Instagramで知り合った相手から投資を勧められ、HercleEX(app.hercleeth.com)という取引サイトで、金に連動する暗号資産XAUTのオプション取引をしていたという相談がありました。
取引のためのお金は、サイトの画面ではなく相手の指定に従って、複数の銀行の口座へ振り込まれています。のちに口座は凍結され、そこに資金が残っていると警察から連絡が入りました。
HercleEXのプログラムを調べると、値段が上がるか下がるかを示す「AI分析」は、相場を見ずに五分五分の乱数で答えを決めていました。会社紹介には社名がなく、画像は「KrakenJP」という名前のフォルダに置かれ、同じ作りの別の名前のサイトも動いています。
本記事では、こうした仕組みや使い回しの跡が何を意味するのかを、名前を使われた会社や金融庁の資料も交えて、弁護士が解説します。振り込む前後に確かめたいことと、口座が凍結された後にお金が戻るまでの手続きと相談先も紹介します。
InstagramでHercleEXを勧められ振り込むまでの流れ

今回の相談で被害に遭ったのは相談者の母親です。Instagramで知り合った相手から投資を勧められ、HercleEXという取引サイトを使うようになりました。お金は取引サイトに直接ではなく、相手が口座を指定する形の銀行振込で送られています。
この章では、Instagramでの勧誘、HercleEXの取引画面と本人確認の画面、振込と口座の凍結の3つの場面をたどります。取引の画面はHercleEXのサイトの中にありましたが、お金の送り先を決めていたのはサイトではなく相手の指定でした。
Instagramで知り合った相手にHercleEXを案内された
相談者の母親が投資を勧められたのは、Instagramで知り合った相手からでした。その相手から案内されたのが、HercleEXという名前の取引サイトです。相談の資料には、HercleEXから届いた認証のメールと、取引や資産の画面が含まれていました。
画面に表示されていたアドレスは「app.hercleeth.com」です。HercleEXの名前は、イタリアとスイスで暗号資産や送金の事業を行う正規のHercleとよく似ています。ただし、HercleEXの「私たちについて」の画面を開いても、運営する会社の名前や所在地は出てきません。
取引画面にはXAUT/USDTのオプション取引が表示されていた
取引画面に表示されていた商品は「XAUT/USDT」です。XAUTは、金の現物を裏付けにうたう暗号資産で、ステーブルコインのUSDTで知られるTetherのグループが発行しています。画面は、このXAUTの値動きを対象にした「オプション取引」でした。
オプション取引の画面には、プレミアム金額や利益、注文の内容が並んでいました。また、本人確認の画面では、身分証明書の種類を選んだうえで、運転免許証の写真のアップロードを求める表示が出ていました。
凍結された口座に資金が残っていると警察から連絡があった
振込の明細を見ると、受取の銀行は1つではなく、口座の名義に個人の名前が出ているものがあります。どの振込も、取引サイトへの入金のために、相手が指定した口座に宛てたものでした。
その後、銀行が警察を呼んだことがあり、さらに警察の刑事から凍結された口座に資金が残っているとの連絡がありました。相談の時点で、被害届を出しに行く予定とされています。
ここまでの流れをまとめると、Instagramで知り合った相手がHercleEXを案内し、XAUTのオプション取引の画面を前に、相手が指定する口座への振込を重ねたことが被害につながった経緯です。凍結された口座に資金が残っているため、その資金を取り戻す手続きを考えられる段階です。
【参考】
・HercleEX(https://app.hercleeth.com/)
HercleEXの「AI分析」は相場を見ずに乱数で上下を決めている

