layer2quantassets.jpは詐欺?Trust Walletで開く投資サイトの実態

暗号資産の投資の利益を確かめていたサイトとして相談者が挙げたのは「trustwallet.com/ja」でした。正規のウォレットのアプリ「Trust Wallet」の公式サイトです。お金は2つの金融機関の個人名義の口座へ振り込まれ、口座が凍結されて出金できないままです。

ところが公式サイトには、残高や利益を見る画面がありません。調べると、そのアプリの中で開かせて、画面の上部に「Trust Wallet」と表示される取引サイト「layer2quantassets.jp」が見つかりました。登録の翌日までは「Bitget Wallet」を名乗っていました。

ログインせずに取得できる管理画面のプログラムには、利用者の残高を直接変える調整や、オプション取引の勝ち負けを利用者ごとに決める設定が、運営の側の機能として並んでいました。

本記事では、正規のTrust Walletの説明とこのサイトの作りを比べ、利益の画面の正体を弁護士が解説します。口座が凍結された後に取り戻せる可能性と相談先も、最後の章で案内します。

「trustwallet.com/ja」で利益を確かめ個人名義の口座へ振り込むまで

利益確認から振込まで。公式サイトに利益表示はない。振込先は個人名義の口座。アプリ内の別サイトに注意。事案名「layer2quantassets.jp」を右上に示す説明図。

この章では、相談者が利益を確かめていたサイト、お金を振り込んだ先の口座、口座が凍結されるまでを相談の内容に沿ってたどります。相談者が挙げたのは正規のTrust Walletの公式サイトで、お金は2つの金融機関にある個人名義の口座へ振り込まれていました。

相談者は、暗号資産の投資で被害にあったとして相談を寄せました。取引や利益の確認に使っていたサイトとして挙げたのは「trustwallet.com/ja」です。これは、利用者が自分で資産を管理するウォレットのアプリを提供する、正規のTrust Walletの公式サイトの日本語のページです。

お金を受け取ったのは相手方の名義の個人の口座で、口座のある金融機関は2つに分かれていました。相談者は振込を重ねており、手元に残っていた振込の明細はその一部です。投資にリスクがあることは分かっていたものの、突然口座が凍結されるとは思っていなかったと相談者は話しています。

ただ、正規のTrust Walletの公式サイトには、ログインして残高や利益を確かめる画面がありません。そこで、ウェブサイトの記録を集める公開のサービス(urlscan.io)で「Trust Wallet」を名乗る投資のページを探しました。

見つかったのが、Trust Walletのアプリの中で開かせ、画面の上部に「Trust Wallet」と出す取引サイトlayer2quantassets.jpです。相談者も、このアドレスに見覚えがあるとのことでした。

まとめると、Trust Walletの名前のもとで暗号資産の利益を確かめ、個人名義の口座へ振込を重ねた末に口座が凍結されたことが、被害につながった経緯です。次の章では、相談者が受けた「凍結」が、正規のTrust Walletにある操作なのかを確かめます。

【参考】
・Trust Wallet-Web3、NFT、DeFiに最適な暗号資産ウォレット(https://trustwallet.com/ja)
・layer2quantassets.jp(https://layer2quantassets.jp/)

相談者が受けた「凍結」は正規のTrust Walletにはない操作

「凍結」の主体を分ける。正規ウォレットは資金を凍結できない。アプリ内で外部サイトを開ける。告知元のアドレスを確認。事案名「layer2quantassets.jp」を右上に示す説明図。

この章では、正規のTrust Walletの日本語の「よくある質問」、公式ブログ、利用規約、ヘルプの4つを確かめます。どれもTrust Walletは利用者の資金を預からず、アプリの中で開く外のサイトの中身には関わらないという点で一致しています。

秘密鍵を預からないので凍結も移動もできない

正規のTrust Walletの日本語のセキュリティのページには、「Trust Walletでは私の秘密鍵が保管されますか?」という質問があり、答えの中で資金の扱いにも触れています。

