暗号資産に関する相談は、2025年度だけで8,132件が国民生活センターに寄せられました。その中には、出金できないまま追加の入金を求められたという相談も含まれています。
今回相談が寄せられた「piiioneixxx1.com」は、実在の暗号資産取引所「Pionex」の名前を掲げた取引サイトです。AI取引やオプション取引を名目に入金を求められた相談者は、個人名義、やがて法人名義の口座へと、次々に替わる振込先へ銀行振込を重ねていました。
調べると、同じ管理者のもとには、piiioneixxx1.comを含めてPionexに似せたアドレスが9つあり、3回に分けてそれぞれ同じ秒に登録されていました。誰でも開ける管理画面のプログラムには、利用者に見えない形で勝ち負けを決める設定や、全員の振込先を一度に差し替える設定が書かれています。
本記事では、ドメインと証明書の記録、管理画面のプログラム、金融庁などの公表資料をもとに、有名な取引所の名前で入金を求められたときに確かめたい点を弁護士が解説します。
Pionexを装う偽サイトに関するトラブルの概要

今回の相談は、暗号資産の取引所「Pionex」を名乗るサイト「piiioneixxx1.com」で、AI取引やオプション取引を始めたことが発端です。入金の方法は銀行振込で、相談者は個人名義の口座への振込を重ねていきました。
振込先は途中から法人名義の口座にも広がり、1回に振り込む金額も大きくなっていきました。この章では、国民生活センターの相談事例、金融庁の注意喚起、実在のPionexの登録状況、海外の当局の警告を取り上げます。
国民生活センターには暗号資産の投資で出金できない相談が寄せられている
国民生活センターは、暗号資産(仮想通貨)に関する相談の件数と最近の事例を1つのページにまとめ、2026年7月31日に更新しています。紹介されている5つの事例のうち、次の1件は出金できないまま追加の入金を求められたという相談です。
知人から儲かると言われ暗号資産の投資を始めたが口座から出金が出来ない。追加入金すれば出金出来ると言うが不審だ。
▼出金できず追加入金を求められた暗号資産の相談事例

出典:国民生活センター
ほかの4件も、SNSの副業の紹介や著名人の投資広告など入口は異なりますが、払った後に引き出せなくなる、別の支払いを求められるという流れは共通しています。出金の前に追加の支払いを条件にされたら、その時点で振込を止めてください。
AI取引やオプション取引を名目に入金を重ねさせる手口
piiioneixxx1.comのトップページには「スマート AI 取引」「オプション・30秒で結果」「日利率最大1.5%」といった案内が並びます。AIが代わりに運用する、すぐに結果が出るという触れ込みは、「任せておけば増える」と思わせやすいものです。
金融庁は、こうした誘い文句そのものに注意を促しています。
「セミナーで勉強すれば、勝てるようになる」「自動売買ソフトを使えば、なにもしなくても儲かる」などと言って、FX・バイナリーオプション・暗号資産等への投資を一方的に勧めてくるケースが以前より発生しています。
▼自動売買ソフトをうたう投資勧誘への金融庁の注意喚起

出典:金融庁
piiioneixxx1.comのオプションは、上昇か下落かを選んで30〜120秒で決済する仕組みで、金融庁が挙げるバイナリーオプションとよく似ています。「AI」や「自動売買」という言葉は、運営者を確かめなくてよい理由にはなりません。自動売買の勧誘を見極める際は、FXシステムとサポートの高額契約に至った事例も確認してください。
正規のPionexであっても日本で登録を受けた業者ではない
実在のPionexは、自動売買の機能を備えた海外の暗号資産取引所で、公式サイトは「pionex.com」です。ただし、金融庁の暗号資産交換業者登録一覧(令和8年9月1日現在)を検索しても、Pionexの名前は出てきません。
▼Pionexが見当たらない暗号資産交換業者登録一覧

