SNS型投資詐欺は、2026年上半期だけで5,893件にのぼります。件数は前年同期から105.1%増え、被害額は797.9億円です(警察庁)。最初の接触にFacebookが使われた被害も71.4%増えています。
今回相談が寄せられた「saxonjp.com」は、実在の金融グループ「Saxo(サクソバンク)」の名前とロゴを掲げたサイトです。Facebookからの誘いでLINEへ移った相談者は、名義の異なる口座への振込を重ねた末に、出金の際に利益の23%を所得税として別に払うよう求められました。
調べると、サイトの規約は暗号資産取引所Coinbaseの規約の社名を置き換えたもので、日本の居住者を契約の対象外としていました。実在のサクソバンク証券も、偽サイトとの関係を否定する注意喚起を出しています。
本記事では、サイトの規約とプログラム、ドメインの登録の記録、金融庁や国税庁の資料を一つずつ示しながら、名の知れた証券会社の名前で投資に誘われたときの見分け方を弁護士が解説します。
SAXOを装う偽サイトに関するトラブルの概要

今回の相談は、Facebookで共通の知人がいると名乗る人物から連絡を受け、LINEでのやり取りを経て、「SAXO」を名乗るサイト「saxonjp.com」へ資金を移したことが発端です。出金を申し出ると、利益の23%を所得税として別に支払うよう求められました。
この章では、警察庁の統計に表れたFacebookとLINEの使われ方、実在する証券会社の名前を使う勧誘への金融庁の注意喚起、サクソバンク証券自身の注意喚起、同社の登録と取扱商品の状況を取り上げます。
FacebookからLINEへ移って投資を勧められる被害が増えている
警察庁が2026年7月30日に公表した令和8年上半期の暫定値によると、SNS型投資詐欺で犯人が最初に接触してきたツールのうち、Facebookは552件で前年同期から71.4%増えています。
その後のやり取りに使われたツールについては、次のようにまとめられています。
被害時の連絡ツールは、LINEが5,658件(+3,080件、+119.5%)と、全体の9割以上を占める。
▼FacebookとLINEが使われるSNS型投資詐欺の統計

出典:警察庁
今回の相談も、Facebookで連絡を受けた後、やり取りの場がLINEへ移っています。知人のつながりを名乗る相手であっても、投資の話がLINEへ移った時点で一度立ち止まってください。
金融庁は実在する証券会社の名前を使う勧誘に注意を呼びかけている
金融庁は、証券会社などをかたるSNS上の偽広告について注意喚起のページを設け、2024年6月28日に内容を更新しています。そこでは、実在する証券会社の名前を使った勧誘の手口が次のように紹介されています。
偽広告等の主な内容は、実在する証券会社の名称等を使用し、(中略)リンク先へのアクセスやLINEアカウントの追加等を求めた上で、投資勧誘を行ったり、金銭の支払いの話を持ちかけたりするケースが確認されています。
▼実在する証券会社の名称を使う勧誘への金融庁の注意喚起

出典:金融庁
同じページは、少しでも怪しいと思ったら入金せずにやり取りを止め、証券会社の公式ホームページで注意喚起が出ていないかを確かめるよう求めています。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、SAXOの名前で勧誘を受けたときにもそのまま使える手順です。
サクソバンク証券は自社を装う偽サイトとの関係を否定している
この確認の手順を、実在のサクソバンク証券にあてはめてみます。同社は2026年7月24日、「【注意喚起】当社を装った偽サイト・フィッシング詐欺にご注意ください」と題したお知らせを公式サイトに掲載しました。
最近では、サクソバンク証券の名称、ロゴ、コンテンツ等を無断で使用し、LINEグループや偽サイト、情報商材販売サイトなどへ誘導する事例も確認されています。当社はこのようなサービスやウェブサイトとは一切関係ございません。
▼偽サイトとの関係を否定するサクソバンク証券の注意喚起