(前略)
Trust Walletのサーバーがお客様の秘密鍵を保管したり、アクセスしたりすることはありません。このため、当社がお客様の代理で資金を復元、凍結、移動することはできません。
(後略)

▼凍結できないと書く正規のTrust WalletのFAQ

trustwallet-凍結できないと書く正規のTrust WalletのFAQ

出典:Trust Wallet

秘密鍵は、ウォレットの中の資産を動かすための鍵です。正規のTrust Walletはこれを持たない作りで、公式サイトのトップも「資金を保管するカストディアンは存在しません」と説明しています。

正規のTrust Walletには、利用者の資金を止める手段そのものがありません。相談の中で出てきた「凍結」は、Trust Walletが行ったものではないとみられます。

利益を見た画面はアプリの中で開いた別のサイトとみられる

Trust Walletのアプリには、外部のサイトを開くブラウザの機能があります。公式ブログは、アプリの「Discover」からの使い方をこう説明しています。

(前略)
By simply navigating to the “Discover” option, you can explore a curated list of reputable dApps or enter specific URLs to connect directly.
(後略)

選ばれたサイトの一覧から開くだけでなく、アドレスを入れれば一覧にないサイトも開けるということです。利用規約にも、アプリの中で開くサイトについて次の一文があります。

Trust Wallet does not control, endorse, or take responsibility for your engagement with or use of DApps or DEX.
(後略)

アプリそのものは正規でも、その中で開いたサイトを運営しているのはTrust Walletではありません。相談者が「trustwallet.com/ja」を挙げたのは、Trust Walletのアプリの中で取引サイトを開いていたためとみられます。

正規のヘルプが挙げる「実在しない利益を見せて出金させない」サイト

Trust Walletのヘルプセンターには、dAppを安全に使うための記事があり、注意すべき偽のサイトの例として次の2つを挙げています。

・Fake “Mining Pools” or Unreal Earnings Data: Scammers simulate profitable mining pools to lure users. These fake websites reflect unreal gains and prevent withdrawals.
(中略)
・Unrealistic Promises: Scammers may promote exaggerated returns via advanced AI trading algorithms.

▼実在しない利益と出金の妨げを挙げる正規のヘルプ

trustwallet-実在しない利益と出金の妨げを挙げる正規のヘルプ

出典:Trust Wallet

1つ目は、偽の採掘の仕組みを装うサイトについて、「偽のウェブサイトは実在しない利益を表示し、出金を妨げます」と書いたものです。2つ目は、高度なAIの取引アルゴリズムによる誇張した利回りをうたう手口です。

本件のサイトの名前は出てきませんが、利益が見えるのに引き出せないという相談者の状況と重なります。layer2quantassets.jpも、AIによる運用をうたう商品を並べています。

Trust Walletのアプリの中で開いたサイトで「凍結」や出金の条件を告げられたら、まずTrust Walletの機能ではないと考え、開いているページのアドレスを確かめてください。次の章では、layer2quantassets.jpの画面とプログラムを見ていきます。

【参考】
・Trust Wallet-セキュリティ。そしてプライバシー。何にも勝る優先事項。(https://trustwallet.com/ja/security)
・Trust Wallet-Web3、NFT、DeFiに最適な暗号資産ウォレット(https://trustwallet.com/ja)
・Trust Wallet-How to Spot Malicious dApps(https://trustwallet.com/blog/security/how-to-spot-malicious-dapps)
・Trust Wallet-Terms Of Service(https://trustwallet.com/terms-of-service)
・Trust Wallet-Navigating Safely in dApp – Avoid Deceptive Practices, Secure Your Assets(https://support.trustwallet.com/en/articles/717122-navigating-safely-in-dapp-avoid-deceptive-practices-secure-your-assets)

layer2quantassets.jpは登録の翌日まで「Bitget Wallet」を名乗っていた

表示名が替わった経緯。登録翌日の保存版を比較。現在は別の名前を表示。画像ファイルは変わらない。事案名「layer2quantassets.jp」を右上に示す説明図。

