今回の相談は、副業の勧誘を受けてLINEに登録し、案内された作業を続けたのが始まりです。金融庁と警察庁も、第三者の指示で暗号資産を買って送らせる手口への対策を交換業者の業界団体に求めています。
相談者は約1か月後に「バリュー制度」への参加を勧められ、自己資金を暗号資産で送りました。使っていた取引サイトは「NEXTLEVEL(axis-core.bet)」です。11倍の利益が出たと示されたあと、出金には利益の5%が必要と言われ、振り込むと連絡が途絶えました。
調べると、誰でも開けるNEXTLEVELのデモ画面は、上がると予想しても下がると予想しても「WIN」になりました。プログラムには勝ち負けを判定する処理がなく、倍率は乱数で入金した利用者ほど大きくなる作りです。同じドメインでは、別の名前のサイトも2つ動いていました。
本記事では、NEXTLEVELの画面やプログラムを金融庁などの資料と突き合わせた結果を弁護士が解説します。副業のはずの話で自分のお金を求められたとき、何を確かめればよいかも紹介します。
NEXTLEVELに関するトラブルの概要

相談者は副業の勧誘からLINEに登録し、作業を続けたあとで「バリュー制度」への参加を勧められました。使ったのは、暗号資産の値動きの上下を当てる「NEXTLEVEL」という取引サイト(axis-core.bet)です。11倍の利益が示された後、出金に利益の5%を求められ、支払うと連絡が途絶えました。
ここでは、暗号資産を送らせる手口への金融庁と警察庁の要請、副業から投資へ誘う手口の注意喚起、サイトの運営者の表示、上下を当てる取引の扱いを順に確かめていきます。
金融庁と警察庁は第三者の指示で暗号資産を買って送らせる手口への対策を求めている
金融庁は令和8年8月6日、警察庁と連名で、暗号資産交換業者の団体である日本暗号資産等取引業協会に詐欺の被害を防ぐ対策を改めて要請しました。添付の資料には、要請の背景と交換業者が顧客に呼びかける内容を次のように書いています。
「SNS型投資・ロマンス詐欺」の被害が急増しており、特に、暗号資産が詐欺被害者による交付に用いられる事例は年々増加傾向である状況を受け、暗号資産を用いて行われる金融犯罪への対策が急務
(中略)
②詐欺被害等防止のための確認及び注意喚起
顧客に対し、第三者からの指示による口座開設や暗号資産の購入・出庫は詐欺のおそれが高いことを注意喚起
▼第三者の指示による暗号資産の購入に注意を促す当局の要請

出典:金融庁
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、相談者もLINEでやり取りした相手の案内に沿って、日本円を暗号資産に替え、相手が指定した送付先へ送っています。
自分の名義の口座で買った暗号資産でも、送る先を他人が決めているなら、相手にお金を渡すのと変わりません。口座の開設や暗号資産の購入を他人に指示された時点で手を止めてください。
副業の作業で稼げる体験をさせてから自己資金を出させる手口が注意されている
LINEのオープンチャットの運営は、詐欺が疑われる投稿の特徴を一覧にしています(2026年6月25日更新)。その一つが、副業の作業から投資へ誘い込む手口です。
副業として暗号資産や外貨取引の簡単なタスクを実施させ、利益が出る様子を体験させてから、自己資金を投資させようとする(ハイロー詐欺)
▼副業のタスクから投資へ誘う手口を挙げるLINEの注意喚起

出典:LINEオープンチャット
国内の暗号資産交換業者のビットバンクも、2026年3月18日のお知らせで副業の広告から始まる事例を順に紹介しています。
1.SNSや動画広告で「在宅でできる副業」等の広告を見て興味を持ち、問い合わせを行う
2.LINE等のメッセージングアプリへ誘導され、暗号資産取引所の口座開設を指示される
(中略)
4.その後、取引や送金を行うと、外部サイト上や案内画面で、数百万円〜数千万円の利益が表示される
5.「期間限定でより高額の利益が得られる」として出金を促される
6.出金申請をすると「税金」「保証金」「認証費用」等が必要と言われる
(後略)
▼副業の広告から始まる送金トラブルの事例