出典:サクソバンク証券
お知らせには、公式サイト「home.saxo」や取引ツールのアドレスが並び、それ以外のサイトで個人情報の入力や入金をしないよう呼びかけています。saxonjp.comは、この公式のアドレスの一覧に含まれていません。
掲載されたのは、相談者が振込を続けていた時期にあたります。このお知らせはsaxonjp.comを名指ししたものではなく、本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、saxonjp.comが実在のサクソバンク証券によって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
サクソバンク証券の取扱商品に暗号資産は見当たらない
実在のサクソバンク証券は、関東財務局長(金商)第239号の登録を受けた金融商品取引業者で、金融庁の登録一覧にも掲載されています。日本で登録を受けて営業している会社です。
▼金融商品取引業者登録一覧に載るサクソバンク証券

出典:金融庁
同社の取扱商品一覧には、FX、CFD、先物、オプション、外国株式、外国ETFなどが並びます。暗号資産の項目は見当たらず、ページ内で「暗号資産」を検索した結果も0件でした。
▼暗号資産が見当たらないサクソバンク証券の取扱商品一覧

出典:サクソバンク証券
暗号資産交換業者として金融庁に登録された27社(令和8年9月1日現在)の一覧にも、サクソバンク証券は含まれていません。一方のsaxonjp.comは、トップページに「デジタル資産取引プラットフォーム」と掲げる暗号資産の取引所の作りです。
つまり、実在の会社が扱っているとは見られない暗号資産の取引を、その会社の名前で勧めていることになります。勧められた商品をその会社が本当に扱っているかは、公式サイトの商品一覧で確かめられます。
【参考】
・saxonjp.com(https://saxonjp.com/)
・警察庁-令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)
・金融庁-証券会社や日本証券業協会を騙ったSNS上の偽広告等に注意!
・サクソバンク証券-【注意喚起】当社を装った偽サイト・フィッシング詐欺にご注意ください(https://www.home.saxo/ja-jp/content/commentaries/wnu/whats-new/stay-vigilant-against-phishing-scams-24072026)
・サクソバンク証券-取扱商品一覧(https://www.home.saxo/ja-jp/products)
SAXOを装う偽サイトへ誘導され被害につながるまでの経緯

相談者がsaxonjp.comに資金を移すことになったきっかけは、Facebookに届いた連絡でした。そこからLINEでのやり取り、暗号資産の口座の開設、名義の異なる口座への振込を経て、出金の際に所得税を求められるまでの流れをたどります。
Facebookで共通の知人がいると名乗る人物から連絡が来る
最初の接触はFacebookでした。相談者のもとに、共通の知人がいると名乗る人物から連絡が届き、その後のやり取りはLINEへ移っています。投資を勧められたのはLINEへ移った後のことです。
共通の知人の名前が出てくると、初めて連絡してきた相手でも知り合いの延長のように受け止めやすくなります。Facebookを入口にする手口が増えていることは、前の章で見た警察庁の統計にも表れています。
こうした相手から投資の話が出たときは、名前を挙げられた知人本人に電話など別の手段で相手のことを確かめてください。知人の名前を出されたこと自体は、相手を信用する理由になりません。
暗号資産の口座を開きSAXOを名乗るサイトへ資金を移すよう指示される
相談者は勧めに従って国内の暗号資産交換業者に口座を開き、そのうえで「SAXO」を名乗る投資サイトへ資金を移すよう指示されました。そのサイトがsaxonjp.comです。
スマートフォンで開くと、左上に「SAXO BE INVESTED」のロゴが表示され、その下に「顧客サービス」「ステーキングマイニング」「プラットフォームローン」「秒契約」などのボタンと、「入金」「出金」の入口が並びます。
▼SAXOのロゴを掲げるsaxonjp.comのトップ画面

