今回の相談は、マッチングアプリで知り合った相手から、老後に備えた投資を一緒に学ぼうと誘われたのが始まりです。警察庁も、マッチングアプリで知り合った相手に早い段階でLINEへ誘われたら、詐欺を疑うよう呼びかけています。
相談者は、Tickmillのロゴを掲げる取引サイト(app.tickmills.cc)に暗号資産を送り、相手が指定した口座へ振込を重ねました。出金を頼むと手数料を先に支払うよう求められています。
調べると、app.tickmills.ccは別名のアドレス10個と同じ証明書を使っていました。誰でも開ける管理画面のプログラムには、利用者ごとに出金を止める欄や払い出す額を書き換える欄があります。先に手数料を払わせる仕組みはどこにも見当たりません。
本記事では、サイトのプログラムと正規のTickmillの決まりを突き合わせた結果を弁護士が解説します。出金の前に手数料を求められた場面で、払う前に確かめておきたい点もまとめます。
Tickmillを装う偽サイトに関するトラブルの概要

相談者は、マッチングアプリで知り合った相手から投資を勧められ、Tickmillのロゴを掲げる取引サイト(app.tickmills.cc)に送金を重ねました。出金を頼むと手数料を先に払うよう求められています。
この章では、サイトが扱う商品と正規のTickmillの商品の違い、正規のTickmillの日本での扱い、米国での差押え、警察庁が示す詐欺の定義の4点を順に確かめます。
app.tickmills.ccはTickmillのロゴを掲げる暗号資産の取引サイトとして作られている
app.tickmills.ccは2026年10月15日の時点で開けなくなっていたため、同じ作りの別名のアドレス(app.tickmills.vip)で、同じ日に画面を確かめました。
トップには「TICKMILL」のロゴと「Tickmillで150種類以上の暗号資産を取引可能」の文があり、メニューに入金・出金・ICO・信用借入などが並びます。
▼TICKMILLのロゴを掲げる取引サイトのトップ画面

出典:app.tickmills.vip
プログラムを調べたところ、ログインした後には暗号資産の現物と先物、秒単位のオプション、IPOの画面があります。一方、正規のTickmillはFXやCFDの業者で、暗号資産もCFD(差金決済取引)として扱います。
▼暗号資産をCFDで扱うと説明する正規のTickmillのページ

出典:Tickmill
現物の暗号資産を売り買いする取引所という作りは、正規のTickmillの商品の並びと合いません。正規のTickmillによって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
正規のTickmillも日本の金融庁に登録された業者ではない
金融庁の金融事業者一括検索で「Tickmill」と入力すると、「Tickmill Ltd」の1件が警告の印つきで出てきます。
商号・名称の前に⚠️が表示されている金融事業者は、金融庁(財務局)が警告書の発出を行った無登録業者です。ご注意ください。
▼「Tickmill Ltd」が警告の印つきで出る金融庁の検索結果

出典:金融庁 金融事業者一括検索
Tickmill Ltdは、金融庁の無登録業者一覧にも令和2年3月から載っています。サイトの末尾の注意書きで、日本の方は対象外だと正規のTickmillのほうから断っています。
▼日本の方を対象としないと書く正規のTickmillのサイト

出典:Tickmill
本物のTickmillのサイトに行き着いても、日本の居住者が取引してよい相手だという裏付けにはなりません。Tickmillの名前で勧誘されたら、その時点で立ち止まってください。
米国でもTickmillを名乗る偽サイトが差し押さえられ出会い系での勧誘が多く申告されている
米国司法省は2025年12月2日、Tickmillを装ったアドレス(tickmilleas.com)を差し押さえたと発表しました。令状を求めたFBIの宣誓供述書には次の記載があります。
On or about November 24, 2025, a query of IC3.gov data, the FBI’s crime complaint center for frauds and scams, revealed approximately 132 victims reporting scams associated with various websites/apps referencing “Tickmill.”
(中略)
Many of these victims reported meeting individuals on dating sites.
(後略)
▼Tickmillを名乗る詐欺の申告に触れるFBIの供述書

