暗号資産を預ければ毎日利息が付き、人を紹介すれば報酬も入る。知人を通じて広がるこうした運用話は、金融庁や国民生活センターも払い戻しができなくなる事例として注意を呼びかけています。
本記事で取り上げる「0xLSD」も、知人から月利15%・元本保証という説明で紹介されたものです。国内の業者で買った暗号資産を自分のウォレットから預け入れたあと、取引画面が開かなくなり、紹介者とも連絡が取れなくなりました。
運営の告知をたどると、「日利1%以上」「いつでも引き出せる」とうたってから約1年2か月後に出金できない不具合のおわびが続き、払い戻しの単位も独自の「0xUSD」に差し替えられていました。「監査済み」の対象は、トークンのプログラムだけでした。
この記事では、告知用のチャンネルに残る投稿、ドメインの登録記録、記録サービスに保存されていたプログラム、金融庁の一覧を手がかりに、0xLSDの実態を弁護士の視点で整理します。知人に勧められた運用話を、ウォレットから送る前に自分で確かめる手順もまとめました。
0xLSDに関するトラブルの概要

今回のトラブルは、相談者のご家族が知人から「0xLSD」という投資案件を紹介されたことから始まっています。知人は高い利息が毎月入ると説明し、元本は保証されているとして、借金をしてでも続けるよう強く勧めていました。
ご家族は国内の暗号資産交換業者で日本円を暗号資産に替え、自分のウォレットから0xLSDへ預け入れを重ねています。その後0xLSDのサイトは開かなくなり、資金を引き出せないまま、紹介した知人とも連絡が取れなくなりました。
知人の紹介で暗号資産を預ける運用話をめぐるトラブル
本件は、暗号資産を預けておくと運用益が日々積み上がるとうたう投資話です。預けた資金は運営側が運用するとされ、利用者は画面上で増えていく残高を確かめながら、元本と利益をいずれ引き出せると考えて資金を入れていきます。
こうした話には、知人を紹介すると報酬が入る仕組みが組み合わされていることが少なくありません。勧誘する側も利益を受け取る立場にあるため熱心に勧め、面識のある相手からの話として広がっていきます。本件の0xLSDも、紹介者を登録して利用を始める作りでした。
暗号資産を預けて運用益を受け取る仕組みは、法律のうえで投資として扱われることがあります。金融商品取引法第2条の2は、暗号資産(条文上は「暗号等資産」)を、ファンドへの出資などに充てる「金銭」とみなして同法を適用すると定めています。
金融庁の説明資料は、投資家から集めた資金や暗号資産で事業を行い、その収益を分配するものを「集団投資スキーム」と位置づけています。こうした権利の売買などを行う業者には、第二種金融商品取引業の登録が求められます。
0xLSDが説明していたとおり、預けた暗号資産を運営が運用して収益を配る仕組みであれば、この集団投資スキームにあたる可能性があります。支払いに暗号資産を使ったからといって、法律の外にある取引になるわけではありません。
0xLSDが掲げていたサービスと利回り
0xLSDは、告知用のTelegramチャンネルの最初の投稿で、自らを「BSCとARBチェーンの上に作られた分散型の流動性プロトコル」と紹介していました。紹介ページの一覧にはデリバティブの取引所やウォレットなどが並び、ブログではAIで収益を生み出すと説明しています。
利回りについては、紹介ページがリンクしている告知用のTelegramチャンネルで、日利1%以上の収益をうたい、収益はいつでも引き出せると案内していました。この告知の内容と、その後に出金をめぐって何が起きたかは後の章で順に確認します。
告知では肩書きと名前の一部しか名乗っていない
0xLSDの紹介ページには、運営する会社の名称も、所在地も、代表者の名前も書かれていません。告知用のTelegramチャンネルや、運営が記事を載せていたブログサービスのMediumも確認しましたが、法人を特定できる記載は見当たりませんでした。
告知の署名は「0xLSD Team」で、個人が登場する場面でも「COO」「CMO」「共同創業者」といった肩書きと、名前の一部が添えられるだけです。預けた資金を誰が管理しているのか、トラブルが起きたときにどこへ申し立てればよいのかを、利用者の側から確かめる手段は用意されていませんでした。
金融庁と国民生活センターが紹介料つきの暗号資産の勧誘に注意を促している
金融庁は「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」と題したページで、無登録の業者が関わる詐欺的な取引の例を挙げています。その中には、本件と流れのよく似た次のような事例が含まれています。
▼金融庁が挙げている無登録業者の関与が疑われる事例

