LINEの投資勉強会で株の売り買いを教わり、勧められるまま取引サイトへ入金を重ねてしまう。警察庁がまとめた令和8年8月末の暫定値では、SNS型投資詐欺の被害額は937.4億円に上っています。
本記事で取り上げる「app.rjf1962.jp」は、米国の金融グループ「Raymond James」のロゴを掲げ、「RJF 取引口座」と表示される株取引のサイトです。勉強会をきっかけに登録した相談者は、チャットで伝えられる口座への振込を重ねた末に出金の条件として保証金を求められました。
調べると、誰でも開ける管理画面のプログラムに運営が値段を決める「仮想の株」の設定や、利用者ごとに出金を止める切り替えが書かれていました。実在のRaymond Jamesは、日本に拠点を置いていません。
勉強会での勧誘から保証金を求められるまでを、ドメインと証明書の記録、サイトのプログラム、Raymond Jamesと公的機関の資料でたどりながら、お金を動かす前と引き出すときに見ておく点を弁護士が解説します。
Raymond Jamesを装う偽サイトに関するトラブルの概要

今回の相談は、LINEの投資勉強会で株の売り買いを教わり「RJF 取引口座」と表示されるサイト「app.rjf1962.jp」で取引を始めたことが発端です。サイトを開くと、最初の画面に米国の金融グループRaymond James(レイモンド・ジェームズ)のロゴが大きく表示されます。
▼Raymond Jamesのロゴを掲げる最初の画面

出典:app.rjf1962.jp
この章では、LINEグループの手口に触れた国民生活センターの記事、実在のRaymond Jamesの海外拠点の一覧、同社のカナダ法人が出している警告、app.rjf1962.jpの利用規約の4点を順に取り上げます。
サクラが成功談を語るLINEグループは国民生活センターの資料にも出てくる
国民生活センターの情報誌『国民生活』の2025年1月号は、投資話にだまされる理由を行動経済学から解説した記事の中で、LINEグループへの誘導を取り上げています。
また複数の被害者は、数十人程度の参加者がいるLINEグループに誘導され、そこで投資の成功談を聞かされたと語っています。このグループの参加者の多くは「サクラ」であると考えられますが、こうした人たちが話す自分の信念に合った情報は、素直に受け入れてしまうため、いっそう投資への意欲を高めることになります。
(後略)
▼LINEグループのサクラに触れた国民生活センターの情報誌

出典:国民生活センター
同じ記事は、SNS型投資詐欺の「投資」は詐欺師に操作されていることが多く、画面上では資金が増えていくように見えるとも書いています。今回の相談でも、サイトの画面には利益が出ているように表示されていました。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、今回も数十人規模のグループで、参加者が利益を出しているように見えたことが登録のきっかけでした。
実在のRaymond Jamesは米国の金融グループで日本に拠点を置いていない
Raymond James Financialは、米国フロリダ州に本社を置く金融グループです。米国証券取引委員会(SEC)に出した年次報告書では、1962年の設立でニューヨーク証券取引所に「RJF」の記号で上場しています。
公式サイトの「International Offices」(海外拠点)の一覧に載っているのは、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、ポーランド、スイス、英国の7か国で国ごとに拠点の名前が並んでいます。
▼日本の拠点がない実在のRaymond Jamesの海外拠点一覧

出典:Raymond James
一覧に日本はなく、金融庁の登録業者を調べても名前は見つかりません(画面は後の章で示します)。実在のRaymond Jamesも日本で登録を受けた業者ではなく、本物の社名が出てきても日本で株の売買を仲介できる裏付けにはなりません。
Raymond Jamesのカナダ法人は社員を名乗る連絡そのものを疑うよう呼びかけている
Raymond Jamesのカナダ法人(Raymond James Ltd.、略称RJL)は、「Advisor Impersonation Warning」と題したページで、自社は一般の人へ連絡して金融情報や個人情報を求めることはないと述べ、次のように続けています。
(前略)
Any contact made by a person claiming to be a representative of RJL, whether that contact is in writing, by email, on social media or by phone, should be considered suspicious, and is very likely an attempt at defrauding you of funds or obtaining your personal information.
▼社員を名乗る連絡を疑うよう求めるカナダ法人の警告