出典:ビットバンク
副業として始まり、外部のサイトに大きな利益が出て、出金の段階で費用を求められる流れは、相談者の経験と重なります。「副業」の話が自分のお金を出す話に変わったら、その時点で対応を止めてください。
NEXTLEVELは運営会社の名前も許認可も示していない
axis-core.betのトップページに出るのは、「NEXTLEVEL」のロゴと「CRYPTO TRADING」の文字だけです。会社名、所在地、利用規約、問い合わせ先はどのページにもありません。
▼ロゴと「CRYPTO TRADING」だけが表示されるトップページ

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
プログラムを調べたところ、「利用規約」「会社」「所在地」「Terms」「Privacy」の語も1つもありませんでした。お金を預ける相手がどこの誰なのか、利用者には確かめようがありません。NEXTLEVELが金融商品取引業の登録を受けた事業者によって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
値動きの上下を当てる取引は日本では登録の要る店頭デリバティブにあたる
NEXTLEVELでは、ビットコインなど6種類の暗号資産のイーサリアムに対する値動きを選び、「LONG」(上がる)か「SHORT」(下がる)に金額を「BET」します。
当たれば賭けた額に倍率を掛けた金額が払い出されるという表示です。こうした二者択一の取引について、金融庁は次のように説明しています。
バイナリーオプションは、金融商品取引法上の店頭デリバティブ取引に該当します。日本に居住する投資者に対してバイナリーオプション取引を業として行うときは、金融商品取引業の登録が必要です。
(後略)
▼バイナリーオプションには登録が必要と示す金融庁の注意喚起

出典:金融庁
このページの例は為替相場や株価指数ですが、金融庁は暗号資産を原資産とするデリバティブ取引も金融商品取引法の対象に加え、店頭で業として行うには登録が必要だと説明しています。NEXTLEVELの取引は、日本で登録を受けた業者でなければ扱えない取引にあたる可能性があります。
【参考】
・金融庁-暗号資産を用いた詐欺被害等防止に向けた対策の一層の強化について
・LINEオープンチャット-大切な資産を守るために知っておくべき様々な詐欺の手口とは(https://openchat-jp.line.me/other/crypto_fraud_announce)
・ビットバンク-少額の報酬受取後の送金トラブルにご注意ください(https://bitbank.cc/blog/articles/733934628/)
・NEXTLEVEL(https://axis-core.bet/)
・金融庁-バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!
NEXTLEVELへ誘導され被害につながるまでの経緯

ここでは、副業の勧誘とLINEでの作業、「バリュー制度」への参加と暗号資産の送付、11倍の利益の提示、出金のための支払いと連絡の途絶までを相談の内容に沿って順にたどります。
副業の勧誘を受けてLINEに登録し約1か月にわたって作業を続ける
相談の始まりは、副業の勧誘でした。勧誘を受けた相談者はLINEに登録し、そこから仕事を始めています。最初の接点は、投資の勧誘ではなく副業の勧誘だったことになります。
仕事はおよそ1か月にわたって続きました。前の章で見たビットバンクの事例も、指示どおりに作業をこなして少額の暗号資産を受け取る段階から始まり、利益の表示と出金の誘いはその後に続きます。お金を出す話が出る前に、副業としてのやり取りが1か月続いていたことになります。
バリュー制度への参加を勧められ自己資金を暗号資産で送る
仕事を始めて約1か月がたったころ、相談者はLINE上で「バリュー制度」への参加を勧められました。自己資金を出して参加する制度として案内され、相談者は手元の資金で参加を決めています。
資金は銀行口座から国内の暗号資産交換業者の口座に移し、日本円をイーサリアムという暗号資産に替えたうえで、相手が指定した送付先へ送りました。2026年8月のことです。制度に参加するための資金は、暗号資産の送付という形で相手に渡っています。
送付の画面に入れる送付先や目的までLINEで指定される
送るときには、交換業者の画面への入力の仕方までLINEで指示されていました。ネットワークは「イーサリアム」、送付先は「プライベートウォレット」、目的は「暗号資産の投資・運用」、その詳細は「暗号資産の売買」と入力するよう案内されています。
交換業者が送付のたびに受取人や目的を確かめるのは、トラベルルールと呼ばれる決まりによるものです。日本暗号資産等取引業協会は、その目的を次のように説明しています。
テロリストその他の犯罪者が自由に電子的な資金移転システムを利用することを防ぎ、不正利用があった場合にその追跡を可能とすることを目的とするものです。
相談者が入力した内容は、自分の資金を自分のウォレットへ移し、暗号資産の売買に使うという申告です。誰に何のために送るのかを確かめるための項目に、相手があらかじめ答えを用意していたことになります。
参加の後に自己資金の11倍の利益が出たと示される
制度に参加したあと、相談者は「11倍の利益が出た」と示されました。相談者が使っていたサイトとして記録されているのは、NEXTLEVELを名乗る取引サイト(axis-core.bet)です。
元の資金を大きく上回る数字ですが、示された利益はそれだけでは引き出せるお金があることを意味しません。この数字がどのような作りから出てきうるかは、サイトのプログラムを調べた結果とあわせて後の章で取り上げます。
出金には利益の5%が必要と言われ振り込んだ後に連絡が途絶える
利益を自分の口座へ移そうとすると、そのためには利益の5%にあたる金額が必要だと言われました。相談者は求められた金額を、相手が指定した口座へ振り込んでいます。参加のときは暗号資産、出金の費用は銀行振込とお金の渡し方も場面ごとに変わっていました。別の例として、表示利益の23%を先払いするよう求められた出金トラブルも確認できます。
振込のあと「手続きをする」と言われたまま、相手とは連絡が取れなくなりました。副業の作業から始まり、制度への参加で自己資金を暗号資産で送らせ、示した利益を理由に別の支払いを求めてお金を受け取ると連絡を絶つ流れです。
相談者の被害は、名目を変えながら支払いを重ねさせる流れの中で生じています。
【参考】
・日本暗号資産等取引業協会-【暗号資産の送付を会員にご依頼される利用者の皆様へ】
・NEXTLEVEL(https://axis-core.bet/)
NEXTLEVELの関連サイトの情報を調査した結果