出典:米国司法省
Tickmillの名前を使うサイトやアプリの被害の申告が約132人分あり、多くが出会い系サイトで相手と知り合っていたという内容です。本件と同一の案件であることまでは確認できませんが、出会いの場からTickmillの名前へつなぐ勧誘は海外でも数多く報告されています。
利益の出金手数料を名目にお金をだまし取る手口を警察庁が詐欺の定義に挙げている
警察庁の統計の資料は、SNS型投資詐欺の定義に、利益を引き出す際の手数料を名目にする手口まで含めています。
SNS等を通じて対面することなく、交信を重ねるなどして関係を深めて信用させ、投資金名目やその利益の出金手数料名目等で金銭等をだまし取る詐欺(SNS型ロマンス詐欺に該当するものを除く。)
▼早い段階でLINEに誘導されたら疑うよう促す警察庁の注意

出典:警察庁 SOS47特殊詐欺対策ページ
警察庁の特殊詐欺対策ページも、マッチングアプリで知り合った後に早い段階でLINEへ誘われたら詐欺を疑うよう呼びかけます。これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、本件もこの流れに沿っていました。
引き出すための費用を先に送るよう言われたら、名目や額が変わっても支払いには一切応じないでください。払っても出金できる保証はないため、まず専門家に相談してください。
【参考】
・Tickmill(https://app.tickmills.cc/)
・Tickmill(https://app.tickmills.vip/)
・Tickmill-暗号通貨CFD(https://www.tickmill.com/ja/instruments/cryptocurrencies)
・Tickmill(https://www.tickmill.com/ja)
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
・米国司法省-Affidavit in Support of Seizure Warrant(Case No. 25-sz-52)
・警察庁-令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)
・警察庁-SNS型ロマンス詐欺|SOS47特殊詐欺対策ページ
Tickmillを装う偽サイトへ誘導され被害につながるまでの経緯

この章では、相談者がマッチングアプリで相手と知り合ってから出金のための手数料を求められるまでの流れを、知り合ったとき・送金を重ねたとき・出金を頼んだときの3つの場面に分けてたどります。
マッチングアプリで知り合った相手から老後に備えた投資を一緒に学ぼうと誘われる
相談者は、マッチングアプリで知り合った相手とメールでやり取りを始め、数日後にLINEへ移りました。相手は、老後の資金や豊かな生活のために一緒に勉強しようと持ちかけ、相談者を投資の取引へ導いています。
相手は少額から始めれば利益が出ると説明しました。相談者が案内されたのが、Tickmillのロゴを掲げる取引サイト(app.tickmills.cc)です。勧誘は、もうけ話としてではなく、老後に向けて一緒に学ぼうという誘いとして始まっていました。
少額の送金のあとに利益が振り込まれ暗号資産の送金と指定口座への振込を重ねる
相談者はネットバンキングの使い方が分からなかったため、最初の送金にはスマートフォンの決済サービスを使いました。画面ごとにスクリーンショットを相手に送り、指示どおりに操作しています。その後、送った額に利益を上乗せした額が相談者の口座に振り込まれ、相談者は相手を信用しました。
相手はより大きな額を求め、相談者が断ると額を下げて説得しました。相談者は、相手に送るためのイーサリアムを国内の暗号資産交換業者で買いそろえました。交換業者の画面には、イーサリアムを送った記録も残っていました。
相談者の説明では、相手に示されてインストールした「Tickactive」というアプリで送金の操作をしようとしたところ、利用している銀行の不正対策の仕組みが危険を検知して止めました。すると相手は別の口座を示して振り込むよう指示し、相談者はその口座に振り込んでいます。
その間、サイトの画面には入金の確認の表示が出ました。「Tick from TickMill」と表示されたサポートの窓口からは、短い時間のうちに送金することや送金の証明書を出すことも求められています。
追加の入金を迫られ出金を頼むと手数料を先に支払うよう求められる
相手は、今回の取引には大きな額が必要で自分も援助すると言って、相談者に追加の入金を求めました。入金すると画面には利益が表示されましたが、相談者の口座には戻らず、送金を求めても相手は応じませんでした。
相手は自分もお金を振り込んだと説明してさらに入金を迫り、相談者はもう一度振り込みました。その後も、額が足りないと取引できないとしてNISAの解約やクレジットカードのキャッシングまで指示し、相談者が断ると突き放しています。
相談者が送った分だけでも返してほしいとサポートに頼むと、出金には手数料を先に支払う必要があると返されました。相談者は警察に届け出て、相手の返事の文面が変わったことから身元を尋ねると、相手はLINEから退室しました。
最初の利益の振込で相手を信じさせ、相手の援助を口実に入金を重ねさせたうえで、最後は引き出す前に手数料を求める。本件の被害は、この三つの段階を順に踏んで大きくなっていきました。
Tickmillを装う偽サイトの関連サイトの情報を調査した結果

