SNSで知り合った相手に投資を勧められ、教えられたサイトに入金を続けた末に、引き出そうとすると次々に支払いを求められる。令和8年8月末までの暫定値として警察庁が公表したSNS型投資詐欺の被害額は、937.4億円に達しています。
本記事で取り上げる「tradingbcr.com」は、海外のFX業者「BCR」の名前とロゴを掲げる取引サイトです。知り合った女性の勧めで取引を始めた相談者は、入金のたびに異なる個人名義の口座へ振り込んだあとに、出金を申請すると通貨換算手数料、凍結解除の税金、所得税を順に求められました。
調べると、ようこそ画面にはBCRとは別の業者名「DBG MARKETS」のロゴも並び、サイトのプログラムには税金や凍結にあたる言葉が見当たりませんでした。実在のBCRも、金融庁の無登録業者の一覧に載っています。
ドメインと証明書の記録、サイトのプログラム、実在のBCRと公的機関の資料をもとに勧誘から税金の請求までを順に追い、名前・口座・名目のどこを確かめればよいかを弁護士が解説します。
BCRを装う偽サイトに関するトラブルの概要

今回の相談は、SNSで知り合った女性から投資を勧められ、「tradingbcr.com」というサイトで取引を始めたことが発端です。サイトは海外のFX業者BCRと同じ名前とロゴを掲げていますが、出金を申し出ると手数料や税金の名目で支払いを次々と求められました。
この章では、出金時の税金を扱った国民生活センターの相談事例、実在のBCRの運営会社、金融庁が実在のBCRについて公表している情報、tradingbcr.comの利用規約の4点を順に取り上げます。
出金の段階で税金を求める手口は国民生活センターの事例にも出てくる
SNSの広告から投資を始めた人の相談を、国民生活センターが2026年9月1日に事例つきで紹介しています。その中に、投資グループで勧められた暗号資産の利益を引き出そうとして、高額な税金を求められた事例があります。
(前略)
暗号資産を買う際の振込先口座は、グループの人物から毎回違う個人名の口座を指定された。残高が約2,000万円になったので出金しようとしたところ、税金等で500万円の入金が必要だと言われた。家族に借り入れを頼んだところ、詐欺だと言われた。
▼出金時に税金を求められた国民生活センターの相談事例

出典:国民生活センター
同じ資料は助言として、株やFXの普通の取引なら振込先が個人名義になることはないとし、個人名義の口座を指定されたら詐欺だと言い切っています。口座の名義は振込の画面に出るので、送る前に一度見直すだけで気づけます。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、今回も入金のたびに異なる個人名義の口座を指定され、出金の段階で税金の名目が持ち出されています。
実在のBCRは英領バージン諸島の法人が日本語で案内するFX業者
実在のBCRは、外国為替やCFD(差金決済取引)を扱う海外の業者です。公式サイトのお問合せのページには、運営会社BCR Co Pty Ltdの登録住所として英領バージン諸島の住所が載っており、メールの宛先はすべて「@thebcr.com」で終わります。
▼英領バージン諸島の住所が載る実在のBCRの問い合わせ先

出典:BCR
日本から公式サイト(thebcr.com)を開くと、日本語版(jp.thebcr.com)に切り替わります。どちらもtradingbcr.comとは別のアドレスで、tradingbcr.comが実在のBCRによって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
実在のBCRも無登録で勧誘を行う業者として金融庁の一覧に載っている
登録なしに日本の利用者へ勧誘をした海外の業者などに警告書を出した場合、金融庁はその名前を一覧にして載せています。2026年1月の掲載分に「BCR Co Pty Ltd」があり、インターネットを通じて店頭デリバティブ取引の勧誘を行っていたものとされています。
▼BCR Co Pty Ltdを無登録業者として載せる金融庁の一覧