出典:saxonjp.com
口座を開いた国内の交換業者と、資金の送り先になったsaxonjp.comは、まったく別のものです。送り先のサイトが日本で登録を受けた業者かどうかは、送る前に別に確かめる必要があります。
個人名義や法人名義の口座へ連日振り込み画面の資産が膨らんでいく
資金の移し方は、暗号資産の送金だけではありませんでした。相談者は、指示された複数の個人名義や法人名義の口座へ、約1か月にわたって連日振込を続けています。振込先の口座は1つではなく、名義も個人と法人にまたがっていました。
その間、saxonjp.comの画面では運用益が出ているように表示され、画面上の資産は入金した額を大きく上回るまでに膨らみました。この数字がサイトの側でどう扱われているのかについては、プログラムの中身とともに後の章で確かめます。
出金を申し出ると利益の23%を所得税として別に払うよう求められる
画面上の資産を引き出そうと出金を申請したところ、サイトのカスタマーサービスから、利益の23%にあたる額を所得税として別に支払うよう求められました。支払いには期限も区切られていました。
出金の条件として、残高から差し引くのではなく、新たにお金を払い込むよう求められたことになります。相談者はその後、警察や弁護士に相談し、振込先の銀行口座は凍結されましたが、残高はほとんど残っていませんでした。
振り返ると、知人のつながりを名乗る接触、SAXOという実在の名前、膨らんでいく画面上の資産が重なり、名義の異なる口座への振込が約1か月続いたことが被害につながりました。
今回のように口座を凍結できても、振り込んだお金がすでに移されていることがあります。振込先の名義に違和感を覚えた段階で、振込を止めて早めに専門家に相談してください。
【参考】
・saxonjp.com(https://saxonjp.com/)
SAXOを装う偽サイトの関連サイトの情報を調査した結果

調べたのは、ドメインの登録記録、第三者のサービスに残る画面の記録、サイトが返す設定、金融庁の公表資料です。その結果、同じ管理画面につながる別名のサイトが少なくとも6つあり、SAXOの名前を使う同じ作りのサイトが2026年3月以降に、19のアドレスで記録されていることが分かりました。
下の表は、saxonjp.comと実在のサクソバンク証券の公式サイトhome.saxoの登録の記録を並べたものです。
| 項目 | saxonjp.com | home.saxo(実在のサクソバンク証券の公式サイト) |
|---|---|---|
| 登録日時(日本時間) | 2026年6月11日 19:01:47 | 2016年9月14日 15:37:22 |
| 有効期限 | 2027年6月11日 | 2027年9月14日 |
| 登録機関 | Metaregistrar BV | CSC Corporate Domains, Inc. |
| ネームサーバー | Cloudflare | UltraDNS・Cloudflare |
saxonjp.comは最初の振込の約4週間前に取得された
ドメインの登録機関が公開している記録(RDAP)では、saxonjp.comは2026年6月11日10時01分(世界標準時)に登録されています。日本時間では同じ日の19時01分で、相談者が最初に振り込んだ日の約4週間前にあたります。
▼saxonjp.comの登録日時を示すRDAPの記録

出典:RDAP(rdap.verisign.com)
登録の期間は取得の日から1年です。実在のサクソバンク証券のhome.saxoは2016年の登録で、末尾の「.saxo」もSaxo Bank A/Sが自社のために管理する専用のドメインです。取得の時期は10年近く離れています。
被害の期間中にも同じSAXOの画面が記録されている
urlscan.ioは、依頼を受けたサイトを開いて画面と通信を記録するサービスです。saxonjp.comは、2026年7月23日7時10分(日本時間)に記録されており、「いらっしゃいませ SAXO デジタル資産取引プラットフォーム」という今と同じ画面が残っています。
▼被害の期間中に記録されたsaxonjp.comの画面