出典:金融庁
同じ一覧には「暗号資産交換業者は金融庁・財務局への登録が必要です」と明記されています。実在のPionexも日本で登録を受けた業者ではないため、「本物のPionexなら安心」とはいえません。
一方、piiioneixxx1.comのサポート画面には「Pionex カスタマーサポートへようこそ!」と表示されます。実在のPionexは、公式ブログで次のように呼びかけています。
Never send money to anyone claiming to be a Pionex employee; (Pionexの社員を名乗る人には、決して送金しないでください)
▼Pionexのカスタマーサポートを名乗るサポート画面

出典:piiioneixxx1.com
▼社員を名乗る人への送金を戒めるPionexの公式ブログ

出典:Pionex
piiioneixxx1.comについて、実在のPionexによって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。Pionexのサポートを名乗る相手から振込先を示されても、公式の窓口とは考えないでください。
海外ではPionexと1文字違いの名前をかたる偽業者に警告が出ている
アイルランド中央銀行は2025年8月25日、同行が認可している実在の法人「Pionew Ireland limited」の名前と認可番号を流用した偽業者について警告を出しました。Pionexとは最後の1文字だけが異なる名前です。
偽業者は主にWhatsAppのグループを通じて活動していました。中央銀行は、正規の法人と偽業者には何の関係もないこと、正規の法人は投資に関する連絡にWhatsAppを使わないことも明記しています。
▼名前と認可番号を流用した偽業者への警告

出典:アイルランド中央銀行
警告の対象になったアドレスは本件のpiiioneixxx1.comとは異なり、これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、よく知られた取引所に似せた名前は、国を問わずかたられています。入金の前に、名前ではなくアドレスと運営者の登録を確かめてください。
【参考】
・piiioneixxx1.com(https://piiioneixxx1.com/)
・Pionex-How to Protect Your Pionex Account from Scam(https://www.pionex.com/blog/how-to-protect-your-pionex-account-from-scam/)
Pionexを装う偽サイトへ誘導され被害につながるまでの経緯

相談者がpiiioneixxx1.comで取引を始めてから相談に至るまでを、サイトの画面と入金の流れに沿って整理します。入金はすべて銀行振込で、振込先は最後まで一定しませんでした。
Pionexを名乗るサイトでAI取引とオプション取引を始める
piiioneixxx1.comをスマートフォンで開くと、最初に大きく「Pionexへようこそ」と表示され、その下に新規登録とログインのボタンが並びます。画面を送ると、「オプション」「スマート AI 取引」「資産運用・ロック型貯蓄」の案内が続きます。
▼Pionexへようこそと表示されるトップ画面

出典:piiioneixxx1.com
相談者は、このサイトでAI取引やオプション取引を名目に入金を求められました。実在の取引所の名前が大きく表示され、取引の画面も一通りそろっているため、画面を見ただけで本物かどうかを見分けるのは難しい作りです。
入金の方法は銀行振込で最初の振込先は個人の口座だった
入金の画面はログインが前提のため、サイトのプログラムを直接取り出して中身を調べました。銀行振込を選ぶと振込先の口座が示され、振込を終えた後に「金額と支払人名を入力して申請してください」という手順になっています。
申請の画面には、振込のスクリーンショットをアップロードする欄や、「金額は実際の振込額と完全に一致させてください」という注意も用意されています。振込そのものはサイトの外で利用者が自分の銀行から行う仕組みです。
相談者が最初に振り込んだ先は、個人名義の口座でした。取引所に預けるお金であれば、受取人は運営している会社になるはずです。最初の振込の時点で、受取人の名前が運営会社と食い違っていたことになります。
振込先が法人名義の口座にも広がり入金額が大きくなっていく
その後も示される振込先は個人名義の口座で、銀行も名義も次々に変わり、1日のうちに別々の口座へ分けて振り込んだこともありました。途中からは法人名義の口座も振込先に加わっています。
振込先が入れ替わる一方で、1回あたりの入金額は次第に大きくなっていきました。振込先がこれほど頻繁に替わるのはなぜか、その仕組みがサイトの側にどう用意されているのかは、後の章でプログラムの内容とあわせて取り上げます。
振込先を替えながら入金を重ねた末に相談に至る
相談者は、個人名義と法人名義をあわせて多数の口座へ入金を重ねている段階で立ち止まり、相談に至りました。振り込んだ金額の合計は、相談の時点で多額にのぼっています。
振り返ると、実在の取引所の名前、AI取引やオプション取引という名目、次々に替わる振込先が重なり、入金が止まらないまま被害が広がりました。
振込先の名義が運営会社と一致しない点は、最初の入金の前に気づける手がかりです。名義が運営会社と違うと分かった時点でいったん手を止めて専門家に相談してください。
【参考】
・piiioneixxx1.com(https://piiioneixxx1.com/)
Pionexを装う偽サイトの関連サイトの情報を調査した結果