出典:金融庁
知り合いからの紹介やSNS等を通じて、暗号資産やコモディティ等で運用すると必ず儲かるとうたう高利回りな投資話に勧誘され、(勧誘者等に現金を渡して)入金又は暗号資産を購入。当初は配当があり払戻しもできたが、しばらくすると、突然サービスが停止し、配当や預けた現金・暗号資産の払戻しができなくなった。
国民生活センターは2022年8月4日、友人や知人の誘いから始まった暗号資産の相談をまとめ、注意を呼びかけました。その中では、「人を紹介すれば紹介料も入る」と勧誘されて預けたお金を引き出せないケースが紹介されています。
▼国民生活センターが公表した暗号資産のトラブルに関する注意喚起

出典:国民生活センター
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できません。しかし、知人から暗号資産の運用を持ちかけられ、紹介料の話が出たときは、ウォレットから送金する前に、勧誘と関わりのない家族や専門家など信頼できる第三者に話を聞いてもらってください。
【参考】
・0xLSD(https://0xlsd.com/
・0xLSD Announcements(https://t.me/s/ZeroxlsdAnnouncements)
・国民生活センター-SNSやマッチングアプリ、友人・知人からの誘いをきっかけとした暗号資産のトラブル-その話、うのみにしないで-
0xLSDへ誘導され被害につながるまでの経緯

本件は、知人からの紹介に始まり国内の業者での暗号資産の購入、外部への送金、0xLSDへの預け入れと段階を追って進んでいます。資金の流れがすべて相談者側の操作で完結しているのが、これまでの振込型のトラブルと異なる点です。
知人から月利15%という説明で0xLSDを紹介される
きっかけは、相談者のご家族が知人から0xLSDを紹介されたことでした。知人は「月利15%ほどの利息が入る」と説明し、「銀行からお金を借りてでもやるべき」と強く勧めています。元本は保証されているという話もあり、ご家族はそれを信じて参加しました。
月15%の利息を元本に組み入れながら1年続けると、預けたお金は5倍を超える計算になります。0xLSD自身の告知が掲げていた「日利1%以上」とは数字が異なり、紹介者がどの説明をもとに話していたのかは分かっていません。
国内の登録業者で日本円を暗号資産に替えて送り出す
参加にあたって、ご家族はまず国内の暗号資産交換業者に日本円を入金し、暗号資産を購入しています。購入した暗号資産はその業者の口座に置いたままにせず、外部のウォレットへ送金する形で持ち出しました。
国内の交換業者は金融庁の登録を受けた事業者で、ここまでの手続きは通常の暗号資産の売買と変わりません。問題は送金した先にあり、外部のウォレットへ移した暗号資産がその後どこへ預けられるかは、国内の業者が管理できる範囲の外になります。
ウォレットをつないで預け入れを重ねる
送金先のウォレットから、ご家族は0xLSDの取引画面にウォレットを接続し、預け入れを行っています。やり取りはBNB Smart Chainの上で行われ、ドルに連動する暗号資産を送る操作と0xLSDのプログラムを動かす操作が繰り返されました。
0xLSDの告知では、MetaMaskというウォレットを用意し、紹介者のリンクから登録する手順が案内されていました。銀行の口座も会員登録も介さず、ウォレットをつなぐだけで預け入れまで進める作りです。
サイトが開かなくなり紹介者とも連絡が取れなくなる
その後、0xLSDのサイトにアクセスできなくなり、預けた資金も利益も引き出せなくなりました。ご家族が紹介者にメッセンジャーやTelegramで連絡を取ろうとしても、相手からブロックされやり取りそのものができない状態になっています。
預けた先の運営者は名前も所在地も分からず、窓口だった紹介者とも連絡が途絶えたことで、ご家族には問い合わせる相手が一人もいなくなりました。こうした経緯を経て、詐欺の被害として相談に至っています。
【参考】
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/59)
0xLSDの関連サイトの情報を調査した結果

