LINEの「Keigenカスタマーサポート」が個人名義の口座への振込を案内し、取引口座のログイン先として示したのが、Keigen Toshiを名乗るstocks.keigentoshi-pro.comです。
保有ポジションの売却と出金を案内された翌日、相談者は利益の15%を先に払わなければ出金できないと告げられました。一部を法人名義の口座へ払った後も出金されず、取引口座にはログインすることもできなくなっています。
調べると、サイトの利用規約は社名の欄が「【当社法人名】」のままの、有価証券の売買を媒介しない資産管理アプリの規約でした。誰でも開ける設定では出金手数料は0で、15%の先払いはプログラムのどこにも出てきません。
本記事では、Keigen Toshiの規約、出金と入金の画面、登録情報を一つずつ確かめ、先払いを求められたときに見るべき点を弁護士が解説します。最後の章では、名義の違う7つの振込先から取り戻す手がかりと、相談の進め方を取り上げます。
Keigenカスタマーサポートの案内で入金し利益の15%の先払いを求められるまで

この章では、LINEの「Keigenカスタマーサポート」が振込先とログイン先を示したところから、ポジションの売却と出金の案内、利益の15%の先払いの要求、一部を払った後に出金もログインもできなくなるまでを順にたどります。振込先も先払いの条件も、窓口の側から示されたものでした。
LINEの窓口が振込先とKeigen Toshiのログイン先を示す
やり取りの相手は、LINEで「Keigenカスタマーサポート」と表示される窓口です。窓口は個人名義の口座を振込先として示し、相談者はその口座に振り込んだことを窓口に伝えました。
窓口は、入金が取引口座に反映されたと返信し、取引口座へのログイン先として「Keigen Toshi」の「https://stocks.keigentoshi-pro.com」を案内しました。このアドレスを開くと、ブラウザ最上部のタブに「Keigen Toshi」と表示されるログイン画面が出ます。
▼タブにKeigen Toshiと表示されるログイン画面

出典:stocks.keigentoshi-pro.com
画面にあるのは「こんにちは」のあいさつと、「+81」で始まる電話番号の欄、パスワードの欄、利用規約に同意するチェックの欄です。どの会社が運営する取引サイトなのかは、ログインする前の画面からは読み取れません。
振込先の口座は7つあり同じ名義は1つもない
相談者の手元の振込の記録には、最初の口座のほかにも、金融機関も名義も異なる個人名義の口座5つへの振込が残っています。どの口座も個人の名前で、Keigen Toshiの名前の口座ではありませんでした。
さらに、後で触れる先払いの段階では、窓口が会社の名前の口座、つまり法人名義の口座を振込先に指定しています。振込の記録に出てくる振込先は個人名義が6つ、法人名義が1つで、同じ名義の口座は1つもありませんでした。
全部売って精算するよう案内された翌日に15%の先払いを求められる
10月19日、窓口は保有しているポジションをすべて売却し、口座の資金を全額出金して精算の手続きを進めるよう案内しました。翌20日、相談者は窓口に出金ができないと伝えています。
その際、相談者はサポートセンターから利益の15%にあたる額を先に支払わなければ出金できないと回答されたと説明しました。出金のための条件として、利益の一定の割合を前もって払うよう求められたことになります。
これに対して窓口は、15%のうち一部を先に払い、残りは出金の後に払えばよいという案を示し、先払いの分として、できるだけまとまった額を用意するよう求めました。相談者は、用意できそうな額を何度かに分けて窓口に伝えています。
一部を払った後も出金されずログインもできなくなる
相談者が先払いの分を用意できたと伝えると、窓口は法人名義の口座を振込先に指定しました。最初に示された個人名義の口座とは別の、会社の名前の口座です。振込の後、窓口は入金を確認したと返信しています。
その後、相談者は窓口に出金の手続きの進み具合を何度も尋ねました。そのうえで、取引口座には出金されないままの残高があり、口座にログインすることもできないと伝えています。
まとめると、LINEの窓口が示した個人名義の口座に振り込み、案内されたKeigen Toshiの取引口座で保有ポジションの売却と全額の出金を案内されたことが、被害につながった経緯の始まりです。
そのうえで利益の15%の先払いを求められ、一部を法人名義の口座へ払っても出金されず、取引口座にログインすることもできなくなりました。次の章では、このログイン画面から開ける利用規約を読みます。
【参考】
・Keigen Toshi(https://stocks.keigentoshi-pro.com/)
Keigen Toshiの利用規約は取引をしない資産管理アプリの規約