piiioneixxx1.comについて、ドメインの登録、証明書の発行履歴、画面の保存記録、金融庁の公表資料を調べました。その結果、同じ管理者のもとにあるPionexに似せたアドレスが8つ見つかり、そのうちの1つでは同じロゴと見出しの画面が表示されていた記録も残っていました。
下の表は、証明書で結びつく9つのドメインの一覧です。登録機関はいずれもNameSiloで、piiioneixxx1.com以外の8つは、2026年9月30日の時点ではアドレスを入力しても開けません。
| ドメイン | 登録日時(日本時間) | 証明書 | 9月30日の状態 |
|---|---|---|---|
| piiioneixxx1.com | 2026年7月9日 8:17:01 | ①② | 相談者が使っていた取引サイト |
| piioneixxx.com | 2026年7月9日 8:17:01 | ① | 開けない |
| piioneixxx1.com | 2026年7月9日 8:17:01 | ① | 開けない |
| iopeixxnii.com | 2026年7月13日 17:50:35 | ② | 開けない |
| iopeixxnnp.com | 2026年7月13日 17:50:35 | ② | 開けない |
| poiexniiijp.top | 2026年7月13日 23:02:04 | ② | 開けない |
| poiexninxi-jp.top | 2026年7月13日 23:02:04 | ② | 開けない |
| poiexninxijp.top | 2026年7月13日 23:02:04 | ② | 開けない |
| poiexxninxi-jp.top | 2026年7月13日 23:02:04 | ② | 開けない |
piiioneixxx1.comは2026年7月9日に1年契約で登録された
登録機関が公開する記録(RDAP)によると、piiioneixxx1.comの登録日時は2026年7月8日23時17分(世界標準時)、日本時間では7月9日の朝8時17分です。相談者の振込が重なっていった時期のおよそ3週間前に取得されたことになります。
▼2026年7月8日(世界標準時)の登録を示すRDAP

出典:RDAP(rdap.verisign.com)
登録は1年契約で、2027年7月に期限を迎えます。実在のPionexの公式サイトpionex.comは2019年に登録されており、piiioneixxx1.comには取引所としての運営の実績と呼べる期間がありません。
証明書の記録にPionexに似せた別のアドレスが8つ並んでいる
証明書の発行の履歴は、crt.shという検索サービスで誰でも調べられます。piiioneixxx1.comの履歴をたどると、2枚の証明書にpiiioneixxx1.comと並んでPionexに似せた別のアドレスが合わせて8つ載っていました。
▼Pionexに似せたアドレスが並ぶ2枚の証明書の記録

出典:crt.sh
証明書は、書き込まれたアドレスの持ち主であることを確かめたうえで発行されます。1枚に並んでいる以上、9つのアドレスは同じ管理者の手元にあるとみられます。名前は「piiioneixxx」「iopeixx」「poiexnin」など、Pionexの綴りの文字を増やしたり並べ替えたりしたものです。
9つのアドレスは3回に分けてそれぞれ同じ秒に登録された
9つのドメインの登録日時は、3つの時刻に集中しています。7月9日8時17分01秒に3つ、7月13日17時50分35秒に2つ、同じ日の23時02分04秒に4つで、それぞれの組は秒の単位まで同じ時刻に登録されていました。
▼piiioneixxx1.comと同じ秒に登録されたpiioneixxx.com