この章では、app.tickmills.ccがいつ取得されて今どうなっているかをドメインの登録情報(RDAP)で、同じ管理者がほかにどんなアドレスを持つかを証明書の発行記録で確かめます。照会した日付は、金融庁の名簿・海外の警告ともに2026年10月15日です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| アドレス | app.tickmills.cc |
| 名乗る名前 | TICKMILL(画面のロゴ)。設定のデータでは「TickMill」 |
| 取得日時 | 2026年6月19日 20時02分(日本時間) |
| 登録を扱った事業者 | NameSilo, LLC(有効期限は2027年6月19日) |
| 今の状態 | 停止(client hold。最終更新は2026年10月15日 1時03分〈日本時間〉) |
| 同じ証明書に並ぶアドレス | 少なくとも10個(app.tickmills.vip など) |
| 運営会社・所在地の表示 | 画面にはなし |
app.tickmills.ccは相手との連絡が始まる49日前に取得され10月に登録業者に止められた
tickmills.ccを取得した日時は、RDAPの「registration」の行に「2026-06-19T11:02:29Z」と残っています。Zの付いた時刻は世界標準の時刻なので、日本では同じ日の20時02分になります。相談者が相手と連絡を取り始めた日から数えて、49日前の取得です。
▼client holdと6月19日の取得を示す登録情報

出典:tld-rdap.verisign.com
状態の欄にある「client hold」は、登録を扱った事業者がアドレスを止め、名前を引けなくしている状態です。止めた理由は登録情報からは分かりません。相談者が使っていたアドレスは、今は開けなくなっています。
取得の日から別名のアドレスと同じ証明書を使い今も同じサイトが動いている
サイトとの通信を守る証明書は、誰がいつ発行を受けたかを第三者が後から調べられます。取得した日に発行された証明書には、app.tickmills.ccと並んで、画面の下に出ていたメールアドレスのドメイン(tickmill-pro.com)など3つのアドレスが入っていました。
相談者が送金していた8月にapp.tickmills.ccが使っていた証明書には、別名のアドレス9つが並んでいます。1枚の証明書に入るのは同じ管理者のアドレスです。
▼app.tickmills.ccと別名9つが並ぶ8月5日の証明書