出典:金融庁
備考欄には「当該業者が提供するサービスの名称は「BCR」である。」とあります。実在のBCRも日本で登録を受けた業者ではなく、本物のBCRの名前だからといって日本の法律のもとで安心して取引を任せられる裏付けにはなりません。
tradingbcr.comの規約は7項目だけで事業者の名前も準拠する法律も示していない
tradingbcr.comでは、利用規約のページがログイン前の画面からでも読めます。中身は「サービス説明」から「サービスの変更と終了」までの7項目で、どの項目にも運営会社の名前や所在地、どの国の法律に従うかが書かれていません。
▼運営会社の名前がないtradingbcr.comの利用規約

出典:tradingbcr.com
並んでいるのは利用者の側の決まりが中心で、「すべての取引は一度確認されると取り消すことができません。」「プラットフォームは投資損失について責任を負いません。」といった文が目立ちます。入出金の手数料や税金についての項目はありません。
契約の相手が規約から分からない以上、トラブルが起きても相手を特定する手掛かりが残りません。規約を開いて会社名が見当たらなければ、入金を続ける前に立ち止まってください。
【参考】
・tradingbcr.com(https://www.tradingbcr.com/)
・国民生活センター-SNSで著名人が勧める“もうかる方法” それって本当!?金融商品・サービスのトラブルにご注意!
・BCR-お問合せ(https://jp.thebcr.com/jp/contact-us)
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
・tradingbcr.com-利用規約(https://www.tradingbcr.com/#/pages/terms/terms)
BCRを装う偽サイトへ誘導され被害につながるまでの経緯

tradingbcr.comとの接点は、SNSで知り合った女性から投資を持ちかけられたことでした。取引の開始、個人名義の口座への振込、出金の申請で求められた手数料と税金、さらに重ねられた所得税と支払い方法の指示の4つの場面に分けて見ていきます。
SNSで知り合った女性から投資を勧められtradingbcr.comで取引を始める
やり取りを重ねるうちに、相手の女性は投資の話を持ち出し、相談者にtradingbcr.comでの取引を勧めました。サイトを開くとログインの画面に切り替わり、実在のBCRと同じ図柄のロゴが大きく表示されます。
▼BCRと同じ図柄のロゴを掲げるtradingbcr.comのログイン画面

出典:tradingbcr.com
画面にはメールアドレスとパスワードの欄、下には「ホーム」「注文」「取引」といったメニューが並び、一見すると海外のFX業者の取引画面と見分けがつきません。相談者はここで取引を始め、その後も入金を重ねていきました。
入金のたびに異なる個人名義の口座を指定されて振込を重ねる
入金の方法は銀行振込で、振込先は入金のたびに別の人の名義に替わりました。相談者は2026年7月から8月にかけて、指定された複数の個人名義の口座へ振込を繰り返しています。
振込先がBCRという会社の口座ではなく、毎回違う個人の名前だった点は、前の章で見た国民生活センターの事例とも重なります。個人名義の口座を指定された時点で、正規の業者への入金ではないと考えてください。振込の控えは、のちに口座を突き止める材料になるため残しておくことが大切です。
出金を申請すると換算手数料に続いて凍結解除の税金を求められる
画面上の残高は米ドルで表示されていました。相談者がその残高の出金を申請すると、まず米ドルを日本円に換えるための「通貨換算手数料」として、日本円での支払いを求められます。出金を申し込んだ直後に、別の支払いが要ると告げられた形です。
続いて持ち出されたのは、米国の金融規制に基づいて凍結された資金を解除するための税金でした。出金を申請してから、手数料、凍結解除の税金と、支払いの名目が1つずつ増えていったことになります。どちらも、サイトの画面や規約にあらかじめ書かれていた費用ではありません。出金を条件とする追加請求は、利益の引き出し時に保証金を求められた事例でも確認されています。
所得税の名目まで加わりカードや暗号資産での支払いへ誘導される
さらに、日本の税務当局に納める所得税として、出金額の一定の割合にあたる金額も求められました。アシスタントを名乗る人物らは「税金を払えば全額が入金される」と説明し、クレジットカードや暗号資産の交換業者のアプリを使った支払いへ誘導しています。
やり取りの中では、偽の在留カードを示して信用させようとする場面もありました。在留カードのような身分証は本物に似せて作ることもできるため、見せられても相手の身元や話の正しさを保証するものにはなりません。
振り返ると、SNSで知り合った女性の勧め、BCRの名前とロゴを掲げたサイト、毎回違う個人名義の口座、出金の申請のたびに増える手数料と税金が重なったことが被害につながりました。
手数料や税金を払えば出金できると言われたら、その場で支払いを止めて専門家に相談してください。税金は本来、税務署へ自分で納めるもので投資サイトの担当者を通して払うものではありません。
【参考】
・tradingbcr.com(https://www.tradingbcr.com/)
BCRを装う偽サイトの関連サイトの情報を調査した結果

