今回の相談は、AIで相場を分析するとうたうLINEグループ「AI 相場パターン分析レポート」で、トレーダーを名乗る人物からコピートレードに誘われたのが始まりです。金融庁も、AI診断や分析レポートの配信を入口にSNSへ誘い、投資話を持ち掛ける手口に注意を呼びかけています。
相談者は最初の運用サイト「CTPSYSTEM」で出金が止まり、待つ間に勧められた「MBS MASTER(mbsmaster.com)」へ入金しましたが、そこでも出金のボタンが反応しません。
調べると、MBS MASTERの入出金は別の会社を名乗るウォレット「SLUBONE(slubone.com)」が受ける作りでした。2つのドメインは同じ日に14分差で取得され、規約には入金から20日は出金できず、追加の入金で期間がやり直しになる条項がほぼ同じ文で入っています。
本記事では、2つのサイトの画面と規約、ドメインの登録の記録を公的機関の資料と照らし合わせ、出金を待つ間に別の運用先を勧められたときに確かめたい点を弁護士が解説します。
MBS MASTERに関するトラブルの概要

今回の相談は、「AI 相場パターン分析レポート」というLINEグループで、トレーダーを名乗るAtomからFXのコピートレードを勧められたのが発端です。最初の運用サイトで出金が止まると、次の運用先にMBS MASTER(mbsmaster.com)を案内され、そこでも出金ボタンが反応しませんでした。
この章では、AIの分析を入口にした勧誘への金融庁の注意喚起、グループへの招待と無登録の事業者を挙げる警察庁の注意点、MBS MASTERと入出金用のウォレットをうたうSLUBONE(slubone.com)の運営会社と日本での登録の3点を取り上げます。
AI分析のレポートを配信するとしてSNSへ誘う投資勧誘
金融庁は、SNS上の投資詐欺が疑われる広告や投稿について情報を受け付け、似た事例が複数寄せられたものを手口ごとの表にして公表しています。その表に、AIの分析をうたって投資へ誘う事例が次のように載っています。
AI診断を謳い文句にウェブサイトへ誘い込み、分析レポートを配信すると偽ってSNSへ誘導し、投資話を持ち掛ける。
▼AI診断を入口にSNSへ誘う事例を挙げる金融庁のページ

出典:金融庁
同じ表のすぐ下には、「国内に登録のない海外FX業者をSNS上で紹介している事例」も並んでいます。AIの分析を入口に人を集め、日本で登録を受けていない業者のFXへ進ませる流れは、2つの事例をつなげた形です。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、AIによる相場の分析をうたうグループから運用の話が始まった点は金融庁が挙げる事例と重なります。
警察庁もグループチャットへの招待と無登録の事業者を注意点に挙げる
警察庁は、SNSを使ったもうけ話への注意を呼びかけるページで、被害に気づくための注意点を5つ並べています。そのうち次の2つが今回の相談にそのまま当てはまります。
(前略)
・グループチャットなどに勝手に招待された。[②]
(中略)
・投資に勧誘しているのは、無登録の事業者だった。
(後略)
▼グループへの招待と無登録の事業者を挙げる警察庁の注意点

出典:警察庁
今回の相談でも、2,000人を超えるLINEのグループの中でトレーダーが相場の分析を配信し、その案内からコピートレードが始まっています。勧誘している側が日本で登録を受けた事業者かどうかは、次の項目で運営会社の名前から確かめます。
MBS MASTERとSLUBONEは日本で登録を受けた業者ではない
MBS MASTERとSLUBONEの規約は、それぞれ別の会社を運営者としています。MBS MASTERは「Kinetiq Ventures Ltd.」、SLUBONEは「Horizon Apex International Inc.」で、所在地はどちらもカリブ海のネビス島の通りの名前だけです。
▼ネビス島の別々の会社を運営者とする2つの規約

出典:mbsmaster.com/slubone.com
「MBS MASTER」と「SLUBONE」の名前は、金融庁の金融事業者一括検索に入れても1件も表示されません(画面は後の章で示します)。海外の業者であっても、日本で登録を受けずに日本の居住者とFXの取引をすることはできないと消費者庁も明記しています。
(前略)
たとえ海外で金融商品取引のライセンスを持つ業者であっても、日本で登録を受けずに日本に居住する者に対して金融商品取引を業として行うことは禁止されています。
▼海外の免許があっても日本の登録が要るとする消費者庁のページ

