DBSエクスプローラー(DBSExplore)は詐欺?DBS機関を名乗る勧誘と被害の実態

LINEで株式投資を勧めてきた相手は、自分たちを「DBS機関」と名乗り、App Storeのアプリ「DBSエクスプローラー(DBSExplore)」を入れるよう指示しました。機関口座の開設の案内に続いて、相談者は、振込のたびに銀行も名義も違う口座へお金を送っています。

DBSはシンガポールに本拠を置く銀行グループの名前です。ところが日本のDBS証券は、LINEなどのSNSで個人に投資を勧めることも、偽の投資アプリへ誘導して送金を求めることもないと公式サイトで告知しています。

App Storeの掲載ページでは、アプリの販売元はTECH-LOGISTA d.o.o.という別の会社で、出しているアプリはこの1本だけでした。説明文と画面写真は相場の情報や計算のツールの内容で、口座の開設や入金には触れていません。

DBSの名前を出されたとき、アプリを入れる前と振り込む前に何を見比べればよいのかを弁護士が解説します。振込先が複数の銀行に分かれた後に、お金を取り戻すため今できることも紹介します。

「DBS機関」を名乗る相手がLINEでアプリを入れさせるまで

勧誘から振込まで。LINEで株取引を勧誘。アプリ導入後に口座を案内。振込先の銀行と名義が変わる。事案名「DBSを名乗る偽アプリ」を右上に示す説明図。

この章では、LINEで「DBS機関」を名乗る相手から株式投資を持ちかけられてから、App Storeのアプリを入れるよう指示され、銀行振込でお金を送るまでを順にたどります。アプリの入手先を示したのも、機関口座の話を持ち出したのもLINEの相手でした。

「DBS機関」と名乗る相手がLINEで株の取引を持ちかける

LINEで連絡を取り合う中で、相手は相談者に株の取引への参加を持ちかけ、自分たちを「DBS機関」と名乗っていました。個人の名前ではなく、金融機関のような組織の名前で勧誘が進んでいた点が、この事案の出発点です。

DBSは、シンガポールに本拠を置く銀行グループの名前です。日本にもDBS銀行の東京支店とDBS証券があり、実在の金融機関と同じ名前のため、聞いた側はその関係者だと受け取りやすいと考えられます。日本のDBSがどのような会社で、何を告知しているかは次の章で確かめます。

App Storeのリンクからアプリを入れて機関口座の開設を案内される

相手はLINEで、DBS機関のアプリとして「DBSエクスプローラー」を入れるよう指示しました。相談者がiPhoneを使っていると伝えると、相手はApp Storeのアプリのページへのリンクを送り、ダウンロードが済んだら機関口座の開設方法を説明すると伝えています。

相談者は、アプリをダウンロードしたと返信しました。App Storeでの名前は「DBSExplore」です。公式のアプリストアからの入手は、App Storeに載っているなら運営もきちんとしているはずだと受け止めやすい入り方です。掲載の中身は、3つ目から5つ目の章で一つずつ確かめます。

振込先として示されたのは個人名義と法人名義の口座

その後、相談者は銀行振込で相手の側の口座へお金を送りました。振込先は振込のたびに銀行も名義も違い、会社の名前の口座と個人の名前の口座が混ざっています。振込先の名義のどれにも、DBSの名前は入っていません。

京都府警察は、SNSで知り合った相手からの投資話について、次のセルフチェックを公開しています。

(前略)
□相手方の口座にお金を振り込むように言われた
(中略)
□振込先に個人名義の口座を指定された
□振込先の口座が振込みの度に変わっている

→1つでも当てはまれば「SNS型投資詐欺」被害のおそれがあります!
 お金を振り込む前に、迷わず警察に相談を!