出典:RDAP(rdap.verisign.com)
1つずつ手で登録していけば、秒単位までそろうことはまずありません。似た綴りのアドレスをまとめて取得し、1つが使えなくなっても別のアドレスへ移れるように備えていた可能性があります。
別のアドレスでもPionexのロゴと同じ見出しの画面が表示されていた
アドレスを入力するとその時点の画面を保存する「urlscan.io」には、同じ証明書に載っていたiopeixxnii.comの記録が2026年7月26日付で残っています。
保存された画面の背景はオレンジ色の帯で、現在のpiiioneixxx1.comとは意匠が異なりますが、左上のPionexのロゴと「精密なデータが道を導く」という見出しは同じでした。
▼同じロゴと見出しが残るiopeixxnii.comの記録

出典:urlscan.io
▼同じロゴと見出しが表示される現在のトップ画面

出典:piiioneixxx1.com
同じ記録のページには、iopeixxnii.comについて「Google Safe Browsing: Malicious」(Googleのセーフブラウジングで危険と判定)と表示されています。同じ名前と見出しのサイトが別のアドレスでも表示されていたことになります。
piiioneixxx1.comの名前は金融庁の無登録業者の一覧にもない
金融庁は、無登録で暗号資産交換業を行っているとして警告書を出した業者を一覧で公表しています。この一覧のPDFを「piiion」や「Pionex」で検索しても、該当するものはありませんでした。
▼piiioneixxx1.comが載っていない暗号資産の無登録業者の一覧

出典:金融庁
ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。一覧の冒頭の留意事項にも次の一文があります。
そのため、掲載されていない者であっても、無登録交換業に該当する行為を行っていることがあり得ますのでご注意ください。
このほか、サイトの安全性の判定や過去の記録についても調べたところ次のとおりでした。
- Googleセーフブラウジングでは、piiioneixxx1.comは「データがありません」と表示され、危険とも安全とも判定されていない(2026年9月30日確認)
- Internet Archiveには、9つのアドレスのどれも画面が保存されていない
- piiioneixxx1.comの通信はCloudflareを経由しており、実際のサーバーの場所は外から分からない
危険の判定がないことや、記録が残っていないことは、サイトが安全であることを意味しません。運営者の実体が外から見えないまま、アドレスだけが入れ替えられる作りになっている点に注意が必要です。
【参考】
・piiioneixxx1.com(https://piiioneixxx1.com/)
・RDAP(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/piiioneixxx1.com)
・RDAP(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/piioneixxx.com)
・crt.sh(https://crt.sh/?id=27792919080)
・crt.sh(https://crt.sh/?id=27902035351)
・urlscan.io(https://urlscan.io/result/019f9f98-87a0-770b-8b2c-edcac9a1b076/)
・Google-透明性レポート(セーフブラウジングのサイト ステータス)
Pionexを装う偽サイトに関する不審点

ここでは、ページのソースに残る中国語の開発メモ、同じアドレスに置かれた管理画面、その管理画面のプログラムに書かれた勝ち負け・凍結・振込先の操作、会社名のない「私たちについて」の不審点を取り上げます。
管理画面のプログラムは、ログインしなくても誰でもブラウザで開けます。ただし、中国語の部分は文字化けして表示されるため、画像では英字の関数名の箇所を示し、中国語の説明文は原文を引用したうえで訳を添えます。
ページのソースに中国語の開発メモが残り日本語で共有する前提が書かれている
トップページで右クリックから「ページのソースを表示」を選ぶと、サイトの骨組みとなるHTMLを読めます。題名は「PX」で、その下に開発者が書き残した簡体字の中国語のメモ(コメント)が2か所あります。
分享到聊天软件/社交平台时的预览卡片(Open Graph)。标语用日语显示。
(チャットアプリやSNSで共有したときに表示するプレビュー。標語は日本語で表示する)
▼中国語の開発メモが残るトップページのソース

出典:piiioneixxx1.com
チャットアプリで送られたリンクを開いた人に、日本語の標語を見せるための設定です。日本の利用者にリンクを送ることを前提に作られているとみられます。もう1つのメモには「以前没有 favicon」(以前はサイトのアイコンがなかった)とあり、公開後に手を加えてきた跡もうかがえます。
同じアドレスの末尾に/adminを付けると中国語の管理画面が開く
アドレスの後ろに「/admin」と打ち込むと、画面は一転して「PX 管理后台」(PX 管理画面)のログイン画面に変わります。入力欄の「账号」「密码」も、ボタンの「登录」も、すべて簡体字の中国語です。
▼中国語で表示される管理画面のログイン画面