出典:消費者庁
運営会社の名前が示されていても、それだけで日本の利用者とFXの取引をしてよい業者だということにはなりません。入金する前に、運営会社の名前を金融庁の一括検索で調べてください。
【参考】
・金融庁-それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!
・MBS MASTER-Terms of Service(https://mbsmaster.com/terms)
・SLUBONE-Service Terms(https://slubone.com/terms)
・消費者庁-無登録業者との外国為替証拠金取引(FX)にご注意ください!
MBS MASTERへ誘導され被害につながるまでの経緯

MBS MASTERとの接点は、AIで相場を分析するとうたうLINEグループに参加したことでした。グループでの勧誘から、最初の運用サイトへの入金、出金の停滞、MBS MASTERへの乗り換え、そこでも出金できなくなるまでを5つの場面に分けて見ていきます。
AIで相場を分析するというLINEのグループに参加する
相談者が参加したのは、「AI 相場パターン分析レポート」という名前のLINEグループです。メンバーは約2,157名にのぼり、トレーダーを名乗るAtomが相場についての配信を続けていました。
このグループの中で、Atomは自分の取引を参加者の口座でそのまままねるコピートレードを勧めていました。大勢が同じ配信を見ている場での勧誘は、話の確かさを自分で確かめる前に周りに合わせて動きやすい状況をつくります。グループ内の指導から取引へ進む例として、LINEの勉強会で先生役が株売買を指示する勧誘も紹介しています。
トレーダーの指示でコピートレードの運用サイトへ入金を重ねる
Atomの指示を受けて、相談者は最初の運用サイト「CTPSYSTEM」(cmc-stps.com)でコピートレードを始めました。入金は投資の名目での銀行振込で、その後も入金を重ねています。
追加の入金で指定された振込先は、運用サイトの名前とは別の法人名義の口座でした。しかも振込のたびに名義が違い、相談者は2つの法人名義の口座へそれぞれ振り込んでいます。
出金を申請しても返信を待つだけの状態が続く
入金の後、相談者はCTPSYSTEMで出金を申請しました。ところが本人確認(KYC)や不正なアカウントの調査を理由に、運営側からの返信を待つだけの状態が続き、出金は進みませんでした。
審査を理由に止められると、利用者の側から進み具合を確かめる手立てはありません。相談者も、運営側の返事を待つ以外に、自分の側から出金を進める方法のない状態に置かれました。
出金を待つ間に新しい運用先としてMBS MASTERを勧められる
出金を待っている間に、Atomは新しい運用先としてMBS MASTERを案内しました。MBS MASTERのトップ画面は、日本語の表示で自らを次のように説明しています。
MBS MASTERは、複数のブローカー口座と取引システムをひとつにつなぎ、取引環境の分析、接続管理、運用判断をAIで支援する次世代トレードツールです。
▼複数のブローカーにつなぐとうたうMBS MASTERのトップ画面

出典:mbsmaster.com
案内を受けた相談者は、MBS MASTERで運用を始めるための入金をそれまでとは別の法人名義の口座へ振り込みました。最初の運用サイトの出金が終わらないまま、新しい運用先への入金が加わったことになります。
MBS MASTERでは出金のボタンが反応しない
MBS MASTERでも、出金のボタンが反応しないなど不審な点が出てきました。最初の運用サイトの出金も進まないまま、相談者は投資詐欺を疑い専門家への相談に踏み切っています。
振り返ると、AIの分析をうたうグループでの勧誘、法人名義の口座への振込、出金を申請した後の長い待ち時間、出金を待つ間の別の運用先への乗り換えが重なったことが被害につながりました。
出金を待っている間に別の運用先を勧められたら、新たな入金はせず、振込の明細や運用サイトの画面、トレーダーとのやり取りを保存したうえで、早めに専門家に相談してください。
【参考】
・CTPSYSTEM(https://cmc-stps.com/)
・MBS MASTER(https://mbsmaster.com/)
MBS MASTERの関連サイトの情報を調査した結果

