松井証券を装うmtsjp.coは詐欺?未公開株「ルクレル」の当選で振込を迫る手口とは

チャットで未公開株「ルクレル(648A)」の抽選結果の発表を告げられ、その後「松井証券」と表示された窓口から振込先の口座を示されて、振込を重ねたという相談が寄せられました。振り込むたびに口座の名義は変わり、資産の画面には「凍結資金」の額が並ぶ一方で、引き出せる額は0のままでした。

相談者が使っていたのは、mtsjp.coというアドレスのサイトです。正規の松井証券が公開している案内と照らすと、振込先の名義も、当選の知らせ方も食い違っています。実在するルクレ(648A)の株を売り出した証券会社にも、松井証券の名前はありません。

本記事では、正規の松井証券と日本取引所グループの資料、サイトのプログラム、アドレスの登録の記録を突き合わせた結果を紹介します。アドレスと窓口が同じ日に順に用意された様子も、記録からたどれます。

そのうえで、mtsjp.coの手口の見分け方と、振り込んだお金を取り戻す方法について弁護士が解説します。

未公開株「ルクレル」の当選を告げられ指定の口座へ振り込むまで

当選案内から振込へ。チャットで抽選結果を通知。窓口が振込先を指定。資産表示は出金可能額ゼロ。事案名「松井証券を装うmtsjp.co」を右上に示す説明図。

相談者は株の投資の話を進める中で、未公開株「ルクレル(648A)」の抽選の案内を受けました。その後、「松井証券」と表示された窓口から振込先の口座を示され、振込を重ねていきます。

この章では、チャットで届いた抽選結果の案内、「松井証券」の名前で示された振込先、振込の後に資産の画面に表示された数字の3つの場面をたどります。振込先を示した窓口と入金案内の画面には、実在する証券会社の名前が表示されていました。

チャットで未公開株「ルクレル(648A)」の抽選結果を告げられた

相談者のもとに届いたチャットは、未公開株「ルクレル(648A)」の抽選結果を発表するという内容でした。あわせて、口座の資金に余裕があるかを前もって確かめておくよう促しています。

「648A」は、株式の銘柄を表す4けたの証券コードと同じ形です。上場する前の株を抽選で買えるという話に、実在しそうな銘柄名とコードを添えた案内でした。資金の余裕を確かめさせることで、当選した後の支払いに備えてお金を用意させる流れになっています。

「松井証券」と表示された窓口が振込先と明細の画像を求めた

振込先を案内したのは、「松井証券」と表示されたオンラインカスタマーサービスです。窓口は振込先の口座を示し、振り込んだら明細のスクリーンショットを送るよう求めました。

別の「松井証券」の入金案内の画面でも、予約した金額を指定の口座へ振り込むよう案内されています。この画面のアドレス欄には「mtsjp.co/#/user」と表示されていました。

振込先として示された口座の名義は1つに決まっておらず、個人の名前のものもあれば法人の名前のものもありました。振り込んだ後は、明細の画像を窓口へ送って確認を受ける流れでした。

▼「松井証券」と表示されたmtsjp.coのホーム画面

mtsjp-「松井証券」と表示されたmtsjp.coのホーム画面

出典:mtsjp.co

振込を重ねた後の資産の画面には凍結資金だけが並んでいた

相談者が見ていた資産の画面も、アドレス欄は入金案内と同じ「mtsjp.co/#/user」で、2つは同じサイトの中の画面でした。現金口座の欄には「凍結資金」の額が大きく出ている一方で、自由に使えるお金を示す「利用可能資金」は0です。

数字の上では資産があっても、引き出せる額としては1円も表示されていません。まとめると、チャットで未公開株の当選をちらつかせ、「松井証券」の名前の窓口が振込のたびに違う口座を示して入金を重ねさせたことが被害につながった経緯です。

次の章では、示された口座の名義を、正規の松井証券が案内している振込先の名義と比べます。あわせて、正規の松井証券が新規公開株の当選をどのように知らせ、代金をどこから払う仕組みにしているかも確かめます。

【参考】
・mtsjp.co(https://mtsjp.co/)