この章で確かめるのは、紹介ページ「0xlsd.com」のドメインの記録、同じ時刻に登録された別のドメインと告知チャンネルの開設日、消えた取引画面、紹介ページのプログラムに残る開発環境、金融庁の一覧での扱いの5つです。いずれも、登録などしなくても照会できる記録から確認しています。
0xlsd.comのドメイン情報
0xLSDの紹介ページのアドレスは「0xlsd.com」で、取引画面はその下の「dapp.0xlsd.com」に置かれていました。いつ、どの事業者の取り次ぎで取得されたかは、ドメインの登録情報を返す公開の仕組み(RDAP)で照会できます。
| ドメイン | 0xlsd.com |
|---|---|
| 登録日 | 2023年7月27日 |
| 有効期限 | 2027年7月27日 |
| 最終更新日 | 2026年9月17日 |
| レジストラ | GoDaddy.com, LLC |
| ネームサーバー | howard.ns.cloudflare.com/serenity.ns.cloudflare.com |
| 証明書の初回発行日 | 2023年8月25日 |
| 2026年9月24日時点の状態 | 紹介ページは表示されるが本文は空 |
▼0xlsd.comのドメイン登録記録(登録日・有効期限・最終更新日が並ぶ)

出典:Verisign(RDAP)
記録に載っているのは取り次ぎ役のGoDaddyまでで、ドメインを取得した本人の名前は含まれていません。一方で、有効期限は2027年まで延ばされ、最終更新は2026年9月17日でした。取引画面が使えなくなったあとも、このドメインを維持している誰かがいることになります。
▼2026年9月24日時点の0xlsd.com(メニューとフッターだけで本文は空)

出典:0xLSD
ただし紹介ページを開いても、メニューとフッターの間には何も表示されません。本文を描く部品のファイルがサーバーから消えており、呼び出すと「Not Found」が返ります。
同じ時刻に登録された0xlsd.ioと前日に開設された告知チャンネル
紹介ページのプログラムは、公式のアドレスとして「0xlsd.io」も挙げています。このドメインの記録を照会すると、登録日時は協定世界時で2023年7月27日6時5分57秒で、0xlsd.comと秒まで同じでした。
▼0xlsd.ioのドメイン登録記録

出典:Identity Digital(RDAP)
0xlsd.ioは2026年7月27日に期限を迎え、現在は失効後の猶予期間にあたる「redemption period」の状態です。紹介ページが公式として挙げる4つのアドレスのうち、今も表示されるのは0xlsd.comだけになっています。
告知用のTelegramチャンネルは、その前日の2023年7月26日に開設されていました。告知の場を先に作り、翌日に2つのドメインを同時に取得した順序が記録からそのまま読み取れます。
▼0xLSDの告知用Telegramチャンネル(2023年7月26日に開設)

出典:0xLSD Announcements(Telegram)
取引画面のdapp.0xlsd.comはすでに存在しない
預け入れや出金を行っていた取引画面「dapp.0xlsd.com」は、アドレスそのものが消えています。ブラウザで開くと「このサイトにアクセスできません」と表示され、名前からサーバーの場所を引く記録が削除されたことを示す表示が出ます。
▼2026年9月24日時点のdapp.0xlsd.com(「DNS_PROBE_FINISHED_NXDOMAIN」と表示)

出典:0xLSD
告知用のチャンネルは2025年5月31日、「dapp.0xlsd.comには現在アクセスできない」「復旧を進めている」と伝えました。これが最後の投稿で、その後復旧の知らせは出ていません。
▼告知用チャンネルの最後の投稿(2025年5月31日)

出典:0xLSD Announcements(Telegram)
紹介ページのプログラムに開発に使ったパソコンの設定が残っている
紹介ページが読み込むプログラムのファイルを開くと、作成に使ったパソコンの設定値がそのまま書き込まれています。Windowsの利用者名「ccc」や作業フォルダ「E:\\da\\cc\\OxLSD」に加えて、次の記載があります。
▼0xlsd.comのプログラムに残る作成時のパソコンの設定