この章では、MBS MASTERとSLUBONEのドメインの取得日時、最初の運用サイトと共通するネームサーバー、無料のデータ検証をうたう入口のページ、金融庁の検索結果の4点を見ていきます。別々の会社が運営するとされる2つのサイトは、同じ日に14分の差で用意されていました。
4つのドメインの取得日時とネームサーバーを、RDAPの記録から書き写すと次のとおりです(時刻は協定世界時)。
| ドメイン | 登録日時(協定世界時) | ネームサーバー | 役割 |
|---|---|---|---|
| mbsmaster.com | 2026年8月26日 05:54 | ANNALISE/DARWIN(Cloudflare) | 運用先「MBS MASTER」 |
| slubone.com | 2026年8月26日 06:08 | ANNALISE/DARWIN(Cloudflare) | 入出金用のウォレット「SLUBONE」 |
| cmc-stps.com | 2025年5月11日 15:56 | ANNALISE/DARWIN(Cloudflare) | 最初の運用サイト「CTPSYSTEM」 |
| soo-data.com | 2026年8月2日 07:01 | ANNALISE/DARWIN(Cloudflare) | データ検証をうたう入口のページ |
MBS MASTERとSLUBONEのドメインは同じ日に14分差で登録された
RDAPという登録情報の公開の仕組みで2つのドメインを引くと、mbsmaster.comの取得は2026年8月26日5時54分、slubone.comは同じ日の6時8分でした(協定世界時)。日本時間では、同じ日の午後3時前後にあたります。
▼14分違いで取得されたMBS MASTERとSLUBONEの登録日時

出典:Verisign(RDAP)
規約の上では、MBS MASTERとSLUBONEはそれぞれ別の会社が運営する独立したサービスです。それにもかかわらず、2つのドメインは同じ日に続けて取得されていました。時期は、相談者が最初の運用サイトに入金した後で、出金を申請するより前にあたります。
最初の運用サイトと同じ組み合わせのネームサーバーが設定されている
ネームサーバーは、ドメインの行き先を決める仕組みです。mbsmaster.comとslubone.comには、Cloudflareが割り当てた「ANNALISE.NS.CLOUDFLARE.COM」と「DARWIN.NS.CLOUDFLARE.COM」の2つのネームサーバーが設定されています。
▼4つのドメインに並ぶ同じ組み合わせのネームサーバー

出典:Verisign(RDAP)
同じ組み合わせは、相談者が最初に使った運用サイトのcmc-stps.comと次の項目で取り上げるsoo-data.comにも設定されていました。Cloudflareは、同じアカウントのドメインにはなるべく同じ名前のネームサーバーを割り当てると説明しています。
組み合わせが同じだという事実だけで、同じ管理者と決めることはできません。それでも、取得の時期や4つのサイトの役割の並びとあわせると、4つのドメインは同じ管理者が扱っている可能性があります。
無料のデータ検証をうたう入口のページにも同じネームサーバーが設定されている
相談者への案内とは別に、同じ組み合わせのネームサーバーが設定されたページがもう1つあります。2026年8月2日に取得されたsoo-data.comで、1億3,341万件の価格データを使った相場の検証を毎朝無料で受け取れるとうたっています。
▼2026年8月に取得されたsoo-data.comの登録日時

出典:Verisign(RDAP)
ページの参加ボタンの下には「※ LINEオープンチャットが開きます」とあり、最下部には「金融商品取引法に基づく投資助言業の登録は行っておりません。」と書かれています。
▼LINEのオープンチャットへ誘うsoo-data.comの参加ボタン

出典:soo-data.com
このボタンを押して開くのは、「AI 相場パターン分析レポート」の後に「発言禁止」と付いた名前のオープンチャットで、相談者が参加したグループと同じ名前です。データの検証を入口に、AIの分析をうたうグループへ人を集める流れは、金融庁が挙げるAI診断の事例と重なります。
▼参加ボタンが開くAI 相場パターン分析レポートのオープンチャット

出典:LINE OPENCHAT
金融庁の一括検索でMBS MASTERとSLUBONEの名前は見つからない
「MBS MASTER」と「SLUBONE」を1つずつ金融庁の金融事業者一括検索に入れた結果は、2回とも「該当するデータはありませんでした。」でした。結果の画面には検索した語が出ないため、上がMBS MASTER、下がSLUBONEの結果です。
▼MBS MASTERとSLUBONEで該当のない金融庁の一括検索