この章では、tradingbcr.comの取得時期、サポートの窓口のドメイン、証明書の発行記録、サイト名「Tradebcr」の綴り、金融庁の検索結果の5点を見ます。取得から数日で窓口の名前も用意され、その後も別のアドレスが足されていました。
下の表は、tradingbcr.comと実在のBCRが使うthebcr.comの登録の記録です。日付は記録に載っている協定世界時のままにしています。取得の時期だけでなく登録の窓口も異なります。
| 項目 | tradingbcr.com | thebcr.com(実在のBCRの公式サイト) |
|---|---|---|
| 登録日 | 2026年4月9日 | 2006年3月1日 |
| 有効期限 | 2027年4月9日 | 2027年3月1日 |
| 登録の窓口(レジストラ) | Cloudflare, Inc. | Squarespace Domains II LLC |
| 記録の確認先 | RDAP(rdap.verisign.com) | RDAP(rdap.verisign.com) |
tradingbcr.comは2026年4月9日に取得されその日のうちに証明書が発行されている
ドメインの登録情報を公開するRDAPで調べると、tradingbcr.comの登録日は2026年4月9日(日本時間では翌10日の未明)で有効期限は1年後です。比べるとthebcr.comは2006年3月の取得で、本物のアドレスのほうが20年古いことになります。
▼20年離れたtradingbcr.comとthebcr.comの登録日

出典:rdap.verisign.com
通信を暗号化する証明書には、いつ、どのアドレスに発行されたかを残す公開の記録があります。その記録では、tradingbcr.comとwww.tradingbcr.comの証明書が登録と同じ4月9日の日付で発行されていました。ドメインを取ってすぐに、サイトを開く準備が進められたとみられます。
チャットの窓口は5日後に取得された別の名前のドメインにつながっている
サイトが読み込むデータには、サポートの窓口のアドレスとして「webb.xtyzo.one」が書かれています(データの画面は次の章で示します)。xtyzo.oneは、BCRともtradingbcrとも結びつかない名前のドメインです。
▼tradingbcr.comの5日後に取得されたxtyzo.oneの登録日

出典:rdap.nic.one
RDAPの記録では、xtyzo.oneの登録日は2026年4月14日でtradingbcr.comの5日後です。登録の窓口もtradingbcr.comとは別の事業者でした。サイトとチャットを別々の名前で用意しておけば、片方が止められても、もう片方を残しておける作りとも言えます。
5月から6月にかけて別の名前のアドレスの証明書がまとめて取られている
証明書の発行記録には、tradingbcr.comの頭に別の名前をつけたアドレスも並んでいます。2026年5月17日には「aapi」「mapi」「m」、6月3日には「im」「im1」「im2」の3つずつがそれぞれ同じ日に発行されていました。
▼5月と6月に別の名前のアドレスが並ぶ証明書の発行記録