出典:urlscan.io
urlscan.ioはこの記録で、saxonjp.comを「Potentially Malicious」(悪質の可能性あり)と判定しています。ウェブページの保存サービスであるInternet Archiveでも、同じ日の画面を見ることができます。
プログラムを調べたところ、PCの画面はドメインの取得から2日後の2026年6月13日に作られ、今も同じものが使われています。スマートフォンの画面は9月9日に作り直されましたが、名前、ロゴ、入金先は変わっていません。
saxonjp.comと同じ設定を返す別のアドレスが今も5つ動いている
プログラムを調べたところ、saxonjp.comは画面を開くと、チャットの窓口、入金先の暗号資産のアドレス、日本時間と日本語を既定にする指定などをサーバーからまとめて受け取る作りでした。
同じ問い合わせを、SAXOの名前を使う別のアドレスに送ってみると、5つのアドレスがsaxonjp.comと1文字も違わない応答を返してきました(2026年10月1日確認)。saxonjp.comを含めて少なくとも6つのサイトが、同じ管理画面につながっているとみられます。
このうちの1つは、saxonjp.comのわずか2秒後に登録されていました。1つのアドレスが使えなくなっても、同じ窓口と入金先のまま別のアドレスで続けられる状態です。
SAXOを名乗る同じ作りのサイトが3月以降に19のアドレスで確認できる
urlscan.ioの記録を、saxonjp.comと同じ場所(/platform/saxo/)から名前とロゴを読み込むサイトに絞って調べると、2026年3月から9月にかけて19のアドレスが記録されていました。
このうち12のアドレスは、登録の記録に停止を示す状態(client holdなど)が付き、すでに開けなくなっています(2026年10月1日確認)。また、2〜3個のアドレスを数秒のうちに続けて登録した組が5つありました。
アドレスが止められても、SAXOの名前のまま次のアドレスで同じサイトを出し続けているとみられます。開いているサイトのアドレスは、前の章で見たサクソバンク証券の公式のアドレスの一覧と照らし合わせてください。
金融庁の無登録業者や警告書の一覧にsaxonjp.comは載っていない
金融庁が公表している無登録業者の一覧(令和8年9月25日更新)と、無登録で暗号資産交換業を行う業者に警告書を出した一覧を確かめましたが、saxonjp.comやSAXOの名前は見当たりませんでした。
ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。アドレスを替え続けるサイトは、一覧の名前やアドレスと一致しないことも考えられます。確かめるべきは、運営者が日本で登録を受けているかどうかです。
あわせて、Googleによる安全性の判定と通信がどこを経由しているかも確かめました。
- Googleセーフブラウジングでは、saxonjp.comは「安全ではないコンテンツは見つかりませんでした」と表示される(最終更新2026年9月23日)
- saxonjp.comの通信はCloudflareを経由しており、実際のサーバーの場所は外から分からない
セーフブラウジングの表示は、その時点で危険が検知されていないことを示すだけで、urlscan.ioの判定とも食い違っています。こうした表示は、運営者を確かめる代わりにはなりません。
【参考】
・saxonjp.com(https://saxonjp.com/)
・RDAP(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/saxonjp.com)
・RDAP(https://rdap.identitydigital.services/rdap/domain/home.saxo)
・IANA-.saxo Domain Delegation Data(https://www.iana.org/domains/root/db/saxo.html)
・urlscan.io(https://urlscan.io/result/019f8be1-0ba4-7599-9398-a10cb0f6a222/)
・Internet Archive(https://web.archive.org/web/20260723141012/https://saxonjp.com/)
・Google-透明性レポート(セーフブラウジングのサイト ステータス)
SAXOを装う偽サイトに関する不審点

saxonjp.comの不審点を、ログインしなくても確認できる画面と、サイトのプログラムの両面から6つ挙げます。
規約が別の取引所の文書の置き換えであること、その規約が日本の居住者を対象外としていること、運営会社の紹介が空であること、所得税の項目がないこと、入金の扱い、中国語や機械翻訳の痕跡です。順番に見ていきます。
サービス規約に英国の決済会社の会社番号とロンドンの住所が残っている
スマートフォンでsaxonjp.comの「サービス規約」(/#/term-service)を開くと、「saxoユーザー同意書」という題の下に、次の一文が表示されます。
これは、お客様と以下の間の契約です。CB Payments, Ltd (「saxoPayments」) は、イングランドおよびウェールズで設立され、会社番号 09708629 を有し、登録事務所が 5 Fleet Place, London EC4M 7RD, United Kingdom および saxoAscending にある非公開会社です。
(後略)
▼英国の会社番号が残るsaxonjp.comのサービス規約