この章では、layer2quantassets.jpのログインの画面、2026年9月11日の保存版のプログラム、今のプログラムを順に比べます。アドレスは2026年9月10日に登録されたもので、その翌日の時点では、サイトは別のウォレットの名前を掲げていました。

ログインの画面は「ウォレット内で開いてください」だけ

ブラウザでlayer2quantassets.jpを開くと、ログインの画面に移ります。そこに出るのは「ウォレット内で開いてください」の見出しと、ウォレットのアプリの中のブラウザで開くよう求める案内だけです。

▼ウォレット内で開くよう求めるログインの画面

trustwallet-ウォレット内で開くよう求めるログインの画面

出典:layer2quantassets.jp

メールアドレスやパスワードの欄はなく、ログインはウォレットをつなぐことでしか行えません。プログラムを調べたところ、ウォレットの種類を見分ける処理に、MetaMaskやTokenPocket、Trust Walletなどが並んでいました。

9月11日の保存版は「Bitget Walletへようこそ」と表示

登録の翌日の2026年9月11日(日本時間)、layer2quantassets.jpのトップの画面とプログラムがInternet Archiveに保存されています。この日のプログラムを開いて「Bitget Wallet」を検索すると、128か所が見つかります。

▼128か所に「Bitget Wallet」とある保存版

trustwallet-128か所に「Bitget Wallet」とある保存版

出典:web.archive.org

日本語の画面に出す言葉として、「Bitget Walletへようこそ」「Bitget Walletにログイン」「著作権 ©2018 – 2026 Bitget Wallet」などが書かれていました。

この時点のサイトは、Trust Walletではなく、別のウォレットのBitget Walletを名乗っていたことになります。正規のBitget Walletとこのサイトの関係を示す情報は確認できませんでした。

替えたのは名前の文字だけでロゴは同じ画像

今のlayer2quantassets.jpのプログラムで同じように検索すると「Bitget」は0件です。代わりに、画面の上部に出す見出しの文字が「Trust Wallet」になっています。

▼見出しだけ「Trust Wallet」の今のプログラム

trustwallet-見出しだけ「Trust Wallet」の今のプログラム

出典:layer2quantassets.jp

一方、サイトのロゴの画像は、9月11日の保存版と今とで同じファイルでした。水色の「>」の記号で、Trust Walletの盾の形のロゴとも違います。作り直したのは名前の文字だけで、サイトの中身はそのまま使われているとみられます。

名前だけを替える作りは、このサイトに限りません。画面の行き先や入出金の記録の種類までそろった、同じプログラムとみられる名前の違うサイトが、少なくとも2つ稼働しています。

Trust Walletのアプリの中で開いた取引サイトは、画面に出る名前で正規のものかを判断できません。アプリのアドレス欄に表示されるアドレスが、正規の「trustwallet.com」かどうかを確かめてください。

【参考】
・layer2quantassets.jp(https://layer2quantassets.jp/)
・Internet Archive-layer2quantassets.jpのプログラム(2026年9月11日の保存版)(https://web.archive.org/web/20260911131717id_/https://layer2quantassets.jp/assets/index-C0l5VRfu.js)
・JPRS WHOIS(https://whois.jprs.jp/)

layer2quantassets.jpの管理画面には残高と勝ち負けを変える設定がある

運営が変えられる表示。管理用プログラムに設定がある。利用者ごとの結果も対象。実際の使用までは未確認。事案名「layer2quantassets.jp」を右上に示す説明図。

この章では、運営側が使う管理画面(admin.layer2quantassets.jp)を確かめます。見るのは、ログインの画面のタイトル、残高の調整、オプション取引の結果の設定、値動きの作り替えの4つです。

管理画面の中身を動かすプログラムは、ログインの前の段階で読み込まれ、誰でも手元に保存できました。そこに書かれた設定は、どれも利用者の画面に出る数字を運営が決められることを示しています。