出典:piiioneixxx1.com
管理画面のプログラムを調べたところ、メニューには「用户管理」(利用者の管理)、「入金审核」(入金の審査)、「出金审核」(出金の審査)、「子账号管理」(担当者のアカウントの管理)などが並んでいました。利用者には日本語のPionexを見せ、運営する側は中国語の画面で入金と出金を審査するという作りです。
取引の勝ち負けと残高は利用者に見えない形で運営側が書き換えられる
管理画面のプログラムには、利用者ごとに取引の結果を「正常」「必赢」(必ず勝ち)「必输」(必ず負け)から選ぶ設定があります。「必ず負け」に切り替えるときの確認画面には、次の2つの説明が並びます。
该用户之后开的秒合约订单一律判为输 对用户完全不可见,他看到的是正常结算
(この利用者がこの後に出す短時間の取引の注文は、すべて負けと判定する/利用者からはまったく見えず、本人には通常の決済に見える)
▼勝ち負けを決める設定が並ぶ管理画面のプログラム

出典:piiioneixxx1.com
注文を1件ずつ負けにする機能(forceOrderResult)もあり、説明には「到期时无视真实涨跌,直接判输」(満期の時点で実際の値動きを無視し、そのまま負けと判定する)とあります。画面に表示される勝ち負けは、実際の相場ではなく運営側の設定で決められる作りです。
残高の書き換えも同じです。初期設定は「默认无痕:不下发到用户资金流水」(痕跡を残さず、利用者の資金の履歴には出さない)で、総資産の数字は変わっても、何の入金や出金かは利用者に示されません。
口座を凍結しても入金だけは受け付ける作りになっている
管理画面には、利用者の口座を凍結する機能(freezeUser)もあります。凍結したときに何が止まるのかは、プログラムの説明文に次のように書かれていました。
冻结后该用户仍可登录、看行情、联系客服、入金;仅禁止交易与取款
(凍結後もこの利用者はログイン、相場の閲覧、サポートへの連絡、入金ができる。禁止するのは取引と出金だけ)
▼凍結と残高の書き換えが並ぶ管理画面のプログラム

出典:piiioneixxx1.com
凍結の理由は「異常な操作」「本人確認」など5種類から選ぶ形で、利用者の画面には「サポートまでご連絡ください」といった案内が出るように用意されています。お金を入れる道は開けたまま、出す道だけを止められるということです。
出金も、利用者が申請した後に運営側が1件ずつ承認して初めて完了する仕組みでした。本件で凍結や出金の拒否があったかどうかは別として、出金を運営側の判断ひとつで止められる作りがすでに備わっていることになります。
振込先の口座は運営側の設定ひとつで全員分まとめて差し替えられる
入金画面に表示される振込先は、管理画面の設定(updateDepositSettings)で変えられます。保存の前に表示される確認の文面は次のとおりです。
所有用户下次打开充值页立刻看到新的收款信息
(すべての利用者が、次に入金画面を開いたときから新しい振込先を目にする)
▼振込先の設定を書き換える管理画面のプログラム

出典:piiioneixxx1.com
振込先の銀行口座は、一度の保存で利用者全員の画面が切り替わります。振込先の口座が使えなくなっても、運営側は設定を書き換えるだけで新しい口座に誘導できるわけです。前の章で見たように、本件でも振込先は次々に変わっていました。
円に換算するためのレートの設定には「用于银行振込金额换算」(銀行振込の金額の換算に使う)という説明があり、中国語の中に日本語の「振込」が混じっています。日本の銀行振込で入金させることを想定して作られているとみられます。
私たちについてに会社名がなく米国の登録だけを掲げている
「私たちについて」のページには、「Pionex」の名前と「設立年 2019」、「米国サイトの特徴」という見出しの下に「米国MSBライセンスを保有し」と書かれています。ところが、このページから運営会社を特定する手がかりは得られず、社名、所在地、登録番号のいずれも記載されていません。
▼会社名がなく米国の登録だけを掲げる私たちについて