HercleEXのオプション取引の画面には、「AI分析」を行うロボットが置かれています。押すと、値段が上がる「コール」か、下がる「プット」かを示してくれる仕組みです。AIが予想してくれるなら勝てそうだと感じる人もいるかもしれません。
この章では、ロボットが出る画面の表示、「AI分析」を押したときに動くプログラムの中身、押し直したときの結果の3つを確かめます。3つに共通するのは、この「AI分析」が相場の値動きもサイトのデータも見ていないという事実です。
オプションの画面のロボットが上がるか下がるかを示す
オプション取引の画面(https://app.hercleeth.com/ja-jp/tabbar/option)は、ログインしなくても開けます。銘柄をXAUT/USDTに切り替えると、取引のボタンの近くに丸いロボットが浮かんでいます。
プログラムには、このロボットの説明として「こんにちは、AI Botです。タップして上昇・下降を予測します。」と書かれていました。ロボットは自ら「AI」を名乗り、値段が上がるか下がるかを予測すると案内しています。
▼オプションの画面に出るAI分析のロボット

出典:app.hercleeth.com
ロボットを押すと「AI分析を実行しますか?」という窓が開き、「キャンセル」と「AI分析」の2つのボタンが並びます。「AI分析」を押すと、少し待たされた後に矢印の記号とともに「コール」か「プット」のどちらかが表示されます。
▼ロボットを押すと出る「AI分析」の確認の窓

出典:app.hercleeth.com
プログラムは五分五分の乱数でコールかプットを選ぶ
プログラムを調べたところ、「AI分析」のボタンを押したときに動く処理は、「Math.random()>.5?”up”:”down”」の1行でした。ボタンを押すたびに、この1行だけで答えが決まります。
「Math.random()」は0以上1未満の数をでたらめに1つ作る命令で、それが0.5より大きければ「up」(コール)、そうでなければ「down」(プット)を選びます。つまり、答えはコインを投げて表か裏かを決めるのと同じ五分五分の乱数です。
この処理には、チャートや値段を読み込む命令も、サイトのサーバーに問い合わせる命令もありません。また、確認の窓の文は、プログラムの中では「是否进行AI分析预测?」と中国語で書かれ、画面に出すときに日本語へ置き換えられていました。
▼AI分析の答えを乱数で決めるプログラムの1行

出典:app.hercleeth.com
同じ画面で押し直すたびに答えが入れ替わる
2026年10月22日に、同じオプションの画面のままロボットを6回続けて押したところ、答えは「プット」が3回、「コール」が3回でした。値段がほとんど動かない短い間に押し直しても、答えは同じにならず、どちらが出るかは押してみるまで分かりません。
▼押し直すとプットとコールが入れ替わるAI分析の結果

出典:app.hercleeth.com
撮影した画面でも、11時26分には「プット」、その1分後には「コール」と答えが変わっています。AIが相場を分析した結果であれば、1分の間に正反対の答えが出ることは考えにくいはずです。
「AIの予想があるから勝てる」「AIの答えに合わせて掛け金を増やせばよい」と勧められても、画面の予想にはその根拠がありません。AI分析を理由に入金や掛け金の上乗せを求められたら、その場で取引を止めてください。
【参考】
・HercleEX-オプション取引の画面(https://app.hercleeth.com/ja-jp/tabbar/option)
・HercleEX-AI分析のプログラム(https://app.hercleeth.com/_next/static/chunks/234.d84f23fb97ef66f9.js)
XAUTのオプションは長い期間ほど最低の掛け金が上がる