axis-core.betのドメインの登録情報(RDAP)、証明書、サイトのプログラムを調べると、同じドメインの下で3つの名前のサイトが動いていることが分かりました。いずれも2026年10月9日の時点で開くことができます。
| アドレス | タブとロゴに出る名前 | 取得日時・状況 |
|---|---|---|
| axis-core.bet | NEXTLEVEL | 2026年5月4日 22:34(日本時間)に取得 |
| impactinvestment.axis-core.bet | IMPACT INVESTMENT | axis-core.betの前に名前を付けたアドレス(サブドメイン)。同じプログラムで動く |
| neoexchange.axis-core.bet | NEO EXCHANGE | 同上 |
axis-core.betは被害の約3か月前に取得されている
axis-core.betの登録情報をRDAPで引くと、2026年5月4日13時34分22秒(協定世界時)に登録されたことが分かります。日本時間に直すと同じ日の22時34分で、登録を扱った事業者はTucows Domains Inc.、有効期限は1年後の2027年5月4日です。
▼2026年5月4日の取得を示すaxis-core.betの登録情報

出典:rdap.identitydigital.services
axis-core.betが押さえられたのは、相談者がイーサリアムを送った2026年8月より3か月ほど前のことです。登録情報には、登録者の名前や連絡先は載っていません。
通信を暗号化する証明書も取得と同じ日に発行されており、アドレスを取ってすぐにサイトを公開できる状態が整えられていました。取得から3か月ほどのアドレスには、長く続いてきた運用の実績はありません。
同じドメインの下で別の名前を名乗る2つのサイトが動いている
axis-core.betの前に名前を付けたアドレスが2つあり、開くとどちらもNEXTLEVELとは別の名前のサイトが表示されます。名前が替わるのは、タブの表示とロゴの部分です。
impactinvestment.axis-core.betは「IMPACT INVESTMENT」、neoexchange.axis-core.betは「NEO EXCHANGE」と名乗っています。2026年10月9日の時点でどちらも開くことができます。
▼IMPACT INVESTMENTとNEO EXCHANGEを名乗る2つのサイト

出典:IMPACT INVESTMENT(impactinvestment.axis-core.bet)、NEO EXCHANGE(neoexchange.axis-core.bet)
名前は違っても、ロゴの下の「CRYPTO TRADING」の文字、読み込むプログラムのファイル、デモの取引画面は3つとも同じです。プログラムを調べたところ、2つのアドレスと、それぞれに表示するロゴの画像との対応が、NEXTLEVELのプログラムの中に書き込まれていました。
▼2つのアドレスとロゴの対応が書かれたプログラム