出典:piiioneixxx1.com
MSBは米国の財務省の機関(FinCEN)に届け出る制度で、FinCEN自身も届け出があることは事業を承認したことを意味しないと注意しています。そもそも会社名も番号もないため、どの事業者の届け出なのかを照らし合わせることもできません。
プログラムを調べた範囲では、利用規約やプライバシーポリシーのページも用意されていませんでした。日本に住む人を相手に暗号資産の交換を行うには金融庁への登録が必要で、米国の届け出はその代わりになりません。
【参考】
・piiioneixxx1.com(https://piiioneixxx1.com/)
・piiioneixxx1.com-管理画面(https://piiioneixxx1.com/admin)
・piiioneixxx1.com-管理画面のプログラム(https://piiioneixxx1.com/static/AdminApp-B_xOrW2E.js)
・piiioneixxx1.com-私たちについて(https://piiioneixxx1.com/about)
Pionexを装う偽サイトが悪用されやすい理由

piiioneixxx1.comのようなサイトが疑われにくい理由として、自動売買で知られる取引所の名前、使い捨てにできるアドレスの束、銀行振込という身近な入金方法、日利をうたう運用商品の4つを取り上げます。
どれも、利用者が「知っている名前だから」「いつもの振込だから」と判断を急ぎやすい点が関係しています。実在のPionexの事業そのものの問題ではなく、その名前と仕組みが偽サイトに利用されているという点に注意してください。
自動売買で知られるPionexの名前はAI取引の勧誘と結びつけやすい
実在のPionexは、自動で売買を繰り返す「取引ボット」を備えた取引所として知られています。App Storeで配布されているアプリの名前も「Pionex – Crypto Trading Bots」で、日本語の説明には16種類の取引ボットを提供していると書かれています。
piiioneixxx1.comの「私たちについて」も、「自動売買ボット・ワンストップ資産管理」とうたっています。機械が代わりに運用してくれるという取引所の印象が、「AIに任せれば増える」という勧誘の言葉と自然につながってしまうのです。
名前を検索すれば実在のPionexの情報が見つかるため、「調べたら本物があった」と安心してしまうおそれもあります。見るべき点は検索結果ではなく、いま開いている画面のアドレス欄にpionex.comと表示されているかどうかです。
綴りを崩したアドレスを束で用意すれば止められても移り続けられる
前の章で見たとおり、piiioneixxx1.comと同じ管理者のもとには、Pionexの綴りを崩したアドレスが8つありました。いずれも5日のうちにまとめて取得されたもので、1つが使えなくなっても別のアドレスで同じ名前のサイトを出し直せます。
利用者の多くが覚えているのは「Pionex」という名前で、「piiioneixxx1」のような細かい綴りまでは意識しません。アドレスが途中で変わっても、画面に同じロゴが出ていれば、別のサイトに移ったことに気づきにくいでしょう。
実際に、同じ証明書のiopeixxnii.comはGoogleのセーフブラウジングで危険と判定されていた一方、piiioneixxx1.comには9月30日の時点で判定がありませんでした。新しいアドレスほど警告が出にくいため、警告がないことを安全の目安にはできません。
銀行振込で入金できると暗号資産に慣れていない人でも始めやすい
piiioneixxx1.comの入金の方法には、暗号資産を送る方法と並んで銀行振込が用意されています。プログラムを調べたところ、円で振り込んだ金額は運営側が管理画面で決めたレートで換算され、USDTという暗号資産の単位で残高に表示される作りでした。
暗号資産の取引には本来、交換業者の口座を作り、暗号資産を買って送るといった手間がかかります。銀行から振り込むだけで始められれば、暗号資産に詳しくない人でも入金の敷居は低くなります。
一方で、振込先の名義が個人や別の法人であっても、利用者には確かめる手段がほとんどありません。振り込んだ後は画面上の数字しか手元に残らないことを、入金の前に意識しておく必要があります。
日利1.5%をうたう運用は入金額を大きくするほど有利に見せている
トップページの案内には「日利率最大1.5%・5,000 USDTから」とあり、ロック型の運用商品は「購入金額に応じた等級制」と説明されています。日利1.5%は単純に計算しても30日で45%、1年では547.5%にあたる数字です。
▼最大30%収益と日利率1.5%をうたう商品の案内

