つかっても、それは案内されたアドレスが本物であることの裏付けにはなりません。確かめる対象は、名前ではなくアドレスが実在のWEEXの公式サイトのweex.comかどうかです。
名前とロゴを入れ替えれば取引所の画面が用意できる
前の章で見たとおり、weexjp.vipの画面は、販売されている既製の取引所システムで作られたものとみられます。販売元は、ロゴや色、ドメインを差し替えれば最短1日で公開できると案内しており、同じ仕組みは名前を替えて何度でも使い回せます。
トップ画面の「戦略的パートナー」に並ぶPentagon、Tether、Circle、Binance Labs、Coinbase Venturesの名前も、販売元の見本の画面と同じ並びで、各社のサイトへのリンクはありません。画面の出来のよさや並んだ社名は、運営の実体を示すものではありません。
数十秒で結果が出る取引は利益が出たと思わせやすい
weexjp.vipの「契約取引」は、30秒から180秒で結果が出て、当たれば30%から90%の利益が上乗せされます。短い時間で勝ちが何度か続けば、残高は目に見えて増えていきます。取引を続けるほど、画面の数字を信じる気持ちも強くなりやすい形です。
ただし、その勝ち負けは運営側のサーバーから返されるものでした。画面の残高は、運営側が表示している数字にすぎず、実際に銀行口座へ引き出せるまでは利益とはいえません。まとまった額を引き出そうとした段階で支払いを求められたのが、本件です。
出会いの場で生まれた信頼が送金の判断を鈍らせる
ペアーズが被害者支援の団体と共同で公開している「SNS型投資・ロマンス詐欺にご注意ください」は、詐欺師の9割以上が1週間以内にLINEなどへ誘導すると指摘しています。投資に誘う手口の進み方については次の説明があります。
最初は小さな金額から投資をはじめ、利益が出てたら、出金できることがありますが、すっかり信じて大きなお金を振り込んで出金しようとすると手数料が必要になり、さらなる出費が続きます。
▼少額の出金から始まる手口を示すペアーズの安全ガイド

出典:ペアーズ
本件も、初めに少額の利益が2回振り込まれ、その後も入金を重ねた末に出金の段階で保証金と税金を求められています。
信頼の拠り所だった相手のアカウントは強制退会で消え、事情を尋ねる相手もいなくなっています。相手を信じているときほど、勧められたサイトを公式の確認ツールや金融庁の一覧で確かめてください。
【参考】
・WEEX-セキュリティ警告:WEEXを装った詐欺にご注意ください!(https://www.weex.com/ja/help/articles/52998058589977)
・ペアーズ-SNS型投資・ロマンス詐欺にご注意ください(https://pairs.lv/static/safety/activity/sns_based_romance_scams)
WEEXを装う偽サイトの不審点を見抜く方法

実在する取引所の名前でサイトを案内されたときに確かめたい点を、名前の確認、画面の確認、お金を求められたときの対応の順に6つ挙げます。どれも入金の前に、スマートフォンやパソコンから自分で確かめられることです。
- 案内されたアドレスを、取引所の公式の確認ツールに入れて照会する
- 実在のWEEXは、日本語の「WEEX公式確認ツール」を公開しています。「ウェブサイト」を選んでアドレスを入れると、公式のものかどうかが表示されます。本件のweexjp.vipは「WEEXの公式チャネルではありません」と表示されました。
- 取引所の名前を、金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」で探す
- 一覧はPDFで公開されており、ページ内検索で名前を探せます。海外でよく知られた取引所でも、一覧に名前がなければ日本で登録を受けた業者ではありません。本件では、実在のWEEXの名前も見当たりませんでした。
- 会員登録の前に「利用規約」を押して、運営会社の名前と所在地が書かれた本文が開くかを見る
- 同意の欄に最初からチェックが入っていても、そのまま登録へ進まないでください。weexjp.vipでは、利用規約もプライバシーポリシーも押しただけで何も表示されませんでした。
- 数十秒で数十%の利益が出る取引や、毎日数%の利回りをうたう運用は、その数字だけで疑う
- weexjp.vipは30秒で30%の利益、資産運用で日次2.2%〜2.4%の利回りを掲げています。日次2.2%は、単純に365日分を足し合わせても年800%を超える数字です。
- 出金の条件として保証金や税金の振り込みを求められたら、支払わずに相談する
- 実在のWEEXは、追加の手数料や入金を求めることは決してないとしています。金融庁の相談室も、事業者に保証金や税金を納めないよう呼びかけています。
- マッチングアプリで知り合った相手から投資を勧められたら、アプリの違反報告で運営会社に知らせる
- ペアーズは、勧誘など恋愛以外を目的とした使い方を利用規約で禁じています。ヘルプページによると、相手がすでに退会していても違反報告はできます。
アプリで知り合った相手とのやりとりは、トーク画面を日付が分かる形で画面ごと保存しておきましょう。勧められたサイトのアドレス、入金や出金の画面、振込の控えも同じです。サイトは相談の後も構成が変えられており、いつ見られなくなってもおかしくありません。
少額でも一度引き出せた経験があると、次は大きな額も引き出せるはずだと考えて請求に応じ続けてしまいがちです。保証金や税金を求められた段階で振り込みを止め、それまでの記録を持って弁護士など専門家へ早めに相談してください。
【参考】
・WEEX-WEEX公式確認ツール(https://www.weex.com/ja/official-verification)
・ペアーズ-利用規約違反行為を行うユーザーがいたので通報したい(https://support.pairs.lv/hc/ja/articles/360019874031)
WEEXを装う偽サイトに関する口コミや被害事例