Keigen Toshiのログイン画面には「利用規約」の文字があり、押すと規約の本文が開きます。この章では、その本文の第1条の社名、元になったとみられる正規の規約、第16条の免責事項、末尾の附則の日付を順に見ていきます。どれも、ログインせずに開ける本文で確かめられます。
ログイン画面の利用規約は社名が「【当社法人名】」のまま
利用規約の第1条は、この規約が誰の何のサービスのものかを定める条です。そこには、サービスを提供する会社の名前が入るはずの位置に、「【当社法人名】」という穴埋めの文字がそのまま残っています。
第 1 条(目的)
Keigen Toshi 利用規約(以下「本規約」といいます。)は、【当社法人名】(以下「当社」といいます。)が提供する資産管理アプリ「Keigen Toshi」(以下「本アプリ」といいます。)の利用条件を定めることを目的とし、本アプリの利用者と当社との間の権利義務関係の一切に適用されます。
(後略)
▼社名が【当社法人名】のままのKeigen Toshiの規約

出典:stocks.keigentoshi-pro.com
規約の中で「当社」と呼ばれる会社は、どこにも特定されていないことになります。第21条と附則まで読み進めても、当社の名前や所在地、問い合わせ先は一度も出てきません。振り込んだお金を受け取ったサービスの運営者を、規約からたどる手がかりはないということです。
21の条の見出しが野村證券のOneStockの利用規約と一致する
第1条の「API連携サービスその他の方法によって取得される利用者の保有資産に関する情報を一元的に表示」という説明は、株の取引サイトの規約としては不自然です。この文をたどると、正規の野村證券の資産管理アプリ「OneStock」の利用規約に行き当たります。
▼資産管理アプリOneStockの利用規約の第1条

出典:野村證券
2つの規約を並べると、第1条(目的)から第21条(準拠法および裁判管轄)まで、21の条の見出しがすべて同じです。本文も多くが同じ文で、OneStockの「野村證券株式会社」が「【当社法人名】」に、「OneStock」が「Keigen Toshi」に置き換わっています。
一方で、OneStockの第1条にある「アグリゲーションサービス」の語や、提携先の株式会社マネーフォワードの規約に触れる部分は、Keigen Toshiの規約から抜けています。正規のOneStockの規約から名前と提携先の記述を外し、空いた社名の位置を穴埋めのまま残した形とみられます。
規約は自ら有価証券の売買を媒介しないと書いている
第16条(免責事項)には、このアプリが何をしないかが書かれています。投資の勧誘も、有価証券の売買の媒介もしないという内容です。
(前略)
(6)当社による本アプリの提供は、情報の提供を目的とするものであり、投資の勧誘を目的とするものではありません。
また、取引内容の決定、銘柄の選択および投資に関する最終的な判断は、登録会員自身の責任と判断において行うものとします。
(7)当社は、本アプリを通じて、預金取引、有価証券の売買その他の取引を媒介するものではありません。
(後略)
▼取引を媒介しないと書く利用規約の第16条

出典:api.keigentoshi-api.com
画像は、ログイン画面が規約の本文を読み込む設定のデータで、同じ文をページ内検索で示したものです。OneStockは保有資産の情報を一つの画面にまとめるアプリなので、この免責の文はOneStockにはそのまま当てはまります。
しかしKeigen Toshiでは、窓口が取引口座への入金を受け、保有ポジションの売却と出金を案内していました。規約が「有価証券の売買その他の取引を媒介するものではありません」と書くサービスで、株の売買と入出金が行われていたことになります。
改定の日付は年だけをそろえて月日を替えている
規約の末尾の附則には、2020年2月2日の制定・施行から2025年11月22日までに7回改定したと書かれています。OneStockの附則も、制定・施行のあと7回の改定で、年の並びは同じで月日だけが違います。
▼2020年から7回の改定を記す利用規約の附則