出典:piiioneixxx1.com
ロック型の運用は購入金額で等級が分かれ、入金を大きくするほど高い利率の商品に手が届くように見せる作りです。「もう少し入れれば上の条件に届く」と思わせ、追加の入金を促しやすくなります。
隣に並ぶオプションの「最大30%収益」も含め、これほど高い利回りを示す商品は、慎重に見極める必要があります。数字の大きさに引かれて入金を増やす前に専門家に相談してください。
【参考】
・piiioneixxx1.com(https://piiioneixxx1.com/)
・piiioneixxx1.com-私たちについて(https://piiioneixxx1.com/about)
・App Store-Pionex – Crypto Trading Bots(https://apps.apple.com/jp/app/id1485348891)
Pionexを装う偽サイトの不審点を見抜く方法

Pionexのような有名な取引所を名乗るサイトに出会ったら、誰が名乗っているのか、どのアドレスなのか、お金をどこへ送らせるのかの3つに分けて、次の6点を見てください。どれも画面や公開の記録をブラウザで開けば、入金の前に自分で確かめられます。
- 「Pionexのサポート」を名乗る相手が、公式の窓口かどうかを確かめる
- piiioneixxx1.comのサポート画面は「Pionex カスタマーサポート」を名乗っていました。実在のPionexは公式ブログで、社員を名乗る人に送金しないよう呼びかけています。
- 運営会社の名前と日本の登録番号を探し、金融庁の登録一覧と照らし合わせる
- piiioneixxx1.comの「私たちについて」には、社名も登録番号もありませんでした。実在のPionexも、金融庁の暗号資産交換業者登録一覧には載っていません。
- アドレス欄の綴りを、公式のpionex.comと1文字ずつ比べる
- 「piiioneixxx1」のように文字を増やしたり並べ替えたりしたアドレスは、画面のロゴが同じでも別のサイトです。
- ドメインの登録日と、同じ証明書に並ぶアドレスを調べる
- piiioneixxx1.comは2026年7月9日の登録で、同じ管理者のもとにPionexに似せたアドレスが8つありました。登録日はRDAP、証明書はcrt.shで調べられます。
- 振込先の名義が運営会社と同じか、入金のたびに変わっていないかを見る
- 個人名義の口座や、次々に変わる口座を示されたら振り込まないでください。piiioneixxx1.comは、運営側の設定ひとつで全員の振込先を差し替えられる作りでした。
- 高い利回りの案内や、凍結を理由にした連絡を受けても入金を増やさない
- 日利1.5%のような数字は、それだけで疑う理由になります。管理画面には、凍結した後も入金だけは受け付ける設定がありました。
すでに入金している場合は、振込の控え、サイトの残高や入金申請の画面、サポートとのやり取りを、気づいた時点で画像として手元に残してください。プログラムを調べたところ、運営側はサポートのチャットの発言を利用者の画面から跡を残さずに消せる作りでした。
振込先が替わるたびに入金を重ねている状況では、次の振込で終わるという保証はありません。チャットの記録は消されるおそれもあるため画面を保存し、振込の控えと一緒に持ってできるだけ早く弁護士など専門家に相談してください。
【参考】
・Pionex-How to Protect Your Pionex Account from Scam(https://www.pionex.com/blog/how-to-protect-your-pionex-account-from-scam/)
・RDAP(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/piiioneixxx1.com)
・crt.sh(https://crt.sh/?q=piiioneixxx1.com)
Pionexを装う偽サイトに関する口コミや被害事例