管理画面のタイトルは「Trust Wallet 管理后台」

admin.layer2quantassets.jpに移ると、中国語で書かれたログインの画面が出ます。ブラウザ最上部のタブと見出しには「Trust Wallet 管理后台」(管理画面)とあり、その下に「登录后进入运营管理中心」(ログイン後に運営管理センターに入る)と書かれています。

▼タブと見出しが「Trust Wallet 管理后台」の画面

出典:admin.layer2quantassets.jp

利用者の画面と同じく、管理画面もTrust Walletの名前を掲げています。ただし、正規のTrust Walletがこの管理画面を運営していることを示す情報は確認できませんでした。以下は、ログインせずに取得できた管理画面のプログラムそのものを調べた結果です。

利用者の残高を増やしも減らしもできる「手动调账」

プログラムには「手动调账」(手動の口座調整)という機能があり、利用者を選んで通貨と金額を入れる作りです。実行の前の確認の文には、「该操作会直接变更用户余额。」(この操作は利用者の残高を直接変更します)と書かれていました。

▼利用者の残高を直接変える調整の処理

trustwallet-利用者の残高を直接変える調整の処理

出典:admin.layer2quantassets.jp

金額がマイナスのときは確認のボタンが警告の色に変わり、残高を減らす操作にも使える作りです。利用者の側のプログラムにも、入出金の記録の種類として「調整」が用意されていました。

オプション取引の勝ち負けを利用者ごとに決めておく設定

layer2quantassets.jpには、30秒から1800秒の短い時間で値段の上げ下げを当てるオプション取引があります。管理画面のプログラムには、この取引の結果を利用者ごとに設定する画面がありました。

▼必勝と必敗を選べる勝率のモードの設定

trustwallet-必勝と必敗を選べる勝率のモードの設定

出典:admin.layer2quantassets.jp

選べるモードは「默认(按真实价)」(標準・実際の値段どおり)、「必胜」(必ず勝つ)、「必败」(必ず負ける)、「概率」(確率)の4つです。標準のモードのほかに、勝ち負けをあらかじめ決めてしまうモードが並んでいます。

説明の文には、「仅作用于该用户的”期权秒合约”结算结果」(その利用者のオプション取引の決済の結果だけに効く)とあります。注文ごとに「预设结果」(あらかじめ決めた結果)を入れる処理もありました。

値動きを作り後から本物の足に戻す設定

値段そのものを動かす設定もあります。1つは利用者ごとに値段をずらすもので、確認の文は「该配置会影响该用户展示价和现货成交价。」(この設定はその利用者の表示価格と現物の約定価格に影響します)です。

もう1つは銘柄ごとにサイト全体の値動きを作るもので、「拉升」(引き上げ)と「回落」(下落)の秒数を入れると、その間の約定・決済・強制決済が作った値段で行われます。

終わった後には、「将把该币种所有未还原的行情风控记录一次性恢复成真实官方 K 线」(その銘柄のまだ戻していない値動きの操作をまとめて本物の足に戻す)処理を実行できます。

▼作った値動きを本物の足に戻す処理

trustwallet-作った値動きを本物の足に戻す処理

出典:admin.layer2quantassets.jp

ほかに、Layer2クオンツ運用プランなどの運用の注文ごとに利益を書き換える「收益干预」(収益への介入)の画面もありました。これらの設定が相談者の口座で実際に使われたかまでは確認できませんが、画面に出る残高・勝ち負け・値動き・利益は、どれも運営が決められる作りです。

layer2quantassets.jpの画面で利益が増えて見えても、その数字を根拠に追加の入金をするのは避けてください。次の章では、日本語の画面にだけ出る商品名と入金の仕組みを確かめます。

【参考】
・Trust Wallet 管理后台(https://admin.layer2quantassets.jp/)
・layer2quantassets.jp(https://layer2quantassets.jp/)