出典:api.keigentoshi-api.com
▼年は同じで月日が違うOneStockの附則

出典:野村證券
| 回 | Keigen Toshiの規約 | OneStockの規約 |
|---|---|---|
| 制定・施行 | 2020年2月2日 | 2020年6月25日 |
| 改定1 | 2020年7月14日 | 2020年10月15日 |
| 改定2 | 2022年4月5日 | 2022年2月1日 |
| 改定3 | 2023年4月7日 | 2023年4月21日 |
| 改定4 | 2024年2月11日 | 2024年3月21日 |
| 改定5 | 2024年11月2日 | 2024年12月2日 |
| 改定6 | 2025年2月22日 | 2025年2月27日 |
| 改定7 | 2025年11月22日 | 2025年12月2日 |
後の章で見るとおり、Keigen Toshiのアドレスが取得されたのは2026年8月です。2020年から続くサービスであることを示す情報は確認できず、附則の日付はOneStockの改定の履歴をなぞって月日を替えたものとみられます。
取引を始める前に、サイトの利用規約を開き、第1条に会社の名前が書かれているか、そして規約がどんなサービスのためのものかを確かめてください。社名の欄が空いていたり、取引をしないアプリの規約だったりしたら、振り込む前に立ち止まることが大切です。
【参考】
・Keigen Toshi(https://stocks.keigentoshi-pro.com/)
・Keigen Toshi-利用規約を読み込む設定のデータ(https://api.keigentoshi-api.com/api/site/getInfo.do)
・野村證券-利用規約 | OneStock(https://www.nomura.co.jp/onestock/terms/termsofuse.html)
利益の15%の先払いはKeigen Toshiの出金の仕組みにない

相談者がサポートセンターから伝えられた出金の条件は、利益の15%にあたる額を前もって払うことでした。この章では、出金の画面が送る内容、誰でも開ける設定の出金手数料、プログラムの中の語を順に確かめ、最後に同じ型の手口についての警察の発表を紹介します。
出金の画面が送るのは出金額だけ
Keigen Toshiの出金の申請は、ログインした利用者だけが使う画面から行います。画面に出す文字や申請のときに送る内容は、利用者のブラウザに配られるプログラムのファイルに含まれていて、そのファイルを入手すれば出金の部分を読めます。
出金の画面に並ぶのは、出金額の入力欄、登録した銀行口座の番号、「確認」のボタンと、出金の受付時間や銀行口座の登録を求める注意書きだけです。手数料の額や、先に払う額を示す欄はありません。
「確認」を押したときにサーバーへ送るのは、入力した出金額の1つだけです。利益の額や支払いの記録を一緒に送る仕組みはありません。送信の後は「申請が成功しました。審査をお待ちください」の一文が出て、画面は出金の記録の一覧に切り替わります。
▼出金額だけを送るKeigen Toshiの出金のプログラム

出典:stocks.keigentoshi-pro.com
画像の上の段は、出金額に設定の割合を掛けて手数料を計算する部分、下の段は申請のときに出金額(amt)だけを送る部分です。出金の記録の画面には「出金審査中」「出金成功」「出金失敗」の表示があり、出金するかどうかは運営の審査で決まる作りとみられます。
出金手数料の割合は誰でも開ける設定で0になっている
手数料の計算に使う割合は、ログインせずに誰でも開ける設定のデータに書かれています。そこでは、出金1回あたりの手数料(withFeeSingle)も、出金額に対する割合(withFeePercent)も、どちらも0です。
▼出金手数料の割合が0のKeigen Toshiの設定