piiioneixxx1.comと、同じ証明書に載っていた8つのアドレス、そして「Pionex」の名前を手がかりに、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる、爆サイの投稿を調べました。どのアドレスについても、触れている投稿や相談は確認できませんでした。
一方で、Yahoo!知恵袋には、実在の取引所の名前を使ったサイトや、個人名義と法人名義の口座への入金をめぐる相談が見つかりました。本件と同一の案件とまでは確認できませんが、重なる点と異なる点を分けて紹介します。
X(旧Twitter)で見つかるのは実在のPionexに関する投稿ばかり
Xでpiiioneixxx1.comや似せたアドレスを調べても、該当する投稿は出てきませんでした。「Pionex」の名前で見つかるのは、実在のPionexの公式アカウントによる取扱銘柄やキャンペーンの告知が中心です。
偽サイトの被害を訴える日本語の投稿は見当たらず、名前が同じであるために本物の情報の中に偽サイトの話題が埋もれやすい状況といえます。「Pionex」の投稿がたくさんあっても、それは実在の取引所の話でありpiiioneixxx1.comの評判ではありません。
Yahoo!知恵袋には取引所の名前を使うサイトや名義の異なる口座への入金の相談がある
2023年7月18日には、実在の取引所「BingX」の名前を使ったサイトについての相談が投稿されています。相手に勧められたサイトが、検索で見つかる本物とは作りがまったく違うという内容です。
(前略)
【BingX】という取引所を進めて来て、一緒にオプション短期取引を指導してるれるというのですが、通常検索とサイトの作りが全く違うのですが、
詐欺サイトでしょうか?(後略)
実在の取引所の名前、短時間で結果が出るオプション取引、本物と違うサイトという3点は本件と重なります。一方で、取引所の名前と勧誘の経路は本件と異なり、この質問の時点では入金の話は出ていません。
2024年3月31日には、FXの投資詐欺についての相談として、次のような書き込みもありました。
(前略)
3月に国内口座(法人名義 個人名義)に3回100万づつ入金してしまいその後出金出来なくなりました。
(後略)
法人名義と個人名義の国内の口座に分けて入金させる点は、本件の振込先と同じ形です。ただし、扱っていたのはFXで、サイトの名前も書かれていません。これらの相談が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できません。
5ちゃんねるや爆サイにも偽サイトの話題は見当たらない
5ちゃんねるのスレッド検索と、爆サイの国内18の地域版それぞれの全体検索で、「Pionex」と9つのアドレスを調べましたが該当する書き込みはありませんでした。
悪い評判が書き込まれていないからといって、入金してよい理由にはなりません。振込先が個人名義に変わったり、次々に替わったりしている場合は、口コミの有無を待たずに専門家に相談してください。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-Discoldで知り合った女性が仮想通貨に詳しいとのことで【BingX】という取引所を進めて来て…(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12283117577)
・Yahoo!知恵袋-FX投資詐欺について質問です。3月に国内口座(法人名義 個人名義)に3回100万づつ入金してしまい…(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12295795447)
Pionexを装う偽サイトに関する口コミが少ない理由

piiioneixxx1.comは、同じ管理者が用意した9つのアドレスのうちの1つにすぎません。「poiexninxi-jp」のような綴りは覚えにくく、使ったアドレスごとに書き込みが散らばれば、評判は1か所に積み上がりません。残る8つは、すでに開けなくなっています。
名前の面でも、偽サイトの話題は表に出にくくなっています。「Pionex」で検索すると、実在の取引所のアプリや公式アカウント、利用者のレビューが上位に並びます。偽サイトの被害を書き込んでも、本物の情報の量に埋もれてしまうのです。
さらに、サイトが名乗る名前そのものが一定ではありません。画面のロゴは「Pionex」ですが、ページの題名とブラウザのタブは「PX」で、管理画面も「PX」と名乗っています。被害に遭った人がどちらの名前で書くかによって、同じサイトの話でも検索で結びつきにくくなります。
書き込みが少ないのは、こうした作りの結果であって、サイトが信頼できるからではありません。振込先が個人名義や法人名義の口座に次々と替わる、Pionexのサポートを名乗る相手から入金を求められるといった状況にあるなら、それ以上の振込を止め弁護士など信頼できる第三者に相談してください。
【参考】
・piiioneixxx1.com(https://piiioneixxx1.com/)