出典:crt.sh
別名のアドレスは今も開け、どれも同じ画面とプログラムを返します。設定のデータは、確かめた4つのアドレスで1文字も違いませんでした。tickmill188.comとtkiioo888.shopは、秒まで同じ時間に取得されています。相談者のアドレスが止まっても、同じサイトは別の名前で動き続けています。
Tickmillを名乗るアドレスは金融庁の名簿にも海外当局の警告にも見当たらない
本件のアドレスの名前「Tickmills」や、相手に入れさせられたアプリの名前「Tickactive」は、金融庁の一括検索で1件も出てきません。令和8年9月1日現在で27ある暗号資産交換業者の登録一覧にも、Tickmillという名前の業者はありません。
正規のTickmill Ltdを監督するセーシェルの当局は2021年と2023年に、英国の金融行為規制機構(FCA)は2020年と2021年に、Tickmillの名前を使う偽の業者へ警告を出しています。いずれも別のアドレスで、本件のアドレスは載っていません。
ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。本件のように名前の一部を変えたアドレスは次々に用意されるため、当局が把握して一覧に載せるまでの間はどこを探しても名前が出てこないことがあります。
そのほか、第三者の記録と画面に出ていた連絡先から分かったことです。
- Googleのセーフブラウジングで調べても、app.tickmills.ccと確かめた別名のアドレスに危険なサイトとの判定は出ていない
- Internet Archive や urlscan.io では、app.tickmills.ccと別名のアドレスの画面の記録は見つからなかった
- 画面の下に出ていたメールアドレスのドメイン(tickmill-pro.com)は、今は名前を引けない
勧められた取引サイトは、名前で探すだけでなく、RDAPで取得日を証明書の記録で同じ管理者のアドレスを確かめてください。取得が最近で別名が多いアドレスなら、送金する前に専門家に相談することが大切です。
【参考】
・tld-rdap.verisign.com-tickmills.cc(https://tld-rdap.verisign.com/cc/v1/domain/tickmills.cc)
・crt.sh-app.tickmills.ccの証明書(https://crt.sh/?id=28562057499)
・Financial Services Authority Seychelles-Scam Alert
・Financial Services Authority Seychelles-Alert: Unauthorized use of website
・FCA-FxoptionTrade Limited (Clone of FCA authorised firm)
・FCA-FX Profit Broker / FXPB (Clone of FCA and EEA authorised firm)
Tickmillを装う偽サイトに関する不審点

この章ではTickmillを装う偽サイトに関する不審点として、出金の前の手数料という名目、入金と出金の手続き、誰でも開ける管理画面の2つの機能、ホワイトペーパーとヘルプの中身、会社紹介の6点を取り上げます。
どれも、お金の出入りを決めているのが画面の数字ではなく、運営の側の操作だと示すものです。
調べた材料は、2026年10月15日に同じ作りの別名のアドレスから取り出したプログラムです。利用者の画面のものは10月10日に作り直された版、管理画面のものは8月6日の日付の版でした。ログインしないと見られない画面の文言も、このプログラムそのものを取得して確認したものです。
出金の前に手数料を払わせる仕組みは利用者の画面にも管理画面にも見当たらない
プログラムを調べたところ、出金の確認画面には「引き出し数量」「手数料」「実際到着」の3つが並びます。実際に届く額は、出金する額から手数料を引いて計算する作りです。管理画面の設定にも、通貨ごとの「出金手数料」の欄があるだけでした。
手数料を出金とは別に先に払わせる画面や設定は、利用者の側にも管理画面にもありません。相談者がサポートから告げられた「出金の前に手数料を先に支払う」という条件は、サイトの仕組みの外で、やり取りの言葉として足されたものとみられます。
入金と出金の口座はカスタマーサービスが伝え入金は証明書の画像で運営が確かめる
入金の画面で銀行の口座を選ぶと、振込先は表示されず、カスタマーサービスに連絡するよう求めるボタンが出ます。日本語の画面では「オンラインカスタマーサービスに連絡して銀行入金アドレスを取得してください」と表示されるよう書かれていました。
▼振込先はカスタマーサービスに聞くよう求める入金画面の文言

出典:app.tickmills.vip
入金の申請には「入金証明書」の画像が欠かせず、送ると「送信成功、確認待ち」と出ます。振込先は運営がいつでも入れ替えられ、入金の反映も運営の確認しだいです。相談者が求められた送金の証明書の提出は、この作りに沿っています。
管理画面に利用者ごとに出金を止めるスイッチと払い出す額を書き換える欄がある
運営の側が使う管理画面(admin.tickmills.vipなど)は、アドレスを知っていれば誰でも入口を開けます。ログインの画面には、TICKMILLのロゴと、中国語で「専門のデジタル資産取引の管理プラットフォーム」を意味する一文が出ていました。
▼TICKMILLのロゴと中国語の説明が出る管理画面の入口

