暗号資産を買うための代金だと説明され、見知らぬ個人の口座へ日本円を振り込む。SNSで始まった投資の話が、こうした送金に行き着く例は後を絶ちません。SNS型投資詐欺の被害額は、警察庁のまとめで令和8年(2026年)上半期だけで797.9億円に達しました。
本記事で取り上げる「jzvfh.com」では、サイト内の窓口が振込のたびに別の名義の口座を示し、「20分以内に」「備考欄は空欄で」と急がせていました。サイトは相談の後、実在の業者名「EC Markets」へ名前を切り替えました。同名のEC Markets Limitedは金融庁の警告の対象です。
調べると、利用規約の名義は「NUFI」で、大手取引所バイナンスの規約を置き換えた文面でした。プログラムには、振込の備考に暗号資産の名前を書かないよう求める文言も残っています。ドメインの記録や当局の公表資料で確かめた事実をもとに、振込を求められたときにどこを見ればよいのかを弁護士が解説します。
jzvfh.comに関するトラブルの概要

今回の相談は、SNSで投資の話を持ちかけられ、「jzvfh.com」という取引サイトを案内されたところから始まりました。相談者はサイト内のカスタマーサービスの指示に従い、暗号資産(USDT)を入金するための代金として、銀行振込を何度も重ねています。
振込先に指定されたのは、会社の口座ではなく、個人や法人の名義の口座でした。名義は振込のたびに変わり、資金は知人からの借金やカードローンでも工面されています。なお、サイトは現在「EC Markets」を名乗っていますが、その名前に切り替わった時期は後の章で取り上げます。
USDTの購入を名目に銀行振込を重ねさせるSNS型投資詐欺
USDTは、米ドルとほぼ同じ価格で取引されるよう設計された暗号資産です。本件では、サイトの残高をUSDTで増やすという説明のもと、相談者は日本円を銀行の口座へ振り込みました。画面の残高が増えても送ったお金は暗号資産ではなく、見知らぬ名義の口座へ渡っています。
警察庁がまとめた令和8年(2026年)上半期の統計では、SNS型投資詐欺の認知件数が5,893件、被害額は797.9億円でした。既遂1件当たりに直すと1,362.5万円です。本件のように振込を何度も重ねさせる形では、被害額がふくらみやすくなります。
振込先の口座名義が振込のたびに入れ替わる手口
カスタマーサービスは、振込のたびに新しい口座を示しました。個人名義の口座が中心で、法人名義の口座が混ざることもありました。口座の名義人とサイトの運営者がどのような関係にあるのかは、相談者には一度も説明されていません。
一部の振込は、受け取る側の銀行から返却されています。銀行がどのような理由で入金を受け付けなかったのかは分かっていません。ただ、その後も別の名義の口座への振込が続いており、返却をきっかけに送金が止まることはありませんでした。
20分以内の振込と空欄の備考欄を求める指示
カスタマーサービスの指示には、決まった型がありました。口座を示すと「20分以内に振り込むこと」と期限を切り、振込の備考欄は空けておくよう求めます。振込が終わると、振込明細の画像と身分証明書の提出を求めました。
期限を短く区切られると、振込先の名義を確かめたり、家族に相談したりする余裕がなくなります。備考欄を空けさせる指示は、振込の目的を銀行に知られないようにするためとも考えられます。これに関わる文言がサイトのプログラムにも残っていたため、後の章で紹介します。
警察庁が個人名義の口座と振込先の変更に注意を促している
警察庁の特殊詐欺対策ページ「SOS47」は、SNS型投資詐欺の手口と被害事例を紹介したうえで、見分けるポイントの一つとして振込先の口座を挙げ、次のように説明しています。
一般的に、投資話が本物であれば、 ① 振込先として個人名義の口座を指定されること ② 振込先の口座が振込のたびに変わること はまずありません。
▼個人名義の口座と振込先の変更を挙げる警察庁の注意喚起