出典:saxonjp.com
暗号資産取引所のCoinbaseがケニア向けに公開していた利用規約を、Internet Archiveの2021年8月の保存で開くと、「CB Payments, Ltd (also trading as Coinbase)」という一文と、同じ会社番号、同じロンドンの住所が同じ順番で書かれています。
▼同じ会社番号が書かれたCoinbaseのケニア向け規約

出典:Internet Archive(coinbase.com)
原文の「Coinbase」は「saxo」に置き換わりましたが、その文字を含まない「CB Payments, Ltd」や会社番号は残りました。「saxoAscending」と「Markets Kenya」に割れた社名も、機械的な置き換えの跡とみられます。
saxonjp.comの規約は、別の取引所の規約の社名を差し替えて作られたと考えられます。実在のCoinbaseや、英国の法人がsaxonjp.comの運営に関わっていることを示す情報は確認できませんでした。
規約の冒頭で日本に住む人は契約の対象外とされている
規約の書き出しの一文は、契約の対象を次のように定めています。
この契約(「契約」)は、英国、欧州経済領域、日本およびシンガポール以外に居住する顧客に適用されます。
日本語の画面で日本の利用者に取引を勧めながら、規約そのものは日本に住む人を契約の対象から外していることになります。流用元の規約がもともと日本以外の顧客向けだったため、その一文がそのまま残ったとみられます。
末尾近くの「13.21 準拠法」では、契約はイングランドおよびウェールズの法律に準拠するとされています。ただし、日本の消費者を守る法律がどこまで認めるかは別の問題で、こうした規約があることは返金をあきらめる理由にはなりません。
取引所の紹介ページは空白で運営会社の名前がどこにもない
スマートフォンで「取引所の紹介」(/#/introduction)を開くと、見出しの下には内容がないことを示す絵が表示されるだけです。プログラムを調べたところ、紹介文として返ってくるデータそのものが空でした。
▼何も書かれていないsaxonjp.comの取引所の紹介

出典:saxonjp.com
規約に出てくる会社は英国とケニアの法人で、SAXOという名前の会社はどこにも出てきません。日本の登録番号も画面には見当たりません。運営している会社の名前も所在地も分からないまま、お金だけを預ける形になっています。
請求された所得税にあたる項目がプログラムに1つもない
saxonjp.comのPCの画面は、表示する文言を言語ごとの一覧にまとめて読み込んでいます。英語の一覧(/assets/en.28852e4d.js)をブラウザで開き、「tax」で検索しても、該当するものは0件でした。
一方、同じ一覧で「handling fee」を検索すると、出金の手数料についての注意書きが見つかります。
Kind reminder: Withdrawal will incur a partial handling fee, which will be received within 24 hours after withdrawal.
(後略)
(出金には一部手数料がかかり、出金後24時間以内に着金します)
▼taxが0件で手数料の文言はある英語の言葉の一覧