「松井証券」の名前で示された口座は正規の振込先と名義が違う

振込先の名義を照合。正規の名義は共通。個人名や別法人名は不一致。公式ドメインも確認。事案名「松井証券を装うmtsjp.co」を右上に示す説明図。

相談者に示された振込先が、本当に松井証券の口座だったのかは、正規の松井証券が誰でも読めるように公開している入金や新規公開株の案内と比べれば、相談者自身でも確かめられます。

この章では、正規の松井証券のよくある質問から「振込先の口座の名義」と「新規公開株の当選の知らせ方と代金の払い方」を、注意喚起のページから「幹事証券会社をかたる勧誘」と「他社を経由した入金」の記述を取り上げます。どれも、相談者が受けた案内とは食い違っています。

正規の松井証券の振込先は客ごとに割り当てられ名義は共通

正規の松井証券は、よくある質問「松井証券への入金先(振込先)銀行はどこですか。」で、銀行から入金するときの振込先を次のように説明しています。

「入金先銀行口座」は、お客様一人ひとり異なり、総合口座開設時に1つ割り当てられます。
(中略)
振込先の口座名義人は、共通で「マツイショウケン(カ」になります。

▼振込先の名義を「マツイショウケン(カ」とする正規のFAQ

mtsjp-振込先の名義を「マツイショウケン(カ」とする正規のFAQ

出典:松井証券

振込先の口座は口座を開いたときに1つ決まり、名義はどの客でも「マツイショウケン(カ」です。個人の名前や別の法人の名前の口座へ振り込ませる時点で、正規の松井証券への入金ではありません。振込のたびに名義が変わる口座を示されたら、その段階で払うのを止めるべき合図です。

正規のIPOの当選は口座の画面で知らせ代金も口座から払う

新規公開株(IPO)の抽選の結果について、正規の松井証券は口座の画面の「状態」欄で確かめるよう案内しています。当選した人には、口座の【ホーム】画面のメッセージでも知らせると書かれており、その直後に「メールでのご連絡は行っていません。」とあります。

▼当選をメールで知らせないとする正規のFAQ

mtsjp-当選をメールで知らせないとする正規のFAQ

出典:松井証券

当選した株の代金は、別のよくある質問によると、購入申込期間の最終日までに口座に用意しておくものです。使える額は【購入申込】画面の「購入申込参考余力」で確かめます。正規の松井証券では、当選の知らせがチャットで届くことはなく、代金も指定の口座に振り込むのではなく自分の口座の残高から充てる流れです。

正規の松井証券は幹事と誤認させる未公開株の勧誘に注意を促す

正規の松井証券の「各種犯罪手口とその対策」のページには、松井証券の名前を使った勧誘について次の記述があります。

(前略)
松井証券が幹事証券会社であると誤認させるような表現を用いて未公開株式や各種金融商品の買付け勧誘を受けたとのご連絡も頂戴しております。

幹事証券会社とは、新しく上場する会社の株を引き受け、投資家に売り出す役割を担う証券会社のことです。「松井証券」の名前の窓口が、未公開株の抽選を理由に入金を求める流れは、ここで注意を促している勧誘の形に近いものです。「ルクレル(648A)」と実在の銘柄の関係は次の章で確かめます。

▼幹事と誤認させる勧誘への正規の松井証券の注意

mtsjp-幹事と誤認させる勧誘への正規の松井証券の注意

出典:松井証券

他社を経由した入金は一切ないと正規の松井証券は書いている

同じページは、続く段落で入金の経路にも触れています。

(前略)
また、他社を経由してご入金、お取引いただくような行為は一切行っていません。

さらに、松井証券の名前を無断で使う業者の特徴として、「振込先を指定して入金を要求する」業者が見受けられると書き、特徴の1つに次の項目を挙げています。

松井証券と類似した名称やドメインを用いる。

▼類似した名称やドメインに触れる正規の注意

mtsjp-類似した名称やドメインに触れる正規の注意

出典:松井証券

正規の松井証券は、関東財務局長(金商)第164号の登録を受けた証券会社で、公式のアドレスは「matsui.co.jp」です。相談者が使っていた「mtsjp.co」は、この公式のアドレスとは別のものです。

振込を求められたら、振込先の名義が「マツイショウケン(カ」か、画面のアドレスが「matsui.co.jp」かの2点を確かめてください。どちらかが違えば、松井証券の名前を使った別の相手とのやり取りだと考えられます。