出典:警察庁
本件は、この2つのどちらにも当てはまります。これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、振込先に個人の名前が出てきた時点で手を止め、振り込む前に弁護士など専門家へ相談してください。
【参考】
・jzvfh.com(https://www.jzvfh.com/)
・警察庁-令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)
jzvfh.comへ誘導され被害につながるまでの経緯

今回のトラブルでは、SNSでの勧誘をきっかけにjzvfh.comでの取引が始まり、数か月に渡って名義の異なる口座への送金が続きました。振込先を示したのは、毎回サイト内のカスタマーサービスでした。
送金の資金は手元の預金だけではまかなえず、借入で用意した分も含まれています。最初に投資を勧められてから振込を重ね、弁護士へ相談するに至るまでの流れを順を追って見ていきます。
SNSで声をかけられjzvfh.comで取引を始める
きっかけは、SNSを通じて投資を勧められたことでした。取引の場として案内されたのがjzvfh.comで、スマートフォンのブラウザで開くと、暗号資産や外国為替、貴金属の値動きが一覧で表示されます。
▼機械翻訳のような言葉が並ぶjzvfh.comのトップ画面

出典:jzvfh.com
トップ画面には「速くお金を買います」「てこ」「誓約」など、機械翻訳のままとみられる言葉が並んでいます。それでも値動きの数字は絶えず更新されるため、画面だけを見ると実際に取引が行われている場のように映ります。
サイト内のサポートが最初の振込先に個人の口座を示す
取引を始めて間もなく、相談者はサイト内のカスタマーサービスから最初の入金を指示されました。示された振込先は、会社名ではなく個人の名前の口座です。銀行名や口座番号は、サイトのチャットに送られてきました。
取引所に資金を入れるのに、見知らぬ個人の口座へ振り込むのは本来不自然な手順です。ただ、指示はサイトの中の窓口から届くため、相談者にはサイトの正式な入金手続きの一部に見えたとみられます。同様に、サポートを名乗る相手が個人名義口座への振込を指示する事例も確認されています。
USDTの入金名目で振込先が次々に変わる
その後の振込は、サイトの口座にUSDTを入れるための代金という名目で行われました。振込先は個人名義の口座を中心に、法人名義の口座も交えて次々と変わり、示された名義は10を超えています。
終盤には、2つの名義への振込が受け取る側の銀行から返却されました。それでも送金は止まらず、最後の振込もまた別の個人名義の口座あてでした。口座が替わるたびに、相談者は新しい名義を信じて振り込むことを求められていたことになります。
借入で資金を用意し送金を続けた末に弁護士へ相談する
振込が重なるにつれ、手元の資金では足りなくなりました。相談者は資金の工面を求められ、知人からの借金に加えて、銀行のカードローンや消費者金融からも借り入れて送金を続けています。
最後の振込から間もなく、相談者はそれまでの経緯を整理し、当事務所へ相談しました。口座の名義はどれもサイトの名前とは結びつかず、振り込んだお金がその先どこへ動いたのかを相談者の側から確かめる手段はありません。
借入をしてまで入金を求められる状況は、それ自体が立ち止まるべき合図です。次の振込を指示されたら、その前に振込先の名義と金額を書き出し、信頼できる第三者に見せて意見を聞いてください。
【参考】
・jzvfh.com(https://www.jzvfh.com/)
jzvfh.comの関連サイトの情報を調査した結果