HercleEXの「オプション取引」は、決められた秒数のうちに値段が上がるか下がるかを選び、当たれば決まった率の利益が付くという取引です。どの期間を選べ、いくら掛けられるのかは、ログインしなくても読める設定のデータに書かれています。
この章では、XAUT/USDTのオプションで選べる期間と利益率、期間ごとに決められた掛け金の幅、PC版の画面の日本語の3つを見ていきます。3つとも、HercleEXの画面と設定のデータにそのまま出てくる数字や文言をもとにしています。
選べる期間は30秒から360秒までの5段階
XAUT/USDTのオプションで選べる期間は、30秒・60秒・120秒・180秒・360秒の5つです。利益率は30秒が5%で、期間が長くなるにつれて7%・10%・12%と上がり、360秒では15%になります。画面に出る手数料は0.03%です。
1回の勝負が最短30秒、最長でも6分で決まる作りです。国内で登録を受けた業者がこうした取引を個人向けに扱う場合について、金融庁の監督指針は次のように書いています。
いわゆるバイナリーオプション取引等の個人向けの特定店頭オプション取引(金商業等府令第123条第8項に規定する特定店頭オプション取引をいう。以下同じ。)の中には、短時間で損益の結果が判明するため顧客による過度の投機的取引が行われるおそれのあるものや、複雑な理論的根拠に基づく商品であるにもかかわらず一見単純な商品性であるとの誤解を招きやすく顧客による正確なリスクの把握が困難なものが存在する。
a.取引期間(取引開始時刻から判定時刻までの期間)について、過度の投機的取引を助長するような短い期間に設定していないか。
▼短い取引期間に注意を求める金融庁の監督指針

出典:金融庁
金融庁は、登録業者が短すぎる期間を設けていないかを確かめるとしています。一方、HercleEXの名前は金融庁の登録業者の一覧に見当たらず、取引の対象のXAUTも、国内の登録業者が扱う暗号資産の一覧にはありません。30秒で結果が出る取引を勧められたら、その時点で立ち止まる理由になります。
360秒を選べるのは100万ドル以上を掛ける場合だけ
設定のデータを見ると、期間ごとに掛け金(プレミアム)の下限と上限が決められています。利益率の高い長い期間ほど、下限の額が大きく跳ね上がります。下の表は、XAUT/USDTの設定をまとめたものです。
| 期間 | 利益率 | 掛け金の下限 | 掛け金の上限 |
|---|---|---|---|
| 30秒 | 5% | 50ドル | 9,999ドル |
| 60秒 | 7% | 10,000ドル | 49,999ドル |
| 120秒 | 10% | 50,000ドル | 299,999ドル |
| 180秒 | 12% | 300,000ドル | 999,999ドル |
| 360秒 | 15% | 1,000,000ドル | 4,999,999ドル |
▼360秒を選ぶと最低100万ドルを求める設定のデータ

出典:app.hercleeth.com
利益率の高い期間を選ぼうとすると、1回に出すお金が桁違いに大きくなる作りです。「もっと長い期間で取引すれば利益が増える」と勧められるほど、入金の額も大きくなります。
取引サイトのメニューの「Saving」から開く別の画面(app-hercle.hercleeth.com)にも、商品のデータがあります。そこでは「USDT Investment Products」という商品の利回りが「2.00%~350.00%」とされ、取引画面の外でも桁外れの数字が並びます。
▼利回り最大350%をうたうUSDTの運用の商品のデータ

出典:app-hercle.hercleeth.com
PC版の画面ではプレミアムが「保険料額」と訳されている
PC版のXAUT/USDTのオプション画面を開くと、掛け金の欄は「保険料額」となっています。「Premium」という英語には保険料という意味もあり、その訳語がそのまま当てられたとみられます。
取引のボタンも、「Call」(コール)を電話の意味にとった「スライドして通話」です。プログラムには、「Put」(プット)を「スライドして置く」と訳した文言も書かれていました。上部の案内は「XAUT/USDT がそうなることを期待しています コール」と、意味の通りにくい日本語です。
▼プレミアムを「保険料額」と訳したPC版の注文欄

出典:www.hercleeth.com
一方、スマートフォン版の同じ画面は「プレミアム金額」「コール」「プット」と表示し、訳し方が2通りあります。日本の利用者に向けて一から作られた画面ではなく、他の言語の画面に訳を当てはめたものとみられます。お金を預ける画面の日本語がこの状態なら、運営の実態を疑ってください。
【参考】
・HercleEX-オプション取引の設定(https://app.hercleeth.com/option/api/option/detail?symbol=XAUT/USDT&type=swap)
・HercleEX-PC版のオプション取引の画面(https://www.hercleeth.com/ja-jp/trading/options/XAUT%2FUSDT)
・HercleEX-運用の商品のデータ(https://app-hercle.hercleeth.com/gateway/api/financial/products?page=1&size=10)
・金融庁-金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(IV-3-3-4 業務執行態勢)
・日本暗号資産等取引業協会-取扱暗号資産の一覧
HercleEXの入金先は運営が利用者ごとに設定する口座