出典:saxonjp.com
プログラムを調べたところ、スマートフォンの画面や日本語の一覧にも「税」「tax」の項目はありませんでした。手数料は画面の仕組みに組み込まれているのに、所得税はどこにも出てこないことになります。利益の23%という所得税の話は、サイトの仕組みではなく、カスタマーサービスが持ち出したものとみられます。
入金は支払いの画面写しを送らせて運営が審査する作り
入金の手続きの画面はログインした後にしか出てこないため、文言はサイトのプログラムそのものを取得して確かめました。入金の申請では、金額とあわせて「支払詳細のスクリーンショットをアップロード」するよう求め、申請の状態は「審査中」と表示される作りです。
つまり、送られた画像を運営の側が見て、残高に反映するかどうかを決める仕組みです。画面上の資産の数字が、実際に届いたお金とどこまで結びついているのかは、利用者の側からは確かめようがありません。
エラーは中国語で返り国名の翻訳や別の取引所の名前も残っている
プログラムを調べたところ、ログインしないままサーバーに問い合わせると、「未能读取到有效Token」(有効なトークンを読み取れません)という簡体字のエラーが返ってきます。画面は日本語でも、サーバーが返す文言は中国語のままです。
国名の一覧には、「トルコ」を「七面鳥」、「トーゴ」を「持ち帰り」とする訳がプログラムに書かれていました。英語の「Turkey」と「Togo」(to go)を、意味を確かめずに機械的に訳した結果とみられます。
入金の注意書きには、「不適切な操作は Bstor アカウントへの資金の到着に影響します。」という一文があり、SAXOとは別の名前が残っていました。ほかの名前で使われていた文言を置き換えきれないまま使っているとみられます。
【参考】
・saxonjp.com-サービス規約(https://saxonjp.com/#/term-service)
・saxonjp.com-取引所の紹介(https://saxonjp.com/#/introduction)
・saxonjp.com-英語の言葉の一覧(https://saxonjp.com/assets/en.28852e4d.js)
・Coinbase-User Agreement(Kenya)(https://web.archive.org/web/20210825120910/https://www.coinbase.com/legal/user_agreement/kenya)
SAXOを装う偽サイトが悪用されやすい理由

saxonjp.comの見た目、利用者が名前を確かめるときの手順、サイトのプログラムの作り、請求に使われた23%という数字の4点から、SAXOの名前が悪用されやすい理由を整理します。
ロゴも標語も実在のSaxoのものと同じ形をしている
saxonjp.comの左上のロゴは、「SAXO」の4文字の下に「BE INVESTED」と添えたものです。実在のサクソバンク証券の公式サイトのロゴと並べると文字の形も配置も同じです。
▼saxonjp.comと実在のSaxoの公式サイトのロゴ

出典:saxonjp.com/サクソバンク証券
「Be Invested」は、実在のSaxoが英語のサイトのページ名にも掲げている標語です。ロゴや標語を見比べても、本物かどうかは見分けられません。手がかりになるのは、アドレス欄に表示されるドメインのほうです。
日本で登録を受けた会社の名前は確かめるほど本物らしく見える
金融庁の登録一覧で「サクソバンク」を調べると、実在のサクソバンク証券が登録業者として出てきます。名前で確かめようとするほど、SAXOという名前そのものは本物だと確認できてしまうことになります。
確かめるべきなのは名前ではなく、開いているサイトのアドレスと、その会社自身が出している注意喚起です。この記事の最初の章で見たとおり、saxonjp.comはサクソバンク証券が示す公式のアドレスに含まれていません。
Saxoの名前は、海外でも以前からかたられています。英国の金融行動監視機構(FCA)は、Saxo Bankなどの名前をかたる偽の業者について2020年9月29日に警告を出し、2023年11月1日に更新しています。この警告が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できません。
▼Saxoの名前をかたる偽業者への英国FCAの警告

出典:英国金融行動監視機構(FCA)
1つのプログラムに50を超える名前の切り替えが組み込まれている
プログラムを調べたところ、saxonjp.comのプログラムには、SAXOのほかにも50を超える名前ごとに、表示する文言や画面を切り替える処理が書かれていました。前の章で触れた入金の注意書きの「Bstor」も、その名前の1つです。
接続先のサーバーも、開いたアドレスから自動で決まる作りです。同じプログラムを別のアドレスに置き、名前とロゴを差し替えるだけで別の取引所を名乗るサイトができあがることになります。SAXOの名前で19のアドレスが使われていたのも、この作りがあるためとみられます。
プログラムには、取引所のサイトを開きたい人に向けて構築を請け負う業者の案内文も残っていました。saxonjp.comの画面には表示されない設定ですが、サイト一式が売り物として作られていることがうかがえます。
23%は実在する所得税の税率の区分なので本当らしく聞こえる
相談者は、利益の23%を所得税として求められました。国税庁のタックスアンサー「No.2260 所得税の税率」には、5%から45%までの税率の表があり、23%はその中の1つの区分です。
▼23%の区分を含む国税庁の所得税の税率の表