出典:crt.sh
名前からは、データのやり取りやスマートフォン向けの画面、チャットを受け持つアドレスとみられますが、2026年10月6日の時点では6つともつながらず応答がありません。一時期は、いまの画面とは別の仕組みを並べて動かしていた可能性があります。
サイト名のTradebcrは実在のBCRと同じ内容を表示していたアドレスと同じ綴り
tradingbcr.comを開くと、ブラウザのタブには「Tradebcr」と表示されます。この綴りのドメインtradebcr.comは2024年11月13日に登録されており、Internet Archiveの保存記録では、実在のBCRの公式サイトと同じ画面を表示していました。
▼実在のBCRと同じ画面を表示していたtradebcr.comの保存記録

出典:Internet Archive
tradebcr.comを誰が持っているのかを示す情報は、実在のBCRの側からは見つかりませんでした。ただ、偽サイトのアドレスは、この綴りに「ing」を足しただけの形です。BCRの名前で調べた人が目にする綴りに寄せたとみられます。
金融庁の一括検索でtradingbcrの名前を調べても該当がない
金融庁の金融事業者一括検索で「tradingbcr」「Tradebcr」と入力しても、該当する事業者は出てきません。「BCR」で調べたときに出てくるのは、前の章で見たBCR Co Pty Ltdで区分は無登録業者です。
▼tradingbcrで該当がない金融事業者一括検索の結果

出典:金融庁
結果の画面の注意書きによると、この検索で見つからない業者は、無登録業者である可能性があります。tradingbcrの名前で日本の登録を受けた業者はいないということです。ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。
このほか、次の3つの記録も確かめました。
- Googleのセーフブラウジングでwww.tradingbcr.comとwebb.xtyzo.oneを調べると、どちらも「安全ではないコンテンツは見つかりませんでした」と表示される
- ウェブページの保存サービスInternet Archiveに、tradingbcr.comの保存記録はない
- tradingbcr.comは配信の中継サービスCloudflareを通しており、同じサーバーにある別のサイトはたどれない
危険の判定が付くより先に、新しいアドレスが使われ始めることがあります。検索で何も出てこなくても安心せず、開いているアドレスがthebcr.comかどうかを入金のたびに確かめてください。
【参考】
・tradingbcr.com(https://www.tradingbcr.com/)
・RDAP-tradingbcr.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/tradingbcr.com)
・RDAP-thebcr.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/thebcr.com)
・RDAP-xtyzo.one(https://rdap.nic.one/domain/xtyzo.one)
・crt.sh-tradingbcr.com(https://crt.sh/?q=tradingbcr.com)
・Internet Archive-tradebcr.com(2026年3月18日)(https://web.archive.org/web/20260318165949/https://www.tradebcr.com/)
・Google透明性レポート-セーフブラウジングのサイトステータス(https://transparencyreport.google.com/safe-browsing/search?url=www.tradingbcr.com)
BCRを装う偽サイトに関する不審点

この章ではサイトの不審点として、ロゴ、ようこそ画面のもう1つの名前、入金の画面、出金の画面、請求された名目、サポートの窓口の6点を取り上げます。
前の2つは誰でも開ける画面、後の4つはサイトのプログラムとデータから分かることです。BCRの名前を掲げながら、お金の出入りの肝心な部分はサイトの外に置かれていました。
ログイン画面のロゴは実在のBCRのロゴと同じ図柄で使われている
tradingbcr.comが画面に使うロゴの画像は、アドレスを入れればそのまま開けます。ホームの画面用の画像には、黄色の「R」を組み合わせた印と「BCR」の文字、その下に「Bridge The Difference」という言葉が並んでいます。
▼標語まで一致するtradingbcr.comと実在のBCRのロゴ

出典:tradingbcr.com、BCR
実在のBCRの公式サイトが使うロゴも、印の形、文字の並び、標語まで同じです。ログインの画面に出る黄色の印も、公式サイトのアプリ用のロゴと同じ図柄でした。標語まで一致している以上、似せて作ったのではなく本物のロゴをそのまま使っているとみられます。
ようこそ画面にはBCRとは別のDBG MARKETSのロゴも表示される
ログインせずに開ける「ようこそ」の画面は、大きく「へようこそ BCR」と名乗っています。ところが同じ画面の下のほうには、「DBG MARKETS」という別の名前のロゴが置かれています。
▼BCRを名乗りながらDBG MARKETSのロゴを出すようこそ画面