▼振込先の口座の変化を挙げる京都府警察のセルフチェック

dbsexplore-振込先の口座の変化を挙げる京都府警察のセルフチェック

出典:京都府警察

引用した3つの項目は、いずれも本件の振込の状況にそのまま重なります。チェックの一覧は、振込の前に立ち止まるためのものとして作られています。振込先が相手の側の口座で、しかも毎回変わる場合は、振り込む前に警察に相談することが勧められています。

まとめると、「DBS機関」を名乗る相手にApp Storeのアプリを入れさせられ、機関口座の開設の案内に続いて、銀行も名義も違う口座へ振込を重ねたことが被害につながった経緯です。次の章では、名前を使われた正規のDBSが日本で何をしている会社で、こうした勧誘について何を告知しているかを確かめます。

【参考】
・京都府警察-会ったことのない相手がLINEに誘導してきたら詐欺を疑って!!

正規のDBS証券は「偽の投資アプリへ誘導しない」と告知している

正規の案内と照合。SNSで個人を勧誘しない。偽アプリへの誘導・送金要求を否定。東京支店は個人向け業務を扱わない。事案名「DBSを名乗る偽アプリ」を右上に示す説明図。

この章では、相手が名乗った「DBS」の正体を、正規のDBSの側の資料で確かめます。日本にある拠点の顔ぶれ、DBS証券が出している2つの注意書き、DBS銀行東京支店の案内、そして「DBS」で始まる名前のアプリを使った別の被害の発表を順に見ていきます。

DBSはシンガポールの銀行で日本の拠点は法人や機関投資家向け

DBSは、1968年にシンガポール開発銀行として設立された銀行グループです。日本では1977年にDBS銀行の東京支店が営業を始め、2016年にはDBS証券株式会社が設立されました。DBS証券は関東財務局長(金商)第2940号の第一種金融商品取引業者で、日本証券業協会にも加入しています。

金融庁の金融事業者一括検索で「DBS」を引くと、DBS証券とDBS銀行の2社に並んで、警告の印の付いた「DBSTRT」が出てきます。名前の似たこのDBSTRTが何をした業者なのかは、この章の最後の節で扱います。

▼「DBS」で引いた金融庁の金融事業者一括検索の結果

dbsexplore-「DBS」で引いた金融庁の金融事業者一括検索の結果

出典:金融庁

日本のDBSの在日代表は、公式サイトのあいさつで、東京支店の開業以来「機関投資家の皆さまにさまざまな金融商品とサービスを提供することにコミットしてまいりました」と述べています。日本での事業の相手は、もともと個人ではなく法人や機関投資家です。

DBS証券は日本国内の個人に投資を勧誘しないと明記している

DBS証券の公式サイトのページ上部には、2026年10月29日の時点で、DBS証券を装った投資詐欺への注意を呼びかける文章が表示されています。SNSでの勧誘について、文章ははっきりこう書いています。

当社および当社役職員が、LINE・Instagram・Facebookその他のSNSを通じて個人のお客さまに対し、投資勧誘や投資アドバイスを行うことはありません。

▼LINEでの投資勧誘を否定するDBS証券の注意書き

dbsexplore-LINEでの投資勧誘を否定するDBS証券の注意書き

出典:DBS証券

同じ注意書きは、DBS証券の役職員を装った偽のSNSアカウントに加え、「当社関係者になりすました偽のInstagramアカウントやLINEアカウントなども報告されています」と書いています。LINEで「DBS機関」を名乗る相手は、この注意書きが挙げる勧誘の形にそのまま当てはまります。

偽の投資アプリや取引サイトへの誘導と送金の要求もしない

DBS証券は2025年11月11日にも、「DBS 証券を騙る不審な投資勧誘にご注意ください」と題した告知を出しています。告知は、当社の職員が決して行わない行為として4つを挙げ、その1つ目と3つ目が次の項目です。

・ 日本国内における個人のお客さまに対する勧誘行為:日本国内において個人のお客さまに金融商品の営業行為や投資勧誘行為を行うことはございません。
(中略)
・ 非公式アプリへの誘導: 当社とは無関係の偽の投資アプリや取引サイトへ誘導し、送金を要求することはありません。

▼偽の投資アプリへの誘導を否定するDBS証券の告知

dbsexplore-偽の投資アプリへの誘導を否定するDBS証券の告知

出典:DBS証券

本件で相手がしたのは、アプリを入れさせ、口座への振込を求めることでした。正規のDBS証券は、偽の投資アプリへ誘導して送金を求めることはないと自ら告知しています。ページ上部の注意書きでは、DBSグループの名称やロゴが無断で使われている例も確認されていると伝えています。