出典:app.tickmills.vip(admin.tickmills.vip)
管理画面のプログラムには、出金の審査で払い出す額を書き換える「出金数量編集」と「実際出金数量を入力してください」、口座の残高を「増やすには正の数、減らすには負の数を入力」する「手動増減」がありました。利用者の一覧には、出金を止めるかを一人ずつ切り替える「正常出金」の列もあります。
▼出金額の書き換えと残高の手動増減がある管理画面のプログラム

出典:app.tickmills.vip(admin.tickmills.vip)
画面に出る残高や出金できる額は、運営が書き換えられる数字です。画面の利益が増えていても、それだけでお金が戻る根拠にはなりません。相手に利益を見せられたときは、その数字を決めているのが誰かを考えてください。
管理画面では利用者のパスワードがそのまま見え秒単位の取引の勝ち負けも選べる
管理画面のプログラムの利用者の一覧には、「平文パスワード」という列があります。登録のときに入れたパスワードを運営がそのまま読める作りです。同じパスワードをほかのサービスでも使っているならすぐに変えてください。
▼平文のパスワードと決済価格の事前設定がある管理画面

出典:app.tickmills.vip(admin.tickmills.vip)
秒単位で上がるか下がるかを当てる取引には、利用者ごとに結果を「ランダム」「損失」「利益」から選ぶ欄と、注文ごとに「バイナリーオプションのプリセット決済価格」を入れる欄がありました。相談者の画面にも、この取引の口座が出ていました。
ホワイトペーパーとヘルプには別の名前が残り他社の文書を写したとみられる
ログインしなくても開けるホワイトペーパー(18ページのPDF)は、「TICKMILL AI」という分散型のAIの基盤の文書で、FXとも取引所とも関係がありません。ページ内を検索すると、別の名前「RYSA」が18か所に残っていました。
▼別の名前RYSAが残るTICKMILLのホワイトペーパー

出典:app.tickmills.vip
ログインした後のヘルプのよくある質問も、9問のうち7問が「NeoArbi」という別の名前の説明でした。「NeoArbiはフィンランド語で『ゴースト』を意味し」「ETHLend(LEND)として立ち上げられました」と続き、個人情報の項には「Aave SAGL」という名前が残ります。
▼ヘルプの説明に残るAave SAGLの名前

出典:app.tickmills.vip
これらは、実在のDeFi(分散型金融)の「Aave」の説明の名前を入れ替えたものとみられます。7問目の「NeoArbiにはダウンロード可能なモバイルアプリはありません。もし見つけた場合、それは詐欺です」も、正規のAaveのよくある質問の注意書きとほぼ同じ文です。
▼アプリはなく見つけたら詐欺と書く正規のAaveの注意

出典:Aave
取引所の説明として読ませる文書が、名前だけを替えた他社の文書でした。Aaveは名前と文章を使われた側で、本件のサイトを運営する者と結びつく情報はどこにも見当たりません。
社名も許認可も示さないまま5年間の安定運用をうたっている
ログインしなくても読める設定のデータには、英語の会社紹介の文があります。その中で「have obtained compliance operating licenses in multiple regions」(複数の地域で営業の許認可を得ている)とうたっています。
しかし、どの地域のどの当局から受けた許認可なのか、登録番号は何か、会社の名前や所在地はどこかといった、読む人が確かめるための手がかりは一つも書かれていません。
▼地域も番号も示さず許認可をうたう会社紹介

出典:app.tickmills.vip
トップ画面の下のほうには「5年間安定運用」「2000+ メディア掲載」「10M+ 満足ユーザー」と大きな数字が並び、その下に「TICKMILL © 2026」とメールアドレスが出ます。
▼5年間安定運用とうたうトップ画面の下部