【参考】
・松井証券-松井証券への入金先(振込先)銀行はどこですか。(https://support.matsui.co.jp/faq/show/1862?site_domain=faq)
・松井証券-IPO(新規公開株)で、需要申告の抽選結果は、いつ、どこで確認できますか。(https://support.matsui.co.jp/faq/show/1975?site_domain=faq)
・松井証券-IPO(新規公開株)の購入資金は、いつまでに必要ですか。(https://support.matsui.co.jp/faq/show/1976?site_domain=faq)
・松井証券-各種犯罪手口とその対策(https://www.matsui.co.jp/support/security/crime-control/)

実在の「ルクレ(648A)」の引受人に松井証券は入っていない

銘柄と引受人を確認。銘柄名は一文字違い。引受人は公開資料で照合。上場後は未公開株ではない。事案名「松井証券を装うmtsjp.co」を右上に示す説明図。

相談者に届いた「ルクレル(648A)」の案内には、実在する銘柄と同じ証券コードが添えられていました。案内のもっともらしさは、この実在の銘柄の情報から生まれています。

この章では、日本取引所グループ(JPX)が公開している新規上場会社の資料と、会社が国に出した有価証券届出書から、648Aの銘柄の上場日と株を売り出す証券会社(引受人)を確かめます。あわせて、上場した後の株が「未公開株」と呼べるのかも整理します。

648Aは10月15日に東証グロースに上場したルクレの証券コード

JPXの新規上場会社の一覧によると、648Aは株式会社ルクレの証券コードです。東京証券取引所は2026年9月8日に上場を承認し、ルクレは10月15日に東証グロース市場に上場しました。

▼引受人に松井証券がいないルクレの新規上場会社概要

mtsjp-引受人に松井証券がいないルクレの新規上場会社概要

出典:日本取引所グループ

資料に載る日程は、需要の申告を受け付けるブック・ビルディング期間が9月29日から10月2日まで、購入の申込期間が10月6日から9日までです。正規の名前は「ルクレ」で、相手が案内した「ルクレル」とは1文字違います。実在の銘柄の名前に近い名前と、同じ証券コードが使われていたことになります。

届出書の引受人は野村證券とSBI証券の2社だけ

JPXの新規上場会社概要は、幹事取引参加者を野村證券、元引受取引参加者等を野村證券とSBI証券としています。会社が出した有価証券届出書の引受人の欄にも、この2社の名前が並び、松井証券の名前は1か所も出てきません。

新規公開株の抽選は、引受人の証券会社や販売を任された証券会社で行われます。正規の松井証券が公開している2026年の取扱銘柄の一覧にも、ルクレ(648A)は載っていません。松井証券の名前で「ルクレル(648A)」の抽選結果を知らせる話は、実在の銘柄の売り出し方と合っていないことになります。

上場した後の株は「未公開株」ではなく抽選の対象でもない

ルクレの株は10月15日から取引所で売買されており、その時点で「未公開株」ではありません。上場の前の需要の申告と購入の申込も、10月9日までに締め切られています。上場の日程が分かれば、「未公開株の抽選」がいつまで成り立つ話なのかを確かめられます。

JPXのページ「投資詐欺等についてのご注意」は、証券会社の名前が勧誘に使われる場合にも触れています。

(前略)
なお、その発行会社自身が詐欺的な行為を行っていたり、また、金融商品取引業者(証券会社)やマーケットメイカー等の名を騙って勧誘を行ったりする場合もあるようですので、ご注意ください。

▼証券会社の名を騙る未公開株の勧誘へのJPXの注意

mtsjp-証券会社の名を騙る未公開株の勧誘へのJPXの注意

出典:日本取引所グループ

これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、証券会社の名前で未公開株を勧められたら、銘柄名と証券コードでJPXの新規上場会社情報を開き、引受人に自分の証券会社が入っているかを確かめてください。