出典:金融庁
ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。名前を替えて新しいサイトを用意する運営は、登録の有無が確かめられる前に、次の名前のサイトへ移ってしまうこともあります。
画像は添えていませんが、ほかにも次の点を確かめています。
- Googleのセーフブラウジングでmbsmaster.com、slubone.com、soo-data.comを調べると、どれも「安全ではないコンテンツは見つかりませんでした」と表示される(2026年10月7日時点)
- ウェブページの保存サービスInternet Archiveと、サイトの記録を集めるurlscan.ioにmbsmaster.comとslubone.comの記録はない
- 2つのサイトは、ページの指定で検索エンジンに載らないようにしている(後の章で詳しく取り上げる)
ネームサーバーの組み合わせは、ドメインの登録情報から誰でも確かめられます。勧められた運用先や入出金の窓口のアドレスは、RDAPで取得日とネームサーバーを調べ、直前に使っていたサイトと同じ組み合わせでないかを入金の前に見比べてください。
【参考】
・MBS MASTER(https://mbsmaster.com/)
・SLUBONE(https://slubone.com/intro.html)
・soo-data.com(https://soo-data.com/)
・RDAP-mbsmaster.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/mbsmaster.com)
・RDAP-slubone.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/slubone.com)
・RDAP-cmc-stps.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/cmc-stps.com)
・RDAP-soo-data.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/soo-data.com)
・Cloudflare-Nameserver options(https://developers.cloudflare.com/dns/nameservers/nameserver-options/)
・Google透明性レポート-セーフブラウジングのサイトステータス(https://transparencyreport.google.com/safe-browsing/search?url=mbsmaster.com)
MBS MASTERに関する不審点

この章では、MBS MASTERとSLUBONEの画面と規約から次の6つの不審点を取り上げます。
- 入金を受けるのは、MBS MASTERではなく別の会社を名乗るウォレット
- SLUBONEは提携先の会員でなければ使えず、接続先のコードが並ぶ
- 別会社の2つの規約に、出金を止める条項がほぼ同じ文で書かれている
- 入金から20日は出金できず、追加の入金で期間がやり直しになる
- 振込先は、入金を申し込むたびにサポートがメッセージで伝える
- 規約は英語のままで、運営側の責任の上限は500ドル
6つに共通するのは、運用先とウォレットを別の会社に分けて見せながら、画面の作りと規約の中身は一体になっていることです。順を追って、画面と規約の原文で確かめていきます。
入金を受けるのはMBS MASTERではなく別の会社を名乗るウォレット
MBS MASTERのトップ画面は、日本語の表示で入出金の扱いを次のように説明しています。取引の画面であるMBS MASTER自身は、利用者のお金を受け取らないという書き方です。
MBS MASTERが銀行・暗号資産を直接受け取るのではなく、接続先ウォレットの案内に従って入出金します。
▼入出金を接続先のウォレットに任せるMBS MASTERの説明

出典:mbsmaster.com
では、その接続先はどこでしょうか。MBS MASTERのプライバシーポリシーは、集める情報の一覧の中で、次のようにウォレットの名前を挙げています。
(前略)
Matching identifiers, amounts, currencies, payment status, and processing results for bank and crypto-asset deposits and funds transfers through SLUBONE.
(後略)
▼SLUBONEを通じた入金を挙げるMBS MASTERのプライバシーポリシー

出典:mbsmaster.com
SLUBONEを通じた銀行・暗号資産の入金と資金の移動について、照合に使う番号や金額、処理の結果を集めるという項目です。最初の章で見たとおり、SLUBONEはMBS MASTERとは別の会社が運営するとされています。お金を受け取るのは、取引の画面とは別の名前のサイトということになります。
SLUBONEは提携先のアカウントがないと作れず接続先のコードが並ぶ
SLUBONEのログイン画面を日本語で開くと、「MBS MASTER会員は専用ボタンからウォレットを作成・連携できます。」とあり、「MBS MASTERで続ける」のボタンが置かれています。ログインの欄のいちばん下には、新しく使う人への条件が書かれています。
新規利用には提携先アカウントが必要です。提携サービスから接続してください。
▼提携先のアカウントを新規利用の条件とするSLUBONEのログイン画面