DBS銀行東京支店は個人のお客様向けの業務を扱っていない

銀行の側も同じです。DBS銀行東京支店の案内ページは、口座に関する問い合わせの欄で、日本の個人の利用者を相手にしていないことをはっきり書いています。

DBS銀行東京支店では個人のお客様向け業務は取り扱っておらず、お電話、ご来店頂きましてもご対応致しかねます。

▼個人向けの業務を扱わないとするDBS銀行東京支店の案内

dbsexplore-個人向けの業務を扱わないとするDBS銀行東京支店の案内

出典:DBS銀行東京支店

同じページには「当行またはDBSグループの社名等をかたる勧誘にご注意ください。」の一行もあります。日本で個人に株の取引を勧め、個人や会社の名義の口座へ振込を求めるDBSの部門は、銀行にも証券会社にも見当たりません。

DBSの名前で始まる投資アプリは八戸警察署も発表している

「DBS」で始まる名前の投資アプリが出てくる被害は、本件より前にも伝えられています。青森県の八戸市が八戸警察署の依頼で2026年1月14日に配信した情報がその一つです。

配信によると、TikTokの投稿から株式投資のLINEアカウントを登録した男性が、投資アプリ「DBSTRT」を入れるようLINEで指示されました。男性は指定された個人名義の口座に振込を重ね、利益を引き出そうとしたところで追加の振込を求められています。

▼投資アプリ「DBSTRT」を挙げる八戸市の配信

dbsexplore-投資アプリ「DBSTRT」を挙げる八戸市の配信

出典:八戸市

金融庁も、2026年2月に無登録で金融商品取引業を行う者として公表した業者の中に、DBSTRTを載せています。

当該業者は、SNS上で「DBSTRTは、日本の金融庁に登録された証券機関です。」、「金融庁登録番号:関東財務局長(金商)第203号」と表示していた。

▼「証券機関」を名乗ったDBSTRTを載せる金融庁の一覧

dbsexplore-「証券機関」を名乗ったDBSTRTを載せる金融庁の一覧

出典:金融庁

これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、名前の頭に「DBS」を付けたアプリをLINEで入れさせる点は本件と同じ形をしています。

名乗られた名前が本当にその会社のものかは、相手の説明ではなく、名乗られた会社の公式サイトの注意書きで確かめることが大切です。DBSの場合、その答えはこの章で見たとおり公式サイトに出ています。

【参考】
・DBS証券-DBS証券株式会社(https://www.dbs.com/jp/securities.page)
・DBS証券-DBS 証券を騙る不審な投資勧誘にご注意ください(https://www.dbs.com/iwov-resources/images/jp/please-be-aware-of-suspicious-investment-solicitations-impersonating-dbs-securities-121105.pdf)
・DBS銀行東京支店-DBS銀行 東京支店(https://www.dbs.com/jp/tokyo-branch.page)
・DBS-在日代表からのメッセージ(https://www.dbs.com/jp/default.page)
・金融庁-金融事業者一括検索
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
・八戸市安全・安心情報-八戸警察署で440万円被害のSNS型投資詐欺を認知

DBSエクスプローラーを出しているのはDBSではない会社

アプリ名より販売元。DBSExploreの販売元はTECH-LOGISTA d.o.o.。正規アプリの販売元にはDBSの会社名。掲載欄の名前を照合する。事案名「DBSを名乗る偽アプリ」を右上に示す説明図。

この章では、App Storeの掲載ページで、DBSエクスプローラーを誰が出しているかを確かめます。見るのはアプリ名の下のデベロッパの欄、ページ下部の「情報」の販売元と著作権、デベロッパのページ、そしてEUのストアだけに出る販売元の表示です。正規のDBSのアプリの同じ欄とも並べます。

販売元と著作権の欄はTECH-LOGISTA d.o.o.

iPhoneのApp Storeで「DBSExplore」のページを開くと、アプリ名の下の列と説明文の下に、デベロッパとして「TECH-LOGISTA d.o.o.」と表示されます。DBSの名前が出てくるのは、アプリの名前の「DBSExplore」だけです。