相談では、HercleEXでの取引のためのお金を、相手が指定した口座へ銀行振込で送っていました。では、HercleEXの側は、利用者にどのような形で振込先を示す作りになっているのでしょうか。
この章では、入金の画面に並ぶ「入金方法」の作り、入金方法がない利用者に出る案内、金融庁が挙げる個人名義の口座への入金の指示の3つを取り上げます。はじめの2つは、入金の画面を動かすプログラムに書かれている内容です。
入金方法は銀行名と口座番号を運営が登録する形
プログラムそのものを取得して確認したところ、円などで入金する画面は、通貨を選び、入金方法を選んだら金額を入れて「次へ」と進む作りでした。入金方法の一覧は、ログインした利用者ごとにサイトの側から届き「銀行名(口座番号)」の形で並びます。
つまり、どの銀行のどの口座に振り込ませるかは、運営が利用者ごとに登録する仕組みです。このサイトの設定では、一覧の口座番号はすべて「*」に置き換えて表示されます。入金方法の種類には、中国で使われる決済のAlipayとWeChat Payを見分ける処理も入っていました。
▼銀行名と口座番号を並べて表示する入金のプログラム

出典:app.hercleeth.com
登録がなければサポートの窓口に問い合わせさせる
入金の操作の画面には、入金方法が用意されていない利用者に向けた案内も組み込まれています。プログラムに書かれていた文言は「支払い方法がありません。サポートにお問い合わせください。」で、その下にはサポートの窓口を開くボタンが置かれています。
窓口は、HercleEXのサイトの中にあるチャットです。入金方法が登録されていなければ、利用者は窓口に問い合わせるしかなく、振込先は窓口の担当者から伝えられる形になります。相談で指定された口座がこの窓口から伝えられたものかどうかまでは、この作りから断定はできません。
個人名義の口座への入金の指示は金融庁も注意を促している
金融庁がSNSでの投資の勧誘の手口を説明したページにも、入金先の示され方についての一文があります。これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、入金先の示され方は重なります。
(前略)
このとき、個人名義の口座に入金を指示されるケースもあります。
▼個人名義の口座への入金の指示を挙げる金融庁の注意

出典:金融庁
取引サイトに入金するはずのお金を、サイトの運営会社ではなく個人の名前の口座へ振り込むよう求められたら、その時点で手を止めてください。振込の前に、振込先の名義が取引サイトの運営会社のものかを確かめることが大切です。
【参考】
・HercleEX-入金の画面のプログラム(https://app.hercleeth.com/_next/static/chunks/tabbar-assets-c5437fe8.e2674864871788c7.js)
・金融庁-SNS・マッチングアプリ等で知り合った者や著名人を騙る者からの投資勧誘等にご注意ください!
HercleEXは名前を替えて使い回された仕組みとみられる

HercleEXの名前が入ったアドレス(hercleeth.com)が取得されたのは、2026年5月26日です。ところが、サイトのデータや画像には、それより前から別の名前で使われていた跡が残っています。
この章では、会社紹介のデータ、メニューの画像の置き場所、同じ作りの別の名前のサイト、ロゴの記号、利用規約のデータの5つを取り上げます。どれも、HercleEXという名前が後から付け替えられたことをうかがわせる材料です。
会社紹介はセーシェルのブローカーと書くだけで社名がない
スマートフォン版の「私たちについて」を開くと、「HercleEX は、セーシェルに登録された外国為替ブローカー会社です。」と書かれています。しかし、会社の名前、所在地、どこの当局に登録されているかを示す番号はどこにもありません。
▼社名がなくセーシェルの会社とだけ名乗る会社紹介