出典:Raymond James Ltd.
書面・メール・SNS・電話のどれでも、RJLの代理人を名乗る連絡は疑うべきで、詐欺の可能性が非常に高いという内容です。米国の本社ではなくカナダ法人の告知ですが、同じグループの会社がSNSでの連絡を詐欺の入口に挙げています。この名前でSNSから投資を勧められたら、その時点で手を止めてください。
app.rjf1962.jpの規約には運営会社の名前も所在地も書かれていない
app.rjf1962.jpの利用規約は、サイトがデータを読み込む先のアドレスに置かれていて、ブラウザで開けば誰でも読めます。題は「RJF取引口座利用規約(機関投資家向け)」で第1条は次のとおりです。
第1条(適用範囲)
本規約は、ユーザーがRaymond James(レイモンド・ジェームズ)の提供する証券取引、金融商品仲介および投資関連情報サービスを利用するに際し、当社とユーザーとの間に生じる一切の権利義務関係に適用されます。
(後略)
▼運営会社の名前がないapp.rjf1962.jpの利用規約

出典:api.safamlk.net
第8条は紛争の管轄を「当社本社の所在地を管轄する裁判所」としながら、全8条のどこにも会社の名前や本社の所在地がありません。入出金や保証金についての決まりも置かれていません。
個人に勧めているのに、題は「機関投資家向け」です。app.rjf1962.jpが実在のRaymond Jamesによって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
【参考】
・app.rjf1962.jp(https://app.rjf1962.jp/)
・国民生活センター-ウェブ版「国民生活」2025年1月号 特集 資産形成の落とし穴-投資話にだまされないために-
・SEC-Raymond James Financial, Inc. Form 10-K
・Raymond James-International Offices(https://www.raymondjames.com/about-us/subsidiaries/international-offices)
・Raymond James Ltd.-Advisor Impersonation Warning(https://www.raymondjames.ca/wealth-management/client-resources/advisor-impersonation-warning)
・app.rjf1962.jp-RJF取引口座利用規約(https://api.safamlk.net/app/common/protocol?type=user)
Raymond Jamesを装う偽サイトへ誘導され被害につながるまでの経緯

相談者がapp.rjf1962.jpにたどり着いたのは、投資の情報をきっかけにLINEの投資勉強会へ招かれたことからでした。勉強会での指導、サイトへの登録、チャットで伝えられる振込先、出金の申し出の4つの場面に分けて見ていきます。
数十人規模の投資勉強会で先生役から株の売り買いを指導される
招かれたのは、数十人が参加するLINEの投資勉強会のグループでした。グループでは「先生」と呼ばれる人物が株の情報を流し、どの銘柄をいつ買い、いつ売るかまで指導していました。
大勢が同じ情報を受け取り、同じ時期に売り買いする場では、指導が当たっているように見えやすくなります。グループの中のやり取りだけでは、先生の指導で本当に利益が出たのかを確かめる手段がありません。
参加者が利益を出しているように見えRJFの取引口座を使い始める
グループの中では、ほかの参加者が利益を出しているように見えました。それを見た相談者は、「RJF 取引口座」と表示されるサイトapp.rjf1962.jpに登録し、株式投資を装う取引を始めています。
▼「RJF 取引口座」と表示するapp.rjf1962.jpのログイン画面

出典:app.rjf1962.jp
ログインの画面には「RJF」の大きな文字と「取引口座」の表示が並び、証券会社の口座のように見える作りです。取引を始めてからも、サイトには利益が出ているかのような数字が並び、相談者はその表示を頼りに資金を足していきました。
入金のたびにチャットで最新の振込先を確かめるよう案内される
やり取りに使われたチャットの表示名は「RJFオンラインカスタマーサポ…」で始まり、Raymond Jamesのロゴと名前が添えられていました。そのチャットで、入金のたびに連絡して最新の専用振込先口座を確認するよう案内されています。
相談者は、指定された複数の異なる名義の口座へ、キャッシュカードを使った振込を重ねました。振込先が毎回の連絡で決まるため、指定された口座の一覧はどこにもまとまって残りません。手元の振込の控えとチャットのやり取りは、口座を突き止める材料になるので残しておいてください。
利益の出金を申し出ると保証金の支払いを条件にされる
画面上の利益を引き出そうとしたところ、相談者は保証金を払わなければ出金できないと告げられました。出金の条件として新たな支払いを求められたことで、相談者は詐欺を疑います。
振り返ると、投資勉強会での先生役の指導、利益を出しているように見える参加者、Raymond Jamesの名前を掲げたRJFの取引口座、入金のたびに伝えられる振込先が重なったことが被害につながりました。
保証金のように、引き出しと引き換えの支払いを持ち出された時点で入金を止め、専門家に相談してください。言われた額を納めても、それで引き出せるようになる裏付けは何も示されていません。
【参考】
・app.rjf1962.jp(https://app.rjf1962.jp/#/login)
Raymond Jamesを装う偽サイトの関連サイトの情報を調査した結果