▼デベロッパにDBSの名前がないiPhoneの画面

dbsexplore-デベロッパにDBSの名前がないiPhoneの画面

出典:App Store

ページ下部の「情報」の欄でも、販売元と著作権はどちらも同じTECH-LOGISTA d.o.o.という会社です。カテゴリはファイナンスで、言語は英語だけです。DBS銀行やDBS証券の名前は、どの欄にも出てきません。

▼販売元も著作権もDBSではない情報の欄

dbsexplore-販売元も著作権もDBSではない情報の欄

出典:App Store

この販売元がApp Storeに出しているアプリは1本だけ

デベロッパの名前を押すと、その販売元のアプリの一覧が開きます。TECH-LOGISTA d.o.o.のページに並ぶのは、DBSエクスプローラーの1本だけです。ほかの金融のアプリも、金融以外のアプリも出していません。

▼アプリがDBSExploreの1本だけのデベロッパのページ

dbsexplore-アプリがDBSExploreの1本だけのデベロッパのページ

出典:App Store

評価とレビューの欄も「このアプリは、概要を表示するには評価件数やレビュー件数が不十分です。」のままで、利用者の評価は付いていません。App Storeにほかのアプリを出していない販売元の、評価がまだ1件もない金融のアプリということになります。

正規のDBSのアプリは販売元の欄にDBSの会社名が出る

比べるために、シンガポールのDBS銀行が出している「DBS digibank」のページを開くと、デベロッパの欄は「DBS Bank Ltd.」、情報の欄の販売元は「DBS Bank Ltd」、著作権は「©2015 DBS Bank Ltd」です。

評価も、2026年10月29日の時点で1,746件付いています。名乗りと掲載の欄の会社名が、そのまま一致している状態です。使っている人が多いことも評価の件数から読み取れます。

▼販売元にDBS Bank Ltdと出る正規のDBSのアプリ

dbsexplore-販売元にDBS Bank Ltdと出る正規のDBSのアプリ

出典:App Store

App Storeで「DBS」と調べて出てくる正規のDBSのアプリは、DBS digibankに限らず、販売元がDBS Bank LtdやDBS Bank (Hong Kong) LimitedなどDBSのグループの会社です。名乗られた会社のアプリかどうかは、アプリ名ではなく販売元の欄で分かります。

EUのストアでは販売元が事業者としての連絡先を示していない

同じDBSエクスプローラーを、EUの国のApp Store(スロベニアのストア)で開くと、「Provider」(提供者)の欄に次の表示が出ます。

TECH-LOGISTA d.o.o. has not identified itself as a trader for this app. If you are a consumer in the European Economic Area, consumer rights do not apply to agreements between you and the provider.

▼事業者として名乗っていないとするEUのストアの表示

dbsexplore-事業者として名乗っていないとするEUのストアの表示

出典:App Store

訳すと、「TECH-LOGISTA d.o.o.は、このアプリについて事業者(trader)として名乗っていません。欧州経済領域の消費者の場合、提供者との契約には消費者の権利が適用されません」という意味です。

Appleは開発者向けの説明で、EUのデジタルサービス法により、事業者の住所や電話番号、メールアドレスを確かめたうえで掲載ページに公開することになっていると説明しています。事業者に当たらない場合については次のとおりです。

(前略)
トレーダーに該当しないデベロッパの場合、適用される消費者保護法に起因する消費者の権利は、当該デベロッパと消費者の間で結ばれる契約には適用されない旨が、EU圏内の消費者に対し示されます。

投資に使うと案内されたアプリでありながら、販売元は事業者(trader)として名乗らず、EUのストアにも住所や電話番号を示していないことになります。アプリを入れる前には、掲載ページの販売元の欄を開き、名乗られた会社の名前が出ているかを確かめてください。

【参考】
・App Store-DBS digibank(https://apps.apple.com/jp/app/dbs-digibank/id1068403826)
・Apple Developer-欧州連合デジタルサービス法のトレーダー要件に関わる管理