出典:app.hercleeth.com
この会社紹介は、ログインなしで読めるデータからも確認ができます。データに残る作成日時は2023年5月10日で、アドレスが取得される約3年前です。HercleEXの名前に書き換えられたのは、アドレスの取得の1週間後の2026年6月2日でした。
▼2023年5月に作られていた会社紹介のデータ

出典:app.hercleeth.com
メニューの画像は「KrakenJP」というフォルダに置かれている
ホームのメニューに並ぶアイコンの画像は、ネット上の保管場所の「KrakenJP」という名前のフォルダに置かれています。フォルダの中は「2024-10-14」「2024-12-08」「2025-10-19」と日付ごとに分かれ、ここでもアドレスの取得より前の日付が並びます。
▼メニューの画像を置くフォルダの名前「KrakenJP」

出典:app.hercleeth.com
Krakenは実在する海外の暗号資産取引所の名前です。正規のKrakenは2023年1月31日に日本での暗号資産交換業を廃止し次のように告知しています。
(前略)
Krakenは今後、Payward Asia株式会社を通じて日本の顧客にサービスを提供することはありません。
(後略)
▼Krakenが日本での暗号資産交換業を廃止したお知らせ

出典:Kraken Blog
正規のKrakenが日本から撤退した後の日付のフォルダに、「Kraken」と「JP」の名前が付いていることになります。そのフォルダが何に使われていたのかまでは分かりませんが、HercleEXの画面が日本向けに別の名前で使われていた部品を流用しているとみられます。
同じ画像の置き場所を使う別の名前のサイトがある
HercleEXのプログラムには、サポートの窓口の接続先を切り替える処理の中に「defipe」という別の名前が書かれています。実際に、app.defipe.ccでは「DefiPE」と名乗るサイトが動いており、メニューの画像は同じ「KrakenJP」のフォルダに置かれていました。
▼DefiPEのメニューにも並ぶ「KrakenJP」のフォルダ

出典:app.defipe.cc
DefiPEのメニューには、さらに別の「GoldRushXAU」という名前のフォルダ(2025年8月21日)の画像もあります。両方のサイトが配るAndroidのアプリの配布データも、同じ版(8.8.1)で同じ2026年6月7日に作られていました。
▼同じ日に作られたHercleEXとDefiPEのアプリ

出典:app.hercleeth.com/app.defipe.cc
HercleEXとDefiPEは、同じ運営元で名前だけを替えて動いているとみられます。HercleEXという名前が消えても、同じ仕組みのサイトが別の名前で勧誘に使われるおそれがあります。
ロゴは機関向けの正規のHercleと同じ形の記号
HercleEXのロゴの記号は、イタリアとスイスで事業を行う正規のHercleのロゴの記号と同じ形で、色だけが緑に変わっています。ただし、HercleEXの画面やデータには、正規のHercleの社名も、イタリアの当局の名前も出てきません。
▼正規のHercle(左)とHercleEX(右)のロゴの記号

出典:hercle.com/app.hercleeth.com
正規のHercleは、公式サイトのよくある質問「Who can use Hercle?」(Hercleを使えるのは誰か)に次のように答えています。
Hercle serves a wide range of institutional clients, including banks, brokers, PSPs, and MTOs, requiring large-scale transaction capabilities.(後略)
銀行やブローカー、決済の事業者など、大きな額の取引を扱う機関が利用者だという説明です。個人に30秒のオプション取引を勧めるサービスとは、利用者も中身もまったく違います。
▼機関投資家向けとする正規のHercleのよくある質問

出典:hercle.com
偽のサイトやアプリの手口については、日本暗号資産等取引業協会の注意喚起にも次の項目があります。
本物そっくりのアプリ名やロゴ
正規の取引所や金融機関の名前・ロゴを模倣したアプリを配布し、インストールさせて情報を盗みます。
▼偽のアプリ名やロゴに注意を促す日本暗号資産等取引業協会