この章では、rjf1962.jpがいつ誰の名義で取られたか、通信の証明書に何が載っているか、取引のデータをどこと受け渡ししているか、金融庁の資料に名前があるかの4点を見ます。同じ日に取られたrjf1962.comを含め、利用者の画面と管理画面のアドレスが組で用意されていたことが分かりました。
下の表は、rjf1962.jpの記録と、実在のRaymond Jamesが使う公式サイトのドメインraymondjames.comの記録を並べたものです。取られた時期も、管理を任せている先も大きく異なります。
| 項目 | rjf1962.jp | raymondjames.com(実在のRaymond Jamesの公式サイト) |
|---|---|---|
| 登録日 | 2026年6月29日 | 1998年9月23日 |
| 有効期限 | 2027年6月30日 | 2027年9月22日 |
| 登録者・登録機関の表示 | Web Commerce Communications Limited | MarkMonitor Inc. |
| ネームサーバー | Cloudflare | Akamai |
| 記録の確認先 | JPRS WHOIS | RDAP(rdap.verisign.com) |
rjf1962.jpとrjf1962.comは2026年6月29日の同じ日に取得されている
「.jp」のドメインは、登録を管理するJPRSの検索サービスで記録を確かめられます。rjf1962.jpの登録年月日は2026年6月29日、有効期限は翌年の6月30日です。登録者の欄は、本人ではなくドメインの登録を取り次ぐ事業者の名義とみられます。
▼rjf1962.jpの登録年月日を示すJPRSの検索結果

出典:JPRS
末尾が「.com」のrjf1962.comも、同じ日の日本時間10時53分に別の登録事業者で取られています。公式サイトのraymondjames.comは1998年の登録で、名前を似せたアドレスとは28年近い差があります。
▼1998年登録の実在のRaymond Jamesの公式ドメイン

出典:RDAP(rdap.verisign.com)
管理画面のアドレスもcom版と組で証明書を取得している
通信を暗号化する証明書の発行記録を調べたところ、2026年8月30日に2枚が17秒違いで発行されていました。1枚には「app.rjf1962.com」と「app.rjf1962.jp」、もう1枚には「admin.rjf1962.com」と「admin.rjf1962.jp」が並びます。
▼利用者の画面の2つのアドレスが並ぶ証明書の記録

出典:app.rjf1962.com
▼管理画面の2つのアドレスが並ぶ証明書の記録

出典:admin.rjf1962.com
証明書には、管理する権限を示せたアドレスしか載せられません。4つのアドレスは同じ管理者の手にあるとみられ、app.rjf1962.comを開くとapp.rjf1962.jpと同じ画面が表示されます。「admin」の付くアドレスの中身についてはあとの章で取り上げます。
取引のデータは別の名前のドメインsafamlk.netから読み込まれている
app.rjf1962.jpの画面は、ログインや株価、入出金のやり取りを「api.safamlk.net」という別のアドレスと行っています。トラブルの概要の章で見た利用規約も、このアドレスから読み込まれていました。
▼2026年7月の登録を示すsafamlk.netの記録

出典:RDAP(rdap.verisign.com)
safamlk.netは2026年7月7日の登録で、RJFともRaymond Jamesとも関係のない名前です。表に出る名前と、裏で取引のデータを扱うアドレスが別々に用意されているため、表の名前を変えても同じ仕組みを使い続けられる可能性があります。
金融庁の一覧ではRJFもRaymond Jamesも見つからない
金融庁が公表している無登録業者の一覧に、「RJF」「rjf1962」「Raymond」「レイモンド」の語は見当たりません。登録を受けた業者を調べる金融事業者一括検索で「レイモンド」「Raymond」と入力しても結果は次のとおりです。
▼「レイモンド」が見つからない金融事業者一括検索の結果