「Layer2クオンツ運用プラン」は日本語の画面だけの商品名

商品名と入金経路のずれ。商品名は言語で異なる。入金画面に銀行振込はない。個人口座への送金を止める。事案名「layer2quantassets.jp」を右上に示す説明図。

この章では、layer2quantassets.jpの商品のデータ、画面の言語の設定、入金の画面の文言、ドメインの登録情報の4つを確かめます。どれも日本の利用者に向けた作りを示す一方で、相談者が行った銀行振込の行き先や、日本にいる運営者の手がかりは見当たりません。

英語の画面では同じ商品が「AI Arbitrage Bot」

ログインしなくても読める商品のデータには、「Layer2クオンツ運用プラン」が1から5まで並んでいます。最も小さいプラン1は500USDTから預けられ、1日あたりの利回りは0.3〜0.4%です。途中で解約すると元本の30%を差し引く設定もありました。

▼日次0.4%をうたう運用プランの商品のデータ

trustwallet-日次0.4%をうたう運用プランの商品のデータ

出典:layer2quantassets.jp

データに残る作成の日付は2026年5月1日で、layer2quantassets.jpが登録された9月10日の4か月以上前にあたります。サイトの仕組みとデータは、layer2quantassets.jpより前から用意されていたとみられます。

画面の言語の設定を見ると、初期の言語は日本語です。同じ商品は、英語の画面では「AI Arbitrage Bot」、繁体字の画面では「AI套利機器人」と表示され、「Layer2クオンツ」の名前が出るのは日本語の画面だけでした。

▼英語の商品名と日本語を初期の言語にする設定

trustwallet-英語の商品名と日本語を初期の言語にする設定

出典:layer2quantassets.jp

相談者の振込はlayer2quantassets.jpの入金の仕組みの外

入金の画面の文言をプログラムで確かめると、並んでいるのは「入金アドレス」「送金のハッシュ」「支払い証明」です。暗号資産を指定のアドレスへ送り、送金の記録と完了の画面の写しを出させる作りで、銀行振込や円を扱う項目はありません。

▼入金アドレスと支払い証明を並べる入金の文言

trustwallet-入金アドレスと支払い証明を並べる入金の文言

出典:layer2quantassets.jp

相談者のお金は、2つの金融機関の個人名義の口座へ振り込まれています。この振込は、サイトの入金の画面を通った支払いではなく、サイトの外で示された口座への送金だったことになります。

兵庫県警察が「被害に遭わないために」として挙げる項目のうち、2つが本件に当てはまります。

(前略)
振込先の口座名義が個人名や毎回異なる場合は詐欺の可能性があります。
アプリやサイト上で資産価値が増えていても、詐欺の可能性があります。
(後略)

▼振込先の名義と画面の資産に触れる兵庫県警の注意

trustwallet-振込先の名義と画面の資産に触れる兵庫県警の注意

出典:兵庫県警察

これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、個人名義の口座への振込と、画面の上で増えていく資産の2つが、本件の相談の内容と重なります。

.jpのアドレスでも公開されている連絡先はシンガポール

layer2quantassets.jpは、日本のドメインの「.jp」です。JPRSは、.jpについて「日本国内に住所をもつ個人・団体・組織であれば誰でもいくつでも登録できます。」と説明しています。

▼.JPの登録の対象を示すJPRSの説明

trustwallet-.JPの登録の対象を示すJPRSの説明

出典:JPRS

ところが、JPRS WHOISで公開されている連絡先は、住所が「singapore」、電話番号はシンガポールの国番号の「+65」で始まります。登録者の欄には、ドメインの登録代行の会社とみられる英語の社名が入っていました。

▼連絡先の住所がシンガポールのWHOISの結果

trustwallet-連絡先の住所がシンガポールのWHOISの結果

出典:JPRS

登録者の日本の住所は公開されていないため、.jpであることから日本の会社が運営していると考えることはできません。layer2quantassets.jpの画面と利用規約にも、運営する会社の名前や所在地を示す記載はありませんでした。