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
ほかの名前を付けたアドレスは存在しないため、この2つは個別に用意された名前とみられます。ひとつのプログラムが、名前とロゴだけを替えて3つのサイトとして使われていることになります。
3つのサイトの名前は金融庁の一覧にも検索にも見当たらない
金融庁の金融事業者一括検索に「NEXTLEVEL」と入れても、結果の一覧は空のままです。「ネクストレベル」「IMPACT INVESTMENT」「NEO EXCHANGE」で調べても結果は同じでした。
▼「NEXTLEVEL」で該当がない金融庁の一括検索の結果

出典:金融庁
金融庁が警告書を出した無登録業者の一覧や、暗号資産の無登録業者の一覧にも3つの名前は見当たりません。名前を替えるだけで別のサイトとして動かせる作りでは、一覧に載る前に名前が変わることも考えられます。ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。
この章で取り上げた3つのアドレスには、次の点も確認できました。
- Googleのセーフブラウジングで3つのアドレスを調べても、危険なサイトとの判定はなく、ブラウザの警告は出ない(2026年10月9日時点)
- ウェブページの保存サービスInternet Archiveとサイトの記録を集めるurlscan.ioに、3つのアドレスの画面の記録はない
- プログラムを調べたところ、取引の記録と残高は画面とは別の場所にあるクラウドのデータベースに置かれている
勧められた取引サイトは、名前を金融庁の一括検索で調べ、アドレスをRDAPで引いて取得日を見てください。登録が見つからない名前のサイトに、自分のお金や暗号資産を送る理由はありません。
【参考】
・rdap.identitydigital.services-axis-core.bet(https://rdap.identitydigital.services/rdap/domain/axis-core.bet)
・IMPACT INVESTMENT(https://impactinvestment.axis-core.bet/)
・NEO EXCHANGE(https://neoexchange.axis-core.bet/)
・NEXTLEVEL-プログラム(https://axis-core.bet/assets/index-BnbEoDAC.js)
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
NEXTLEVELに関する不審点

ここではNEXTLEVELに関する不審点として、2026年10月に確認したNEXTLEVELのプログラムとデモ画面をもとに、デモでの勝敗、結果を確かめる処理、倍率の決め方、管理画面の機能、出金の手続き、取引できる時間の6点を取り上げます。
6つに共通するのは、画面に出る勝ちや利益が、相場ではなくプログラムと運営側の設定で決まる作りになっていることです。管理画面を除けば、どれもデモ画面とプログラムのファイルを開いて確かめられます。
誰でも開けるデモ画面ではLONGとSHORTのどちらを選んでも勝ちになる
NEXTLEVELには、ログインせずに開けるデモ画面(axis-core.bet/demo)があります。「DEMO・残高¥100,000スタート/いつでもBET・結果確認できます」と表示され、2万円ずつ「BET」を試せる作りです。
このデモで、LONG、SHORT、SHORT、LONGの順に4回試したところ、結果は4回とも「WIN」でした。上がると予想しても下がると予想しても勝ちになり、残高は10万円から50万4,057円まで増えています。
▼LONGでもSHORTでも「WIN」になるデモの結果画面

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
結果の画面に出るのは、獲得額と倍率、通貨、方向、BETしたときのレートだけです。結果を判定した時点のレートはどこにも表示されず、何と比べて勝ったのかを利用者は画面から確かめられません。デモの結果はサーバーに送られず、試した人のブラウザの中だけで計算されます。
結果を確かめる処理は相場を比べず常に勝ちを記録する
デモではない本来の画面で「結果を確認する」を押したときの処理も、プログラムを調べたところ、取引の結果を常に「won」(勝ち)として記録する作りでした。BETしたときのレートと、結果を確かめるときのレートを比べる処理は書かれていません。
▼結果を常に「won」として記録するプログラム

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
負けを表す「lost」という語は、プログラムの中に1つもありません。取引履歴の画面には「負け」と表示する部品が用意されていますが、記録される状態は「待機中」と「勝ち」だけなので、その部品が使われることはありません。
▼負けを表す「lost」が1件もないプログラムのページ内検索