出典:slubone.com
独立したウォレットをうたいながら、SLUBONEは提携先の会員でなければ新しく口座を作れない作りです。画面の「接続サイトコード」の選択欄を開くと、「CMCMBS」のほかに7つのコードが「準備中」として並んでいます。
▼CMCMBSと準備中の7つが並ぶ接続サイトコードの選択欄

出典:slubone.com
それぞれのコードがどのサイトを指すのかは、画面には書かれていません。それでも並び方からは、1つのウォレットに、これから複数の運用サイトをつないでいく前提で作られているとみられます。
別会社の2つの規約で出金を止める条項がほぼ同じ文になっている
MBS MASTERの規約の第6項とSLUBONEの規約の第7項は、どちらも入金した後の出金の保留を定めています。運営する会社が違うはずの2つの条項に、次の一文がまったく同じ形で入っています。
The twenty-day period is a minimum review period and does not guarantee release on a particular date.
(後略)
▼同じ一文が入ったMBS MASTERとSLUBONEの出金保留の条項

出典:mbsmaster.com/slubone.com
「20日の期間は最低限の審査期間であり、特定の日に出金できることを保証するものではない」という意味です。MBS MASTERの条項の8つの文のうち、ほかの6つの文も語句が少し違うだけでSLUBONEの文とほぼ同じでした。
2つの規約は、改定日もそろっています。規約はどちらも2026年9月21日、プライバシーポリシーはどちらも2026年6月4日で、後者は2つのドメインが取得された8月26日より3か月近く前の日付です。
▼2026年9月21日で揃う2つの規約の改定日

出典:mbsmaster.com/slubone.com
▼2026年6月4日で揃う2つのプライバシーポリシー

出典:mbsmaster.com/slubone.com
出金を止める条項の文面も、文書の改定日もここまでそろっている以上、別々の会社がそれぞれ作った文書とは考えにくく、同じ作り手が2つのサイトの文書を用意したものとみられます。
入金から20日は出金できず追加の入金で期間がやり直しになる
MBS MASTERの規約の第6項は、入金が残高に反映された日から少なくとも20日間は、出金も外への移動もできないと定めています。そのうえで次の文が続きます。
(前略)
A later deposit or incoming transfer may restart or extend the review period for the available Cash Balance.
(後略)
▼入金から20日の保留と期間のやり直しを定めるMBS MASTERの規約

出典:mbsmaster.com
後から入金すると、出金できるまでの期間がやり直しや延長になることがあるという意味です。新たに入金するたびに出金できる日が先へ延びうるうえ、20日が過ぎても出金の日は保証されていません。
一方、SLUBONEの規約の第7項は、この期間中でも次の送金はできるとしています。
Transfers to another SLUBONE user by UID and transfers to the member’s verified connected partner account are permitted during this period.
(後略)
▼保留の間も利用者間や提携先への送金を認めるSLUBONEの規約

出典:slubone.com
ほかのSLUBONEの利用者や、接続した提携先の口座への送金は認めるという内容です。銀行の口座へは出せない間も、お金はウォレットと提携先の運用サイトの間で動かせる作りになっています。
振込先は入金を申し込むたびにサポートがメッセージで伝える
SLUBONEの規約の第5項は、銀行からの入金について、申し込みのたびに振込先をサポートが伝えると定めています。
(前略)
Support will officially communicate the bank destination dedicated to that request by secure message. Do not transfer funds before receiving that message, do not reuse a destination from a previous request, and transfer the exact requested amount.
(後略)
▼申し込みごとの振込先をメッセージで伝えるSLUBONEの規約

出典:slubone.com
申し込みごとの振込先をメッセージで伝えるので、受け取る前に振り込まず、以前の振込先を使い回さないようにという内容です。振込先は画面に決まった口座として出ず、申し込むたびにメッセージで伝えられる作りです。相談者の振込先が乗り換えの前後で別の法人名義だったことと矛盾しません。
出金についても、SLUBONEの紹介ページのよくある質問は、運営側の確認を前提にしています。
出金申請額は予約残高として管理され、管理者の確認後に処理されます。却下時は利用可能残高へ戻ります。
▼出金は管理者の確認後に処理するとしたSLUBONEのよくある質問