入金の画面にない方法、たとえば個人名義の口座への振込を求められた段階で送金は止めてください。次の章では、ここまでの材料をもとに、Trust Walletのアプリに出る数字を誰が決めているかで見分ける方法を整理します。

【参考】
・layer2quantassets.jp(https://layer2quantassets.jp/)
・兵庫県警察-SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺被害に注意!
・JPRS-種類と対象(https://jprs.jp/about/jp-dom/spec/)
・JPRS WHOIS(https://whois.jprs.jp/)

Trust Walletのアプリに出る数字を誰が決めているかで見分ける

数字の決定者を確かめる。名前よりページのアドレス。表示値と操作の主体を確認。疑わしければ振込を止める。事案名「layer2quantassets.jp」を右上に示す説明図。

Trust Walletのアプリの中では、正規のウォレットの画面と、中で開いた別のサイトの画面が並びます。警察庁は、勧められた投資のアプリについて次のように呼びかけています。

(前略)
必ず、勧められた暗号資産や投資アプリの名前をインターネットで検索しましょう。
詐欺に使用されている架空の暗号資産であることや、偽物の投資アプリであることが口コミ等で分かる場合もあります。

ただ、本件で勧めた側が名乗る名前は正規のTrust Walletなので、名前で検索すると本物の公式サイトが出てきます。そこで名前ではなく、画面の数字や操作を誰が決めているかを次の5つで切り分けます。

  • 【ページのアドレス】アプリのアドレス欄を見ます。正規のTrust Walletのアドレスはtrustwallet.comで、layer2quantassets.jpのような別のアドレスなら、そのページを作っているのは別の運営者です。
  • 【残高】サイトの中の残高は、運営の手元の記録から出ている値です。layer2quantassets.jpの管理画面には、その値を書き換える機能がありました。
  • 【値動きと利益】取引の勝ち負け、銘柄の値動き、運用の利益も同じ管理画面で運営が設定できる作りでした。
  • 【凍結】正規のTrust Walletは、利用者の資金を凍結できません。「凍結」を告げられたら、それを告げているのがアプリの中のどのサイトかを確かめます。
  • 【手数料と振込先】正規のヘルプは、ネットワークの手数料はブロックチェーンに直接払うもので、人に払うものではないとしています。出金のための支払いを個人名義の口座へ求められたら、Trust Walletの手数料ではありません。

どこか1つでも運営の決めた数字だと分かった時点で、振込を重ねるのはやめてください。振込の明細とサイトの画面の写しは、後で相談するときの材料になるので消さずに残します。次の章では、layer2quantassets.jpの口コミを探した結果を見ます。

【参考】
・警察庁-SNS型投資詐欺(SOS47特殊詐欺対策ページ)
・Trust Wallet-What are network fees?(https://support.trustwallet.com/en/articles/717109-what-are-network-fees)

layer2quantassets.jpの口コミがないのは被害者が「トラストウォレット」と呼ぶから

呼び名とアドレスを分ける。商品名の書き込みは未発見。相談ではアプリ名が使われる。同じアドレスで検索する。事案名「layer2quantassets.jp」を右上に示す説明図。

layer2quantassets.jpとLayer2クオンツ運用プランの名前で、Yahoo!検索、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる、Xを探しましたが、書き込みは見つかりませんでした。代わりに見つかったのは、アプリの中で開いた取引サイトを「トラストウォレット」と呼ぶ相談です。

「トラストウォレットに投資」と書く相談が知恵袋に続いている

Yahoo!知恵袋には、2026年3月7日に、トラストウォレットに投資した友人が引き出そうとすると、投資額の半分を3日以内に振り込まないと凍結すると告げられたという質問があります。2025年9月15日に投稿された質問では、出金の前の支払いと凍結の解除が話題になっています。

trust walletで 1000万円(68000USD)
出金しようとすると ノードが高額払い戻しのためリスク検証資金支払の支払いを求めています 総資産の10%を4日以内に支払わなければ資産凍結解除できない 一日遅れるごと3%ペナルティがかかるが全額払えば資金凍結は解除されると言ってます
これは詐欺ですか? trustのアプリは正式で 再度アップデートしても同じサイトに行きます。
(後略)