出典:app.tickmills.vip
ところが、確かめたアドレスはいずれも2026年4月から9月に取得されたものです。5年間の実績をうたう一方で、名前を確かめられる会社はどこにも出てきません。許認可をうたう取引サイトでは、会社名と登録番号を探し、見つからなければ送金を止めて専門家に相談してください。
【参考】
・Tickmill(https://app.tickmills.vip/)
・Tickmill-利用者側のプログラム(https://app.tickmills.vip/assets/index-16btRiF7.js)
・Tickmill-管理画面の入口(https://admin.tickmills.vip/)
・Tickmill-管理画面のプログラム(https://admin.tickmills.vip/assets/index-97c7200e.js)
・Tickmill-ホワイトペーパー(https://app.tickmills.vip/assets/WhitePaper-D9rcHJhq.pdf)
・Tickmill-設定のデータ(https://app.tickmills.vip/api/app/info)
・Aave-FAQs(https://aave.com/faq)
Tickmillの名前が偽サイトの勧誘に悪用されやすい理由

Tickmillの名前が偽サイトに使われやすい理由を、勧誘の入口にしやすい、調べると本物に行き着く、手数料の説明がもっともらしく聞こえる、名前入りのアドレスを増やしやすいの4点から考えます。
勧誘の入口にはTickmillの名前を使い入金には別の名前のアプリを使わせる手口がある
FBIの宣誓供述書は、Tickmillを装ったサイトが、人を引き寄せる名前と入金に使わせるアプリの名前を分けていた理由を次のように説明しています。
(前略)
Severing that brand (i.e., “TickMill”), which first attracts victims, with the actual applications (e.g., “BTNEmax”) that victims use to deposit funds and ultimately lose money from makes sense because even if those applications are shut down, the original website can remain as a platform for future fraudulent applications.
(後略)
名前とアプリを切り離せば、アプリが止められても元のサイトを次の詐欺に使い続けられるという趣旨です。本件でも相手は別の名前のアプリ(Tickactive)を入れさせましたが、供述書の手口と同じかは確認できません。名前の知られた業者を名乗っていても、お金を送る先の名前が違えば立ち止まってください。
正規のTickmillは海外の許認可と日本語のサイトを持つため名前を調べると本物らしく見える
正規のTickmillには日本語のサイトがあり、ライセンスのページは許認可を次のように説明しています。
Tickmill Groupの各法人は、セーシェル金融サービス庁(FSA)、英国金融行動監視機構(FCA)、キプロス証券取引委員会(CySEC)をはじめとする各国・地域の規制当局から認可を受けています。
名前で検索すると、こうした許認可や日本語の案内が出てくるため、偽サイトは名前を借りるだけで本物の信用をまとえます。本物の業者が見つかっても、勧誘された取引サイトがその業者のものとは限りません。送金先のアドレスが公式のアドレスと一致するかを確かめてください。
出金の手数料を先に求める名目は正規のTickmillの決まりと逆になっている
FX業者の名前を掲げていると、出金の手数料という説明ももっともらしく聞こえます。ところが、正規のTickmillの入金と出金のページには次の一文があります。
Tickmillでは、出金手数料をいただいていません。
▼出金手数料をいただいていないと書く正規のTickmillのページ