出典:金融庁
画面の注意書きにあるとおり、この検索で出てこない業者は無登録業者の可能性があり、実在のRaymond Jamesも日本の登録業者には含まれていません。ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。
このほかに確かめた記録は次の3つです。
- Googleのセーフブラウジングでapp.rjf1962.jpを調べると「安全ではないコンテンツは見つかりませんでした」と表示される
- ウェブページの保存サービスInternet Archiveにも、サイトの調査記録を公開するurlscan.ioにも、rjf1962.jpの記録がない
- rjf1962.jpのアドレスは配信の中継サービスCloudflareを通している
取られて日の浅いアドレスは、危険の判定や当局の一覧に載る前から使われていることがあります。判定が出ていないことに頼らず、表示中のアドレスが公式のraymondjames.comと一致するかを入金の前に見比べてください。
【参考】
・app.rjf1962.jp(https://app.rjf1962.jp/)
・app.rjf1962.com(https://app.rjf1962.com/)
・JPRS WHOIS(https://whois.jprs.jp/)
・RDAP-raymondjames.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/raymondjames.com)
・RDAP-rjf1962.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/rjf1962.com)
・RDAP-safamlk.net(https://rdap.verisign.com/net/v1/domain/safamlk.net)
・Cert Spotter-rjf1962.jp(https://api.certspotter.com/v1/issuances?domain=rjf1962.jp&include_subdomains=true&expand=dns_names)
Raymond Jamesを装う偽サイトに関する不審点

この章では該当サイトに関する不審点として、管理画面の題名、運営が値段を決める「仮想の株」、利用者ごとの出金の切り替え、残高と建玉の操作、入金のボタン、出金の注意事項の6点を取り上げます。
前の4つは誰でも開ける管理画面admin.rjf1962.jpのプログラムから、後の2つは利用者の画面のプログラムから分かることです。
誰でも開ける管理画面の題名は中国語の株式管理システム
証明書に並んでいたadmin.rjf1962.jpを開くとログインの画面が表示され、ブラウザ最上部のタブには「股票管理系统」と出ます。中国語で「株式管理システム」という意味です。
▼「股票管理系统」と表示される管理画面のタブ

出典:admin.rjf1962.jp
ページのソースを表示しても題名は同じで、画面の読み込み中に出す文言も「正在加载系统资源,请耐心等待」(システムを読み込んでいます、お待ちください)という中国語のままです。
▼題名が中国語で書かれた管理画面のソース

出典:admin.rjf1962.jp
プログラムを調べたところ、この管理画面がデータをやり取りする先も、利用者の画面と同じapi.safamlk.netでした。利用者には日本語の画面を見せながら、運営する側の画面は中国語で作られています。
管理画面には運営が値段を決める仮想の株を登録する欄がある
管理画面のプログラムを調べたところ、IPO(新規公開株)の銘柄を登録する欄に「是否虚拟股票」(仮想の株かどうか)という項目があり、選択肢は次の2つでした。
否(走行情)
是(盈亏与平仓用维护价)
「いいえ(相場の動きに従う)」と「はい(損益と決済に、維持している価格を使う)」という意味です。続く「维护最新价」(運営が維持する最新の価格)の欄には、仮想の株を「はい」にしたときだけ効くと添えられています。
実在しない銘柄でも、運営が入れた値段で利益が出ているように見せられる作りです。本件で実際に使われたかまでは確認できませんが、画面上の資金が増えていくように見える状態を管理画面の操作だけで作れることになります。
利用者ごとに出金を止める切り替えと信用スコアの欄がある
同じプログラムの利用者の一覧には「提现状态」(出金の状態)の欄があり、スイッチで「限制提现」(出金制限)と「提现正常」(出金は正常)が切り替わります。利用者ごとの「编辑信用分」(信用スコアの編集)もできます。
全体の設定には「提现最低信用分」(出金に必要な最低の信用スコア)と「是否开启提现」(出金を受け付けるかどうか)が並び、利用者の画面にも信用スコアのページがあります。出金できるかどうかを運営が利用者ごとに決められる作りです。
管理画面から利用者の残高を増減させ建玉まで作れる
利用者の一覧の操作ボタンには「加款」(残高を加える)、「扣款」(残高から差し引く)、「建仓」(建玉を作る)、「一键登录」(その利用者としてログインする)が並びます。IPOの当選数も、運営が「请输入中签数量」(当選数を入力)の欄に打ち込む作りです。
画面の残高も保有株もIPOの当選も、運営の操作で作れます。取引画面の数字は、市場で売り買いした結果とは限りません。数字が増えていても、それを理由に入金を増やすことは避けてください。
銀行振込で入金のボタンはチャットを開くだけで振込先がない
利用者の画面のプログラムを調べたところ、入金画面の「銀行振込で入金」は、押すとチャットの窓を開く処理(chatOpen)だけで、振込先の口座を表示する処理はありませんでした。
▼チャットを開く処理だけが書かれた入金ボタンのプログラム