出典:tradingbcr.com
このロゴの画像は、サイトのデータが指定する置き場所から読み込まれます。置き場所のアドレスには「20260729」という日付が入っており、2026年7月29日に置かれた画像とみられます。
▼7月29日の日付が入る場所に置かれたDBG MARKETSのロゴ

出典:tradingbcr.com
相談者が振込を重ねていたのは7月から8月で、その最中に画面に出る名前の一部が別の業者名に替えられていたことになります。1つのサイトに2つの業者名が並ぶ時点で、BCRの取引画面という前提は成り立ちません。
このDBG MARKETSのロゴは、tradingbcr.comと同じ設定のデータを返すdbgmarketssea.ccのログイン画面にも出ています(2026年11月2日確認)。DBG MARKETSの名前で出金の前に手数料を求められた別の相談は、「DBG MARKETS(dbgmarketssea.cc)は詐欺?出金前に3%の手数料を求める手口」で解説しています。
入金の画面には振込先の口座が表示されない作りになっている
入金の画面はログインした後にしか表示されません。そこで画面のもとになるプログラムを読むと、この画面は振込先の銀行名・口座番号・支店・名義の4つをサイトのデータから受け取って表示する作りです。
▼振込先の4項目を受け取る作りの入金画面のプログラム

出典:tradingbcr.com
ところが、そのデータをブラウザで開いて振込先の項目名「web_bank」を検索しても1件も見つかりません。データの冒頭には、前の章で見たサポートの窓口のアドレスが書かれています。
▼振込先の項目が1件もないtradingbcr.comのデータ

出典:tradingbcr.com
サイトの画面には振込先が出ず、口座はサイトの外のやり取りで伝えられる作りとみられます。入金のたびに別の個人名義の口座を指定されたという相談者の経緯とも矛盾しません。
出金画面はドルから円への換算をサイトの中で済ませる作り
出金の画面もプログラムを調べたところ、受け取る通貨に日本円を選ぶと、サイトのデータにある為替レートで米ドルの残高を換算して申請する作りでした。レートは「hui_lv」という項目で、10月6日の時点では1ドル161.14円です。
▼出金の換算に使うレートが入ったhui_lvの項目

出典:tradingbcr.com
換算はサイトが自分のレートで済ませており、換算のための手数料を別に払う項目はどこにもありません。ヘルプの画面用の文章には「銀行カード出金は10〜30分以内に着金」とも書かれていました。相談者が求められた「通貨換算手数料」は、サイトの作りからは必要性が見えない支払いです。
凍結解除の税金や所得税にあたる言葉はプログラムに見当たらない
tradingbcr.comの本体のプログラムには、10の言語の画面の文章がまとめて入っています。その英語の文章を「tax」(税金)や「freeze」(凍結)で検索しても、どちらも0件です。
▼taxもfreezeも見つからないtradingbcr.comのプログラム

出典:tradingbcr.com
画面ごとに分かれた51のファイルまで調べても、日本語の「税」「凍結」「解凍」「換算」「所得税」は1つも出てきませんでした。利用規約にも税金の条項はありません。凍結解除の税金も所得税も、サイトの仕組みの外で持ち出された名目とみられます。
サポートの窓口を開くと利用者の残高がチャットの側へ渡される
サポートの画面で「オンラインサポート」を押したときの動きも、プログラムを調べました。窓口のアドレスの後ろに、利用者の氏名とユーザー名、そして残高を書き足してから開く作りになっています。
つまりチャットの相手は、話している利用者の残高を見ながら応対できます。今回の相談では、所得税が出金額の割合で示されていました。残高を知っている相手なら、払えそうな額に合わせて名目と金額を組み立てることもできます。チャットで伝えられた金額は、サイトの画面にない以上、記録として残しておくことが大切です。
【参考】
・tradingbcr.com(https://www.tradingbcr.com/)
・tradingbcr.com-ロゴの画像(https://www.tradingbcr.com/static/llogo.png)
・BCR-ロゴの画像(https://thebcr.com/statics/images/logo-blk.png)
・BCR-アプリ用のロゴの画像(https://jp.thebcr.com/statics/images/app/logo.png)
・tradingbcr.com-DBG MARKETSのロゴの画像(https://www.tradingbcr.com/uploads/20260729/178531148907354614.png)
・tradingbcr.com-サイトのデータ(https://www.tradingbcr.com/api/index/index)
・tradingbcr.com-入金画面のプログラム(https://www.tradingbcr.com/static/js/pages-deposit-money-deposit-money.761abb46.js)
・tradingbcr.com-本体のプログラム(https://www.tradingbcr.com/static/js/index.7f4742f4.js)
BCRの名称が悪用されやすい理由