【参考】
・日本取引所グループ-新規上場会社情報
・日本取引所グループ-新規上場会社概要(株式会社ルクレ)
・日本取引所グループ-[注意]偽サイト、SNSや投資詐欺等にご注意ください!
・EDINET-株式会社ルクレ 有価証券届出書(新規公開時)
・松井証券-2026年の取扱銘柄(https://www.matsui.co.jp/stock/ipo/list/2026/)

mtsjp.coのプログラムに銀行の振込先を出す画面はない

振込依頼はサイトの外。入金ボタンは窓口へ移動。納付はサイト内残高を使用。振込先を出す機能はない。事案名「松井証券を装うmtsjp.co」を右上に示す説明図。

相談者は「松井証券」と表示された窓口から振込先を示されました。では、mtsjp.coのサイトそのものは、利用者にお金を入れさせるとき、振込先をどのように案内する作りになっているのでしょうか。

この章では、マイページの「入金」ボタン、チャットの窓口を開くときの処理、新規公開株の当選の後に出る「納付」ボタン、資産の画面の数字の出どころの4点を確かめます。画面の作りは、サイトが読み込むプログラムを取得して確かめました。ログインの後に出る画面も、同じ方法で読んでいます。

マイページの「入金」を押すとオンラインカスタマーサービスへ移る

mtsjp.coのマイページには、「総資産」の下に「現金口座」の欄があり、「利用可能資金」と「凍結資金」が並びます。その下に「入金」と「出金」のボタンがあります。

▼利用可能資金と凍結資金が並ぶmtsjp.coのマイページ

mtsjp-利用可能資金と凍結資金が並ぶmtsjp.coのマイページ

出典:mtsjp.co

プログラムを調べたところ、「入金」ボタンは「オンラインカスタマーサービス」の画面へ移るだけの作りでした。その画面にあるのは、チャットの窓口を開く「オンラインカスタマーサービス」の欄と、「デジタル通貨入金」の欄の2つです。

▼入金で開くmtsjp.coのオンラインカスタマーサービス

mtsjp-入金で開くmtsjp.coのオンラインカスタマーサービス

出典:mtsjp.co

振込先の口座番号や名義を利用者に見せる画面は、mtsjp.coのどこにも用意されていません。窓口を開くと、上部に渦のロゴと「松井証券」の名前が出ます。振込先は、この窓口の担当者が利用者ごとに示す仕組みとみられます。

窓口は利用者の信用スコアまで担当者に知らせる

チャットの窓口を開くとき、プログラムは利用者の情報を窓口の担当者の側へ渡しています。渡す項目は、氏名、本人確認が済んでいるかどうか、「信用分」(信用スコア)、銀行口座を登録しているかどうかです。

信用スコアは、サイトの運営側が利用者ごとに持たせている数字です。担当者は、利用者の名前やスコアを見ながらやり取りできる作りになっています。相談者とのやり取りでこの数字がどのように使われたのかは分かりませんが、窓口の向こうにいるのは利用者の情報を手元に置いた運営側の担当者です。

IPOの「納付」ボタンはサイトの中の残高から払う処理を呼ぶだけ

mtsjp.coには新規公開株(IPO)の申込みの画面があります。当選すると、申込みの履歴に「当選おめでとうございます」「新株発行、お早めに資金を支払ってください」と出て、「未払い金額」と赤い「納付」ボタンが表示されます。

▼当選後の支払いを促すmtsjp.coのプログラムの文言

mtsjp-当選後の支払いを促すmtsjp.coのプログラムの文言

出典:mtsjp.co

プログラムには、英語の「You have been successfully allocated new shares, please pay the funds promptly」の文と、ボタンの「Pay Immediately」も書かれていました。

「納付」を押したときに呼ばれるのは、サイトの中の残高から払う処理だけです。銀行の口座へ振り込んで当選株の代金を払う手順は、このサイトのどこにもありません。窓口が指定の口座への振込を求めた流れは、サイトの仕組みの外で行われたものとみられます。

当選も未払い金額も凍結資金もサーバーが決める数字

当選したかどうかは、画面の中で抽選しているのではなく、サーバーから届く申込みの状態で決まります。「未払い金額」の欄も、サーバーが送ってくる2つの金額を引き算した結果を出しているだけです。

マイページの「凍結資金」も、サーバーの値を表示するだけで、凍結を解く手順は利用者の画面にありません。出金を申し込む画面に並ぶ注意書きの中には、「保有ポジションがある場合、出金はできません。」と「出金手数料はすべて無料です。」が含まれています。

画面の当選も残高も凍結も、運営側が決めた数字を見せられていると考えて、追加の入金を求められても応じないでください。凍結の解除や当選株の代金など、どの名目の振込でも同じです。