出典:0xLSD
BT_PANEL:”D:\\tool\\BtSoft\\panel”,BT_PYTHON:”C:\\Program Files\\python”,BT_SETUP:”D:\\tool\\BtSoft”
「BtSoft」は、中国の企業が提供するサーバー管理ソフト「宝塔」のWindows版が使う名前とみられます。中国製の道具を入れたパソコンで作られた形跡とはいえますが、運営者の国籍や所在地まではこの記載からは分かりません。
金融庁の登録と警告のいずれにも0xLSDの名前がない
冒頭の章で触れたとおり、預けた暗号資産を運用して収益を配る仕組みには金融商品取引法が及ぶ場合があります。そこで0xLSDの名前を金融庁が公開している3つの一覧で照会しました。
| 金融庁の一覧 | 照会の結果 |
|---|---|
| 無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について | 該当なし |
| 金融商品取引業者登録一覧 | 該当なし |
| 暗号資産交換業者登録一覧(令和8年9月1日現在・全27業者) | 該当なし |
▼金融庁の無登録業者の一覧を「0xLSD」で検索した結果

出典:金融庁
▼金融庁の暗号資産交換業者登録一覧を「0xLSD」で検索した結果

出典:金融庁
0xLSDの名前で金融商品取引業や暗号資産交換業の登録を受けた業者は見当たりませんでした。反対に、警告の一覧に名前が出てこないからといって、当局のお墨付きがあるわけではありません。
この一覧は金融庁が警告を出した業者を集めたもので、無登録の業者をすべて網羅してはいないためです。
【参考】
・0xLSD(https://0xlsd.com/
・0xLSD Announcements(https://t.me/s/ZeroxlsdAnnouncements?before=6)
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/378)
・Verisign RDAP(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/0xlsd.com)
・Identity Digital RDAP(https://rdap.identitydigital.services/rdap/domain/0xlsd.io)
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
0xLSDに関する不審点

ここでは、0xLSD自身の告知と、記録サービスに残っていた取引画面のプログラムから、6つの点を取り上げます。日利1%以上をうたう告知、紹介者の登録を求める画面、監査の範囲、トークンの価格の説明、払い戻しの単位の差し替え、出金をめぐる告知の移り変わりです。
運営自身が日利1%以上といつでも出金できることを告知していた
2023年9月10日、告知用のTelegramチャンネルは登録を呼びかける投稿を出しました。そこには次の3行が並び、MetaMaskの準備と紹介リンクからの登録が案内されています。
Join & register will get you a free package worth $100 immediately! Get a minimum daily return of 1%! Withdraw your earnings at any time (参加・登録ですぐに100ドル相当のパッケージを無料で受け取れます/最低でも日利1%の収益/収益はいつでも引き出せます)
▼2023年9月10日の告知(日利1%以上といつでも出金できることをうたっている)

出典:0xLSD Announcements(Telegram)
日利1%は、単純に足し合わせても年365%、利益を元本に組み入れれば1年で約37倍になる水準です。そのうえ「いつでも引き出せる」とまで約束しています。元本を減らさずにこの利回りを出し続ける方法を告知は何も示していません。
紹介者のIDを登録しないと利用を始められない
2024年10月31日の告知には、取引画面の様子を写した画像が添えられていました。初めてウォレットをつないだ利用者には「Welcome New User!」と表示され、紹介者のUIDを入力して「Bind to Activate」を押すよう求められます。
▼2024年10月31日の告知に添えられた取引画面の画像(紹介者のUIDの入力を求めている)

出典:0xLSD Announcements(Telegram)
記録サービスに残っていたプログラムを取得して確認すると、日本語の画面では「紹介者のUIDをご入力ください」と表示され、UIDが空欄のままではボタンを押せません。紹介した相手の一覧を見る「チーム」の画面も組み込まれていました。
監査済みとうたうが対象はトークンのプログラムだけだった
2023年10月19日、告知用のチャンネルは、ブロックチェーンの監査会社CertiKによる「包括的な監査」を完了したと発表しました。画像には「Audited」「Passed」の文字が大きく入っています。
ところがCertiKのページで監査の中身を見ると、対象になったファイルは「OX.sol」だけです。これは0xLSDが発行したトークンのプログラムで、利用者が預けた暗号資産を扱う仕組みは監査の対象に含まれていません。
▼CertiKが公開している0xLSDの監査履歴

出典:CertiK
同じページの運営チームの欄は「Not Verified By CertiK」で、CertiKによる本人確認も、他社による本人確認も「No」です。監査会社の名前が出てきても、運営者が誰なのかは確かめられていないことが、この表示から読み取れます。
▼CertiKのページの運営チームの欄 ※赤枠は本人確認がされていないことを示す表示