BCRの名前が使われた背景として、この章では4つの点を挙げます。実在のBCRが日本語で案内していること、その実在のBCRも日本で登録を受けていないこと、「BCR」が短い略称であること、そして請求の名目に税金が選ばれたことです。
実在のBCRが日本語のサイトで案内しているため名前に見覚えを持たれやすい
実在のBCRの公式サイトは、日本から開くと日本語版に切り替わります。口座開設の案内からお問合せまで日本語で読めるため、名前で調べた人は日本の利用者にも門戸を開いている実在の業者だという印象を受けやすくなります。
偽サイトにとっては、この印象が都合よく働きます。勧められたサイトの名前を調べ、本物の日本語のサイトが出てくればそれだけで安心してしまう人もいるはずです。確かめるべきなのは、名前が実在するかではなくいま開いているアドレスが本物と同じかです。
実在のBCRも日本で登録がなく登録の有無では本物と偽物を区別できない
金融庁の無登録業者の一覧には、実在のBCRの運営会社も載っています。日本で登録を受けた業者なら、金融庁の検索で本物の名前とアドレスを確かめられますがBCRではその手順が使えません。
「海外の業者なので日本の登録はない」と説明されると、登録の有無で本物か偽物かを見分ける手掛かりはなくなります。本物であっても、登録を受けていない業者への入金は日本の制度の保護を受けにくい点も知っておいてください。
偽物かどうかを見分けるには、開いているアドレスが公式のthebcr.comかロゴと名乗る名前が1つにそろっているかを確かめます。前の章で見たとおり、tradingbcr.comでは名前がBCRとDBG MARKETSの2つに分かれていました。
BCRという3文字の略称はほかの会社や組織の名前と重なりやすい
「BCR」は3文字の略称で、ほかの会社や組織にも同じ呼び名があります。たとえばルーマニアの銀行Banca Comerciala Romanaは公式サイトでBCRと名乗り、カナダのブリティッシュ・コロンビア州の鉄道会社も子会社の社名にBCRを使っています。
名前だけで調べると、こうした別の組織の情報も混ざって出てきます。さらに3文字の略称は、前後に言葉を足すだけで「tradingbcr」のような新しいアドレスを作れます。「BCR」が入っているというだけでは、どの会社のサイトなのかは決まりません。
税金という公的な名目は支払いを断りにくい
今回の請求には、「米国の金融規制」「日本の税務当局」といった公的な機関を思わせる言葉が使われていました。税金と言われると、払わなければ違法になるのではないかと感じ手数料よりも断りにくくなります。
国税庁は、国税庁をかたる詐欺への注意を呼びかけるページで次のように説明しています。
(前略)
また、国税の納付のために金融機関の口座を指定して振込みを求めることはありません。
投資サイトの担当者が税金の振込先を指定してくる時点で、国税の正規の納め方とは別物です。所得税なら本来は自分で申告して納めるもので、出金の手続きの途中で業者に払うものではありません。
一方、実在のBCRは、入出金にかかる費用を公式サイトで次のように案内しています。
▼入出金に追加の手数料はかからないとする実在のBCRの案内