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
金融庁は、悪質な業者のバイナリーオプションでは「判定時のレートが投資者に不利になるように意図的に調整される」おそれがあると注意しています。NEXTLEVELの場合は、レートを調整するまでもなく、判定そのものが行われていないことになります。
倍率は乱数で入金した利用者には8.5倍から12.5倍が割り当てられる
勝ったときに払い出す倍率も、相場の動きとは関係なく決まります。プログラムを調べたところ、倍率は「Math.random()」という乱数を使って計算され、利用者の区分によって幅が分けられていました。
▼利用者の区分ごとに倍率の幅を決めるプログラム

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
入金前の利用者は3.5倍から8.5倍、入金を済ませた利用者(プログラム上の「production」)は8.5倍から12.5倍です。賭ける額も、入金前は2万円ずつに固定され、入金済みの利用者は残高の全額を1回で賭ける作りでした。
相談者に示された「11倍」は、入金済みの利用者の幅に入る数字です。相談者の画面がこの処理で作られたものかまでは確かめられませんが、入金した後ほど大きな倍率が出るように作られていることは、プログラムから読み取れます。
管理画面のプログラムには利用者の残高を書き換える機能がある
NEXTLEVELには運営側の管理画面(axis-core.bet/admin-login)があり、開くとログインの画面が出ます。管理画面で使う文言は、利用者向けの画面と同じプログラムのファイルに収められており、このファイルそのものを取得して確認しました。
管理画面のプログラムには、「新規ユーザー」「初期残高」「入金前ユーザー」「入金済本番ユーザー」「残高編集」「新しい残高を入力(¥)」といった文言が並んでいます。利用者ごとの残高を運営側が書き換え、取引の記録を削除できる作りです。
▼利用者の残高を書き換える処理が書かれたプログラム

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
入金前の利用者については「入金前ユーザーは1つのみ作成可(共通URL、各ブラウザで独立した残高)」とあり、入金前の段階では全員が同じURLを使い、残高はそれぞれのブラウザの中にだけ置かれます。画面の残高は、相場の結果ではなく運営側が決められる数字です。
バリュー制度も出金の手続きもサイトのどこにも用意されていない
相談者は「バリュー制度」に参加し、出金のために利益の5%を支払っています。ところがプログラムを調べたところ、「バリュー」「制度」「出金」「手数料」「送金」「利益」という語はどこにもなく、英語の「withdraw」(出金)「deposit」(入金)「fee」(手数料)も見つかりませんでした。
▼「withdraw」が1件もないプログラムのページ内検索

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
画面にあるのは残高、BETのボタン、結果、取引履歴だけで、入金や出金を申し込む画面はありません。サイトの中で出金を申し込めない以上、出金のための費用もサイトの手続きとしては存在しないことになります。
利益の5%の支払いは、サイトの外で求められたものです。払えば引き出せるという話の裏付けは、サイトのどこにもありません。サイトの外で求められるお金には、応じる前に専門家に相談することをおすすめします。
取引できるのは平日夜の5分間だけで結果は翌日まで見られない
デモ画面の上部には「OPEN 19:45-19:50」と表示されています。プログラムを調べたところ、本来の画面でBETできるのは、土日を除く日本時間の19時45分から50分までの5分間だけでした。結果は翌日の16時になるまで確かめられません。
▼取引時間「19:45-19:50」が表示されるデモ画面

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
取引できる時間をここまで短く決めておけば、指示を出す側は利用者を同じ時刻に集め、一斉に同じ操作をさせやすくなるとみられます。結果が翌日まで出ないため、その場で相場と見比べることもできません。
プログラムには、URLの末尾に「?test=1」を付けると「取引時間制限解除中・結果は5秒後に確認可」となる開発用の切り替えも書かれていました。取引時間の制限は、相場の都合ではなくプログラムの設定で外せるものです。
【参考】
・NEXTLEVEL-デモ(https://axis-core.bet/demo)
・NEXTLEVEL-プログラム(https://axis-core.bet/assets/index-BnbEoDAC.js)
・金融庁-バイナリーオプション取引にあたってご注意ください!
NEXTLEVELが悪用されやすい理由