出典:CertiK
トークンの価値の説明が2か月で3,700 USDTから10 USDTに変わった
記録サービスに残る2024年6月の取引画面のプログラムには、0xLSDのトークンについて次の文言が書かれていました。ドルに連動するUSDTに換算して、1枚3,700 USDTを超えたという説明です。
0Xトークンのアプリケーションシナリオが拡大するにつれて、その価値はトークンごとに3700 USDTを超える第一フェーズを上回りました。
ところが2か月後の2024年8月21日、告知用のチャンネルは「トークン1枚を10 USDTで交換できる」と案内しました。利用者に向けた価値の説明は、わずか2か月で370分の1になったことになります。
▼2024年8月21日の告知

出典:0xLSD Announcements(Telegram)
この告知が価格の確認先として示した取引の場を開くと、時価総額は約740万ドルと表示される一方、実際に売買に使える資金(Liquidity)は約5,400ドルでした。24時間の取引額は0ドルで、表示上の評価額に見合う買い手はいないとみられます。
▼告知が示した0xLSDのトークンの取引の場(2026年9月24日時点)

出典:GeckoTerminal
出金の単位がUSDTから独自の0xUSDに差し替えられた
2024年6月の取引画面のプログラムでは、新規利用者への案内もホーム画面の表示もUSDTでした。ところが前述の2024年10月31日の告知の画像では、同じ場所が「0xUSD」「Earn 0xUSD」に変わっています。
2025年1月の版のプログラムでは、新規利用者向けの案内が「7日間の無料トライアルで0xUSD 100をステークできます」に、出金の最低額の記載も「100 0xUSD」に書き換えられていました。この0xUSDを誰が発行し、何と交換できるのかを示す記載は、告知にもプログラムにも見当たりません。
2024年11月24日の告知では、トークンを引き出す前にウォレットへ登録するアドレスとして、2023年10月に案内したものとは別のアドレスが示されました。名前は同じ「0XLSD」ですが、発行上限は2億枚で、以前の約100万枚の200倍です。
▼2024年11月の告知で示された新しいトークンの情報

出典:BscScan
出金できない不具合のおわびが続いたあと取引画面が止まった
出金に関する告知を並べると、流れがはっきりします。2023年12月24日には、ウォレットの安全確認の間は出金を控えるよう求めました。2024年10月31日には、前日にログインも出金もできなかったことをわびています。
2024年11月24日には、0xのトークンを引き出せない問題が「完全に解決した」と伝えました。ただし、引き出したトークンを表示させるには、新しいトークンのアドレスを利用者が自分でウォレットに登録する必要があるとしています。
▼2024年11月24日の告知

出典:0xLSD Announcements(Telegram)
そして2025年5月31日の最後の投稿で、取引画面にアクセスできないと告げています。「いつでも引き出せる」とした告知から1年8か月あまりで、利用者が引き出す窓口そのものがなくなったことになります。
【参考】
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/59)
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/153)
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/288)
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/365)
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/369)
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/374)
・CertiK-0xLSD(https://skynet.certik.com/projects/0xlsd)
・GeckoTerminal-0XLSD/USDT(https://www.geckoterminal.com/bsc/pools/0x47e9cb3dc14da00860d0b85dd657be85e3f2b9a3)
・BscScan-0XLSD(https://bscscan.com/token/0x77615A41B283c993A6295B336A05571Af12AEfe8)
0xLSDのような投資話が信用されやすい理由

0xLSDのような投資話には、利用者が立ち止まるきっかけを奪う条件がそろっています。知っている人からの紹介であること、自分の手で送金まで済ませること、監査や東京での催しといった権威づけ、そして最初のうちは実際に引き出せることの4つです。
知人からの紹介は相手を疑うきっかけになりにくい
見知らぬ相手からの勧誘であれば、まず相手の素性を疑うのが自然です。ところが本件の入口は、相談者のご家族にとって面識のある知人でした。相手が誰かはすでに分かっているため、運営者が誰なのかという問いが後回しになりやすいのです。
紹介報酬の仕組みがある場合、勧める側も自分の預け入れで利益が出ていると信じ、善意で誘っていることが少なくありません。本人の体験談として語られる話は、画面の説明よりも重く受け止められ、内容を確かめる手順が省かれてしまいます。
自分のウォレットで操作するため預けている実感が薄い
本件で、ご家族が相手の口座に振り込む場面は一度もありませんでした。国内の登録業者で暗号資産を買い、自分のウォレットに移し、画面のボタンを押して預け入れる。すべて自分の操作で完結するため、見知らぬ誰かにお金を渡している感覚を持ちにくくなります。
銀行振込であれば、不自然な振込先に銀行が気づいて止める場面もあります。自分のウォレットから直接送る場合、そうした確認が入る余地はほとんどありません。一度送った暗号資産は、受け取った側が応じない限り取り戻せない仕組みです。
監査や東京でのサミットといった権威づけの材料が並ぶ
告知用のチャンネルは、2023年10月にCertiKの監査に「合格」したと大きく打ち出しました。前章で見たとおり監査の対象はトークンだけでしたが、画像の上では、サービス全体が第三者の審査を通ったかのような印象を与えます。
▼2023年10月19日の告知