jzvfh.comについて、ドメインの登録記録、通信の暗号化に使う証明書、サイトが読み込んでいる外部のアドレスを調べました。あわせて、サイトが現在名乗っている「EC Markets」という名前を、金融庁の公表資料で照合しています。
調べていくと、jzvfh.comのほかに、同じサイトを配信するドメイン、アプリの配布ページ、チャットの接続先という3つのドメインが見つかりました。4つのドメインの登録日は、次のとおりです。
| ドメイン | 登録日 | 登録機関 | 役割 |
|---|---|---|---|
| jzvfh.com | 2026年4月9日 | NameSilo, LLC(米国) | 相談者が案内された取引サイト |
| unbgx.top | 2025年11月16日 | NameSilo, LLC(米国) | 同じ取引サイトを配信する別のアドレス |
| tgwle.top | 2026年3月22日 | NameSilo, LLC(米国) | アプリの配布ページ |
| dotcfvm.click | 2026年7月17日 | Dynadot, LLC(米国) | サイト内のチャットの接続先 |
jzvfh.comは勧誘の約2か月前に登録されたドメイン
ドメインの持ち主や登録日は、RDAPと呼ばれる公開の登録記録に残ります。jzvfh.comの記録上の登録日は2026年4月9日、期限は1年後の2027年4月9日で、名前が載っているのは登録を取り次いだ事業者だけです。サイトを持つ人や会社の名前は、どこにも出てきません。
▼2026年4月9日の登録を示すjzvfh.comのドメイン情報

出典:Verisign(RDAP)
相談者がSNSで投資を勧められたのは2026年6月中旬です。勧誘が始まる約2か月前に、取引サイトのアドレスが取得されていたことになります。社名を掲げる取引所であれば、自社の名前を含むドメインを長く使い続けるのが通常ですが、jzvfhという文字の並びはどの会社名とも結びつきません。
同じ証明書に並ぶunbgx.topが同一のサイトを配信している
ブラウザでjzvfh.comの証明書を開き、「証明書のサブジェクトの代替名」の欄を見ると、www.jzvfh.comとwww.unbgx.topの2つの名前が並んでいます。証明書には、発行を申し込んだ側が管理しているドメインしか書き込めません。
▼jzvfh.comとunbgx.topが並ぶ証明書の代替名

出典:jzvfh.com
unbgx.topの登録日は2025年11月16日で、jzvfh.comより約5か月早く用意されています。2つのアドレスを開いて、サイトのプログラムとサーバーの応答を照らし合わせたところ中身は完全に一致しました。名前の違う2つの入口の先に、同じ仕組みの取引サイトが1つあるとみられます。
▼2025年11月16日の登録を示すunbgx.topのドメイン情報

出典:ZDNS(RDAP)
チャットとアプリ配布の窓口もそれぞれ新しく取られたドメイン
サイトが起動時に読み込む設定情報には、アプリの配布ページとして「tgwle.top」、チャット画面の読み込み先として「roh.dotcfvm.click」のアドレスが書かれています。アプリの配布ページのドメインは2026年3月22日にjzvfh.comより少し早く登録されました。
▼アプリ配布とチャットに使われる2つのドメインの登録日

出典:ZDNS(RDAP)、.click(RDAP)
一方、チャットの接続先のdotcfvm.clickは2026年7月17日の登録で、相談者の振込が続いていた時期と重なります。振込先を伝えるチャットの窓口が、送金の途中で新しいアドレスへ移された可能性があります。
名前が使われたEC Markets Limitedは金融庁の無登録業者一覧に載っている
jzvfh.comは現在、「EC Markets」という名前とロゴを使っています。EC Marketsは海外に実在する取引業者のブランドで、公式サイトのecmarkets.comには、英国などの当局の登録を受けていることが記載されています。
ところが、金融庁が公表している無登録業者の一覧には、令和7年5月に警告の対象となったEC Markets Limitedが掲載されています。掲載された理由とサービスの名称は次のとおりです。
インターネットを通じて、店頭デリバティブ取引の勧誘を行っていたもの 当該業者が提供するサービスの名称は「EC Markets、EC マーケット」である。
▼EC Markets Limitedが載る金融庁の無登録業者一覧

出典:金融庁
金融庁の金融事業者一括検索でも、EC Markets Limitedの名前の前には、警告書の発出を受けた無登録業者を示す印が付いています。画面の注意書きは「実在の事業者を騙った詐欺もありますのでご注意ください。」と続き、名前だけでは本物かどうかを判断できないことを示しています。
▼EC Marketsの名前に警告の印が付く金融事業者一括検索