出典:slubone.com
規約は日本語に切り替えても英語のままで責任の上限は500ドル
MBS MASTERもSLUBONEも、トップやログインの画面は日本語に切り替えられます。ところが規約とプライバシーポリシーは、日本語を選んだ後に開いても英語のままで日本語の訳は用意されていません。
日本の利用者に向けた画面を持ちながら、出金の条件を定めた文書は英語でしか読めないことになります。その中で、MBS MASTERの規約の第18項は、運営側が負う責任の上限を次のように定めています。
The total aggregate liability of MBS MASTER and its operator arising from or relating to the Service shall not exceed the greater of: (i) USD 500; or (ii) the total service fees paid by the user to MBS MASTER during the twelve months preceding the event giving rise to the claim.
▼責任の上限を500米ドルなどとするMBS MASTERの規約

出典:mbsmaster.com
責任の総額は、500米ドルか、直前12か月に利用者が払った手数料の総額のどちらか大きい方を超えないという意味です。入金の額がいくらであっても、規約の上では運営側の責任はこの範囲に限られることになります。
ただし、こうした条項を日本の消費者を守る法律がどこまで認めるかは別の問題で、返金をあきらめる理由にはなりません。規約に書かれた条件を理由に出金を断られたときは、その画面と規約を保存して専門家に相談してください。
【参考】
・MBS MASTER(https://mbsmaster.com/)
・MBS MASTER-Privacy Policy(https://mbsmaster.com/privacy)
・MBS MASTER-Terms of Service(https://mbsmaster.com/terms)
・SLUBONE(https://slubone.com/login)
・SLUBONE-Service Terms(https://slubone.com/terms)
・SLUBONE-Privacy Notice(https://slubone.com/privacy)
・SLUBONE-紹介ページ(https://slubone.com/intro.html)
MBS MASTERの仕組みが悪用されやすい理由

MBS MASTERのような運用先が入金を集め続けられる背景には、取引と入出金の窓口の分離、AIやマルチブローカーといった言葉、出金を待つ利用者の心理、審査の期間を延ばせる規約の4つがあります。
どれも、出金が止まったときに利用者が「誰に」「いつまで」を確かめにくくなる方向に働きます。以下では4つの理由を、本件で見つかった画面の表示や規約の条項と照らし合わせながら説明します。
取引の画面と入出金の窓口を分けると責任の所在が見えにくい
MBS MASTERは、入出金を自分では受けず、接続先のウォレットに任せると説明していました。そのウォレットであるSLUBONEは、別の会社が運営する独立したサービスとされています。
利用者から見ると、お金を入れた先と運用の残高が表示される先が別々の名前になります。出金が進まないとき、問い合わせる相手が取引の画面なのかウォレットなのかが分かりにくく、窓口どうしで返事を待たせ合う余地が生まれます。
しかも保留の条項は、MBS MASTERとSLUBONEの両方の規約に置かれていました。運用先からウォレットへ、ウォレットから銀行へと段階を踏むたびに、それぞれの審査の期間が待ち時間として加わりうる作りです。
AIやマルチブローカーという言葉は仕組みの中身を確かめにくい
MBS MASTERのトップ画面は、複数のブローカーの口座と取引システムをひとつにつなぎ、AIで運用の判断を支えると説明していました。どちらの言葉も新しい技術を感じさせますが、利用者が画面の上で確かめられることはほとんどありません。
運用の成績が思わしくないときも、出金が遅れるときも、「接続先の条件」や「AIの判断」という説明で済ませやすくなります。仕組みが複雑に見えるほど、利用者は自分で確かめる前に、説明する側の言葉を受け入れがちです。
出金を待っている利用者ほど新しい運用先の誘いに応じやすい
本件では、最初の運用サイトで出金を待っている間に、同じトレーダーから新しい運用先としてMBS MASTERを勧められていました。入れたお金が戻らない状態では、次の運用先で取り戻したいという気持ちが働きやすくなります。
ところが新しい運用先への入金は、前の運用サイトの出金を進めるものではありません。MBS MASTERの規約では、新たに入金すると出金できるまでの期間がやり直しになることもあり、待つ相手と待つ期間が増えるだけになりかねません。
審査や不正対策の言葉は待たされる理由として受け入れやすい
MBS MASTERの規約の第6項は、出金の保留の理由として、マネーロンダリングや詐欺、アカウントの乗っ取りの防止を挙げています。不正を防ぐための審査だと説明されると、待たされる側は自分のための手続きだと受け止めてしまいます。
しかし、本件の規約は20日を最低限の期間とし、その後の出金の日を約束していません。後の入金で期間がやり直しになることもあります。終わりの見えない審査は、不正対策というより、出金を先へ延ばす理由として働きうる点に注意が必要です。
【参考】
・MBS MASTER(https://mbsmaster.com/)
・MBS MASTER-Terms of Service(https://mbsmaster.com/terms)
・SLUBONE-Service Terms(https://slubone.com/terms)
MBS MASTERの不審点を見抜く方法