出典:0xLSD Announcements(Telegram)
同じ年の11月には、12月10日に「Tokyo 2023 0xLSD DeFi Global Consensus Summit」を開くと告知し、当日は講演の様子を伝えています。一方で、会場の名前や住所は告知にもブログにも書かれておらず、どのような規模の催しだったのかは確かめられません。
▼2023年11月16日の告知

出典:0xLSD Announcements(Telegram)
始めのうちは出金できるため仕組みが回っているように見える
告知用のチャンネルは2024年2月7日、預け入れの収益を引き出す手順を動画で案内していました。少額でも実際に引き出せた経験があると、残高の数字は本物だという確信が生まれ、追加の預け入れへと進みやすくなります。資金を増やした後の注意点として、出金時に初めて未払いや保証金を理由とする条件が示された事例も紹介しています。
冒頭の章で引いた金融庁の事例も、「当初は配当があり払戻しもできたが、しばらくすると、突然サービスが停止し」と書いています。新しい預け入れが続く間は、そこから払い出しに回すこともできるため、初期の出金は仕組みの健全さを示す証拠にはなりません。
【参考】
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/153)
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/209)
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/342)
0xLSDの不審点を見抜く方法

知人から暗号資産の運用を持ちかけられたとき、ウォレットから送る前に確かめたいことを6つ挙げます。どれも紹介者に尋ねるのではなく、自分で公開の情報を開いて確かめられるものです。
- 利回りを1年分に直し、元本保証の説明と並べて考える
- 日利1%は1年で365%を超え、月利15%を複利で続ければ1年で5倍を超えます。そのうえで元本は減らないと言われたら、話の組み立てそのものを疑ってください。元本の全額を払い戻すと示して不特定多数から出資金を集めることは、出資法第1条で禁じられています。
- 始めるのに紹介者のIDが必要かを見る
- 登録の画面で紹介者のIDを求められ、空欄では先へ進めない作りなら、利用者が次の利用者を連れてくることを前提にした仕組みです。紹介料の話が出たときも同じように受け止めてください。
- 「監査済み」と聞いたら、監査会社のページで対象と本人確認の欄を開く
- CertiKであれば、公開ページでプロジェクト名を検索すると、監査したファイルの名前と運営チームの本人確認の有無が表示されます。本件では、監査の対象はトークンのプログラムだけで、本人確認は「No」でした。
- 払い戻しの単位が独自のトークンに変わったら、追加の預け入れを止める
- 引き出せるものがUSDTから運営の発行するトークンに変わった時点で、価値を決めるのは運営側になります。取引の場の「Liquidity」を見れば、実際に売れる金額の上限がおおよそ分かります。
- 運営する法人の名前と、金融庁の登録を確かめる
- 紹介ページや規約に法人名と所在地がなければ、トラブルのときに申し立てる先がありません。法人名が分かったら、金融庁の「金融事業者一括検索」で登録の有無を照会してください。
- ドメインの登録日と、告知チャンネルの開設日を調べる
- ドメインは「https://rdap.org/domain/」に続けて名前を入れると、登録日が表示されます。Telegramのチャンネルは、アドレスの「t.me/」を「t.me/s/」に変えて開き、一番古い投稿までさかのぼると開設日が分かります。
すでに預け入れてしまった場合は、紹介者や運営から追加の入金を求められても応じる前に手を止めることが先決です。サイトの画面や告知は、本件のように予告なく消えることがあります。
暗号資産の送金は、ウォレットのアドレスと取引の記録(トランザクションハッシュ)がブロックチェーン上に残ります。自分のウォレットのアドレスと送金の記録、紹介者とのメッセージを一つにまとめておけば、弁護士などの専門家が資金の流れを追う手がかりになります。
【参考】
・e-Gov法令検索-出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律
・CertiK-0xLSD(https://skynet.certik.com/projects/0xlsd)
・RDAP.org(https://rdap.org/)
0xLSDに関する口コミや被害事例