出典:金融庁
金融庁の公表資料を見る限り、EC Marketsの名前で日本の個人に取引を案内することが認められた窓口は、正規の事業者を含めて見当たりません。jzvfh.comが、正規のEC Marketsによって運営されていることを示す情報も確認できませんでした。
このほか調査で分かった点は以下の通りです。
- Googleセーフブラウジングでは、jzvfh.comは判定のデータがなく、unbgx.top・tgwle.top・dotcfvm.clickのチャットのアドレスは「安全でないコンテンツは見つかりませんでした」と表示される(2026年9月25日時点)
- Internet Archiveには、jzvfh.comとunbgx.topの過去の画面が1件も保存されていない
- jzvfh.comとunbgx.topの置かれたサーバーには、ほかのドメインは見つからなかった
【参考】
・jzvfh.com(https://www.jzvfh.com/)
・unbgx.top(https://www.unbgx.top/)
・tgwle.top(https://www.tgwle.top/gxx94y)
・Verisign RDAP(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/jzvfh.com)
・ZDNS RDAP(https://rdap.zdnsgtld.com/top/domain/unbgx.top)
・ZDNS RDAP(https://rdap.zdnsgtld.com/top/domain/tgwle.top)
・.click RDAP(https://rdap.registry.click/rdap/domain/dotcfvm.click)
・EC Markets(https://www.ecmarkets.com/)
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
・Google-透明性レポート(セーフブラウジングのサイト ステータス)
jzvfh.comに関する不審点

ここでは、jzvfh.comの画面とプログラムに残っていた不審な点を6つ取り上げます。EC Marketsという名前に切り替わった時期、利用規約の名義、お知らせに残る別の取引所の名前、振込の備考に関する文言、代理店向けの管理画面、アプリの配り方です。
6つのうち、運営している会社や人物の名前にたどり着けるものは一つもありませんでした。反対に、名前だけを入れ替えながら使い回されてきた仕組みであることをうかがわせる材料が、画面のあちこちに残っていました。
サイトで使う名前がEC Marketsへ切り替えられたのは相談の後
サイトのプログラムを調べたところ、画面を構成するファイル一式とロゴが2026年9月5日にまとめて置き換えられていました。会社概要やお知らせの本文も、9月7日から8日にかけて「EC Markets」の名前で書き直されています。相談者の最後の振込と、弁護士への相談よりも後のことです。
PCでjzvfh.comを開くと、トップの看板にスヌーカー選手のジャッド・トランプの写真と「Ace The Markets with JUDD TRUMP」の文字が表示されます。左上には、赤い丸に白い文字の「EC markets」のロゴが置かれています。
▼ジャッド・トランプの写真を掲げるPC向けのトップ画面

出典:jzvfh.com
ジャッド・トランプは、正規のEC Marketsが2024年からブランドアンバサダーに起用している人物で、2025年2月には契約の更新も発表されています。ロゴの「EC」の字形も、正規のEC Marketsのものと同じです。
▼ジャッド・トランプとの契約更新を伝える正規EC Marketsの告知

出典:EC Markets
会社概要のページには、「EC Marketsは、権威ある機関によって認可・監視されているフィンTech企業で」と書かれています。ところが、どの国のどの機関から認可を受けているのか、登録番号は何かといった情報は、ページのどこにもありません。
▼認可・監視を受けていると書くjzvfh.comの会社概要

出典:jzvfh.com
利用規約の名義はNUFIでバイナンスの規約を置き換えた文面
サイトの利用規約(ユーザプロトコルとプライバシーポリシー)を開くと、契約の相手として書かれているのは「EC Markets」ではなく「NUFI」という名前です。規約の中で「当社」と呼ばれているのも、このNUFIです。
定義の欄には「NUFI Charity、NUFIDEX、NUFI Developer Platform、JEX、Trust Wallet」といったサービス名が並び、運営者の説明には「NUFIUAB を含む」とあります。
▼NUFIの名前で書かれたjzvfh.comの利用規約の定義