出典:app.rjf1962.jp
別の入金画面には、金額の選択肢として20万円、50万円、100万円に加え、1,000万円、5,000万円、1億円のボタンが用意されています。1回の入金で億単位の金額まで選べる作りです。
▼1億円まで並ぶ入金額の選択肢のプログラム

出典:app.rjf1962.jp
振込先がプログラムに書かれていないのは、振込先をチャットで毎回伝える作りだからとみられ、入金のたびに最新の振込先を確かめさせた今回の案内と矛盾しません。チャットで示された口座が会社の名義でなければ、その時点で振り込むのをやめてください。
出金の手続きに保証金を払う項目は用意されていない
出金画面のプログラムを調べたところ、「出金に関する注意事項」に並ぶのは、差し引く残高、本人確認と口座登録、受付の時間、手数料が無料であること、最低額などの6項目でした。この画面はログインしないと開けないため、中身はプログラムを取得して確かめています。
6つの項目のどこにも保証金は出てきません。プログラムの言葉の一覧には「保証金を支払う」という文言もありますが、どの画面からも使われておらず、利用規約にも保証金の決まりはありません。
出金の条件として告げられた保証金は、サイトの手続きの外で持ち出された名目とみられます。払う前に、その支払いが規約や出金画面のどこに書かれているのかを相手に示してもらい、示せなければ振り込まないでください。
しかし、仮に支払いに関する根拠を示されたとしても、ここまで見てきたとおり不審点が少なくないため、振込は控えて弁護士等の専門家への相談を検討することをおすすめします。
【参考】
・admin.rjf1962.jp(https://admin.rjf1962.jp/)
・app.rjf1962.jp-入金画面のプログラム(https://app.rjf1962.jp/assets/index.dwfgK7l7.js)
Raymond Jamesの名称が悪用されやすい理由

Raymond Jamesの名前が使われる背景として、日本に拠点がないこと、上場の記号と創業年がそのままアドレスになっていること、米国でも同じ名前のなりすましが起きていること、振込先がチャットで伝えられることの4つを挙げます。
日本に拠点のない海外の大手は偽物と比べる手掛かりが少ない
実在のRaymond Jamesは、ニューヨーク証券取引所に上場する米国の金融グループです。名前を検索すれば決算や株価の情報が並び、実在する大手だという印象は得やすい一方、日本の拠点も日本語の取引画面もありません。
利用者は本物の日本語の画面を見たことがないため、偽物の画面と見比べる材料を持てません。実在の会社に落ち度があるわけではなく、名前の知られ方と日本での接点のなさの差が使われているとみられます。
ティッカーと創業年を組み合わせたアドレスは本物らしく見える
実在のRaymond Jamesの公式サイトの沿革には、1962年の創業と1986年に「RJF」の記号でニューヨーク証券取引所への上場が認められたことが載っています。
▼1962年の創業とRJFでの上場を載せた公式の沿革

出典:Raymond James
偽サイトのアドレス「rjf1962」は、この上場の記号と創業年に一致します。会社のことを調べた人ほど、それらしい数字に納得しやすい作りです。ただ、公式サイトのアドレスはraymondjames.comで、記号や年が入っていることは本物の証拠になりません。
米国でもRaymond Jamesの名前を使ったなりすましが当局に訴えられている
米国証券取引委員会(SEC)は2026年9月29日、WhatsAppなどで投資家を誘った詐欺で複数の事業体を提訴したと発表しました。発表は、これらが海外にいる人物によって運営されているとみられると述べています。
▼WhatsAppを使った詐欺の提訴を伝えるSECの発表