出典:Tickmill
同じページは、出金は原則として入金に使った方法で処理するとも書いています。名前を借りられた正規の業者のやり方を見ても、引き出すために別の口座へ先にお金を送らせる理由はありません。ただし、正規のTickmillも日本の居住者を対象としていないため、正規の業者なら安心というわけではありません。
Tickmillの文字を含むアドレスは名前の一部を変えるだけで次々に作れる
本件の別名のアドレスの多くは、「tickmills」「tickmill188」「tickmilldt」のように、Tickmillの綴りに文字や数字を足しただけのものでした。
正規のTickmillの公式のアドレス(tickmill.com)は2014年に取得されていますが、本件で確かめたアドレスはいずれも2026年の取得です。綴りを少し変えれば、同じ名前のアドレスはいくらでも作れます。
セーシェルの当局は2021年、Tickmillの名前を含む2つのアドレスについて、次のように注意を呼びかけました。
This notice is issued by the Financial Services Authority of Seychelles (“FSA”) drawing attention to the following websites and the fact that contrary to the domain name, these websites are not linked to any entities licensed or regulated by the FSA in any capacity.
(後略)
アドレスの名前に反して、当局が認可した業者とは無関係だという趣旨です。本件とは別のアドレスですが、アドレスにTickmillの文字が入っていても、正規の業者のサイトだという証明にはなりません。綴りが公式と1文字でも違うアドレスで送金を求められたら、その場で専門家に相談しましょう。
【参考】
・米国司法省-Affidavit in Support of Seizure Warrant(Case No. 25-sz-52)
・Tickmill-Tickmill Groupのライセンスと規制(https://www.tickmill.com/ja/about/licences-and-regulation)
・Tickmill-入金と出金(https://www.tickmill.com/ja/conditions/deposit-and-withdrawal)
・rdap.verisign.com-tickmill.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/tickmill.com)
・Financial Services Authority Seychelles-Scam Alert
Tickmillを装う偽サイトの不審点を見抜く方法

本件の相談者は、有名な名前、最初の利益、相手の援助の申し出といった、いくつかのきっかけで相手を信じていきました。ここでは、相手を信じたきっかけごとに、その場で確かめられる6つの見方を並べ、本件で分かったことを添えます。
- 有名な業者の名前を名乗られたら、名前ではなくアドレスで調べる
- app.tickmills.ccは相手との連絡が始まる49日前に取得され、同じ証明書に別名のアドレスが並んでいました。正規のTickmillも日本の居住者を対象としていないため、本物の業者が見つかっても安心はできません。
- 最初に利益が振り込まれても、次の大きな送金の根拠にしない
- 相談者は、少額の送金に利益を上乗せした額を受け取ってから、より大きな送金に進みました。最初の振込が本物でも、その後の送金が返ってくる保証にはなりません。
- 振込先をチャットで個別に伝えられたら、払う前に手を止める
- サイトの入金画面は振込先を出さず、カスタマーサービスに聞くよう求める作りでした。銀行の仕組みで送金が止められた後に別の口座を示されたら、そこで振込をやめてください。
- 画面の残高や利益は、出金できるまで自分のお金とみなさない
- 管理画面には、払い出す額を書き換える欄や残高を手で増やしたり減らしたりする欄がありました。画面の数字が増えても、それを決めているのは運営の側です。
- 出金の前に手数料を求められたら、その名目がサイトのどこにあるかを示してもらう
- 先に手数料を払わせる仕組みは、利用者の画面にも管理画面にもありませんでした。正規のTickmillは出金手数料を取らないと書いており、先払いの求めは仕組みの外の話です。
- 相手がお金を足すと言っても、解約や借入れをしてまで入金しない
- 相手は自分も援助すると言い、NISAの解約やキャッシングまで勧めました。相手のお金が入ったかは画面でしか確かめられないため、その前に専門家に相談してください。
6つのうち一つでも当てはまったら、次の送金は止めてください。本件の相手は最後にLINEから退室し、サイトのアドレスも止まりました。消える前に、トーク画面・送金の記録・サイトの画面を保存し、それを持って信頼できる第三者に相談することが大切です。
Tickmillを装う偽サイトに関する口コミや被害事例