NEXTLEVELのようなサイトが被害に使われやすい理由として、副業という入口、勝ち続ける体験、国内の交換業者を経由した暗号資産の送付、名前の差し替えの4つを挙げます。どれも、取引の相手が誰なのかを利用者が確かめないまま進んでしまう仕組みです。
副業の作業として始めると投資をしている意識を持ちにくい
副業の勧誘で最初に求められるのは、指示どおりに画面を操作する作業です。消費者庁が令和7年2月6日に公表した注意喚起では、「タスク副業」の作業として、タスク専用サイトで次の操作が指示されていました。
ホーム→「BTC/USDT」をクリック→「○○s」をクリック→下にスクロールして金額「○○○」を選択→「上昇」をクリック
この事案は副業の参加費用などの名目で送金させたもので、自己資金を運用に出させた本件とは名目が違います。それでも、暗号資産の値動きの上下を選ぶ操作が「作業」として案内されている点は共通しています。
日本暗号資産等取引業協会も、「副業紹介を装った勧誘」が「実際には投資詐欺へとつながるケース」があると注意を促しています。作業として操作を覚えると、金融商品の取引をしているという意識を持たないまま、業者の登録を確かめる機会を逃しやすくなります。
少額の作業で勝ち続けた経験が自己資金を出す決断を後押しする
前の章で見たとおり、NEXTLEVELのプログラムでは、入金前の段階でも勝ちだけが続いて残高が増えていきます。LINEオープンチャットの注意喚起が挙げる「利益が出る様子を体験させてから、自己資金を投資させようとする」手口と同じ順序の作りです。
ビットバンクのお知らせの事例2にも、「「倍率アップ」「今回限り」などと案内され、追加送金を求められる」という流れがあります。期間や枠を区切った「制度」の案内は、勝ち続けた記録があるほど参加を見送ると損をするように思わせやすくなります。
画面の上で勝ち続けた記録は、その画面を作った側がいくらでも用意できるものです。自分のお金を出すかどうかを決める根拠にはなりません。見るべきなのは勝った回数ではなく、運営会社の名前と金融庁の登録の有無です。
国内の交換業者で買った暗号資産を送らせると相手の正体が見えにくい
警察庁が令和8年7月31日に公表した資料は、暗号資産を送らせる手口への対策を説明する中で次のように指摘しています。
被害者が犯人から暗号資産交換業者の利用アカウントの作成を指示され、暗号資産交換業者に本人名義で振込する事案が目立つところ、一層の対策が急務
自分の名義の口座に振り込み、自分で暗号資産を買って送るため、送る瞬間まで自分の取引をしているように見えます。送った先は個人のウォレットで、受取人の名前は交換業者の画面にも出てきません。
本件で送付先の種別や送付の目的まで入力の仕方を指定されていたのは、交換業者の確認を通り抜けさせるためだったとみられます。国内の交換業者の口座を使っていても、送る先を決めているのが他人なら、相手の正体はつかめないままです。
名前とロゴを差し替えるだけで別のサイトとして使い回せる
NEXTLEVELの管理画面のプログラムには、「サイト作成」「ドメイン(hostname)」「サイト名(ロゴ表記)」「カラーテーマ」といった設定が並んでいます。実際に、同じドメインの下でIMPACT INVESTMENTとNEO EXCHANGEを名乗るサイトが動いていました。
1つの名前が知られて口コミが集まっても、運営側は別の名前とロゴで同じ画面を出し続けられます。利用者が勧められた名前で検索しても、別の名前で書かれた被害の情報にはたどり着きにくくなります。
名前で見分けられないときは、運営者の登録と取引の中身で判断するほかありません。送る前に少しでも迷いがあれば、家族や信頼できる第三者に事情を話して意見を聞いてください。
【参考】
・消費者庁-「タスク副業」で報酬が支払われるとうたい、実際には高額を送金させる事業者に関する注意喚起
・日本暗号資産等取引業協会-暗号資産に関する詐欺に遭わないために
・LINEオープンチャット-大切な資産を守るために知っておくべき様々な詐欺の手口とは(https://openchat-jp.line.me/other/crypto_fraud_announce)
・ビットバンク-少額の報酬受取後の送金トラブルにご注意ください(https://bitbank.cc/blog/articles/733934628/)
・警察庁-令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)
NEXTLEVELの不審点を見抜く方法