weexjp.vipについて、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねるや爆サイなどの掲示板で、アドレスと「WEEX」の名前の両方から口コミを探しました。weexjp.vipに触れた投稿や相談は、いずれでも確認できませんでした。
その代わりに見つかったのは、マッチングアプリで知り合った相手に保証金を求められたという別の相談と、名前をかたられている実在のWEEX自身の発信です。どちらも本件と同一の案件であることまでは確認できませんが、同じ手口を考えるうえで参考になります。
X(旧Twitter)に出てくるのは正規のWEEXについての投稿ばかり
Xで「weexjp」と検索しても、本件のサイトに触れた投稿は出てきません。「WEEX」で検索すると、実在のWEEXの公式アカウントによる告知やキャンペーンを紹介する投稿が並び、偽サイトの被害を訴える声は見当たりませんでした。
金融庁は2021年3月の時点で、SNSで暗号資産などの儲け話に勧誘され海外の業者と取引した結果、出金に応じてもらえなかったり、高額な手数料を求められたりする場合があるとXで注意を促し、「#出会い」「#マッチング」の言葉を添えていました。
Yahoo!知恵袋にはペアーズで知り合った相手に保証金を求められた相談がある
Yahoo!知恵袋では、「weexjp」「WEEX 詐欺」「WEEX ペアーズ」などで検索しても、本件に触れた質問はありませんでした。一方で2022年9月3日には、ペアーズで知り合った相手に投資を勧められたという相談が投稿されています。
▼ペアーズで知り合った相手に保証金を求められた相談(2022年9月3日)

出典:Yahoo!知恵袋
相談者は「最初はpairsで出会いすぐにLINEに移行」し、相手の勧めで取引を始めたと書いています。その後、「達成したお金を私は出金できなくなり」、「トレードから保証金を払えと言われています」と続きます。
この相談にWEEXの名前は出てこず、本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できません。それでも、アプリで出会ってすぐLINEへ移り、出金の段階で保証金を求められるという流れは本件と重なります。
WEEX自身が名前をかたる詐欺サイトを20以上公表している
実在のWEEXの中国語の公式アカウントは、2025年10月20日の投稿で「近期我們曝光了 20 多個仿冒 WEEX 交易所的詐騙網站和客損平台」と書いています。WEEXを装う詐欺サイトなどを、最近だけで20以上公表したという意味です。
▼WEEXを装う詐欺サイトの公表を伝える公式の投稿

出典:X(WEEX唯客中文)
公表された一覧にweexjp.vipが含まれていたかどうかは確認できませんでした。それでも、WEEXの名前を使った偽のサイトがいくつも作られていることは、名前をかたられた側が認めています。
口コミが見つからないからといって安全とは限らないため、少しでも迷ったら弁護士など専門家に相談してください。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-皆さんのロマンス詐欺を読んでいると全く同じ内容。信じたくないけどもしかしてと…(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13267434558)
・X-WEEX唯客中文(@weexglobal_ch)の2025年10月20日の投稿(https://x.com/weexglobal_ch/status/1980225049631363180)
WEEXを装う偽サイトに関する口コミが少ない理由

「WEEX」の名前で検索すると、上位には実在の取引所の公式サイトや紹介記事が並びます。
勧められた人が名前で評判を調べても、目に入るのは本物の情報ばかりで、偽サイトの被害を書いた投稿はその中に埋もれてしまいます。アドレスのweexjp.vipで調べる人が少ないことも一因です。
勧誘がマッチングアプリの1対1のやりとりから始まることも、声が表に出にくい理由です。同じサイトを勧められた人がほかにいても、互いを知る手段がありません。
交際相手を探す場での出来事は周りに打ち明けにくいこともあり、勧めた相手がアプリを退会すれば、その人物とメッセージを続けることもできなくなります。
サイトの側も同じ姿のままとは限りません。weexjp.vipは2026年1月に用意され、相談の後にも管理画面のサブドメインが加えられました。既製のシステムは最短1日で名前やアドレスを替えて公開できるとされており、看板が変われば被害を訴える書き込みも別々の名前に散らばります。
評判を探して何も見つからなかったことは、安全を裏付ける材料にはなりません。少額の利益が振り込まれた後に出金の条件として支払いを求められたら、その時点で振り込みを止めて弁護士など専門家に相談してください。
【参考】
・weexjp.vip(https://weexjp.vip/)
・WEEX(https://www.weex.com/)