出典:日本暗号資産等取引業協会
利用規約の本文は10月14日に空にされた
スマートフォン版の利用規約とプライバシーポリシーのデータも、作成日時は会社紹介と同じ2023年5月10日です。その本文は、2026年10月14日の夜(日本時間の19時21分ごろ)に、すべての言語で空にされていました。
▼10月14日に本文を空にされた利用規約のデータ

出典:app.hercleeth.com
画像の「18:21:43」は、日本時間より1時間遅い時間帯の表示です。今の規約の画面には、10月19日に入れ替えられたプログラムの英語の文が出ています。サイトの説明や規約は運営の都合で書き換えられるので、勧誘を受けている最中の画面は規約も含めて保存しておいてください。
【参考】
・HercleEX-私たちについて(https://app.hercleeth.com/ja-jp/user/about)
・HercleEX-会社紹介のデータ(https://app.hercleeth.com/work/api/data/static/display?type=about_us)
・HercleEX-メニューのデータ(https://app.hercleeth.com/work/api/front/menu/home)
・HercleEX-アプリの配布データ(https://app.hercleeth.com/work/api/data/system/application?bizType=1)
・HercleEX-利用規約のデータ(https://app.hercleeth.com/work/api/data/static/display?type=user_protocol)
・DefiPE-メニューのデータ(https://app.defipe.cc/work/api/front/menu/home)
・DefiPE-アプリの配布データ(https://app.defipe.cc/work/api/data/system/application?bizType=1)
・Kraken-日本における暗号資産交換業の廃止のお知らせ(https://blog.kraken.com/kraken-japan/日本における暗号資産交換業の廃止のお知らせ)
・Hercle(https://hercle.com/)
・日本暗号資産等取引業協会-暗号資産に関する詐欺に遭わないために
HercleEXに振り込む前と後で確かめたいこと

ここまでの章で見たHercleEXの特徴は、登録、取引、振込と、お金を出すまでのどの段階でも手元で確かめられます。振り込んだ後にも、取り戻すために早急に対応できることがあります。Instagramなどで知り合った相手から取引サイトを勧められたときに、時点ごとに確かめたいことを6つ挙げます。
- 登録の前:招待コードを求められないか
- HercleEXの登録の画面には「招待コード」の欄があり、勧誘した相手から教わらないと使い始めにくい作りです。相手を通してしか入れないサイトは、外から評判を確かめる手段も限られます。
- 取引の前:「AI分析」を続けて押してみる
- ロボットの「AI分析」を短い間に何度か押し、答えが「コール」と「プット」の間で入れ替わらないかを見ます。入れ替わるなら、その予想は相場を見た分析ではありません。
- 取引の前:期間ごとの掛け金の下限を見る
- オプションの期間を長くするほど、掛け金の下限が跳ね上がっていないかを確かめます。HercleEXでは360秒を選ぶと最低100万ドルで、勧められるままに期間を延ばすと1回に出す額が大きくなります。
- 振込の前:運営する会社の名前と登録を確かめる
- 「私たちについて」に、会社の名前・所在地・登録番号が書かれているかを見ます。会社の名前を金融庁の「金融事業者一括検索」に入れると、登録を受けた業者として載っているかが分かります。
- 振込の前:振込先の名義を見る
- 振込先の口座の名義が、取引サイトを運営する会社のものかを確かめます。示された口座が個人の名前だったり、前回と違う口座だったりしたら、その振込は見送ってください。
- 振り込んだ後:記録を残し、銀行と警察に知らせる
- 振込の控え、取引の画面、本人確認で送った書類の写真、相手とのやり取りを保存します。そのうえで、振込先の銀行と警察に、詐欺に使われた口座の可能性があると早めに伝えてください。
1つでも当てはまるなら、相手の言葉を信じて先に進む前に立ち止まることが大切です。とくに、すでに振り込んでしまった場合は、専門家に相談して取れる手続きを早めに確かめてください。
【参考】
・HercleEX-登録の画面(https://app.hercleeth.com/ja-jp/user/register)
・金融庁-金融事業者一括検索
HercleEXの口コミは招待制と「hercle」の語で見えにくい