DBSエクスプローラーの紹介文は計算ツールで口座開設に触れない

紹介文と用途の差。掲載文は相場情報のツール。画面写真は試算機能が中心。口座開設や入金の説明はない。事案名「DBSを名乗る偽アプリ」を右上に示す説明図。

相手はDBSエクスプローラーを、機関口座を開くためのアプリとして案内しました。この章では、App Storeの掲載ページがこのアプリを何のアプリとして紹介しているかを、説明文と画面写真の順に確かめます。あわせて、「機関口座」という言葉そのものについての証券会社の説明も紹介します。

説明文は相場の情報をまとめるツールとしか書いていない

DBSエクスプローラーの掲載ページの説明文は、英語の次の1段落だけです。

DBSExplore brings essential information into a clear, organized workspace featuring market summaries, performance, interactive charts, and bite-sized research insights., follow symbols, and explore with greater clarity.

▼相場の情報をまとめるとだけ書く英語の説明文

dbsexplore-相場の情報をまとめるとだけ書く英語の説明文

出典:App Store

内容は「市場の概況や値動き、操作できるチャート、短い分析をまとめた画面で、銘柄を追いかけて調べられる」というものです。「insights., follow」のように句読点の崩れた所もあります。相手の言う機関口座の開設も、そこへの入金や株の売買も、この説明文の紹介する機能には含まれていません。

画面写真に並ぶのは変動率やケリー基準の計算の画面

掲載ページの画面写真は6枚です。1枚目は白い画面に赤い図柄だけの起動画面で、2枚目以降は値動きの大きさを計算する「GARCH(1,1) Volatility」、資金の配分を試算する「Kelly」、ローソク足を作る「Generate Candles」などの計算の画面が続きます。

iPhoneのApp Storeで画面写真を押して拡大すると、3枚目の「Kelly」の画面の文字まで読めます。画面写真は横向きで、端末の絵が小さく収められているため、拡大しないと中の文字は分かりません。

▼「Sports」と「Randomize」が並ぶ画面写真

dbsexplore-「Sports」と「Randomize」が並ぶ画面写真

出典:App Store

3枚目の「Market Type」の欄には「Sports」と表示され、その下には「Simulate」と「Randomize」のボタンが並んでいます。6枚のどれにも、口座の開設や入金の画面、DBSの文字は写っていません。

掲載ページから読み取れるのは、株の口座のアプリではなく、試算用の計算ツールとしての姿です。Appleは2026年5月20日の発表で、App Reviewが見つけて取り除いたアプリについて次のように書いています。

(前略)
このようなアプリには、当初はパズルや計算機アプリといった標準的なゲームやユーティリティとして承認され、審査後に金融詐欺を目的として改変されるアプリなどが含まれます。2025年、チームはこのような「おとり商法」が仕込まれていた約5万9,000本のアプリを削除しました。

掲載ページの紹介と、相手が口にした用途が食い違うときは、App Storeに載っていることを安心の材料にしないことが大切です。相手が「機関のアプリ」と呼んでも、掲載ページが何のアプリと名乗っているかを先に読むようにしてください。

「機関口座」という証券口座はないと証券会社自身が説明している

相手が口にした「機関口座」も、確かめておくべき言葉です。北洋銀行は2025年1月27日、グループの北洋証券を騙るLINEの投資勧誘について、勧誘の中身と事実を並べて注意を呼びかけました。

2.当該上場株式を購入するため「機関口座」の開設が必要である。
⇒「機関口座」という証券口座は存在しません。
(中略)
4.株式購入資金を●●銀行の預金口座に振り込んでほしい。
⇒北洋証券では、株式等の購入資金は、同社の証券口座にお振り込みいただくようお願いしております。

▼「機関口座」はないとする北洋銀行の注意喚起

dbsexplore-「機関口座」はないとする北洋銀行の注意喚起

出典:北洋銀行

これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、「機関口座」の開設を口実に銀行振込を求める点で、本件の相手の話と重なります。

株を買うお金は自分名義の証券口座に入れるもので、会社や個人の名義の口座へ直接振り込むよう言われたら、その時点で立ち止まる必要があります。

【参考】
・Apple-2025年、App Storeは不正取引と見なされた取引22億ドル以上を阻止
・北洋銀行-北洋証券を騙ったSNS型投資詐欺にご注意ください。(https://www.hokuyobank.co.jp/announcement/detail/20250127_075414.html)