出典:jzvfh.com
この並びは、大手暗号資産取引所バイナンスが2022年5月に改定した利用規約の定義と一致します。バイナンスの規約では、該当する箇所が次のように書かれていました。バイナンス自体に問題があるわけではなく、その文面が「Binance」を「NUFI」に置き換えた形で流用されたとみられます。
Binance Charity, Binance DEX, Binance X, JEX, Trust Wallet, and fiat gateways legal persons (including Binance UAB)
▼JEXとTrust Walletが並ぶバイナンスの利用規約(2022年)

出典:Binance(Internet Archive)
jzvfh.comの規約は、アカウントの安全に関する項目の途中で終わっています。入金や出金の取り扱い、どの国の法律に従うのか、争いになったときの手続き、運営者の所在地はどこにも書かれておらず、「EC Markets」の名前も一度も出てきません。
▼アカウントの安全の項目で終わる利用規約の末尾

出典:jzvfh.com
お知らせにUCBITやXMなど別の取引所の名前が残っている
トップ画面のお知らせには、「大学への転校の注意事項」という題の記事があります。中国語版の題は「转U注意事项」で、USDTに換えるときの注意という意味です。中国語で「U」がUSDTを指す略語であることが伝わらず、機械翻訳で「大学への転校」になったとみられます。
▼UCBITの名前が残る「大学への転校の注意事項」

出典:jzvfh.com
本文は「UをUCBIT口座に送金したが、口座がEC Marketsに表示されない場合」と始まり、「UCBIT」という別の名前が4回出てきます。ヘルプセンターの説明にも、「すべての送金手数料は XM で支払われます」と、海外のFX業者として知られる名前が残っていました。
▼送金手数料をXMが払うと書くヘルプセンターの説明

出典:jzvfh.com
サイトの言語を中国語に切り替えると、「EC Markets の概要」にあたる記事の題は「NUFI简介」のままで、本文だけが「EC Markets简介」に書き換えられていました。UCBIT、XM、NUFI、EC Marketsと、少なくとも4つの名前が1つのサイトに同居しています。
▼題がNUFI简介のまま本文がEC Marketsの紹介記事

出典:jzvfh.com
振込の備考に暗号資産の名前を書かないよう求める文言がある
法定通貨取引の注文画面はログインしないと開けませんが、プログラムを調べたところ、その画面の注意書きとして次の文言が入っていました。中国語の原文は「在转账过程中请勿备注BTC、USDT等信息,防止汇款被拦截、银行卡被冻结等问题」です。
振り込み中にBTC、USDTなどの情報を備考しないでください。振り込みがブロックされ、クレジットカードが凍結されることを防止します
原文の意味は、送金が止められたり口座が凍結されたりしないよう、振込の備考に暗号資産の名前を書くなというものです。相談者が受けた「備考欄を空欄にすること」という指示と、向きが一致しています。
入金画面にも、銀行振込用の「銀行カード」というタブが用意されていました。このタブは、運営側が利用者ごとに設定したときだけ表示される作りで、入力欄は金額と「証拠をアップロードする」の2つだけです。振込先は画面に出ず、明細の画像を送らせる流れが、あらかじめ組み込まれていたことになります。
/agentの先に代理商后台という中国語のログイン画面がある
jzvfh.comのアドレスの末尾に「/agent」を付けて開くと、「代理商后台管理」と大きく書かれたログイン画面が表示されます。代理商は代理店、后台は管理画面を指す中国語で、代理店が使うための管理画面とみられます。入力欄も含め、画面の言葉はすべて簡体字です。
▼代理商后台管理と表示されるjzvfh.comの/agentの画面

出典:jzvfh.com
ページのソースを表示すると、タブの名前は「登入 – 代理商后台」です。「忘记密码?」のリンクには、「忘记密码需要上级代理找回密码」という注記が付いています。パスワードを忘れたら上位の代理店に再設定してもらうという意味で、代理店が階層になっていることを前提にした作りです。
▼上位の代理店を前提とする注記が残るページのソース