2026年10月15日に、app.tickmills.ccと別名のアドレス、サイトとアプリの名前で書き込みを調べました。この章では、利用者の被害談の有無、検索で目立つ返金の宣伝の作られ方、Tickmillの名前で出金の前に支払いを求められた以前の相談を取り上げます。
相談者が使ったアドレスや別名のアドレスで被害を書き込んだ投稿は見当たらない
app.tickmills.ccやapp.tickmills.vipなどのアドレス、「Tick from TickMill」「Tickactive」の名前で、X、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる、爆サイ、Telegramなどを探しましたが、利用者本人が被害を書いた投稿は確認できませんでした。
検索で何も出てこなくても、このサイトで損をした人がいないという証拠にはなりません。本件のサイトはログインしないと中を見られず、相談者のアドレスもすでに止まっています。口コミが残りにくい理由は次の章で確かめます。
Tickmillの名前で返金をうたう記事が短時間に量産されている
検索で目立つのは、本件のアドレスやTickmillの名前を題に入れた、返金や調査をうたう発信でした。動画やブログで少なくとも9件あります。その多くは書き手自身の被害の体験を語り、最後に個人のLINEのアカウントや別のメッセージアプリの連絡先を載せる形でした。
そのうちあるブログには、2026年9月19日の約1時間(64分)の間に「注意喚起」をうたう記事が50本並び、その1本が本件のアドレスを題にしていました。名前だけを入れ替えて記事を量産しているとみられます。別のブログサービスの2件は、すでに「公開停止中」と表示されていました。
記事に書かれた体験が本当かどうかは、読む側には確かめられません。被害を取り戻したいときこそ、連絡先が個人のアカウントしかない発信は避け、事務所の名前と所在地を公開している弁護士や、公的な消費生活センターに相談してください。
Tickmillの口座から出金するには税金を先払いするよう言われた2021年の相談
Yahoo!知恵袋には、2021年5月23日に、Tickmillの名前の口座から資金を引き出そうとして、先に支払いを求められたという質問があります。
海外FX口座Tickmillで取引をしています。
口座の資金を出したいのですが、米国ドル10パーセントの税金を払わないと出せません。
それで困っています。
本当に取り出せるのでしょうか?
FX口座は、銀行口座を指定してきました。
税金先払いだそうです。
(後略)
▼Tickmillの口座で税金の先払いを求められた知恵袋の質問

出典:Yahoo!知恵袋
この質問が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、Tickmillの名前、引き出す前の支払い、相手が口座を指定してくる点は、本件と重なります。一方で、5年前の質問で、名目は手数料ではなく税金、アドレスや勧誘の経路も書かれていません。
名目が税金でも手数料でも、出金の前に別の口座へお金を送るよう求められる流れは同じです。言われた額を振り込む前に、相手とのトークや送金の控えをそろえて専門家に相談してください。また、出金前に税金を求める偽サイトもあります。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-2021年5月23日の質問(Tickmillの口座から出金するには税金を先払いするよう言われたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13243593893)
Tickmillを装う偽サイトに関する口コミが少ない理由

取引の画面に入れるのは、相手に誘われて登録した人だけです。画面を保存して公開する第三者のサービスでも、app.tickmills.ccの中身の記録は見つかりませんでした。被害に遭った人が書き込もうとしても、ほかの人が同じ画面を見て確かめることができず、評判として広がりにくいとみられます。
アドレスの数も、書き込みを分散させます。app.tickmills.ccと同じ証明書に並ぶ別名のアドレスは10個あり、相談者が使ったアドレスは今では開けません。被害に遭った人がそれぞれ別のアドレスの名前で書けば、同じ相手への訴えであっても一つの評判にまとまりません。
そのうえ、検索結果の目立つ場所は、返金をうたう宣伝と相談事例を紹介する記事が占めています。同じ相談の話が金額だけ違えて別々のサイトに載っていることもあり、どれが本当の被害の声なのかを読む側が見分けるのは困難です。
声が見つからないことを、このサイトの安心材料にしてはいけません。見えにくい作り、散らばるアドレス、宣伝の多さが重なり、被害の声が埋もれているとみられます。出金のために先にお金を送るよう言われたら、その時点で検索を打ち切り専門家に相談してください。