MBS MASTERの件では、出金を待っている間に別の運用先を勧められたことが、入金を重ねる分かれ目になりました。そうした誘いを受けたときに確かめたい点を、入口のグループから相談先までお金が動く順に挙げます。
- 入口:AIの分析や無料のレポートをうたうグループで、運用の話が出たら距離を置く
- 金融庁は、AI診断や分析レポートの配信をうたってSNSへ誘い、投資話を持ち掛ける事例を挙げています。グループの人数が多くても、それは話の確かさの裏付けにはなりません。
- サイト:運用先と入出金の窓口の名前が違えば、2つの関係を調べる
- SLUBONEは提携先の会員でなければ使えないウォレットで、MBS MASTERと同じ日にドメインが取得されていました。2つのアドレスをRDAPで引き、取得日やネームサーバーが重ならないかを見てください。
- 規約:日本語の画面でも、英語の規約を開いて出金の条件を読む
- 本件の規約には、入金から20日は出金できないこと、後の入金で期間がやり直しになること、20日を過ぎても出金の日を保証しないことが書かれていました。翻訳の機能を使ってでも、入金の前に目を通してください。
- 振込先:申し込むたびにメッセージで伝えられる口座には振り込まない
- SLUBONEの規約は、振込先を申し込みごとにメッセージで伝える作りでした。埼玉県警察も「振込のたびに口座が変わる場合は詐欺を疑い」と呼びかけています。名義が法人や個人であれば、なおさら手を止めてください。
- 乗り換え:出金を待っている間に別の運用先を勧められたら入金しない
- 新しい運用先への入金は、前の運用サイトの出金を進めません。MBS MASTERの規約では、新たな入金で出金できるまでの期間がやり直しになることもあります。
- 相談先:金融庁の一括検索で名前を調べ、見つからなければ専門家に相談する
- 「MBS MASTER」「SLUBONE」は、どちらも金融庁の一括検索で該当がありませんでした。サービス名と運営会社の名前を入れて調べ、見つからなければ入金の前に相談してください。
出金を待たされている間に残した記録は、後の手続きの手掛かりになります。運用先とウォレットの画面、振込の控え、トレーダーとのLINEのやり取りを日付が分かる形で残したうえで、信頼できる第三者や専門家に早めに相談してください。
【参考】
・金融庁-それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!
MBS MASTERに関する口コミや被害事例

「MBS MASTER」「SLUBONE」の名前に加えて、勧誘したトレーダーやグループの名前でも、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、国内の掲示板の書き込みを探しました。
MBS MASTERそのものの口コミは見つからず、確認できたのは同じトレーダーの運用で出金が進まないという投稿です。
MBS MASTERやSLUBONEの名前での口コミは見つからない
Xで「MBS MASTER」「mbsmaster」「SLUBONE」を探しても、本件に関係する投稿は1件もありませんでした。「MBS MASTER」で出てくるのは、楽器の型番など名前が似た別の話題の投稿だけです。
Yahoo!知恵袋の質問や5ちゃんねるのスレッドの題名でも、MBS MASTERやSLUBONE、「AI 相場パターン分析レポート」に触れた質問や書き込みは見当たりませんでした。2つのサイトは2026年8月に用意されたばかりで、名前を挙げた書き込みが積み重なる前の段階とみられます。
被害の声がまだ表に出ていないだけで、MBS MASTERに問題がないと分かったわけではありません。返金を約束して先に費用を求める連絡には応じず、相談する先は自分で調べてから選んでください。
同じトレーダーの運用について出金が進まないという投稿がある
2026年10月5日の投稿は、「AI 相場パターン分析レポート」という名前のオープンチャットを挙げ、その運営者と出金の状況を次のように書いています。
ATOMさん(X削除済)が運営する、オプチャです。
出金拒否だそうです。
大切なお金はどうなるのかな?
ブローカーに言ってもたらい回し。
どうすればいい?
(後略)
▼ATOMが運営するオプチャの出金拒否を伝える投稿(2026年10月5日)