DBSエクスプローラーのプライバシーポリシーは無料ツールの定型文

ポリシーの記載を照合。会社名は販売元と異なる。無料作成サービスの定型文。データ収集の記述も食い違う。事案名「DBSを名乗る偽アプリ」を右上に示す説明図。

App Storeの掲載ページの「プライバシーポリシー」を押すと、販売元が用意したページが開きます。この章では、そのポリシーの作られ方と、書かれた会社の名前・所在地、App Storeの表示との食い違いを順に見ます。

無料の作成サービスで作ったとポリシー自身が書いている

開くのはFreePrivacyPolicy.comの中のページで、題は「Privacy Policy for DBSExplore」、最終更新は「Last updated: October 10, 2026」です。初めの段落の終わりには、作成に使った道具の名前まで書かれています。

(前略)
This Privacy Policy has been created with the help of the Privacy Policy Generator.

ページの最後にも「Generated using Free Privacy Policy Generator」とあり、ポリシーは無料の作成サービスで出来上がった定型文です。どのアプリにも当てはまる文章で、アプリで何ができるかや、取引・口座の説明はありません。

▼会社名DBSExploreと所在地アラスカのポリシー

dbsexplore-会社名DBSExploreと所在地アラスカのポリシー

出典:freeprivacypolicy.com

会社名は「DBSExplore」で所在地はアラスカ州・連絡先はGmail

ポリシーの言葉の定義には、運営する会社として次の項目が並びます。

Company (referred to as either “the Company”, “We”, “Us” or “Our” in this Privacy Policy) refers to DBSExplore.

Country/State refers to: Alaska, United States.

会社はアプリと同じ「DBSExplore」、所在地はアメリカのアラスカ州で、問い合わせ先は末尾のGmailのアドレスだけです。販売元のTECH-LOGISTA d.o.o.の名前はどこにも出てこず、販売元・会社名・所在地がばらばらで運営の実体をたどれません。

App Storeの「データの収集なし」とポリシーの文が合わない

App Storeの掲載ページの「アプリのプライバシー」の欄には、「データの収集なし」と表示されています。一方、ポリシーの「Usage Data」の項目は、短い一文で始まります。

Usage Data is collected automatically when using the Service.

利用の記録は自動的に集めると書き、その中身としてIPアドレスや端末の識別子なども挙げています。定型文のままのため、実際に何を集めているかは分かりません。ただ、掲載ページの表示と、販売元が自ら示したポリシーの文が食い違っていることは確かです。

App Storeは、この欄の表示について、次の断り書きを添えています。

デベロッパである“TECH-LOGISTA d.o.o.”は、アプリのプライバシー慣行に、以下のデータの取り扱いが含まれる可能性があることを示しました。この情報はAppleによって検証されていません。詳しくは、デベロッパプライバシーポリシーを参照してください。

▼Appleが検証していないとする「データの収集なし」の表示

dbsexplore-Appleが検証していないとする「データの収集なし」の表示

出典:App Store

掲載ページのプライバシーの表示は、販売元の申告をそのまま載せたものです。運営の実体については、ほかにも次のことを確かめました。

  • 金融庁の金融事業者一括検索で「DBSExplore」「TECH-LOGISTA」を引いても、登録業者も警告の対象も0件です
  • DBSエクスプローラーの掲載ページは、Internet Archiveに保存の記録がありません

ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。アプリを入れる前に確かめたいのは、ポリシーに書かれた会社の名前と所在地が、App Storeの販売元や、勧誘で名乗られた会社と同じかどうかです。3つの名前のどれかが食い違えば、その時点で入れるのをやめるのが安全です。

【参考】
・FreePrivacyPolicy.com-Privacy Policy for DBSExplore(https://www.freeprivacypolicy.com/live/31ac5562-8076-4dfd-b640-c343cb2b6503)
・金融庁-金融事業者一括検索