出典:jzvfh.com
中国語で書かれた配布ページからアプリを入れさせる
サイトの設定情報に書かれたアプリの配布ページを開くと、App StoreやGoogle Playではなく全文が簡体字のページが表示されます。アプリの名前は「EC」で、「版本 1.0.0 大小 18.7 KB 更新时间 2026-09-06」と書かれていました。更新日時も、相談の後の9月6日です。
▼大小18.7KBと書かれた中国語のアプリ配布ページ

出典:tgwle.top
株や暗号資産の取引所が配るアプリは、多くが数十MBの大きさです。18.7KBはその千分の一ほどで、アプリ本体ではなくサイトを開くための設定ファイルである可能性があります。
ページには「”未受信任的企业级开发者”的解决办法」(信頼されていない企業の開発者と表示されたときの対処法)という案内もあります。端末の設定で、見知らぬ開発者を信頼するよう操作させる手順です。
画面の下には「本站是应用内测平台,请自行甄别应用风险」(当サイトはアプリの試験配布の場であり、リスクは各自で見極めること)とも書かれています。取引所を名乗るサイトから、このような経路でアプリを入れるよう求められたときは、インストールする前に専門家へ相談してください。
【参考】
・jzvfh.com(https://www.jzvfh.com/)
・jzvfh.com PC向け画面(https://www.jzvfh.com/dist/)
・jzvfh.com 利用規約(https://www.jzvfh.com/h5/#/pages/mine/privacy)
・jzvfh.com 代理店向けの管理画面(https://www.jzvfh.com/agent)
・tgwle.top(https://www.tgwle.top/gxx94y)
・EC Markets「EC Markets Renews Strategic Partnership with World’s Leading Snooker Player Judd Trump」(https://www.ecmarkets.com/insights/ec-markets-renews-strategic-partnership-with-worlds-leading-snooker-player-judd-trump/)
・Binance「Binance Terms of Use」(2022年5月31日保存)(https://web.archive.org/web/20220531192220/https://www.binance.com/en/terms)
jzvfh.comのようなサイトが悪用されやすい理由

jzvfh.comのような取引サイトが詐欺に使われやすい背景には、サイトの名前、サイトを動かす仕組み、お金の送り先を、それぞれ簡単に取り替えられる事情があります。ここでは、本件の調査で見えてきた4つの理由を取り上げます。
実在する業者の名前とロゴとアンバサダーの写真を借りられる
実在する業者の名前を使うと、利用者がその名前で検索したときに、公式サイトや起用している選手のニュースなど本物の情報が次々に表示されます。本件の看板に使われたジャッド・トランプの写真も、正規のEC Marketsの広告と同じ人物です。
検索で本物の情報が出てくると、それがかえって安心材料になってしまいます。確かめるべきなのは、案内されたアドレスが、その会社の公式サイトからリンクされているものかどうかです。公式サイトのどこからもリンクされていないアドレスであれば、ロゴが同じでも正規の窓口とはいえません。
2022年から使われている基盤を名前だけ替えて使い回せる
サイトのデータを調べると、通貨や運用商品の設定は2022年7月に作られていました。その上にUCBIT、NUFI、XM、EC Marketsの名前が重なり、アドレスもunbgx.topからjzvfh.comへと増えています。画面の仕組みはそのままに、看板だけが掛け替えられてきたとみられます。
名前とアドレスが変わると、以前の名前で寄せられた被害の声や注意喚起は、新しい名前で検索しても出てきません。前の章で見たとおり、本件でも相談の後に名前がEC Marketsへ切り替えられており、過去の経緯を外からたどることは難しくなっています。
振込先がチャットでしか示されず画面に記録が残らない
jzvfh.comの入金画面には、振込先の銀行や口座番号が表示されません。仮想通貨の入金先についても、「最新のアドレスについては、オンライン カスタマー サービスにお問い合わせください」と案内され、送金先はすべてチャットで伝えられる作りです。
サイトの画面には振込先の記録が残らないため、手元に残るのはチャットのやり取りだけです。そのチャットの接続先も、送金の途中で新しいドメインが使われていました。振込先を指示されたら、その画面をすぐに撮影して、日時とともに保存しておくことが、後で経緯を示すための備えになります。
口座の名義人が毎回違うため送金先から運営者をたどれない
相談者が振り込んだ先には、個人の名前の口座も会社の名前の口座もあり、名義は送金のたびに替わりました。名義人とサイトの運営者がどのような関係にあるのかは分かっておらず、口座の名義から運営者の正体に行き着ける保証はありません。
警察庁は令和6年8月23日、SNS型投資・ロマンス詐欺の急増や法人口座を悪用した事案を受けて、金融庁と連名で、取引の金額や頻度に着目した検知や、出金停止・凍結の迅速化を銀行側に要請しました。振込のたびに口座を替える手口は、こうした銀行の確認をかわす狙いとも考えられます。
【参考】
・jzvfh.com(https://www.jzvfh.com/)
・EC Markets(https://www.ecmarkets.com/)
・警察庁-法人口座を含む預貯金口座の不正利用等防止に向けた対策の一層の強化について
jzvfh.comの不審点を見抜く方法