【参考】
・mtsjp.co(https://mtsjp.co/)
・mtsjp.co-プログラム(https://mtsjp.co/static/js/app.9c5a336a8f058a3a2645.js)

mtsjp.coとmtsjp.ccは2秒差で取得された同じサイト

二つのアドレスが合流。取得時刻の差は2秒。HTMLとチャット窓口が共通。窓口は同日に作成。事案名「松井証券を装うmtsjp.co」を右上に示す説明図。

mtsjp.coがいつ、どのような順番で用意されたのかは、誰でも引けるアドレスの登録の記録と、サイトを開いたときに読み込まれる窓口の設定から日付と時刻まで読み取れます。

この章では、同じ名前のもう1つのアドレスmtsjp.cc、取得の直後に作られた「松井証券」の名前のチャットの窓口、別の会社名で用意されたVIPの窓口、プログラムに残る他の国向けの項目の4点を取り上げます。どれも、取得の日の2026年9月2日につながっています。

mtsjp.ccも1文字違わないHTMLで同じチャットを読み込む

アドレスの登録の記録(WHOIS)によると、mtsjp.coは2026年9月2日15時03分48秒(日本時間)に取得されています。同じ名前のmtsjp.ccは、登録の記録(RDAP)で15時03分50秒の取得です。

▼mtsjp.coの登録日時を示すWHOISの記録

mtsjp-mtsjp.coの登録日時を示すWHOISの記録

出典:whois.com

▼mtsjp.ccの登録日時を示すRDAPの記録

mtsjp-mtsjp.ccの登録日時を示すRDAPの記録

出典:tld-rdap.verisign.com

2つのアドレスは、登録を受け付けた会社は別でも、取得の時刻は2秒しか違いません。どちらも同じサーバーにつながり、返すHTMLは1文字も違わず、同じチャットの窓口を読み込みます。正規の松井証券の「matsui.co.jp」は1996年の登録で、この2つのアドレスとは関係のない別のものです。

取得の約35分後に「松井証券」の名前のチャットの窓口が作られた

mtsjp.ccのサイトでチャットの窓口を開いても、上部には渦のロゴと「松井証券」の名前が出ます。mtsjp.coで開くものと同じ窓口が、どちらのアドレスからも開く作りで、利用者からは区別がつきません。

▼mtsjp.ccで開く「松井証券」の名前のチャットの窓口

mtsjp-mtsjp.ccで開く「松井証券」の名前のチャットの窓口

出典:mtsjp.cc

サイトが読み込む窓口の設定を調べたところ、窓口の名前は「松井証券」で、作成の日時は9月2日15時39分(日本時間)でした。アドレスを取得してから約35分後に、「松井証券」の名前の窓口が用意されたことになります。自動で出るあいさつの文は中国語のままでした。

VIPの窓口は松井証券ではない会社名のLINE WORKSにつながる

サイトの設定のデータでは、「VIPカスタマーサービス」の行き先がLINE WORKSの招待のアドレスになっていました。開くと、表示名が「カスタマーサービス」の相手とのトークを始める画面が出て、所属には松井証券ではない会社の名前が表示されます。

▼VIPの窓口が開くLINE WORKSのカスタマーサービス

mtsjp-VIPの窓口が開くLINE WORKSのカスタマーサービス

出典:contact.worksmobile.com

アイコンは、「証券」と書かれた看板の前でヘッドセットを付けた女性の写真です。この画像のアドレスに含まれる時刻を日本時間に直すと、9月2日11時37分でmtsjp.coの取得の約3時間半前です。窓口のアカウント、2つのアドレス、チャットの窓口が、同じ日のうちに順に用意されたとみられます。

インドや韓国向けの項目と別の業者名が残るプログラム

サイトの設定のデータを開くと、名前や説明の欄の大半に「Mitrade」と入っています。Mitradeは海外の差金決済取引(CFD)の業者の名前で、金融庁の登録業者の検索では見つからず、Mitrade自身のサイトは日本の居住者に向けた情報ではないと表示しています。

