「大阪証券取引所のサイト」として案内された「OSE(osejp.one)」は、正規の取引所のものなのでしょうか。相談者は、Facebookに届いたメッセージから始まったLINEのやり取りの中で、相手からこのサイトを紹介されました。
金の取引を進めるうちに、サイトのカスタマーセンターに「交換業者の手配」を頼むと、振込先として個人名義などの口座が示されました。振込を重ねた後、銀行からは、お金はすでに引き出されていて返金は無理だと告げられています。
「OSE」は、2014年に大阪証券取引所から名前を変えた正規の大阪取引所の略称です。ところがosejp.oneの金は値段の上下を秒単位で当てる取引だけで、入金の画面に円の振込先はなく、プログラムにはSAXOを装う偽サイトと同じ書き方が残っていました。
本記事では、OSEの名前と正規の大阪取引所の仕組みがどこで食い違うのかを弁護士が解説します。返金は無理と言われた後にも残る手だては、相談先とあわせて最後の章で取り上げます。
「交換業者の手配」を頼むと個人名義の口座が示されるまで

この章では、Facebookに届いたメッセージから、OSE(osejp.one)での金の取引、サイトの窓口が示した口座への振込、銀行から返金は難しいと告げられるまでを順にたどります。取引の場を「大阪証券取引所」と伝えたのは相手で、振込先の口座を示したのはOSEのサイトのカスタマーセンターでした。
FacebookのメッセージからLINEでのやり取りへ
始まりは、Facebookのチャットに届いたメッセージです。相談者はその後、送り主の相手とLINEで連絡を取り合うようになり、取引への誘いもLINEでのやり取りの中で進みました。
相談者は、相手の写真や勤め先、Facebookに投稿された動画を見て、相手が名乗ったとおりの人物だと考えていました。写真や動画が本当に本人のものだったのかは、最後の章で改めて取り上げます。
「大阪証券取引所のサイト」としてOSEで金を取引する
相手は取引の場を「大阪証券取引所」と伝え、相談者はそのサイトで金の取引を始めました。使われたのは、osejp.oneのアドレスで開く「OSE」という名前のサイトです。同様に、証券会社名を使う振込誘導も確認されています。
ホームには「いらっしゃいませ」「OSE」「デジタル資産取引プラットフォーム」の3行が大きく表示され、その下に金(XAU/USDT)の値段が暗号資産や米国株の値段と並んでいます。サイトの画面が名乗るのは「OSE」だけで、「大阪」の文字はどこにもありません。
▼「OSE」の名前でデジタル資産取引をうたうホーム画面

出典:osejp.one
カスタマーセンターに頼むと個人名義の口座が案内される
入金の手続きで窓口になったのは、サイトの中のカスタマーセンターです。相談者が「交換業者の手配」を求めると、振込先として個人名義または法人名義の口座が案内され、相談者はネットバンキングで振込を重ねました。明細で名義が読み取れる2回の振込先は、それぞれ別の個人の名義でした。
埼玉県警察は、2026年のサイバーセキュリティレポートでSNS型投資詐欺の送金先について次のように注意しています。
SNS型投資詐欺は、送金先として個人名義の口座を指定したり、振込先が頻繁に変わることがあります。無関係と思われる個人名義や法人名義の口座は犯罪に悪用されている可能性があるので、十分に注意してください。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、取引所を名乗る相手の振込先が、取引所の名義ではなく別々の個人の名義だった点が重なります。
銀行から引き出し済みで返金は無理と告げられる
相手との最後のやり取りは9月25日で、相談者はその後に詐欺だと気づきました。銀行からは、振り込んだお金がすでに引き出されているため、返金は無理だと電話で伝えられています。
やり取りが途切れた後も、相手のLINEにメッセージを一度送ると既読になったといいます。相談者は、相手の身元が分かれば返金の可能性があるのではないかと考えて相談に至りました。
Facebookで知り合った相手に「大阪証券取引所」と伝えられたOSEのサイトで金の取引を始め、サイトの窓口が示した個人名義などの口座へ振込を重ねたことが被害につながった経緯です。次の章では、正規の大阪取引所が「OSE」という名前をどう使い、個人の取引とどう関わっているのかを確かめます。
【参考】
・OSE(https://osejp.one/#/home)
・埼玉県警察-サイバーセキュリティレポート 2026 vol.1 著名人になりすました詐欺広告!SNS型投資詐欺に注意!
「OSE」は正規の大阪取引所の略称で個人は直接取引できない