出典:国税庁
ただし、23%は課税される所得金額が695万円から899万9千円の場合に使う区分で、計算では63万6千円を差し引きます。利益の全体に一律でかかる率ではありません。また国税庁は、暗号資産の取引で生じた利益を原則として雑所得に区分するとしています。
雑所得は、ほかの所得と合わせて本人が確定申告をする前提の所得です。利益に一律23%をかけ、出金の前にサイトへ払い込ませる請求は、国税庁が示す所得税の仕組みとは形が異なるとみられます。実在する税率の数字を使うことで、請求が本当らしく聞こえやすくなります。
【参考】
・saxonjp.com(https://saxonjp.com/)
・サクソバンク証券(https://www.home.saxo/ja-jp)
SAXOを装う偽サイトの不審点を見抜く方法

SAXOのように、日本で登録を受けた会社の名前を使うサイトは、名前を調べるだけでは見抜けません。誰に、どこで確かめるのかを決めておき、次の6点を入金の前に確かめてください。
- 名前を出された知人本人に、Facebook以外の手段で相手のことを聞く
- 今回は、共通の知人がいると名乗る人物からFacebookで連絡があり、LINEへ移ってから投資を勧められました。知人本人に電話などで聞けば、そのつながりが本当かどうかが分かります。
- 会社の公式サイトで、注意喚起と公式のアドレスの一覧を見る
- サクソバンク証券は、2026年7月24日に自社を装う偽サイトへの注意を呼びかけ、公式のアドレスを並べています。saxonjp.comはその中にありません。
- 勧められた商品を、その会社が日本で扱っているかを商品一覧で見る
- サクソバンク証券の取扱商品一覧に、暗号資産は見当たりません。暗号資産の取引所として作られたsaxonjp.comとは食い違います。
- サイト自身の規約で、契約の相手と対象の国を読む
- saxonjp.comの規約には、英国の別の会社の名前と会社番号が残り、書き出しで日本の居住者を対象から外していました。
- ドメインの登録日と、同じ作りのサイトの記録を調べる
- saxonjp.comは、最初の振込の約4週間前に登録されたドメインです。RDAPを使えば登録日が、urlscan.ioを使えば過去にどんな画面だったかが分かります。
- 出金の前に税金を求められたら、払う前に税の仕組みを確かめる
- 23%は国税庁の税率表にある数字ですが、利益の全体に一律でかかる率ではありません。saxonjp.comのプログラムにも税金の項目はありませんでした。
入金した後で気づいた場合は、まず手元の証拠を残すことから始めます。振込の控え、出金を申請した画面、LINEのやり取りなどを画像で保存してください。今回の相談では、振込先の口座を凍結できても残高はほとんど残っていませんでした。
税金などを理由に新たな支払いを求められたら、それ以上は振り込まないでください。振り込んだお金は短期間で別の口座へ動かされることもあるため、保存した記録とともにできるだけ早く弁護士など専門家に相談してください。
【参考】
・サクソバンク証券-【注意喚起】当社を装った偽サイト・フィッシング詐欺にご注意ください(https://www.home.saxo/ja-jp/content/commentaries/wnu/whats-new/stay-vigilant-against-phishing-scams-24072026)
・サクソバンク証券-取扱商品一覧(https://www.home.saxo/ja-jp/products)
・RDAP(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/saxonjp.com)
・urlscan.io(https://urlscan.io/result/019f8be1-0ba4-7599-9398-a10cb0f6a222/)
SAXOを装う偽サイトに関する口コミや被害事例