「0xLSD」の名前で、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、掲示板を調べました。利用者や勧誘を受けた人の声が見つかったのはYahoo!知恵袋だけで、2024年1月から2月にかけて質問が集中しています。
X(旧Twitter)の口コミ
Xでも「0xLSD」の名前で投稿を探しましたが、利用者が自分の体験を書いた投稿は確認できませんでした。一方で知恵袋の質問者たちは、0xLSDを「Twitter等でやたらと目にする」「SNSでチラチラ見かけます」と書いており、勧誘の場としては使われていたとみられます。
Yahoo!知恵袋の口コミ
2024年1月5日には「0xLSDは、詐欺案件ですか?」という質問が投稿されています。友人から勧められて調べたものの、利益が出る仕組みが分からず、友人を止めるべきかどうかを尋ねる内容です。
▼Yahoo!知恵袋に投稿された0xLSDに関する質問(2024年1月5日)

出典:Yahoo!知恵袋
友人も理解しているようには見えません。 仕組みが不透明だったり、利率が日1.2%という人がいたり、個人宛に振り込むなど、普通に考えたら詐欺としか思えません。 友人を止めた方が良いのでしょうか?
2日後の1月7日にも、友人を止めようとした人の質問があります。質問者は、個人宛の振込や金融庁の登録がないことを挙げて説得しましたが、友人は「最短2ヶ月で元本が回収できるから詐欺じゃない」として聞き入れなかったと書いています。
2月5日には、預け入れを解除する方法を尋ねる質問が寄せられました。回答者は「ステーキング自体の解除は、ロック期間が過ぎないと出来ないです。」と答え、期間を180日や365日にしていれば、その間は元本を引き出せないと説明しています。
掲示板の口コミ
5ちゃんねるのスレッドの検索と、爆サイの検索など、掲示板や口コミサイトでも「0xLSD」を調べましたが、0xLSDを扱ったスレッドや書き込みは確認できませんでした。知恵袋の質問も、勧誘を受けた人や周りの人が相談する形のものがほとんどで、被害を具体的に書いた投稿は見当たりません。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-0xLSDは、詐欺案件ですか?最近、Twitter等でやたらと目にする…(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10291366035)
・Yahoo!知恵袋-ポンジスキームって、詐欺師が逃げるまでは、詐欺って確定しませんか?(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11291464276)
・Yahoo!知恵袋-0xLSDで実際に稼いでいる人っていますか?(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13291443283)
・Yahoo!知恵袋-0xlsd ステーキング 解除方法について質問です。(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14292945769)
0xLSDに関する口コミが少ない理由

0xLSDの勧誘は、知人から知人へと直接伝わっていました。説明を受ける場も、その後の連絡も、メッセンジャーやTelegramといった当事者どうしのやり取りの中にあり、外の人が読める場所に話が出てくる機会がほとんどありません。
紹介の報酬がある仕組みでは、被害に遭った人が同時に、誰かを誘った側であることも少なくありません。自分が勧めた相手や、自分を誘った知人との関係を考えると、被害を公の場に書き込むことにためらいが生まれやすくなります。
知恵袋に残る声の多くが、利用している本人ではなく、友人を止めたい人の相談であることも、こうした事情を映しているとみられます。当事者が仕組みを信じて勧める側に回る一方で、疑問を持った周りの人のほうが外に助けを求めていました。
中身を後から確かめる手段も残っていません。取引画面のアドレスは消え、記録サービスにも画面そのものは保存されていません。告知用のチャンネルも2025年5月31日の投稿を最後に止まっています。
知人から暗号資産の運用に誘われて返事に困っているときも、送金を済ませてしまったあとでも、一人で抱え込む必要はありません。弁護士などの専門家や信頼できる第三者に相談すれば、送金の記録から資金の流れを一緒にたどれます。
【参考】
・0xLSD Announcements(https://t.me/ZeroxlsdAnnouncements/378)
・Yahoo!知恵袋-ポンジスキームって、詐欺師が逃げるまでは、詐欺って確定しませんか?(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11291464276)