この章では、日本取引所グループ(JPX)の事業紹介と沿革、2023年6月8日のお知らせ、金先物のチラシ、用語集から、相手が伝えた「大阪証券取引所」と画面の「OSE」が正規の取引所のどの名前に当たるのか、正規の取引所が個人との取引をどう説明しているのかを確かめます。
「大阪証券取引所」は2014年に「大阪取引所」へ名前を変えた
相手が取引の場として伝えた「大阪証券取引所」は、今は使われていない名前です。JPXの事業紹介と沿革によると、東京証券取引所グループと大阪証券取引所が2013年1月に経営統合してJPXが発足しました。2014年3月24日に、大阪証券取引所は「大阪取引所」に商号を変えています。
旧大阪証券取引所のアドレスose.or.jpは、登録情報では今も「Japan Exchange Group, Inc.」の名義で、2015年3月からはjpx.co.jpへ転送されていました。JPXが公表するグループのサイトの一覧にも、osejpの名前のアドレスはありません。
正規の大阪取引所は自らを「OSE」と略している
JPXの事業紹介のページは、グループの会社の説明で大阪取引所を次のように紹介しています。
大阪取引所(以下「OSE」という)は、金融商品取引法に基づく金融商品取引所の免許を受け、金融商品市場を運営しています。
(後略)
「OSE」は、正規の大阪取引所がJPXのページで使っている略称です。相手が伝えた「大阪証券取引所」は正規の旧称に、osejp.oneの画面が名乗る「OSE」は正規の略称に重なります。2つの名前を合わせると、正規の取引所のサイトのように受け取れる組み合わせです。
▼大阪取引所を「OSE」と略すJPXの事業紹介

出典:日本取引所グループ
JPXは株式や暗号資産の取引をうたう偽サイトに注意している
JPXは2023年6月8日のお知らせ「JPXを装ったアプリ及びウェブサイトにご注意ください」で、次のように注意しています。お知らせには、対象のグループ会社を示す札として「OSE」も付いています。
日本取引所グループの商標である“JPX”等の名称を使用する、当社グループ等が提供するもの以外のアプリ及びウェブサイト(JPXVIP.com、JPXtradefx.com、usaajpx.com、tocom-ex.cfd等)が、株式、商品、暗号資産等の取引に関するサービスを提供している模様です。
現状、当社は個人に対して取引に関するサービスを直接提供しておらず、これらのアプリ及びウェブサイトとは一切関係はございません。
▼「OSE」の札が付いたJPXの偽サイトへの注意

出典:日本取引所グループ
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、osejp.oneも金や暗号資産、米国株の値段を並べ、取引の場をうたうサイトです。
お知らせが挙げるアドレスにosejp.oneは含まれていません。それでも、JPX自身が個人に取引のサービスを直接提供していない以上、「大阪証券取引所」として個人に入金させるサイトは、正規の取引所のものではないとみられます。
正規の金先物は円建てで証券会社などを通して取引する
正規の大阪取引所でも金は取引されています。JPXのチラシ「金先物のご紹介」(2026年10月更新)は「大阪取引所(OSE)の金先物」を紹介し、特徴の最初に「グラム当たり円建てにより価格形成されます。」と書いています。金の先物市場は、2020年7月に東京商品取引所から移されたものです。
▼グラム当たり円建てとするOSEの金先物のチラシ