出典:SEC
訴状によると、被告らはWhatsAppのグループで、Raymond James & Associates, Inc.に所属するとうたう実在の投資の専門家になりすまし、出金しようとした人には利益を引き出す条件として前払いの手数料を求めていました。
▼Raymond James所属を装うなりすましを記した訴状

出典:SEC
米国の暗号資産の事案で、本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できません。それでも、実在の会社の名前を借りてグループで勧誘し、出金の段階で支払いを求める流れは今回の相談と重なります。
振込先が入金のたびにチャットで伝えられ記録が相手の側にしか残らない
app.rjf1962.jpでは、入金のボタンを押すとチャットが開き振込先はそこで伝えられる作りでした。振込先の一覧はサイトの画面のどこにも残らず、やり取りの記録は運営が用意したチャットの中にあります。
サイトやチャットが閉じられると、どの口座をいつ指定されたかを後から確かめにくくなります。振込の控え、チャットの画面、サイトのアドレスを、その都度手元に保存しておくことが、後で相談するときの手がかりになります。
【参考】
・Raymond James-Company History(https://www.raymondjames.com/about-us/company-history)
・SEC-Complaint: SEC v. Cryptoaiml Ltd., et al.
Raymond Jamesを装う偽サイトの不審点を見抜く方法

app.rjf1962.jpの件では、勉強会での勧誘から入金、出金の申し出までの各段階に、確かめれば気づける点がありました。お金を動かす前、動かすとき、引き出すときの3つの場面に分けて、どこを見ればよいかを挙げます。
- 動かす前:勉強会の成功談は、取引が本当にあった証拠になるかを考える
- 国民生活センターの情報誌は、数十人程度のLINEグループの参加者の多くはサクラと考えられるとしています。他人の利益の報告や画面の写しは、自分の資金が増える根拠になりません。
- 動かす前:サイトのアドレスが公式のraymondjames.comと一致するかを見る
- 「rjf1962」のように上場の記号や創業年が入っていても、本物の証拠にはなりません。最初の画面のロゴも画像なので、誰でも同じものを表示できます。
- 動かす前:金融庁の金融事業者一括検索で、日本での登録を調べる
- 「レイモンド」「Raymond」で調べても該当はありません。実在のRaymond Jamesは日本に拠点がなく、日本の登録業者でもないため本物であっても日本で株の売買を頼む相手にはなりません。
- 動かすとき:振込先が誰の名義で、どこで示されたかを見る
- app.rjf1962.jpの「銀行振込で入金」はチャットを開くだけで、振込先はその都度伝えられる作りでした。受け取る口座の名義がサイトの運営会社と違えば、その場で入金の手続きを止めてください。
- 引き出すとき:求められた支払いが規約や出金画面に書かれているかを見る
- 利用規約にも出金画面の注意事項にも、保証金の決まりはありませんでした。管理画面には利用者ごとに出金を止める切り替えもあり、書かれていない名目の支払いは払っても出金につながる裏付けがありません。
- 引き出すとき:やり取りの記録を残し、払う前に相談する
- 振込の控え、チャットの画面、サイトのアドレスを保存してください。振り込んだ先の金融機関に被害を伝えるときは、どの口座に送ったかを示すことになるため、口座番号と名義が分かる控えを手元に残しておきます。
画面に利益が出ていても、管理画面の操作で残高や建玉を作れる仕組みでは、その数字だけで安心はできません。保証金のような新しい名目の支払いを告げられたら、言われた額を用意する前に残した記録を見せて信頼できる第三者や専門家に判断を仰いでください。
【参考】
・国民生活センター-ウェブ版「国民生活」2025年1月号 特集 資産形成の落とし穴-投資話にだまされないために-
・Raymond James(https://www.raymondjames.com/)
Raymond Jamesを装う偽サイトに関する口コミや被害事例