2026年10月22日の時点で、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねるを「HercleEX」「hercleeth」の名前で探しましたが、利用した人の口コミや被害の投稿は見つかりませんでした。
見つからない理由として、この事案には3つの事情があります。名前が検索で別の話題に埋もれること、招待コードがないと入れない作りであること、そして名前で出てくるページの多くが出金や返金の手伝いをうたう宣伝であることです。
名前で検索するとラテン語の「hercle」と英語の宣伝が出る
「hercle」は、ギリシャ神話のヘラクレスに由来するラテン語の言葉です。そのため、XやYahoo!知恵袋を「hercle」で探すと、出てくるのはラテン語の訳や語源の話です。「HercleEX」で引くと知恵袋に一致する質問はなく、ウェブ検索では後で触れる英語の宣伝が目立ちます。
Instagramで知り合った相手から投資に誘われたという質問自体は、知恵袋にいくつも並んでいます。ただし、そこで名乗られている名前はどれも別のもので、HercleEXやXAUTの名前は出てきません。名前が違えば、同じ手口の体験談があっても検索ではつながりにくくなります。
招待コードがないと登録できず勧誘の外から見えない
HercleEXの登録の画面には「招待コード」の欄があり、ログインなしで読める設定のデータでも、招待コードを使う設定になっています。誰でも自由に登録して試せるサイトではなく、勧誘した相手から教わったコードで入る作りです。
▼登録の画面に置かれた推薦者の招待コードの欄

出典:app.hercleeth.com
HercleEXを知ったきっかけは、Instagramで出会った相手との個人的なやり取りでした。グループで大勢が誘われる形と違い、同じ相手に誘われた人どうしが知り合う機会は、ほとんどありません。前の章で見たとおり、同じ仕組みが別の名前でも動いていれば、体験談はさらに名前ごとに散らばります。
英語の「出金を手伝う」動画とサイトは返金の宣伝
名前で検索して出てくる数少ないページの多くは、被害を受けた人に向けた宣伝です。10月19日には、YouTubeに「HERCLEEX SCAM – Report Here For Withdrawal Support !」という英語の動画が投稿され、説明文で連絡を促しています。
10月14日には、英語のレビューを名乗るサイトに、氏名や被害額を入れて相談を申し込むフォームが置かれました。日本語でも、10月22日に、出金できない場合の返金に向けてLINEでの無料相談に誘う調査会社の記事が出ています。
正規のHercleも、公式サイトで次のように注意を呼びかけています。
Look out for recovery scams: If you are scammed, scammers may pretend they can recover lost funds or digital assets if you pay them upfront.
被害に遭った人に、先にお金を払えば取り戻せると持ちかける詐欺への注意です。取り戻すための費用を先に求める相手には、お金を払わないでください。
【参考】
・HercleEX-登録の画面(https://app.hercleeth.com/ja-jp/user/register)
・HercleEX-システムの設定のデータ(https://app.hercleeth.com/work/api/data/system/settings)
・Hercle-Scam prevention(https://hercle.com/scam-prevention/)
HercleEXの振込先が凍結された後にお金が戻るまでと相談先

今回の相談では、振込先の口座がすでに凍結され、警察から資金が残っているとの連絡を受けています。口座の凍結は、送ったお金を取り戻す手続きの入口にあたります。ここから先は、申請の手続きと期限を知っているかどうかで動き方が変わってきます。
この章では、凍結された口座のお金がどう戻るのか、戻らなかった分はどうなるのか、本人に代わって家族が動けるのか、送った運転免許証の写真をどうするのかの4つの問いに順に答えます。
凍結された口座のお金は公告と申請を経て戻ってくる
詐欺に使われた口座が凍結されると、振り込め詐欺救済法の手続きが進みます。口座の残高は、預金保険機構のホームページでの公告を経て、申請した被害者に被害回復分配金として支払われます。
公告をいつも見張っている必要はありません。公告の始まりを知る方法は、救済法Q&Aにこう書かれています。
振込先の金融機関に被害を申し出た方には、支払手続時に個別に連絡が行われますので、被害を受けた方は振込先の金融機関にお問い合わせ下さい。
▼金融機関から個別に連絡があるとする救済法Q&AのQ19