出典:日本取引所グループ
個人がこの金先物を売買するときは、取引所に直接お金を預けるのではありません。JPXの用語集は「取引参加者」を「取引所が開設する市場において直接取引を行うことができる証券会社等のことです。」と説明し、よくある質問では各商品を扱う証券会社や商品先物取引業者の一覧を案内しています。
次の章で見ますが、osejp.oneの金は円建てではなく、取引の形も正規の金先物と違います。大阪の取引所で金を勧められたら、口座を開く先がJPXの「個人向け取扱い証券会社」の一覧に載っているかを確かめてください。
【参考】
・日本取引所グループ-沿革
・日本取引所グループ-事業紹介
・日本取引所グループ-JPX提供サイト一覧
・日本取引所グループ-JPXを装ったアプリ及びウェブサイトにご注意ください
・日本取引所グループ-金先物のご紹介
・日本取引所グループ-用語集「取引参加者」
・日本取引所グループ-よくあるご質問(先物・オプション)
・日本取引所グループ-個人向け取扱い証券会社
osejp.oneの金は値段の上下を秒単位で当てる取引だけ

この章では、osejp.oneのホームに並ぶ金が、サイトの中でどのような取引に使われているのかを確かめます。材料は、ログインせずに取得できる銘柄のデータとサイトの設定、ログインの後に開く取引と入金の画面のプログラムです。
金の銘柄は秒単位の取引の一覧にしかない
ホームの最初の欄には、金のXAU/USDTが値段と騰落率つきで並んでいます。値段の単位のUSDTはドルに連動させた暗号資産で、前の章で見た正規の金先物の「グラム当たり円建て」とは、値段の建て方から違います。
▼ホームの最初の欄に並ぶ金のXAU/USDTの値段

出典:osejp.one
サイトが読み込む銘柄のデータを取得して確かめたところ、銘柄は3つの一覧に分かれていました。金が入っているのは、22銘柄が並ぶ秒単位の取引の一覧だけです。暗号資産の売買の12銘柄と、先物の18銘柄の一覧には、金はありません。
プログラムを調べたところ、秒単位の取引は「上昇」か「下落」かを選び、掛け金と期間を決めて注文する作りでした。注文の後は、期間の秒数が過ぎた時刻に結果が出ます。このサイトで金を取引するとは、決まった秒数の後に値段が上がるか下がるかを当てることとみられます。
金の銘柄はosejp.oneより前の2023年に登録されている
同じデータの金の行には、作成の日時として2023年9月8日16時26分が入っていました。OSEの名前のアドレスで最も早いものは2026年5月11日に取得されており、金の銘柄はその2年8か月前から、このプログラムの中にあったことになります。
金の行にあるのは、名前やアイコンの画像、値段といった項目です。正規の金標準先物は取引単位が1kgで、偶数の月のうち直近の6つの限月ごとに取引されますが、そうした取り決めに当たる項目は見当たりません。OSEの名前は新しくても、金の銘柄は以前からある設定を使い回したものとみられます。
osejp.oneの入金の画面に並ぶのは暗号資産のアドレスだけ
ログインの後に開く入金の画面について、サイトの設定とプログラムそのものを取得して見ると、入金先として並ぶのは、USDT・USDC・ETH・BTCなど10種類の暗号資産のアドレスだけでした。銀行口座で入金する欄は、別の名前のサイトでだけ出る作りです。
相談者が振り込んだ個人名義や法人名義の口座は、サイトの入金の仕組みにはなく、カスタマーセンターが個別に示したものです。取引所を名乗りながら、入金の画面に円の振込先がなく、窓口が個人の口座を案内する点は、前の章で見た正規の取引所の仕組みと大きく違います。
サイトの担当者から入金先の口座を個別に知らされたら、その名義がサイトの運営者と同じかを確かめ、違うなら振り込む前に手を止めてください。次の章では、osejp.oneのほかに取られているOSEの名前のアドレスを見ていきます。
【参考】
・OSE(https://osejp.one/#/home)
・日本取引所グループ-金標準先物 制度概要
osejp.oneのほかにもOSEの名前のアドレスが次々に取られている