出典:api.keigentoshi-api.com
同じデータでは、出金の受付は9時から15時、1回の最低額は100とされているだけで、利益に応じた額を求める項目はありません。サイトの設定のとおりなら、出金のときにかかる手数料は0円です。
「15%」「先払い」「精算」の語はプログラムに1つもない
画面のプログラムのうち、ライブラリを除く15本のファイルを調べると、「15%」「15%」「先払い」「前払い」「精算」「清算」「税金」の語は1つも見つかりません。
窓口が案内した「精算の手続き」も、サポートセンターが告げた「利益の15%の先払い」も、サイトの仕組みの中には出てこないということです。
▼「15%」の語が見つからないプログラムの検索

出典:stocks.keigentoshi-pro.com
出金の画面の注意書きには、「米国の銀行口座への出金は、当日処理され、最長で1営業日を要します」という一文が赤い文字で入っています。電話番号の欄が「+81」で始まる日本向けの画面にしては不自然で、他の国に向けたものを転用した可能性があります。
利益の何割かを先に払わせる事例を和歌山県警が発表している
利益の一定の割合を出金の前に払わせる手口は、警察の発表にも出てきます。和歌山北警察署が2025年9月29日に出した広報資料では、株の投資で利益が出たとされるアプリから出金しようとした人が、次のように言われています。
(前略)
その後被害者は、収益の状況が確認できるとされていたアプリを見て利益が出ていたため、出金しようとしたところ「出金するには100万円の手数料が必要。」、「儲けた額の20パーセントのお金も先に支払っていただく。」などと言われたことから不審に思い、詐欺であることに気づき当署へ届け出たものです。
(後略)
▼利益の20%の先払いを求められた和歌山の事例

出典:和歌山県警察
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、先に払う額を利益の割合で決める点が、本件の15%の要求と共通しています。広報資料は現在、県警のサイトから外れていますが、Internet Archiveの保存版で読めます。
出金のために利益の何割かを先に払うよう言われたら、まずサイトの利用規約や出金の画面に、その支払いの説明が書かれているかを確かめてください。規約にも出金の画面にも載っていない支払いのために振り込んでも、そのお金で出金が進むという根拠はサイトの側に見当たりません。
【参考】
・Keigen Toshi-画面のプログラム(https://stocks.keigentoshi-pro.com/static/js/app.4b76900a10f1a65653c1.js)
・Keigen Toshi-出金の設定のデータ(https://api.keigentoshi-api.com/api/admin/getSetting.do)
・和歌山県警察 和歌山北警察署「SNS型投資詐欺事件の発生について」(令和7年9月29日、Internet Archiveの保存版)
Keigen Toshiの入金の画面には振込先が出てこない

相談者の振込先は、どれもLINEの窓口がその都度示した口座でした。この章では、入金の画面と入金の方法の設定に振込先が出てくるかを確かめ、プログラムに残る「監督銀行口座」の文と富山県警の注意喚起を取り上げます。
入金の画面は金額を送るだけで口座番号の欄がない
入金の画面もログインした後に使う画面なので、前の章と同じく、配られているプログラムのファイルから中身を読みました。画面にあるのは入金額の入力欄と「チャージを確認」のボタンだけです。
ボタンを押すと、入力した金額をサーバーに送り、「送信成功。ホームに戻りますか?」と表示して終わります。振込先の金融機関の名前や口座番号、名義を表示する欄は、この画面のどこにもありません。サイトの中だけでは、どの口座に振り込めばよいのかが分からない作りです。
入金の方法の設定に日本円の振込はない
サイトが入金の方法として読み込む設定のデータは、ログインせずに誰でも開けます。登録されている方法は「BRL」「USD」「USDT」の3つで、日本円の銀行振込は含まれていません。BRLはブラジルの通貨、USDTはドルに連動する暗号資産です。
▼入金の方法がBRL・USD・USDTの3つだけの設定