▼アプリは正式で同じサイトに行くと書く知恵袋の質問

trustwallet-アプリは正式で同じサイトに行くと書く知恵袋の質問

出典:Yahoo!知恵袋

どちらも、取引の相手を正規のTrust Walletの名前で呼んでいます。アプリは正式でも、中で開くサイトは別のもので、正規のTrust Walletの説明とも合います。質問に出てくるのは「trust wallet」「トラストウォレット」の名前だけで、本件のアドレスは書かれていません。

国内の個人名義の口座へ振り込ませる型は2023年にもあった

2023年9月23日の質問は、Trust Walletのアプリの中のブラウザで別の取引サイトを開き、日本の口座へ入金していたという内容です。

CloudTradeについて質問します
アプリのトラストウォレットから
ブラウザを使ってCloudTradeを使い取り引きをしました
入金は日本の各都市の名前の口座に入金しUSDTに両替してつかえましたが、やっていると一回だけは出金ができるのですが、2回目から何かと検証金で5000ドル入金してくださいと
(後略)

▼トラストウォレットから開いたサイトに入金した相談

trustwallet-トラストウォレットから開いたサイトに入金した相談

出典:Yahoo!知恵袋

サイトの名前は本件と違いますが、アプリの中で開いたサイトで利益を見せ、国内の口座へ振り込ませる流れは本件の相談と同じです。この型は、少なくとも2023年には日本の利用者に向けて使われていたことになります。

Layer2クオンツの名前の書き込みは見つからない

被害にあった人は、取引の相手を「トラストウォレット」と呼んで相談しています。そのため、アドレスやサイトの中の商品名で書き込みが積み重なりにくいとみられます。layer2quantassets.jpは2026年9月に登録されたばかりで、先に見たとおり名前を替えて同じ仕組みを使う作りでもあります。

書き込みが1件もないことは、layer2quantassets.jpを信用してよい理由にはなりません。Trust Walletのアプリの中で勧められたサイトを調べるときは、名前ではなくアドレスで検索し、同じアドレスの相談がないかを確かめてください。

【参考】
・Yahoo!知恵袋-2026年3月7日の質問(友人が引き出そうとすると凍結すると告げられたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11326045621)
・Yahoo!知恵袋-2025年9月15日の質問(出金の前にリスク検証資金を求められたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13319977638)
・Yahoo!知恵袋-2023年9月23日の質問(アプリのトラストウォレットから開いたサイトで検証金を求められたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12286446467)

Trust Walletでは戻せない銀行振込のお金を取り戻せる可能性と相談先

銀行振込の記録から相談へ。振込先の金融機関をそれぞれ確認。被害額は実際の振込記録で示す。回復額は保証されない。事案名「layer2quantassets.jp」を右上に示す説明図。

振込を重ねたあとに「凍結」で出金できなくなった段階では、Trust Walletに頼めば戻るのか、銀行振込のお金は誰に知らせれば止まるのか、被害の額は何で示すのか、口座に残っていない分は誰に求めるのかという4つの問いが出てきます。ここでは、その順に答えます。

Trust Walletに頼んでも凍結は解けず振込も戻らない

正規のTrust Walletのヘルプは、詐欺などで失った資金について、Trust Walletにできることとできないことを次のように書いています。

・While Trust Wallet cannot reverse transactions or refund lost funds, our team can, in some cases, help trace where stolen funds were sent on the blockchain (for example, identifying the destination address or exchange).
(後略)

▼取引の取り消しも返金もできないとする正規のヘルプ

trustwallet-取引の取り消しも返金もできないとする正規のヘルプ

出典:Trust Wallet

取り消しも返金もできず、手伝えるのはブロックチェーンの上で送金の行き先をたどるところまで、という内容です。一方、本件で動いたのは暗号資産ではなく、2つの金融機関の口座への振込でした。手続きの相手になるのは、Trust Walletではなく警察と金融機関です。