この章では、osejp.oneの登録情報、OSEの名前で取られたほかのアドレス、サイトが通信する先のアドレス、チャットの窓口の画像を順に確かめます。osejp.oneは、5月から取られ続けているOSEの名前のアドレスの1つでした。
osejp.oneは別の2つのアドレスと同時刻に取得された
登録情報(RDAP)によると、osejp.oneは2026年7月20日14時05分(日本時間)に、登録業者のGname.com Pte. Ltd.を通じて取得されました。末尾だけが違うosejp.xyzとosejp.coも、同じ1秒の間に取得されています。
▼osejp.oneを7月20日に取得したと示す登録情報

出典:rdap.nic.one
画面の「05:05:00Z」は協定世界時の表示です。3つは同じCloudflareのネームサーバーの組を使っています。このうちosejp.xyzは今は止められており、osejp.oneとosejp.coは10月28日の時点でも同じ画面を開けました。
止められたアドレスの代わりが相談の後にも取られている
OSEの名前のアドレスは、osejp.oneより前の5月11日から取られていました。最初の3つは3秒の間に取得され、その後も末尾やハイフンの有無を変えたアドレスが続いています。登録情報で取得の日時が分かるものは、通信先のアドレスを含めて21個です。
| 取得(日本時間) | アドレス | 10月28日の状態 |
|---|---|---|
| 5月11日16時19分(3秒の間) | osejp.com・osejp.cc・osejp.vip | .com・.ccは停止、.vipは稼働 |
| 5月12日 | oseapp.cc | 稼働 |
| 7月3日(2回) | osejp.top・osejp.cyou・ose-jp.com・ose-jp.vip・ose-jp.cc | .topは停止、.cyou・ose-jp.comは稼働、ほか2つは開けない |
| 7月8日 | osejp.org | 稼働 |
| 7月20日14時05分(1秒の間) | osejp.xyz・osejp.one・osejp.co | .xyzは停止、.one・.coは稼働 |
| 9月6日 | osejp.shop | 稼働 |
| 9月19日 | ose-jp.top | 停止 |
| 9月27日 | ose-jp.asia | 稼働 |
| 10月7日(同時刻) | osejp.info・osejp.icu | 稼働 |
| 10月12日 | osejp.xin・osejp.asia | 稼働 |
| 10月14日 | osejp-vip.com | 通信先 |
表の「停止」の5つは、登録の手続きの上で使えない状態(hold)にされています。今も開ける14個は、取得の日時が登録情報に出ないosejp.myを含め、すべてosejp.oneと同じ版のプログラムを返しました。最後のやり取りがあった9月25日の後にも、6つのアドレスが新たに取られています。
サイトの通信先は相談の後に別のアドレスへ移された
osejp.oneの画面は、値段や設定のデータを別のアドレスとやり取りして表示しています。urlscan.ioに残る10月6日(日本時間)の記録では、その通信先はapi.osejp.oneでした。今のプログラムを取得すると、通信先はwww.osejp-vip.comと書かれています。
▼通信先をosejp-vip.comとするプログラム

出典:osejp.one
osejp-vip.comは、最後のやり取りの19日後の10月14日13時29分に取得されたアドレスで、ネームサーバーの組もほかのOSEのアドレスとは違います。
それでも、api.osejp.oneとwww.osejp-vip.comが返す設定のデータは、10月28日の時点で1バイトも違いませんでした。表のアドレスが替わっても、同じ管理の仕組みにつながっているとみられます。
▼osejp-vip.comの取得日を示す登録情報

出典:rdap.verisign.com
窓口の「OSE」の画像は最初のアドレスと同じ日に上げられた
サイトが読み込むチャットの窓口の設定を取得して確かめたところ、窓口のアイコンは「OSE」の文字の画像でした。画像のアドレスには「20260511」の日付と、5月11日22時49分を表す番号が入っています。最初の3つのアドレスが取得された日の約6時間半後です。
窓口の設定そのものは2025年6月7日に作られていて、OSEの名前のアドレスが現れる1年近く前からある窓口です。その窓口にOSEの画像を後から付け替えたとみられます。
あわせて、外部の判定と公的機関の一覧も確かめています。
- Googleセーフブラウジング:osejp.one・osejp.vip・osejp-vip.comとも、危険なサイトとする判定は出ていません
- 金融庁の無登録業者の一覧:OSEの名前のアドレスの掲載はありません
- Internet Archive:osejp.oneの保存版は0件です
ただし、判定や掲載がないことは安全の根拠にはなりません。取引所のサイトとしてOSEの名前のアドレスを示されたら、末尾が違っても同じ運営のものと考え、取得から日が浅くないかを登録情報で確かめてください。
【参考】
・RDAP-osejp.one(https://rdap.nic.one/domain/osejp.one)
・RDAP-osejp-vip.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/osejp-vip.com)
・urlscan.io-osejp.oneの記録(https://urlscan.io/result/01a10e07-874d-7208-8b43-b0c2828b911b/)
・Google透明性レポート-セーフブラウジングのサイトステータス
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について
osejp.oneはSAXOを装う偽サイトにOSEの名前を足したもの