▼設定の大半の欄が「Mitrade」のmtsjp.coのデータ

mtsjp-設定の大半の欄が「Mitrade」のmtsjp.coのデータ

出典:mtsjp.co

画面に出す言葉を言語ごとに置き換えるための一覧には、インドの銀行の番号と送金の仕組みを指す「IFSC」「UPI」の項目があり、日本語の欄にも「銀行IFSCを入力してください」とあります。ほかにも、時刻をインドのコルカタの時間に直す処理や、韓国語の画面の題名、中国の株の信用取引の項目が残っていました。

▼インドの銀行の項目IFSCとUPIが残るプログラム

mtsjp-インドの銀行の項目IFSCとUPIが残るプログラム

出典:mtsjp.co

他の国で使われていた仕組みに「松井証券」の名前を載せて、日本の利用者に向けた可能性があります。名前の見た目は正規の会社に似せられても、アドレスの登録の日付やプログラムの中身までは取り繕えません。気になるサイトは、アドレスを登録の記録の検索に入れて、取得の日付を確かめてください。

【参考】
・whois.com-mtsjp.co(https://www.whois.com/whois/mtsjp.co)
・tld-rdap.verisign.com-mtsjp.cc(https://tld-rdap.verisign.com/cc/v1/domain/mtsjp.cc)
・mtsjp.co-設定のデータ(https://mtsjp.co/v2api/api/site/getInfo.do)
・mtsjp.cc(https://mtsjp.cc/)
・Mitrade(https://www.mitrade.com/en)

「当選」「納付」「凍結」の言葉が出たら正規の手続きと比べる

言葉より手続きを照合。当選は自分の口座で確認。振込先の名義を確認。解除名目の追加送金を止める。事案名「松井証券を装うmtsjp.co」を右上に示す説明図。

mtsjp.coの勧誘では、「抽選」「当選」「納付」「凍結」といった、本物の証券取引でも使われる言葉が次々に出てきました。言葉そのものはもっともらしくても、正規の証券会社での手続きと並べると、食い違いがはっきりします。

相手が持ち出す言葉ごとに、比べる先と確かめ方をまとめます。

  • 「抽選」「当選」と言われたら:正規の松井証券は、当選を口座の画面とホームのメッセージで知らせ、メールでは知らせません。チャットで当選を知らされたら、まず自分の証券会社の口座に入って、同じ表示があるかを見てください。銘柄名と証券コードでJPXの新規上場会社情報を開けば、その銘柄の引受人に自分の証券会社が入っているかも分かります。
  • 「入金先」「振込先」を示されたら:正規の松井証券の振込先は客ごとに決まった口座で、名義は「マツイショウケン(カ」です。名義がこれと違う口座は、個人のものでも法人のものでも、松井証券への入金先ではありません。口座が振込ごとに入れ替わるやり方も、正規の松井証券の入金の仕組みには見当たりません。
  • 「納付」「未払い金額」と言われたら:正規の新規公開株の代金は、購入申込期間の最終日までに自分の口座に用意したお金から充てます。mtsjp.coの「納付」もサイトの中の残高を使う作りで、外の口座へ振り込む手順はありません。窓口から振込を求められた時点で、サイトの仕組みとも食い違っています。
  • 「凍結」「出金できない」と言われたら:mtsjp.coの「凍結資金」はサーバーが決めた数字を表示しているだけで、凍結を解く手順は利用者の画面にありません。解除のための入金を求められても、払えば出金できるという根拠は見当たりません。
  • 「松井証券」の名前が出てきたら:画面のアドレスが「matsui.co.jp」か、アプリの提供元が「松井証券株式会社」かを確かめてください。mtsjp.coとmtsjp.ccは、松井を思わせる短いつづりのアドレスで、どちらも2026年9月に取得されたものです。

言葉を1つずつ正規の手続きと照らせば、どこで話がずれたのかが見えてきます。ずれに気づいた後に、別の名目でさらに支払いを求められても応じず、専門家に相談してください。

【参考】
・日本取引所グループ-新規上場会社情報
・松井証券-各種犯罪手口とその対策(https://www.matsui.co.jp/support/security/crime-control/)

mtsjp.coの口コミは実在のルクレの情報に埋もれる

口コミが見つからない理由。短い綴りは別会社と重なる。似た銘柄名は公開情報に埋もれる。別件の相談は同一案件とみなさない。事案名「松井証券を装うmtsjp.co」を右上に示す説明図。

mtsjp.coやルクレルについて、X、Yahoo!知恵袋、教えて!お金の先生、5ちゃんねる、爆サイなどで投稿を探しましたが、利用した人の口コミは見つかりませんでした。