app.rjf1962.jpのアドレスを挙げた書き込みは、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねるのいずれにもありませんでした。ただ知恵袋には2023年にRJFの名前を掲げた投資の勧誘についての相談が複数寄せられています。
X(旧Twitter)ではrjf1962のアドレスもRJFの取引口座も話題になっていない
Xでは、「rjf1962」のアドレスや「RJF 取引口座」の表示に触れた投稿は確認できませんでした。RJFやRaymond Jamesの名前で見つかるのは、実在の会社の株価や決算に関する投稿がほとんどです。
app.rjf1962.jpの通信の証明書が発行されたのは2026年8月30日で、使われ始めてまだ日が浅いアドレスです。投稿が見当たらないことは、このサイトが安全だという根拠にはなりません。
Yahoo!知恵袋には2023年にRJFを名乗るLINEグループについての相談が寄せられている
2023年11月11日の質問は、2人の人物の名前を挙げた投資で、アプリが開けなくなったという相談です。名前の行に続けて、質問者はこう書いています。
(前略)
アプリが開けなくなりました。
11月10日11時59分まで追加金を入れないといけない旨のメールが来た。
(中略)
石油取引の追加金を入れなかったので、アプリが凍結。
(後略)
この質問に付いた回答の一つは、相談者が使っていたサイトの名前を次のように推測しています。
(前略)
そして貴方が石油取引していたのはおそらくRaymond James Financialというサイトではないかと思われます。
(後略)
▼追加金の後にアプリが凍結したという知恵袋の相談

出典:Yahoo!知恵袋
同じ回答はLINEのグループを通じた勧誘だった可能性も挙げており、RJF(Raymond James Financial)の名前、追加の入金を求めて引き出しを妨げる流れは今回の相談と重なります。
ただし約3年前の話で、商品は株ではなく原油、回答者が挙げるサイトのアドレスもapp.rjf1962.jpとは別です。当時のサイトを今回と同じ者が動かしていたかは確かめられていません。
2023年10月には、先生役の人物が推薦する投資会社「RJF」の許認可を尋ねる質問もあります。9月には、その人物のLINEグループに入ったという質問に、先生役を「RJFグループの日本支社」の幹部と持ち上げる回答が並びました。実在のRaymond Jamesに日本の拠点はありません。
掲示板の書き込みにもrjf1962のアドレスは出てこない
5ちゃんねるのスレッド名を調べても、rjf1962やRJFの取引口座を扱ったスレッドは見当たりませんでした。「1962」や「取引」の語で引っかかるのは、本件と関係のないスレッドだけです。
勧誘も入金のやり取りも、LINEのグループやチャットという閉じた場で進みます。誰でも読める掲示板には被害の話が出てきにくいとみられ、書き込みがないことも安全の裏付けにはなりません。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-2023年11月11日の質問(アプリが開けなくなり追加金を求められたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14288763954)
・Yahoo!知恵袋-2023年10月18日の質問(推薦された投資会社RJFが規制を受けているかという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11287666316)
・Yahoo!知恵袋-2023年9月8日の質問(LINEグループの先生役の投資教育について尋ねる相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13285699888)
Raymond Jamesを装う偽サイトに関する口コミが少ない理由

1つ目は、アドレスが使われ始めてからの期間の短さです。利用者の画面の証明書が発行されたのは2026年8月30日で、Internet Archiveにもurlscan.ioにも記録がありません。被害に気づいた人が書き込むまでには時間がかかり、口コミとして積み重なる前の段階にあるとみられます。
2つ目は、勧誘から入金までが参加者にしか見えない場所で行われることです。勉強会はLINEのグループ、振込先はチャットで個別に伝えられ、登録の画面には招待コードの欄も用意されています。やり取りが外から見えない場所で完結するため、同じサイトの被害の声が一か所に集まりにくくなります。
▼招待コードの欄があるapp.rjf1962.jpの登録画面

出典:app.rjf1962.jp
3つ目は、名前で調べると実在の会社の情報が先に並ぶことです。「Raymond James」や「RJF」は上場会社の株価や決算の記事で埋まり、知恵袋の2023年の相談も別のアドレスの話でした。偽サイトの被害を書いた投稿があったとしても、本物の会社の話題の中に紛れるため検索から届きにくいとみられます。
口コミの少なさは、日の浅さ、閉じた勧誘、本物の会社の情報の多さが重なった結果とみられ、app.rjf1962.jpの安全を示すものではありません。引き出しの前に保証金などを持ち出されたら入金を止め、振込の控えやチャットの記録を持って専門家に相談してください。
【参考】
・app.rjf1962.jp-新規登録(https://app.rjf1962.jp/#/register)