この章では、osejp.oneをSAXOを装う偽サイト(saxonjp.com)と比べます。比べたのは、プログラムの中の名前の扱い、入金先などのサイトの設定、ホームの本文の3つで、どれもログインせずに確かめられます。
saxonjp.comは、正規のサクソバンク証券の名前を使い、Facebookから誘導された相談者が利用していた偽サイトです。その手口は「SAXO(サクソバンク)を装う偽サイトは詐欺?Facebookからの誘導と所得税を理由に出金できない実態・口コミ・評判と返金対策」で解説しています。
プログラムは「saxo」と「ose」を同じ扱いで並べている
osejp.oneのプログラムには、サイトの名前ごとに画面の出し方を切り替える箇所があり、その条件に「saxo」と「ose」が並んで書かれています。取引の画面に「株式」のタブを出すのも、メニューの「ホワイトペーパー」を押したときに別のページを開くのも、この2つの名前のときだけです。
▼「saxo」と「ose」を並べたプログラム

出典:osejp.one
saxonjp.comが今読み込むプログラムにも、同じ「[“saxo”,”ose”]」の書き方が同じ2か所にあります。SAXOの偽サイトのプログラムに、OSEの名前が書き込まれていることになり、2つは同じプログラムを名前の設定だけ替えて使っているとみられます。
入金の暗号資産アドレスと設定のデータがSAXOの偽サイトと同じ
ログインせずに取得できるサイトの設定を比べると、入金先として並ぶ10種類の暗号資産のアドレスは、saxonjp.comと1文字も違いませんでした。
設定の21項目のうち違うのは、メニューの並びやアプリの入手先など4項目だけです。どちらのサイトで入金しても、同じアドレスにお金が届く作りとみられます。
saxonjp.comの通信先も、10月15日14時06分に取得されたsaxo-vp.comに替わっていました。前の章で見たosejp-vip.comが取得された翌日で、名前の付け方も「サイトの名前+vp・vip」とよく似ています。
2つの通信先は同じCloudflareのネームサーバーの組を使い、サーバーのIPアドレスも同じ範囲にあります。名前の違う2つのサイトが、同じ時期に同じ形で通信先を移したことになります。
ホームの本文には「VGP」「EXFT」という別の名前も残る
osejp.oneのホームは「OSE」と名乗りながら、本文の見出し「信頼できる暗号通貨取引所」の下に「VGP は、厳格なプロトコルと業界をリードする技術的手段を通じてユーザーを保護することに取り組んでいます。」と書いています。ホームの別の欄には「VGP決済市場」の見出しもあります。
▼OSEのホームの本文に残る「VGP」の名前

出典:osejp.one
参加の案内の欄にも、「デジタル通貨取引の最初の経験から初めての NFT の購入まで、EXFT は簡単にコインを獲得するのに役立ちます」という文があります。VGPやEXFTの名前の会社がosejp.oneを運営していることを示す情報は確認できませんでした。
名乗る名前と本文の名前が食い違うのは、ほかのサイトの文章を名前を替えずに使い回したためとみられます。取引所のサイトの本文に名乗りと違う名前が出てきたら、そのサイトで入金を続けず、まず名前の食い違いを家族や相談先に伝えてください。
【参考】
・OSE(https://osejp.one/#/home)
・SAXO(https://saxonjp.com/)
・RDAP-saxo-vp.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/saxo-vp.com)
「大阪証券取引所で金を」と勧められたら確かめること