出典:金融庁
支払いの公告の期間は30日以上で、申請書は振込先の金融機関に出します。同じQ&Aは、申請期間に間に合わなければ、この法律による分配金は受け取れないとしています。今回の振込先は複数の銀行に分かれているため、口座ごとにそれぞれの銀行へ被害を申し出ておくことが欠かせません。
分配金で戻らなかった分を請求する道は残る
分配金は、口座に残っていたお金の範囲で支払われます。申請した被害者の被害額の合計が残高を上回れば、残高を被害額の割合で分けた額になります。ただし、それで終わりではありません。
被害回復分配金の支払を受けた場合、損害賠償請求権その他の請求権は、支払を受けた額の分だけ消滅します。
▼分配金の分だけ請求権が消えるとする救済法Q&AのQ37

出典:金融庁
消えるのは受け取った額の分だけで、残りを請求する道は残ります。残りを返すよう求める先になるのは、口座の名義人や勧誘してきた相手です。ただ、相手とはInstagramで知り合った間柄で、名義人の住所も分からず、口座は複数の銀行に分かれています。
相手を突き止めて請求することは、個人の力では難しい場面が多いはずです。どの銀行の口座にいくら振り込んだかという記録は、そのまま請求の材料になります。弁護士に依頼すれば、相手を調べるところから請求まで、まとめて任せることができます。
母親に代わって家族が手続きを進められる
今回、相談してきたのは被害に遭った方の子どもです。被害に遭った本人だけで手続きを抱えるのが難しい場合、家族が代わりに進められるかは気になるところです。代理人に頼めるかどうかについては、救済法Q&Aに次の答えがあります。
申請手続を代理人に依頼することは可能です。ただし、その場合には、申請にあたって代理権を証する資料が必要となります。
▼申請を代理人に頼めるとする救済法Q&AのQ21

出典:金融庁
複数の銀行への申請、残りの請求、警察とのやり取りは同じ時期に並行して進みます。家族だけで抱えきれないときは、弁護士を代理人にして、まとめて進めてもらう方法もあります。
運転免許証の写真を送っていたら警察署と信用情報機関に相談する
HercleEXの本人確認の画面は、運転免許証の写真を求める作りでした。身分証の扱いについては、正規のHercleも公式サイトに注意を載せています。
Protect personal information: Don’t share personal details or identity documents with people you only know online.
▼身分証を渡さないよう呼びかける正規のHercle

出典:hercle.com
ネットだけで知り合った相手に、個人の情報や身分証を渡さないようにという注意です。HercleEXの登録で写真を送っていた場合は、悪用に備えて、早めに相談先へ知らせておくことが大切です。
写真を送っていた場合の相談先は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の注意喚起が参考になります。宅配便の業者を装う偽サイトの手口についての資料ですが、運転免許証は住まいの地域の警察署へ、さらに信用情報機関への「本人申告」も相談できると案内しています。
▼運転免許証の写真を送ったときの相談先を示すIPA

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
口座が凍結された後も、申請の期限、戻らなかった分の請求、送った書類への備えが同時に進みます。振込の明細と相手とのやり取りを手元にそろえたうえで専門家に相談し、何から手を付けるかを一緒に整理してください。
【参考】
・金融庁-振り込め詐欺救済法 Q&A
・預金保険機構-振り込め詐欺救済法に基づく公告
・e-Gov法令検索-犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律
・Hercle-Scam prevention(https://hercle.com/scam-prevention/)
・独立行政法人情報処理推進機構-安易に運転免許証など本人確認書類の写真を送信しないで