出典:api.keigentoshi-api.com
3つとも、説明や口座の欄は「BRLBRL」「usdusd」のような仮の文字で、画面に表示しない設定(isShow 0)です。日本の利用者が日本円で入金する道筋は、サイトの設定の中には見当たりません。
「最新の監督銀行口座」を窓口で確かめさせる文がプログラムにある
入金の画面向けの言葉の一覧には、どの画面からも使われていないものの、次の一文がプログラムに書かれていました。入金のたびに窓口へ問い合わせ、その時点の口座を教えてもらう流れを前もって説明する文です。
ご注意:入金ルートは銀行監督システムによって動的に管理されています。入金の際は、必ず公式サポートにお問い合わせいただき、最新の監督銀行口座をご確認ください。
同じ文の英語の一覧は、「銀行監督システム」の部分が「CBRC system」になっています。CBRCは中国の銀行の監督当局の英語の略称で、中国語の一覧でも同じ当局を指す「银监会」と書かれています。
Reminder: The Deposit channel supervision is dynamically matched by the CBRC system. Before each Deposit, please contact the official online customer service of the terminal to get the latest regulatory bank account matched by the CBRC system
▼英語の一覧ではCBRCの名前で書かれた同じ文

出典:stocks.keigentoshi-pro.com
日本語の「銀行監督システム」は、日本の当局の仕組みではなく、中国の当局の名前を訳したものとみられます。口座が入金のたびに変わることを、もっともらしい監督の仕組みで説明しようとする文と読めます。
富山県警は毎回違う口座への振込を詐欺の手口に挙げる
振込先が個人名義や実態の分からない法人名義の口座で、しかも毎回変わることについて、富山県警察本部の生活安全企画課は2024年2月の広報紙で次のように注意を呼びかけています。
投資詐欺や架空料金請求詐欺では、犯人側から指示されるお金の振り込み先の多くが見ず知らずの個人名義の口座や実態が判然としない法人名義の口座です。
また、毎回違う口座に振り込むように指示されるのも、詐欺の手口の一つです。
(後略)
▼毎回違う口座への振込を手口に挙げる富山県警

出典:富山県警察
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、本件の7つの振込先は個人名義が6つ、法人名義が1つで、名義はすべて異なります。資料が警戒を促す振込先の姿に、そのまま重なっています。
入金を求められたら、振込先の名義がサイトの運営会社の名前と一致しているか、前回と同じ口座かを確かめてください。サイトの画面に振込先が出てこず、窓口から毎回別の口座を知らされる入金は、振り込む前に立ち止まるべき合図です。
【参考】
・Keigen Toshi-入金の方法の設定のデータ(https://api.keigentoshi-api.com/api/site/getPayInfo.do)
・Keigen Toshi-画面のプログラム(https://stocks.keigentoshi-pro.com/static/js/app.4b76900a10f1a65653c1.js)
・富山県警察本部 生活安全企画課「だまされんちゃ通信」令和6年2月号
keigentoshi-pro.comと.topと-api.comは同時刻に取得されている

stocks.keigentoshi-pro.comは、登録ドメインkeigentoshi-pro.comの下に作られたアドレスです。この章では、keigentoshi-pro.comと名前の似た2つのドメインの登録情報、同じ画面を返す別の入口、App Storeにある同じ名前のアプリを順に見ます。
3つのアドレスは8月5日の16時42分に1秒の間で取られた
keigentoshi-pro.com、データの送り先のkeigentoshi-api.com、末尾だけが違うkeigentoshi-pro.topの登録日時を、登録記録を公開するRDAPで引きました。3つとも日本時間の2026年8月5日16時42分38秒から39秒の間に登録されています。
▼8月5日に1秒の間で取られた3つのアドレス