この章では、相手が持ちかけてくる言葉を言われる順に4つ取り上げ、それぞれを正規の大阪取引所の仕組みのどこと照らせばよいかをまとめます。前の章までに見たosejp.oneの作りは、どの段階でも正規の仕組みと食い違っていました。
- 「大阪証券取引所のサイトで取引できる」と言われたら:大阪証券取引所は2014年に大阪取引所へ名前を変え、その情報は日本取引所グループのサイト(jpx.co.jp)にまとめられています。示されたアドレスがjpx.co.jpでなければ、JPXのサイトではありません。JPXは、個人に取引のサービスを直接提供していないと明記しています
- 「金で増やせる」と言われたら:正規の大阪取引所の金先物は「グラム当たり円建て」で、証券会社や商品先物取引業者に口座を開いて取引します。サイトの金が米ドル建て(USDT)で、値段が上がるか下がるかを秒単位で選ぶものなら、取引所の金先物とは別のものです
- 「交換業者を手配する」と言われたら:サイトの入金の画面に、円の振込先が出るかを見ます。暗号資産のアドレスしか並ばないのに、窓口が別に振込先を用意するなら、お金はサイトの仕組みの外で動いています
- 「この口座に振り込んで」と言われたら:振込先の名義を見ます。取引所や証券会社の名義ではなく、個人の名前が書かれていたら振り込まないでください
最後の点について、香川県警察は次のように注意しています。
本物の投資話であれば、個人名義口座が振込先になることはありません。
また、振込先が毎回変わったり、架空の暗号資産に送金させたりするのも詐欺師の手口です。
4つの言葉は、相手が持ち出す順に並べています。最初の「大阪証券取引所」の段階でアドレスをJPXのサイトと見比べれば、振込の前に食い違いに気づけます。OSEの名前の口コミがなぜ見つかりにくいのかは、次の章で取り上げます。
【参考】
・日本取引所グループ-個人向け取扱い証券会社
・香川県警察-投資詐欺に注意
OSEという略称は正規の大阪取引所のもので口コミが探しにくい

Yahoo!知恵袋・X・5ちゃんねる・爆サイなどのどこにも、OSEの名前やosejpのアドレスを挙げた書き込みはありませんでした。本件の事情から理由を2つ挙げ、「大阪証券取引所」の名前が出てくる別の相談も紹介します。
「OSE」や「大阪証券取引所」で探すと正規の大証の話題が並ぶ
「OSE」は正規の大阪取引所の略称で、2014年までは大阪証券取引所、いわゆる「大証」の名前で親しまれてきました。知恵袋で「大阪証券取引所 金取引」を探すと993件が出ますが、上位はどれも2005年から2013年ごろの、大証の金ETFや日経225先物、東京証券取引所との統合についての質問です。
5ちゃんねるでも、「OSE」で出るのは2004年の大証の株式のスレッドや、オンラインゲームの話題でした。相手が選んだ名前そのものが、正規の取引所の古い話題に埋もれる名前であり、被害の声があっても、名前から探し当てにくい形になっています。
アドレスが20を超えて分かれ同じサイトの話としてまとまらない
OSEの名前のアドレスは5月から21個取られ、そのうち5つは止められています。利用者が知っているのは、相手から示された1つのアドレスだけです。5月に取られたアドレスを案内された人と、7月に取られたosejp.oneを案内された人とでは、同じサイトを使っていても書き込むアドレスが違います。
本件の入口も、Facebookのチャットに届いたメッセージと、その後のLINEでの1対1のやり取りでした。参加者どうしで情報が回るグループと違い、同じ相手から誘われた人どうしが互いを知る場面がありません。アドレスの分散に入口の閉じ方が重なり、書き込みがあっても同じサイトの話として集まりにくい形です。
叔父が大阪証券取引所で働いているという似た相談
名前の使い方が似ていたのは、2024年12月15日に知恵袋に投稿された質問です。投稿者は、マッチングアプリで知り合った相手とのやり取りの中で、外国為替の取引を叔父に教わったという次の話を聞かされていました。
夜は外国為替取引がある、自分の叔父が大阪証券取引所で働いており、叔父に教わった。お金を稼ぐのが楽しい。
と言ってきました。
▼叔父が大阪証券取引所で働いているとする相手の話