saxonjp.comやSAXOの名前を使うサイトについて、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる、爆サイの書き込みを調べました(2026年10月1日確認)。4つの媒体のいずれにも、saxonjp.comのアドレスを挙げた書き込みはありませんでした。
X(旧Twitter)で拾えるのはサクソバンク証券を使う人の取引の話題
Xで「サクソバンク」を含む投稿をたどると、見つかるのは、サクソバンク証券のセミナーの告知や、同社で米国の株式などを売買している人の投稿です。実在のサクソバンク証券を使う人の取引の話題が中心でした。
一方で、saxonjp.comのアドレスや、SAXOの名前を使う偽サイト、出金を断られたといった被害を書いた投稿は見つかりませんでした。投稿がないからといって、被害が起きていないとはいえません。
Yahoo!知恵袋では利益に所得税がかかるとして出金を止められた相談が見つかる
Yahoo!知恵袋にも、SAXOの名前が出てくる被害の相談はありませんでした。ただ、出金を申し込んだところで税金の支払いを求められたという相談は、2026年に入ってからも寄せられています。2026年9月1日の質問の本文はその一例です。
(前略)
画面上では利益がかなりでてたので、出金依頼をしました。
そしたら、税金がかかると言われました。
自分では、詐欺被害に遭ったと思ってるのですが、税金が取引所から請求される事はありえないですか?
(後略)
▼出金の際に税金を求められたという知恵袋の相談

出典:Yahoo!知恵袋
2026年3月22日の質問では、出金を申請した後に届いたという、所得税の支払いを求める文面が紹介されています。質問者が書き写した文面は、出金を止めている理由を次のように説明していました。
(前略)
出金金額が個人所得税の課税基準額に達しているため、出金を完了するには所定の所得税をお支払いいただく必要がございます。
(後略)
どちらもSAXOの名前は出てこず、電話での勧誘だったり、税率が「25%」だったりと本件とは異なる点があります。これらの相談が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、出金の前に所得税を払わせるという形は本件と共通しています。
掲示板のサクソバンク証券の話題は正規の取引の雑談に限られる
5ちゃんねるでサクソバンクの名前を含むスレッドを探すと、出てくるのは、同社の幹部の発言を伝えるニュースや、海外の株式を扱う証券会社について語るスレッドなどです。詐欺や偽サイトに触れたスレッドは見つかりませんでした。
爆サイでも、地域ごとの掲示板でSAXOやサクソバンクの名前を調べましたが、偽サイトや出金の被害に関する書き込みはありませんでした。書き込みの有無で判断せず、前の章で挙げた6つの点を入金の前に確かめてください。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-2026年9月1日の質問(出金の際に税金がかかると言われたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12331022507)
・Yahoo!知恵袋-2026年3月22日の質問(出金の前に所得税の支払いを求められたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12326513067)
SAXOを装う偽サイトに関する口コミが少ない理由

SAXOの名前を使う同じ作りのサイトは、2026年3月以降に19のアドレスで記録され、そのうち12はすでに止められています。saxonjp.comはその中の1つにすぎません。利用者ごとに案内されたアドレスが違えば、書き込みも別々のアドレスの名前で散らばります。
次に、名前で探しても偽サイトの話題にたどり着きにくい事情があります。「SAXO」や「サクソバンク」で調べると、実在のサクソバンク証券のセミナーの告知や、同社で取引をしている人の投稿が数多く並びます。偽サイトについての書き込みがあっても、こうした正規の話題の中に紛れてしまいます。
さらに、今回のやり取りは、Facebookでの連絡からLINEの1対1の会話へと移っていました。勧誘も、振込の指示も、カスタマーサービスからの税金の請求も、1対1のやり取りの中で伝えられるため、同じ相手から声をかけられた人どうしが互いの存在に気づく機会もほとんどありません。
書き込みが少ないのは、アドレスの使い方や勧誘の進め方から生じたことで、安全の裏付けにはなりません。知人のつながりを名乗る相手からSAXOの名前で投資を勧められた、出金の前に税金を払うよう求められたといった場面では、それ以上の振込をやめ、弁護士など信頼できる第三者に相談してください。
【参考】
・saxonjp.com(https://saxonjp.com/)