取引サイトを案内されてから実際にお金を送るまでには、確かめる機会が何度かあります。ここでは、サイトを開いたとき、振込を求められたとき、アプリを入れるよう言われたときの3つの場面に分けて、見ておきたい点を6つ挙げます。
- サイトを開いたら、アドレスのドメインがいつ登録されたかを調べる
- 「https://rdap.org/domain/jzvfh.com」のように、末尾を調べたいドメイン名に置き換えて開き、表示された記録の中から「registration」の日付を探します。jzvfh.comは、勧誘が始まるわずか2か月前に登録されていました。
- 画面の利用規約を開き、契約の相手の名前がサイトの名前と同じかを読む
- jzvfh.comは「EC Markets」を名乗っていますが、規約で「当社」とされているのは「NUFI」でした。名前が食い違う規約には、誰と契約するのかが書かれていないのと同じです。
- 表示の言語を切り替えて、お知らせやヘルプに別の会社名が紛れていないかを見比べる
- 言語の画面で日本語と中国語を切り替えるだけで確かめられます。本件では、日本語で「EC Markets の概要」とされた記事が、中国語では「NUFI简介」という題のままでした。
- サイトが名乗る会社名を、金融庁の金融事業者一括検索に入れる
- 登録業者であれば登録番号が表示され、警告を受けた無登録業者であれば名前の前に印が付きます。本件で使われた名前のEC Markets Limitedは、海外で知られた業者でありながら、日本では金融庁の警告を受けていました。
- 振込を求められたら、振込先が個人名義か、前回と違う口座かを確かめる
- 警察庁が挙げるとおり、本物の投資話で個人名義の口座を指定されたり、振込のたびに口座が変わったりすることはまずありません。備考欄を空けるよう言われたときも、同じように手を止めてください。
- アプリを入れるよう言われたら、App StoreやGoogle Playから入れられるかを確かめる
- 配布用のページからしか入れられず、端末の設定で開発者を「信頼」する操作を求められる場合は、正規の取引所のアプリではない可能性があります。
これから振込を求められている段階であれば、次の振込を保留にしてください。借入をしてまで入金を求められる場合は、なおさら急ぐ必要はありません。20分以内といった期限を切られても、その期限に応じる理由はないと考えてください。
すでに振り込んでいる場合は、チャットの画面、振込の控え、サイトの画面を今のうちに保存しておきましょう。本件のサイトは相談の後に名前が切り替えられており、画面が変わる前の記録が経緯を示す手がかりになります。弁護士などの専門家に経緯を説明するとき、こうした記録がそのまま判断の材料になります。
【参考】
・RDAP.org(https://rdap.org/)
jzvfh.comに関する口コミや被害事例