名乗られた名前が5つの場所でそろうかを突き合わせる

五つの場所を照合。名乗りと販売元を比べる。用途・ポリシー・名義も確認。そろわなければ振込を止める。事案名「DBSを名乗る偽アプリ」を右上に示す説明図。

本物の金融機関の案内なら、名乗る名前はアプリの販売元にも、決まりごとの会社名にも、振込先の名義にも同じように出てきます。DBSエクスプローラーの件では、この名前が場所ごとにばらばらでした。前の章までに確かめた5つの場所を本件で出ていた名前と並べます。

見る場所本件で出ていた名前確かめること
LINEの相手の名乗り「DBS機関」名乗られた会社が、LINEで個人に投資を勧めることがあるか(正規のDBS証券は公式サイトで否定)
App Storeの販売元・デベロッパTECH-LOGISTA d.o.o.名乗られた会社の名前か。同じ販売元がほかにどんなアプリを出しているか
アプリの説明文と画面写真相場の情報をまとめるツール案内された用途(口座の開設・入金)が書かれているか
プライバシーポリシーの会社名と所在地DBSExplore(アラスカ州)販売元や名乗られた会社と同じか
振込先の口座の名義個人名義・法人名義(振込のたびに違う)名乗られた会社の名義か。毎回変わっていないか

5つのうち、販売元、説明文と画面写真、ポリシーの3つは、アプリを入れる前に掲載ページだけで確かめられます。名乗りの欄は、名乗られた会社の公式サイトの注意書きを開けば答えが出ます。DBSの場合は、日本のDBS証券のページを開くと、上部に注意書きが表示されます。

表のどこか1か所でも名前がそろわなければ、振込も追加の入金もそこで打ち切ってください。すでに振り込んでいる場合は、相手とのやり取りと振込の明細を残したまま、警察や専門家に相談することが次の一歩になります。

【参考】
・DBS証券-DBS証券株式会社(https://www.dbs.com/jp/securities.page)

DBSエクスプローラーの評価は0件で出回るのはDBSの名前の返金の宣伝

口コミ不在と返金宣伝。評価・レビューは確認できない。検索で見つからなくても安全とは限らない。返金宣伝のLINEには連絡しない。事案名「DBSを名乗る偽アプリ」を右上に示す説明図。

DBSエクスプローラーについて、利用した人の声を、App Storeの評価、X、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる等で探しました。2026年10月29日の時点で、本件の名前を挙げた口コミや被害の報告は見つかっていません。代わりに見つかったのは、DBSの名前を使った返金の宣伝です。

App Storeの評価もレビューもまだ1件もない

App Storeの掲載ページの評価とレビューの欄は、「このアプリは、概要を表示するには評価件数やレビュー件数が不十分です。」の表示のままです。利用者の声がたまる場所そのものが、まだ空の状態です。

勧誘の相手から直接リンクを送られて入れるアプリでは、ストアで探して評判を読み比べる場面がありません。評価が0件であることも、ほかの利用者がいないことも、アプリを入れる前に気づきにくくなります。

「DBSExplore」で調べると英語の別の製品が並ぶ

検索でも本件の名前は埋もれます。「DBSExplore」で調べると、上位に並ぶのはデータベース用の英語の製品(DBExploreなど)で、「DBS機関」で調べると、正規のDBSの機関投資家向けのサービスの報道が出てきます。

X、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねるでも、「DBSExplore」「DBSエクスプローラー」「DBS機関」の名前で被害を語る投稿は見つかりませんでした。名前で調べて何も出てこないことは、安全の印ではなく、まだ誰も書いていない状態と受け止める必要があります。

DBSの名前で検索すると返金をうたう宣伝が出てくる

「DBS 投資 詐欺 LINE」で調べると、DBSの名前を挙げて「大規模な被害」を訴える日本語の記事が見つかります。仮名の被害談の後に「専門家」に頼んで一部を取り戻したと書き、記事の中のLINEの個人のIDへ連絡を促す、返金をうたう宣伝の形です。同じ形の宣伝は、DBSTRTの名前でも出ています。