出典:Yahoo!知恵袋
この相談が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、「大阪証券取引所」の名前を話の信用づけに使う点が重なります。一方で、時期は本件の約2年前、入口はマッチングアプリ、取引は外国為替で、サイトの名前は出てこず、質問の時点ではお金を送っていません。
しかし書き込みがないことは、OSEのサイトを信じてよい理由になりません。相手が大阪証券取引所や親族の勤め先を持ち出したら、前の章の4つの点を確かめ、すでに振り込んでいるなら次の章で取り上げる手だてを早めに検討してください。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-2024年12月15日の質問(マッチングアプリの相手が叔父の勤め先として大阪証券取引所を挙げたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10308062640)
「引き出されて返金は無理」と言われた後に残る手だて

銀行から、お金はすでに引き出されていて返金は無理だと告げられても、まだ確かめておけることがあります。この章で順に取り上げるのは、銀行の言葉が何を指すのか、誰の身元を確かめればよいのか、写真や動画で見た人物に返金を求めてよいのかの3つの問いです。
銀行の「返金は無理」は口座に残ったお金がないという意味
振り込め詐欺救済法では、振込先の口座が犯罪に使われた疑いがあると、金融機関が口座を止め、公告を経て、口座に残っているお金を被害者に分けます。
被害者に回るのは、口座を止めた時点で残っていた分だけです。金融庁の救済法Q&Aは、残高が少ない場合について次のように説明しています。
消滅預金等債権の額が千円未満の場合は、消滅手続が行われた後、支払手続は行われません。
(後略)
▼残高が千円未満なら分配がないとする救済法Q&A

出典:金融庁
銀行の「引き出されているので無理」は、この口座には分けられるお金がほとんど残っていないという意味とみられます。振込先の口座ごとに手続きは別なので、ほかの振込先の金融機関にも被害が伝わっているかを、警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署への相談とあわせて確かめてください。
振込先の名義人は口座を渡しただけでも罰則の対象になる
振込先の2つの口座は別々の個人の名義で、Facebookで名乗った相手の名前とも違いました。犯罪収益移転防止法第26条は、相手が他人になりすまして口座を使うと知りながら、通帳やカード、振込に必要な情報を渡した人や、お金をもらって渡した人を3年以下の拘禁刑などの罰則の対象にしています。
口座を渡した名義人も、受け取ったお金について返還を求める相手として考えられます。ただ、名義人がどこに住む誰なのか、お金がどこへ移ったのかは相談者の側から確かめる手段がほとんどありません。
弁護士は依頼を受けて、金融機関などへの照会や名義人への請求を相談者の代わりに進めることができます。
Facebookの写真や動画の人物とLINEの相手は別人のことがある
相談者は、相手の写真や勤め先、Facebookに投稿された動画を見て本人だと考えていました。警察庁のSOS47は、実際に会ったことがない人からのお金の話について次のように注意しています。
SNS上に公開された写真や翻訳アプリ、AIなどを利用すれば、誰でも簡単に他人になりすますことができ、本人の音声、動画を作ることができてしまいます。
(後略)
▼写真やAIで誰でもなりすませるとする警察庁の注意

出典:警察庁
写真や動画の人物は、名前や姿を使われただけの別人かもしれません。その人に直接連絡して返金を求めると、関係のない人を巻き込むおそれがあります。FacebookとLINEのやり取り、振込の明細を消さずに残し、専門家に相談して、誰に何を求められるのかを確かめてください。
【参考】
・金融庁-振り込め詐欺救済法 Q&A
・e-Gov法令検索-犯罪による収益の移転防止に関する法律
・警察庁-SNS型ロマンス詐欺(SOS47特殊詐欺対策ページ)