銀行振込なら警察と振込先の金融機関が口座を止められる

まず、警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署に相談し、振り込んだ2つの金融機関それぞれに、振込先の口座を止めるよう求めます。口座が止まれば、残っているお金はそれ以上動かせなくなります。手元の振込の明細は、そのとき伝える材料になります。

口座に残ったお金を被害者に戻す仕組みを定めたのが振り込め詐欺救済法です。手続きが今どこまで進んでいるかを知る方法として、金融庁のQ&Aには次の答えが載っています。

消滅手続や支払手続の進行状況については、振込先の金融機関にお問い合わせください。
また、振込先の口座について公告が行われていれば、預金保険機構のウェブサイトにおいて、振込先の預金口座等の残高や、被害回復分配金の支払申請期間等をご覧頂くことができます。

振込先が2つの金融機関に分かれていれば、問い合わせる先も、公告を確かめる口座も2つになります。一方だけを確かめて終わらせず、申請の期間を逃さないよう、口座ごとに確かめてください。

被害の額はサイトの残高ではなく振込の記録で示す

layer2quantassets.jpの画面に出ていた残高や利益は、管理画面で運営が書き換えられる数字でした。相談するときに被害の額として示すのは、画面の数字ではなく、実際に振り込んだ日付と金額の記録です。

手元に残っている明細が一部だけなら、振込に使った金融機関の取引の記録で、振込の日付と金額、振込先の口座を確かめておきます。サイトの画面の写しは、どの名目で振り込んだかを示す材料として、あわせて残しておきます。

振込先の名義人の住所は本人の問い合わせでは分からない

同じQ&Aには、分配で戻る額に限りがあることも書かれています。

被害にあったお金が全額支払われない場合や、支払が行われない場合もあります。
(後略)

口座から引き出されていた分は、相手に直接返すよう求めることになります。ところが、layer2quantassets.jpは運営会社の名前も所在地も示しておらず、.jpの登録者の欄も代行の会社でした。名前と口座が分かっている相手は、振込先の口座の名義人だけです。

名義人の住所などは、本人が金融機関に尋ねても教えてもらうのは難しいとみられます。弁護士法第23条の2は、弁護士が受けた事件について、所属する弁護士会を通じて団体などに必要な事項の報告を求められる仕組みを定めており、こうした手続きで請求の相手を確かめる道があります。

どの口座の名義人に何を求められるかは、事案によって変わります。振込の記録とサイトの画面の写しを手元に置いたまま専門家に相談して、今の段階で使える手続きを確かめてください。

【参考】
・Trust Wallet-Can Trust Wallet recover or reverse funds lost to scams or unauthorized transactions?(https://support.trustwallet.com/en/articles/793939-can-trust-wallet-recover-or-reverse-funds-lost-to-scams-or-unauthorized-transactions)
・政府広報オンライン-警察に対する相談は警察相談専用電話 「#9110」番へ
・金融庁-振り込め詐欺救済法に関するQ&A
・預金保険機構-振り込め詐欺救済法に基づく公告
・e-Gov法令検索-弁護士法

LAWYER

弁護士紹介

翔躍法律事務所 代表弁護士 近藤裕之

翔躍法律事務所 代表弁護士

近藤 裕之

登録番号
60051

元裁判官。裁判官として民事事件に携わったほか、法務省大臣官房参事官として国の訟務にも従事しました。

主な経歴

  1. 仙台地方裁判所 判事補
  2. 東京地方裁判所 判事
  3. 東京地方裁判所 民事第18部 判事
  4. 法務省大臣官房参事官(訟務担当)

被害に気づいた今からでも、振込先口座や送金記録、相手とのやり取りを手がかりに、返金に向けた対応を検討できる場合があります。まずは、現在の状況をお聞かせください。

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