正規のDBS証券も、ページ上部の注意書きで「投資資金の返金手続き」などを理由に振込を求める行為は当社と関係がないと書いています。

返金をうたう宣伝のLINEに連絡すると、手数料などの名目でさらにお金を求められる二次被害につながりかねません。相談は、警察や弁護士などの窓口に直接してください。

【参考】
・DBS証券-DBS証券株式会社(https://www.dbs.com/jp/securities.page)

銀行も名義も毎回違う口座に振り込んだお金は戻るのか

記録を残して相談。振込先ごとに明細を整理。警察と振込先の銀行へ早く連絡。費用が心配なら法テラスも確認。事案名「DBSを名乗る偽アプリ」を右上に示す説明図。

振り込んでから日が浅く、少しでも取り戻したいと思う一方で、お金に余裕がなくなり、あきらめることも頭をよぎる。DBSエクスプローラーの件で振込を重ねた人は、そうした段階にいるかもしれません。この章では、費用の心配、最初に伝える先、相手が何人もいる場合の進め方の3つを順に考えます。

費用が心配なときは法テラスの立替えの制度もある

相談する前から、弁護士に頼むお金がない、生活が苦しいと、取り戻すことそのものをあきらめる必要はありません。国が設けた法テラス(日本司法支援センター)は、次のように案内しています。

法テラスでは、経済的にお困りの方を対象に弁護士・司法書士との無料の法律相談や費用の立替えを行っています。

▼無料の法律相談と費用の立替えを案内する法テラス

dbsexplore-無料の法律相談と費用の立替えを案内する法テラス

出典:法テラス

立替えを使うには、収入や資産が一定の基準以下であることなどの条件と審査があります。お金が戻るかどうかを考える前の段階でも、無料の相談で今できることを確かめられます。

名前を使われた正規のDBSは返金の窓口にならない

お金を受け取ったのは、振込先の口座の持ち主です。DBSは相手ではないため、DBSに連絡しても返金の手続きは始まりません。正規のDBS証券の注意書きも、被害に遭ったときの行き先をDBS自身ではなく外の窓口に向けています。

万が一被害に遭われた場合や、不審な勧誘を受けた場合は、最寄りの警察署または金融庁の「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」へご相談ください。

最初に足を運ぶ先は、最寄りの警察署です。振込の明細、LINEのやり取り、アプリの入手先として送られたリンクを見せ、DBSを名乗る相手に振り込んだことを伝えてください。

振込先の口座が止まれば、その時点で口座に残っていたお金を、振り込め詐欺救済法に沿って被害者へ戻す道が開けます。止まるのが遅れるほど口座のお金は引き出されて減っていくため、被害の届け出と振込先の銀行への連絡を急ぐことが欠かせません。

名義の違う口座が多いほど相手に求める手続きは増える

口座が止まる前に引き出されたお金は、口座の名義人に返すよう求めるほかありません。本件のように、個人名義と法人名義の口座が銀行ごとに分かれていると、名義人の数だけ、相手を突き止める作業と請求の手続きが増えます。

名義人が誰で、どこにいるのかの記録は、振込先の銀行の中にあります。弁護士法第23条の2の照会は、受任した弁護士が、所属する弁護士会を通じてその記録を銀行などに尋ねる仕組みです。

名義人が何人いても、照会から請求までをまとめて任せることができ、費用には先の法テラスの立替えを使える場合もあります。

振込のたびに相手が変わる事案ほど、一人で全員を追うのは難しくなります。手元の明細を名義ごとに整理したうえで専門家に相談し、どの口座の誰に何を求められるかを確かめてください。

【参考】
・法テラス-無料法律相談・弁護士等費用の立替
・金融庁-「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」の開設について
・e-Gov法令検索-弁護士法
・DBS証券-DBS証券株式会社(https://www.dbs.com/jp/securities.page)

LAWYER

弁護士紹介

翔躍法律事務所 代表弁護士 近藤裕之

翔躍法律事務所 代表弁護士

近藤 裕之

登録番号
60051

元裁判官。裁判官として民事事件に携わったほか、法務省大臣官房参事官として国の訟務にも従事しました。

主な経歴

  1. 仙台地方裁判所 判事補
  2. 東京地方裁判所 判事
  3. 東京地方裁判所 民事第18部 判事
  4. 法務省大臣官房参事官(訟務担当)

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