出典:rdap.verisign.com、rdap.zdnsgtld.com
画像の「07時42分」は、日本時間の16時42分にあたります。登録を受け付けた事業者も、ドメインの名前を案内するネームサーバーの2台(cruz.ns.cloudflare.comとmartin.ns.cloudflare.com)も、3つで同じでした。同じ人や組織がまとめて取ったアドレスとみられます。
相談者のアドレスのほかに同じファイルを返す入口が2つある
stocks.keigentoshi-pro.comのほかに、stocks.keigentoshi-pro.topとh5.keigentoshi-api.comも「Keigen Toshi」のログイン画面を返します。3つの入口のページは1文字も違わない同じファイルで、読み込むプログラムも同じです。
どの入口から開いても、データの送り先はapi.keigentoshi-api.comです。1つのアドレスが使えなくなっても、別の入口で同じサイトを開ける作りになっています。Internet Archiveなどの記録サイトには、3つとも保存された画面がありませんでした。
App Storeに同じアイコンの業務ツールのアプリがある
App Storeには、「Keigen Toshi」という名前のアプリが掲載されています。黄色の地に黒い人物の図柄のアイコンは、ログイン画面のタブに出るアイコンと同じ図柄です。前の章で見た利用規約も、この名前を「資産管理アプリ」と呼んでいました。
▼サイトと同じ図柄のアイコンのKeigen Toshiのアプリ

出典:App Store
ところが、アプリのカテゴリは「仕事効率化」で、説明文はプロジェクトの入金管理や店舗の効率を計算する業務ツールの説明です。株や投資、取引の語は出てきません。販売元は個人の名前で、ほかに出しているアプリはありませんでした。
▼Keigenの名前で0件の金融庁の一括検索

出典:金融庁
このほか、運営者の登録とアドレスへの警告の有無も確かめました。
- 金融庁の金融事業者一括検索では「Keigen」で0件で、無登録業者の一覧にも名前はありません。ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません
- Googleセーフブラウジングでは、3つのアドレスとも警告は出ていません。これも安全の根拠にはなりません
株の取引をうたう名前を見かけたら、そのアドレスの登録日をRDAPで、運営者が金融庁に登録されているかを一括検索で確かめてください。取得から間もないアドレスで、登録のない名前であれば、お金を振り込む前に専門家に相談することが大切です。
【参考】
・Keigen Toshi(https://stocks.keigentoshi-pro.com/)
・rdap.verisign.com-keigentoshi-pro.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/keigentoshi-pro.com)
・rdap.verisign.com-keigentoshi-api.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/keigentoshi-api.com)
・rdap.zdnsgtld.com-keigentoshi-pro.top(https://rdap.zdnsgtld.com/top/domain/keigentoshi-pro.top)
・App Store-Keigen Toshi(https://apps.apple.com/jp/app/keigen-toshi/id6799329722)
・金融庁「金融事業者一括検索」
Keigen Toshiを5つの数字で見分ける

ここまでの章で見てきたKeigen Toshiの不審な点は、5つの数字にまとめられます。規約の制定の年、先払いの割合、振込先の数、検索の件数、アドレスを取った時刻の差です。それぞれの数字が、似た勧誘を受けたときに何を確かめればよいかを教えてくれます。
- 「2020年」制定の規約と2026年に取られたアドレス:Keigen Toshiの規約は2020年の制定・施行から始まりますが、アドレスが取られたのは2026年8月です。規約の日付と、アドレスの登録日(ICANNの照会ページなどで調べられます)が何年も離れていれば、別のサービスの規約を写した疑いがあります
- 規約にも画面にもない「15%」の先払い:利益の15%を先に払うという条件は、規約にも出金の画面にもなく、設定の出金手数料は0でした。出金のために利益の何割かを求められたら、その割合がサイトのどこに書かれているかを先に確かめます
- 名義がすべて違う「7つ」の振込先:振込先の口座は7つで、名義はすべて違い、どれもサイトの名前の口座ではありませんでした。振込先が毎回変わる、または運営会社の名前でない口座であれば、それだけで振り込む理由はなくなります
- 金融庁の検索もアプリの評価も「0件」:金融庁の一括検索で「Keigen」は0件、App Storeの同じ名前のアプリの評価も0件でした。名前で調べても登録も評判も出てこない相手に、まとまったお金を預ける前に立ち止まります
- 「1秒」の間にそろって取られた似たアドレス:3つのアドレスは1秒の間に取られていました。名前が同じで末尾だけが違うアドレスが同時に取られていれば、入口を替えながら使う前提で用意されたとみられます
5つのうち1つでも当てはまったら、窓口の説明を信じて手続きを進める前に、家族や信頼できる第三者に話してください。すでに振り込んでいる場合は、追加の支払いをせずに専門家に相談することが、被害を広げないための近道です。
【参考】
・ICANN-Lookup(https://lookup.icann.org/ja)
・金融庁「金融事業者一括検索」
・金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」
Keigen Toshiの口コミがないのはアドレスが8月に取られたばかりだから