相談者がお金を出すまでの間には、「副業」「制度」「勝った」「11倍」「出金には利益の5%」「送付先はこう入力して」といった、相手の言葉の節目がいくつもありました。どの言葉の場面でも、立ち止まって確かめられることがあります。
ここでは、相手が使う言葉ごとに、その場で確かめるポイントを6つ挙げます。
- 「副業」「仕事」と言われたとき:交換業者の口座を開かせる話かを見る
- 作業のために暗号資産交換業者の口座を開かせたり、暗号資産を買わせたりする副業は、その時点で疑ってください。金融庁と警察庁は、第三者の指示による口座開設や暗号資産の購入・出庫は詐欺のおそれが高いと、交換業者に注意喚起を求めています。
- 「制度」「参加」と言われたとき:運営会社と登録を金融庁で調べる
- 自己資金を出す話になったら、サイトに運営会社の名前があるかを見て、その名前とサイトの名前を金融庁の一括検索で引いてください。NEXTLEVELは会社名を示さず、3つの名前のどれも一括検索で見つかりませんでした。
- 「勝った」と言われたとき:負けた取引があるか、判定の時点の相場が出ているかを見る
- 取引の履歴が勝ちばかりで、結果の画面に判定した時点のレートが表示されないなら、相場と比べて決まった結果かどうかを確かめられません。NEXTLEVELのデモは、上下どちらを選んでも勝ちになりました。
- 「〇倍」と言われたとき:倍率がどう決まるかの説明があるかを見る
- 値動きの大きさと倍率の関係がどこにも説明されていなければ、その数字を利益と考えないでください。NEXTLEVELのプログラムでは、倍率は乱数で決まり、入金した利用者ほど大きな幅になる作りでした。
- 「出金には〇%」と言われたとき:サイトの中に出金の画面があるかを見る
- 出金の申し込みの画面や手数料の表示がサイトになく、支払いだけをサイトの外で求められるなら、払っても引き出せる裏付けはありません。NEXTLEVELには、入金や出金を申し込む画面そのものがありませんでした。
- 「送付先や目的はこう入力して」と言われたとき:送るのをやめる
- 交換業者の送付の画面で、送付先の種別や送付の目的の答えを他人から指示されたら送らないでください。その項目は、誰に何のために送るのかを交換業者が確かめるためのものです。送ってしまった後なら、送付の日時と送付先のアドレスの記録を残し、早めに専門家に相談してください。
相手の言葉はどれも、お金を出させる方向へ話を一歩ずつ進めるものでした。6つのうち1つでも当てはまれば、次の支払いや送付の前に、家族や専門家など信頼できる第三者に話してください。
【参考】
・金融庁-暗号資産を用いた詐欺被害等防止に向けた対策の一層の強化について
・NEXTLEVEL-デモ(https://axis-core.bet/demo)
・日本暗号資産等取引業協会-【暗号資産の送付を会員にご依頼される利用者の皆様へ】
NEXTLEVELに関する口コミや被害事例

「NEXTLEVEL」「axis-core.bet」に加えて、別名のサイトの名前や「バリュー制度」でも、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、国内の掲示板の書き込みを探しました。
axis-core.betのアドレスに触れた書き込みは見当たらず、確認できたのは同じ作りの取引画面を写した投稿と、副業から暗号資産の取引へ進む似た流れを伝える投稿や相談です。
IMPACT INVESTMENTの画面にバリュー制度のハッシュタグを付けた投稿
2026年9月20日の投稿は、副業をやめるよう呼びかけ、その下にハッシュタグを並べています。
この副業やってる人すぐやめた方がいいよ!!
めっちゃ詐欺被害報告受けてます!!
#手当支援
#バリュー制度
#スポット賞与
#エデンブロック
#mpactinvestment
#[人名]CEO
▼「#バリュー制度」と取引画面を載せた投稿(2026年9月20日)

出典:X
添付の画像には、「IMPACT INVESTMENT」のロゴ、「CLOSED 19:45-19:50」の表示、6組の暗号資産の選択肢、「BET金額 ¥20,000」が写っています。前の章までで見た、axis-core.betの別名のサイトと同じ作りの画面です。
賭け金が2万円の画面は、プログラム上は入金前の利用者のものです。投稿には出金の請求や送金のことは書かれておらず、本件と同一の案件であることまでは確認できませんが、同じ画面と「バリュー制度」の名前が1つの投稿に並んでいます。
Next Levelで19時45分から作業をしたという被害の投稿
2026年9月6日の投稿は、勧誘されてからの流れを矢印でつないで書いています。
Threadsより→インスタグラム→パートナー[人名](他数名違う名前のパートナー存在)→仕事の説明オープンチャットに案内される→19:45から[人名]プレジデントから指示→Next Levelで指示どうりの作業(ハイロー)→オープンチャットはほぼサクラ→パートナー、サクラがスポット賞与の話をあおる
▼Next Levelでの作業を矢印で伝える投稿(2026年9月6日)