「jzvfh」と「unbgx」の2つの語で、SNSのX(旧Twitter)、質問サイト、国内の掲示板、海外の口コミサイトを順に検索しました。どの場所でも、このサイトで取引した、振り込んだという口コミは確認できませんでした。
一方で、EC Marketsに似せたロゴの別のアプリで追加の入金を求められたという相談や、利用規約の名義にあった「NUFI」の名前で出金できないと訴える苦情は見つかっています。どちらも本件と同じ運営かどうかは分からないため、その前提で紹介します。
XやYahoo!知恵袋ではjzvfh.comに触れた投稿が見つからない
Xでは「jzvfh」「unbgx」のほか、「EC Markets」と「詐欺」「出金」を組み合わせた語でも検索しました。Yahoo!知恵袋と5ちゃんねる、爆サイでも同じ語を試しましたが、jzvfh.comやunbgx.topの名前を挙げた投稿は出てきませんでした。
「EC Markets」で検索すると、上位に並ぶのは正規のEC Marketsの口座開設を案内するページや、業者を比較するページです。名前で調べても本件のサイトの情報には行き着かず、正規の業者の評判が先に出てくる状態でした。
EC Marketsに似たロゴの別アプリで追加の入金を求められた相談
Yahoo!知恵袋には、2026年4月29日に、あるアプリが詐欺ではないかと尋ねる質問が投稿されていました。本件とは別の名前のアプリですが、寄せられた回答にEC Marketsの名前が出てきます。
▼EC Marketsに似たロゴの別アプリを指摘する知恵袋の回答

出典:Yahoo!知恵袋
詐欺かも。 10万円チャージしないと引き出せないとか言われませんでした? ECmarketsってロゴが似てるけど、別会社。
質問者はこの回答に「16万円チャージしないとでした!」と返しています。正規の業者に似たロゴを掲げ、引き出す前に追加の入金を求めるという流れは、実在の名前を借りる本件のサイトとも通じるところがあります。
NUFIの名前には海外の口コミサイトに出金の苦情が残っている
規約で契約の相手とされていた「NUFI」については、業者への苦情を集める海外のサイト「BrokersView」に、2023年11月23日付の投稿がありました。題は「NUFI is totally a fake trading platform」で、請求額は5,600ドルです。
▼出金の窓口が止まっていると訴えるNUFIへの苦情

出典:BrokersView
NUFI’s withdrawal channel has been under maintenance for a long time. Asking customer service will only make me wait. I feel like I have been cheated.
出金の窓口が長くメンテナンス中のままで、カスタマーサービスに尋ねても待たされるだけだという内容です。この投稿の「NUFI」が本件と同じ運営かどうかは確認できませんが、同じ名前が別の場所で出金トラブルとともに語られていたことになります。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-アプリの詐欺を尋ねる質問(2026年4月29日)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11327578486)
・BrokersView「NUFI is totally a fake trading platform」(https://www.brokersview.com/complaint/nufi-is-totally-a-fake-trading-platform-909)
jzvfh.comに関する口コミが少ない理由

jzvfh.comについての書き込みがほとんど見つからない背景として、次の3つが考えられます。いずれも、本件の調査で見えたサイトの作りや勧誘の進め方から生じているものです。
1つ目は、アドレスそのものが覚えにくいことです。「jzvfh」は意味を持たない文字の並びで、会社名にも商品名にもつながりません。被害に気づいた人が書き込もうとしても、サイトの名前として何を書けばよいのか分かりにくいアドレスです。
2つ目は、画面の名前が入れ替わることです。本件のサイトは相談の後に「EC Markets」へ名前を変えており、その名前で検索すると正規のEC Marketsの情報が先に並びます。UCBITやNUFIといった別の名前で被害を訴える声があっても、EC Marketsで検索する人の目には届きません。
3つ目は、振込の指示がサイト内のチャットで一対一に行われることです。振込先の口座も指示の内容も、利用者とカスタマーサービスの間でしかやり取りされないため、外の人が同じ手口を目にする機会がほとんどありません。
書き込みが見当たらないのは、被害が起きていないからではなく、表に出にくい作りになっているためとみられます。送金をやめるか迷っている段階でも、チャットの画面と振込の控えを保存したうえで、弁護士などの専門家に早めに状況を伝えてください。
【参考】
・jzvfh.com(https://www.jzvfh.com/)