見つからない理由は、アドレスの短いつづりと、案内に使われた銘柄の名前にあります。この章では、検索で出てくるものと、名前は違っても同じ型の手口に遭った人の相談を紹介します。

「mtsjp」で検索すると同じ綴りの別の会社が出てくる

「mtsjp」で検索すると、まず出てくるのは同じつづりのアドレスを使う国内の別の会社のサイトで、本件のサイトとはつながりがありません。検索結果の上位は、その会社の事業の案内で占められます。

mtsjp.coとmtsjp.ccは2026年9月2日に取得されたばかりのアドレスで、検索の結果に出るほどの記録がまだありません。短いつづりのアドレスは、検索すると別の会社の情報に紛れてしまい、名前から本件にたどり着きにくいため、被害に遭った人の書き込みがあっても見つけにくくなります。

「ルクレル」で探すと実在のルクレのIPOの記事が並ぶ

「ルクレル」や「648A」で検索すると、結果を占めるのは実在のルクレの新規上場の案内や、初値を伝える記事です。相手が案内した「ルクレル」の名前で書かれた口コミは見つかりませんでした。

「松井証券 詐欺」で探しても、目立つのは正規の松井証券をかたる偽のメールの話題です。実在の銘柄に近い名前と実在の証券会社の名前を組み合わせた勧誘は、正規の情報や別の手口の話題の中に埋もれ、口コミとして積み重なりにくいといえます。

IPOの当選を理由に入金を迫られる相談は以前からある

名前は違っても、新規公開株の当選を理由に入金を迫られた相談は以前からあります。教えて!お金の先生の2025年8月5日の質問では、アプリで応募したIPOに口座の残高を大きく超える株数が当選し、不足分の170万円の入金を求められたとあります。払わなかった場合として、次の説明を受けたと書かれています。

(前略)
【●もし期日までに購入申込が完了しなかった場合は、「違約」と見なされ、
口座の信用スコアに悪影響を及ぼす可能性があります。
その結果、口座内の資金が凍結されたり、今後の取引に制限がかかる恐れもあります。
(後略)

▼IPOの当選後に不足分の入金を迫られた2025年の質問

mtsjp-IPOの当選後に不足分の入金を迫られた2025年の質問

出典:教えて!お金の先生

この質問には松井証券の名前もサイトのアドレスも出てこず、時期も本件より1年以上前です。それでも、当選、不足分の入金、払わなければ凍結という流れと、「信用スコア」「凍結」の言葉は、mtsjp.coの画面や窓口の作りと重なります。

回答の1つは「証券会社の公式サイト以外で、IPO株の抽選なんてありません。」と書いています。これは回答者個人の見方ですが、正規の松井証券も、当選は口座の画面で知らせ、代金は口座の残高から充てると案内しています。

質問から約4時間後には、「私も今日午前に全く同じ状況になりました。」「文面全くおなじです。」と書いた回答も付いています。同じ文面が複数の人に送られていたことがうかがえます。

検索で口コミが出てこない手口でも、こうした相談の中に同じ流れが残っていることがあります。当選や凍結を理由に振込を求められたら、名前で何も見つからなかったとしても手を止め、正規の証券会社の案内と見比べてください。

【参考】
・Yahoo!ファイナンス-教えて!お金の先生-2025年8月5日の質問(アプリのIPOに当選し不足分の入金を求められたという相談)(https://finance.yahoo.co.jp/brokers-hikaku/experts/questions/q10318344250)

振込のたびに名義が変わる口座に送ったお金を取り戻す道と相談先

振込を止め、記録を残す。追加の入金には応じない。明細を口座ごとに保管。金融機関・警察へ早めに相談。事案名「松井証券を装うmtsjp.co」を右上に示す説明図。

相談者は、「松井証券」の窓口に言われるまま、名義の違う口座へ振込を重ねてきました。振り込むたびに明細の画像を窓口へ送り、資産の画面には凍結資金の額だけが残っている段階です。

この段階で浮かぶのは、凍結を解くための入金に応じるべきか、送ったお金を取り戻す手続きに何が要るか、戻るのはいくらなのか、名乗らない相手に誰がどう向き合うのかという4つの問いです。順に取り上げます。