出典:X
「Next Level」の名前、19時45分からの指示、上下を当てる「ハイロー」の作業、作業の後に持ちかけられる「スポット賞与」は、NEXTLEVELの作りや相談者の経緯と重なります。
一方で、入口はThreadsとInstagramで、制度の名前も「バリュー制度」とは違い、サイトのアドレスは書かれていません。同じサイトの話かどうかは、この投稿だけでは決められません。
同じ投稿者は9月22日に、「スポット賞与が終わりオプチャなくなっている。」とも書いています。誘いの期間が終わると、勧誘に使われたグループごと消えることがうかがえる投稿です。
副業を探していて少額のプランから始めたという知恵袋の相談
Yahoo!知恵袋には、2026年8月30日に、副業から始まった被害について助けを求める質問が投稿されています。
(前略)
今月20日あたりから、副業を探していたのですがそこから行きついた仕事で詐欺にあっています。3万スタートのプランからバカでかい金額まであり、相手は高いプランにすることで得られる利益が上がっていきますのでと高いプランで斡旋。
(後略)
▼副業から高いプランを勧められたという相談(2026年8月30日)

出典:Yahoo!知恵袋
質問者はその後、消費者金融から借り入れ、遠隔操作のアプリを通じた相手の指示で暗号資産のアプリを入れ、入出金をしていたと書いています。副業から高額の「プラン」へ誘われ、暗号資産を扱うアプリを使わされた点は相談者の経緯と重なります。
一方で、NEXTLEVELやBET、19時45分といった言葉は出てこず、借り入れと遠隔操作が加わる点が違います。本件と同一の案件であることまでは確認できません。それでも、副業の入口から暗号資産での支払いへ進む流れは別の人の相談にも表れています。
【参考】
・Xの投稿(https://x.com/hitochan00000/status/2101340615929901308)
・Xの投稿(https://x.com/yamiabakikill/status/2096429157689266182)
・Xの投稿(https://x.com/yamiabakikill/status/2102210621572075736)
・Yahoo!知恵袋-2026年8月30日の質問(副業から高いプランを勧められ詐欺にあっているという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13330961598)
NEXTLEVELに関する口コミが少ない理由

まず、NEXTLEVELのページには、検索エンジンに載せないための設定があります。ソースにある「noindex, nofollow, noarchive, nosnippet, noimageindex」は、検索結果に出さない、ページを保存させない、抜粋や画像を表示させないという指定です。
▼検索に載せない設定が書かれたNEXTLEVELのページのソース

出典:NEXTLEVEL(axis-core.bet)
Internet Archiveやurlscan.ioを調べても、3つのアドレスの画面は1件も記録されていませんでした。名前やアドレスで探しても手がかりになるページそのものが出てこないため、口コミの起点になる情報が積み重なりにくい状態です。
次に、同じ画面に名前が3つあります。NEXTLEVEL、IMPACT INVESTMENT、NEO EXCHANGEのほか、「バリュー制度」「スポット賞与」のような制度の名前でも語られるため、同じ仕組みの話が別々の名前に散らばり、1つのサイトの口コミとしてまとまりません。
さらに、被害が副業として始まることも影響しているとみられます。本人は副業の作業として始めているため、被害を書くときも副業の話として書き、取引サイトの名前を出さないことがあります。検索で目立つのは、副業の検証や返金をうたってLINEへ誘う宣伝で、そこから二次被害につながるおそれもあります。
書き込みが見当たらないのは、見つけにくい作りと名前の多さと、副業という入口が重なったためとみられます。NEXTLEVELを判断するときは、口コミの件数ではなく、運営会社の名前と金融庁の登録の有無を見てください。
制度への参加や出金のための費用を持ちかけられたら、お金を送る前に専門家に相談してください。
【参考】
・NEXTLEVEL(https://axis-core.bet/)