出典:BCR
「BCR で入金または出金を行う場合、追加の手数料はかかりません。」とあり、銀行の間で生じる手数料に触れているだけです。出金と引き換えに税金や手数料を求められたら、払う前に専門家に相談してください。
【参考】
・BCR(https://jp.thebcr.com/jp)
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
・Banca Comerciala Romana(https://www.bcr.ro/)
・British Columbia Railway Company(https://bcrco.com/)
・BCR-出入金(https://jp.thebcr.com/jp/deposit-withdrawal)
BCRを装う偽サイトの不審点を見抜く方法

tradingbcr.comの件では、サイトの名前、振込先の口座、出金のときの請求のそれぞれに、確かめられる手掛かりが残っていました。名前を確かめる、口座を確かめる、名目を確かめるの3つの順に見るべき点を挙げます。
- 名前:サイトのアドレスが実在のBCRのthebcr.comと同じかを見る
- 「tradingbcr」のようにBCRの文字が入っていても、本物のアドレスとは別物です。BCRは3文字の略称で、前後に言葉を足せばいくらでも似た名前を作れます。
- 名前:1つの画面に出てくる業者名とロゴが1つにそろっているかを見る
- tradingbcr.comのようこそ画面は「へようこそ BCR」と名乗りながら、下にDBG MARKETSのロゴを出していました。ロゴは画像なので、本物と同じ図柄でも本物の証拠にはなりません。
- 口座:振込先が会社の口座か、個人の名前の口座かを見る
- 入金のたびに別の個人名義の口座を指定されたら、その時点で振込を止めてください。tradingbcr.comの入金画面は振込先をサイトに出さない作りで、口座はサイトの外で伝えられていました。
- 口座:金融庁の一覧と一括検索で、日本での登録を調べる
- 実在のBCRも無登録業者の一覧に載っており、tradingbcrの名前は一括検索で見つかりません。登録のない業者は、本物であっても日本の制度の守りを頼りにできません。
- 名目:求められた手数料や税金が、規約や出金画面に書かれているかを見る
- tradingbcr.comの出金画面はドルから円への換算をサイトの中で済ませる作りで、プログラムには税金や凍結の言葉もありませんでした。サイトのどこにも根拠のない費用を払っても、引き出しが進むとは限りません。
- 名目:税金の振込先を業者から指定されたら、払う前に記録を残して相談する
- 税金は本人が自分で納めるもので、投資サイトの担当者が振込先を決めるものではありません。請求を受けた日付、名目、金額、指定された支払い方法を書き留め、振込の明細とチャットの画面も手元に残しておきます。
画面に米ドルの残高が並んでいても、出金の手前で名目の違う支払いが続くなら、その残高を受け取れる見込みは低いと考えてください。次の支払いを求められた段階で手を止め、書き留めた記録を持って信頼できる第三者や専門家に相談してください。
【参考】
・BCR(https://jp.thebcr.com/jp)
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
BCRを装う偽サイトに関する口コミや被害事例

今回のサイトの名前で探した限り、tradingbcr.comやTradebcrを挙げた口コミは、X(旧Twitter)にもYahoo!知恵袋にも5ちゃんねるにも残っていませんでした。一方で知恵袋には、ネットで知り合った相手からBCRの名前で投資に誘われたという相談が、別のアドレスで寄せられています。
X(旧Twitter)でtradingbcr.comやTradebcrを調べても被害の投稿は出てこない
Xでは、「tradingbcr」「Tradebcr」の名前に触れた投稿は確認できませんでした。「BCR」だけで探すと、アニメの登場人物やバンドの略称など投資とは関係のない投稿が並びます。
tradingbcr.comのドメインが取られたのは2026年4月で、使われ始めてから半年ほどのアドレスです。話題に上っていないのは日が浅いためとも考えられるので、投稿が見当たらないことを理由に入金を続けないでください。
Yahoo!知恵袋には2021年と2024年にBCRを名乗る取引の誘いを受けたという質問がある
2021年11月4日の質問は、ネット上で知り合った相手からBCRでの口座開設を勧められたという相談です。質問者は口座を開く前に、BCRという取引所が本当にあるのかを尋ねています。
ネット上で知り合ったオーストラリア人にビットコインを勧められています。
私自身も仮想通貨に興味があったのですが、口座開設をしようと思っています。
当初はその方から、オーストラリアにあるBCRで口座を開くと良いと言われましたが、
(後略)
▼オーストラリアのBCRで口座開設を勧められたという知恵袋の相談