出典:X
同じトレーダーの運用に入金した利用者とみられる投稿者は、最初の運用サイトの窓口から届いた返信を公開しています。2026年10月1日の投稿の画像では、サポートが「不正対策でブローカー側が規制強化した可能性も考えられます。」と答えていました。
▼ブローカー側の規制強化を理由に挙げる窓口の返信(2026年10月1日)

出典:X
同じ投稿者は2026年10月6日の投稿で、窓口の一つから届いた回答について次のように書いています。
四つの窓口の一つからまた回答があった。たらい回しってやつですね。何一つ進展せず。
▼窓口から届いた回答をたらい回しと書く投稿(2026年10月6日)

出典:X
添付の画面では、窓口の担当が「KYCに関してサポートに問い合わせたところ現在ブローカーに問い合わせを行って状況をまとめてからお伝えしますとのことでした。」と答えています。本人確認やブローカーを理由に出金を待たせる流れは、今回の相談と重なります。
どの投稿もMBS MASTERには触れていないため、本件と同一の案件であることまでは確認できません。それでも、同じ名前のグループとトレーダーをめぐって、出金が進まないという声が続けて上がっています。
オープンチャットに出金の不満を書くと消えるという証言
2026年9月28日の投稿は、グループの中で出金のことを書いても残らないと伝えています。
出金申請について書くとオープンチャットでは瞬時に削除される。
(後略)
▼出金のことを書くと瞬時に削除されるとする投稿(2026年9月28日)

出典:X
2026年10月5日には、出金できないという書き込みが消えたかを尋ねる投稿に別の利用者が次のように返信しています。
消された瞬間を見てたと思います!
リアルタイムで見てましたよ!
▼書き込みが消された瞬間を見たとする返信(2026年10月5日)

出典:X
不満の声が消されていく場では、利用者どうしで状況を確かめ合うことができません。出金が進まないと感じたら、グループの外にいる家族や専門家など第三者の意見を聞いてください。
【参考】
・Xの投稿(https://x.com/MameoFXGOLD/status/2106922856571613437)
・Xの投稿(https://x.com/lucky015r/status/2105460870579098093)
・Xの投稿(https://x.com/lucky015r/status/2107127993034588569)
・Xの投稿(https://x.com/lucky015r/status/2104397748787351747)
・Xの投稿(https://x.com/yymama2506/status/2107106356025262458)
MBS MASTERに関する口コミが少ない理由

見つかった書き込みは、最初の運用サイトやトレーダー、グループの名前で書かれ、MBS MASTERやSLUBONEの名前は出てきません。
SLUBONEには「準備中」の接続先が7つあり、声は今後も運用サイトごとに分かれそうです。被害が名前ごとの小さな声に散らばるため、口コミとして積み重なりにくいと考えられます。
サイトの側も、検索されることを避ける設定をしています。MBS MASTERのトップのソースには、検索エンジン向けの指示として「noindex, nofollow」が書き込まれています。
▼検索エンジンに載せない指定が入ったMBS MASTERのページのソース

出典:mbsmaster.com
名前を入れて調べても、サイトそのものが検索の結果に出てこなければ、気になった人がその名前で書き込みを探したり、自分の体験を書き残したりするきっかけも生まれにくくなります。検索の入口がふさがれていることも、口コミが集まらない理由の1つです。
もう1つは、利用者が集まる場の性質です。入口のグループの名前には「発言禁止」と付いており、出金について書いても消されるという証言もありました。不安を感じた人どうしがグループの中で状況を伝え合えず、声が外へ出る前に途切れてしまうため、被害の体験が書き込みとして残りにくくなります。
サイトの名前が分かれていること、検索に載らない設定、発言が止められたグループという3つの事情が重なり、MBS MASTERの口コミは集まりにくくなっています。出金が止まったまま別の運用先を勧められたら、それ以上入金せず画面と振込の明細をそろえて専門家に相談してください。
【参考】
・MBS MASTER-ページのソース(view-source:https://mbsmaster.com/)