凍結を解くための入金を求められても応じない

mtsjp.coの「凍結資金」は、サーバーが決めた数字を表示しているだけで、凍結を解く手順は利用者の画面にありません。「解除のために入金を」と言われても、払えば出金できるという根拠はどこにも見当たりません。

正規の松井証券は、他社を経由した入金を一切行っていないとしています。次の振込を求められたら、名目が何であっても止めてください。判断に迷うときは、正規の松井証券のページも案内している金融庁の「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」(0570-050588)で確かめられます。

窓口に送った明細の画像は自分の手元にも残しておく

振り込んだお金を取り戻す手続きの1つに、振り込め詐欺救済法があります。金融機関が犯罪に使われた口座の取引を止め、その口座に残ったお金を届け出た人たちに配る手続きです。申請のときにそろえる書類は、金融庁の「振り込め詐欺救済法 Q&A」のQ22に例が載っています。

・ 対象被害者等であることを証明する資料(振込明細書の写し等)
(注) 振込明細書を紛失してしまった場合でも、申請を行うことは可能です。その場合には、振込の内容等を金融機関に十分に説明する必要があります。

相談者は、振込のたびに明細の画像を相手の窓口へ送っていました。同じ明細や通帳の記帳、振込の控えは、口座ごとに自分の手元にもそろえておいてください。口座ごとの記録がそろったら、振込先になった金融機関の1つ1つと、#9110の警察相談専用電話や近くの警察署へ、なるべく早く被害を伝えてください。

戻るのは画面の凍結資金ではなく口座に残った分

救済法で分けられるのは、振込先の口座に残っているお金です。mtsjp.coの画面に出ていた「凍結資金」の額が、そのまま戻ってくるわけではありません。同じQ&AのQ30は、分ける額の決め方を次のように説明しています。

(前略)
ただし、申請された被害者の総額が、預金等の残高を超える場合には、その残高を各人の被害額で按分した額が支払われます。

同じ口座に振り込んだ人がほかにもいれば、口座に残ったお金をその人たちと分け合うことになります。届け出が遅れるほど、口座のお金が引き出されて残りが少なくなるおそれがあるため、名義の違う口座が多いときほど、1つずつ早めに知らせることが大切です。

松井証券の名前の裏にいる相手を突き止めるには手がかりを束ねる

口座に残ったお金で足りない分は、お金を受け取った相手に返すよう求めることになります。ところが、相手は「松井証券」の名前を使っているだけで、正規の松井証券とは関係がありません。正規の松井証券に問い合わせても、相手がだれかは分かりません。

手がかりになるのは、振込のたびに違う口座の名義、mtsjp.coとmtsjp.ccのアドレス、チャットの窓口とLINE WORKSの記録です。こうした手がかりを束ねて、口座ごとの届け出と相手への請求を並行して進めるのは、個人ではなかなか手が回りません。

弁護士は、口座の名義人など相手への請求や救済法の申請を、本人に代わって進めることができます。振込先が多く、相手が名乗らないときほど、口座ごとの記録を持って早い段階で専門家に相談するのが近道です。

【参考】
・金融庁-振り込め詐欺救済法 Q&A
・金融庁-振り込め詐欺救済法
・松井証券-各種犯罪手口とその対策(https://www.matsui.co.jp/support/security/crime-control/)

LAWYER

弁護士紹介

翔躍法律事務所 代表弁護士 近藤裕之

翔躍法律事務所 代表弁護士

近藤 裕之

登録番号
60051

元裁判官。裁判官として民事事件に携わったほか、法務省大臣官房参事官として国の訟務にも従事しました。

主な経歴

  1. 仙台地方裁判所 判事補
  2. 東京地方裁判所 判事
  3. 東京地方裁判所 民事第18部 判事
  4. 法務省大臣官房参事官(訟務担当)

被害に気づいた今からでも、振込先口座や送金記録、相手とのやり取りを手がかりに、返金に向けた対応を検討できる場合があります。まずは、現在の状況をお聞かせください。

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翔躍法律事務所の弁護士へ。

元裁判官の弁護士が被害状況と資料を確認し、返金請求など取り得る法的対応をご案内します。資料が揃っていない段階でもご相談いただけます。