出典:Yahoo!知恵袋
この質問に付いた回答の一つは、出金の段階で起きることを次のように説明しています。
(前略)
出金に関しても信用させる為に最初だけ少額で信用させる事もありますが、その後追加の入金を勧めて来て、その後はいくら入金しても出金しようとすると税金がかかるとか保証金がかかるとか色々な理由をつけられて追加の入金を迫られますが最終的には二度と出金出来なくなります。
(後略)
2024年10月5日にも、BCRの名前を含むアドレス「thebcr.vip」について尋ねる質問があります。実在のBCRの公式サイトthebcr.comと、最後の部分だけが違うアドレスです。
投資詐欺だと思うのですが、どう思いますか?
(中略)
このアプリを使いUSDTに変えると資産が増えると言ってくる人がいます。
実際に使われている、やっている方いらっしゃいますか?
ネットで知り合った相手が勧めてくること、BCRの名前を使うことは今回と重なります。2021年の回答が挙げる「出金しようとすると税金がかかる」という流れも今回の経緯と同じです。
ただ、2つの質問はいずれも今回より前の話で、アドレスはbcros.vipとthebcr.vip、商品はビットコインとUSDTでした。同じ者がtradingbcr.comを動かしているかは確かめられていません。BCRの名前を使った誘いが、形を変えて以前から続いていることは読み取れます。
掲示板にもtradingbcr.comについての書き込みは見当たらない
5ちゃんねるのスレッド名を「tradingbcr」「Tradebcr」で調べても、該当するスレッドはありませんでした。爆サイの検索でも、同じ名前の書き込みは見つかっていません。
勧誘はSNSの個人どうしのやり取りで始まり、振込先や請求はサポートの窓口で伝えられます。やり取りが外から見えない場で進むため、被害に遭った人の声が掲示板まで届きにくいとみられます。書き込みの有無で、このサイトを判断しないでください。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-2021年11月4日の質問(オーストラリアにあるBCRで口座を開くよう勧められたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12252011377)
・Yahoo!知恵袋-2024年10月5日の質問(USDTに変えると資産が増えるとアプリを勧められたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12304962847)
BCRを装う偽サイトに関する口コミが少ない理由

tradingbcr.comは、見る場所によって名前が変わるサイトです。アドレスはtradingbcr、タブはTradebcr、ようこそ画面はBCRで、下にはDBG MARKETSのロゴも出ます。書き込む人ごとに名前がばらけるため、被害の話が1つにまとまらず口コミとして積み重なりにくくなります。
検索の面でも不利な名前です。実在のBCRの日本語のサイトやルーマニアの銀行、アニメやバンドの略称まで同じ3文字です。仮に被害の書き込みがあっても、関係のない情報に埋もれて検索する人の目に届きにくいとみられます。
お金のやり取りも、他人の目に触れない場所で進みます。勧誘はSNSでの個人どうしの会話から始まり、振込先や税金の請求は別のドメインのサポートの窓口で伝えられます。ウェブページの保存記録すら残っていません。被害の経緯が人目に触れる場所に残らないため、書き込みのきっかけ自体が生まれにくい状態です。
口コミの少なさは、呼び名の分散、略称の重なり、閉じたやり取りが重なった結果とみられます。「払えば出金できる」と言われた段階で次の振込を見送り、明細とチャットの画面をそろえて専門家に相談してください。
【参考】
・tradingbcr.com-ようこそ(https://www.tradingbcr.com/#/pages/welcome/welcome)