Keigen Toshiについて、利用した人の投稿や相談を探しましたが、見つかったのは別のサイトについての古い相談だけでした。この章では、口コミが見当たらない理由を本件の事実から整理し、検索で目につく記事の性質と、手口の似た2024年の相談を取り上げます。
Keigen Toshiの名前の投稿や相談は見当たらない
Yahoo!知恵袋、X(旧Twitter)、5ちゃんねるのいずれにも、Keigen Toshiの名前に触れた投稿や相談はありませんでした。App Storeの同じ名前のアプリも、評価やレビューは1件もついていません。
理由として考えられるのは、サイトの新しさと入口の狭さです。アドレスが取られたのは2026年8月5日で、相談者が利益の15%の先払いを求められた10月20日まで、わずか2か月半ほどでした。
そのうえ、外から見えるのはログイン画面だけで、取引口座への案内はLINEの窓口から一人ひとりに届きます。利用した人の声が表に出て積み重なる前に、被害が進んでいたとみられます。
検索の上位は相談窓口へ誘う記事が占めている
Keigen Toshiの名前で検索すると、上位には調査会社や相談サイトの記事が3本並びます。どれも利用者の口コミは載せておらず、記事の最後でLINEや電話の相談窓口へ誘う作りでした。
こうした窓口の中には、手数料を取って「返金できる」と持ちかける業者もあります。お金を取り戻す手続きを任せる相手は、運営者の名前や資格が確かめられるところを選ぶことが大切です。
2024年の知恵袋にも「利益の15%」を出金の条件にされた相談がある
似た手口として目に留まったのは、2024年6月12日の知恵袋の質問です。挙げられているのは別のサイトの名前ですが、出金しようとした後に利益の15%を払うよう求められた点が共通しています。
jumpyleFXは詐欺サイトですか? 利益が出て出金しようとしたら利益の所得税15%を払わないと出金できないと言われました。まだ払ってはいませんがどうでしょうか?
▼利益の15%の所得税を求められた2024年の相談

出典:Yahoo!知恵袋
この質問は本件の2年以上前のもので、商品もFXです。本件とのつながりを示す情報は確認できませんでしたが、名目を所得税とする点を除けば、利益の15%を出金の条件にする言い回しは同じです。
窓口が出金の条件として利益の割合を口にしたら、出金のための手続きではなく、新たな振込を求めるための言葉ではないかと疑ってください。その場で払わず、規約と出金の画面に同じ条件が書かれているかを先に確かめることが大切です。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-2024年6月12日の質問(利益の所得税15%を払わないと出金できないと言われたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13299478978)
・App Store-Keigen Toshi(https://apps.apple.com/jp/app/keigen-toshi/id6799329722)
Keigen Toshiに振り込んだお金を取り戻す手がかりは振込先の7つの口座にある

利益の15%のうち一部を払った後も出金されず、取引口座にログインもできない段階では次のような疑問が浮かぶはずです。
- 運営の会社名も分からないのに、誰から取り戻せばよいのか
- 名義の違う7つの口座の持ち主に、どうやって請求するのか
- ログインできず画面が見られない今、何を手元に残せばよいのか
- 残りの15%を払えば、出金されるのではないか
この章では、この4つの疑問に順に答えます。最初の疑問の答えは、相手の名前ではなく、相談者がお金を振り込んだ先の口座にあります。名前の分からない相手でも、お金が通った道筋は記録に残っているからです。
運営が分からなくても振込先の口座ははっきりしている
Keigen Toshiの規約は社名が「【当社法人名】」のままで、運営する会社は分かりません。一方で、振込の控えには、振り込んだ先の金融機関と口座の名義が7つとも残っています。取り戻すための手続きは、この振込先から始まります。
振込先の金融機関それぞれに、詐欺の被害で振り込んだことを伝え、あわせて警察(相談専用電話は#9110)にも相談してください。届け出が早いほど、口座の利用が止められ、残っているお金が動かされにくくなります。
振り込め詐欺救済法は第2条で、対象の口座を「預金口座又は貯金口座」と定めていて、個人名義か法人名義かで分けていません。先払いの分を振り込んだ法人名義の口座も、個人名義の6つの口座と同じく、届け出の対象から外れるわけではありません。
6人と1社の名義人に請求するための手がかりは金融機関の中にある
振込先の名義は6人の個人と1つの法人で、どれも窓口が名乗った「Keigenカスタマーサポート」とは結び付きません。口座に残ったお金が少なければ、名義人に直接返還を求めることも考えることになります。
しかし、個人名義の口座の持ち主の住所を、金融機関は振り込んだ本人の問い合わせには答えません。法人は登記の記録を取り寄せられますが、記録の所在地に会社の実体があるとは限りません。7つの名義人を一人ずつ特定し、請求を重ねるのは個人では手に余る作業です。
ここで使えるのが、弁護士法第23条の2の照会です。事件を引き受けた弁護士が申し出ると、弁護士会が金融機関などに必要な事項の報告を求めます。
名義人の情報を集め、7つの名義人への請求をまとめて進められるのは、この照会を使える弁護士です。振込先が多いほど、早めに専門家に相談することに意味があります。
ログインできない画面の代わりにLINEのやり取りを残しておく
取引口座の画面はもう開けないため、残高や取引の記録を自分で写すことはできません。代わりに証拠になるのが、LINEの「Keigenカスタマーサポート」とのトークです。振込先の口座、15%の先払いの説明、ログイン先のアドレスが書かれたやり取りを消さずに残してください。
あわせて、振込の控えや通帳の記帳も手元にそろえ、7つの口座の分を振り込んだ日の順に並べておきます。どの日にどの口座へいくら振り込んだかが、警察や金融機関、相談先に被害を伝えるときの土台になります。
残りの15%を払っても出金される見込みは薄い
前の章で見たとおり、Keigen Toshiの設定では出金手数料は0で、15%の先払いはサイトの仕組みにありません。和歌山東警察署が2026年3月23日に出した広報資料には、ログインできなくなった後に、次のように支払いを求められた事例が載っています。
その後、サイト内で利益が7,000万円くらいになっていたことから引き出そうとしたところ、サイトにログインできなくなり、問い合わせたところ、「保証金として500万円振り込んでください。」と言われたことで詐欺の被害に遭っていると気付き、本日、当署に届け出たものです。
▼ログインできなくなった後に保証金を求められた事例

出典:和歌山県警察
出金に応じないまま連絡を絶つ流れは、金融庁の注意喚起のページにも例として出てきます。
(前略)
インターネットで勧められた海外業者とのFX取引で、利益が出ているのに出金に応じてもらえず、そのうち業者と連絡が取れなくなった。
(後略)
▼出金に応じず連絡が取れなくなる例を挙げる金融庁

出典:金融庁
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、残りの支払いやログインを戻すための支払いを求められても、応じずに振込の記録とやり取りを持って相談先へ向かうことが、これ以上お金を失わないための一歩です。
【参考】
・e-Gov法令検索-犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律
・e-Gov法令検索-弁護士法
・政府広報オンライン-警察に相談したいときは警察相談専用電話 「#9110」番へ
・和歌山県警察 和歌山東警察署「SNS型投資詐欺事件の発生について」(令和8年3月23日、Internet Archiveの保存版)
・金融庁-詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!
