投資詐欺

PSDLR(pipersandler.market)は詐欺?LINEグループからの誘導とIPO当選で出金できない実態・口コミ・評判と返金対策

投資の広告をきっかけに閉じたグループへ招かれ、そこで勧められた取引サイトへ資金を送ってしまう。こうした相談が後を絶ちません。令和8年上半期のSNS型投資詐欺は認知件数5,893件、被害額797.9億円と、前年の同じ時期から大きく増えています。

本記事で取り上げる「PSDLR(pipersandler.market)」は、株式取引のサイトとして案内されたものです。IPO(新規公開株)に当選したと告げられたものの、当選した株数が多くて支払いきれず、当選の取り消しも元本の出金も断られたうえ、融資の保証金という名目でさらに送金を求められる事態に至っています。

この記事では、ドメインの登録記録や証明書の履歴、サイトが配信しているプログラムを調べた結果と、運営側の管理画面や利用規約から確認できたこと、送金の前に確かめておきたい点について、弁護士の視点から詳しく解説します。

PSDLRに関するトラブルの概要

当選の後に出金を拒否:取り消しに応じない、保証金を追加で要求

PSDLRをめぐるトラブルでは、SNSで投資に関する広告を見かけたあと、LINEのグループへ案内され、そこで指示を受けながら投資を進める流れが確認されています。

その後、情報漏洩への対策という説明を受けて連絡手段をZoomへ移し、案内された取引サイト「PSDLR(pipersandler.market)」に登録しています。

今回のトラブルでは、IPO(新規公開株)に当選したと告げられたものの、当選した株数が多く支払いきれない状態となり、当選の取り消しも元本の出金も応じてもらえないまま追加の送金を求められる状況に至っています。

SNSの広告からLINEグループへ誘導される投資勧誘のトラブル

この入口と流れは、警察庁が公表している統計とも重なります。同庁は特殊詐欺の認知・検挙状況を半期ごとにまとめており、その中でSNS型投資詐欺の被害状況も示しています。

▼警察庁が公表しているSNS型投資詐欺の被害状況

PSDLR-警察庁が公表しているSNS型投資詐欺の被害状況

出典:警察庁

令和8年(2026年)上半期の集計では、認知件数が5,893件、被害額は797.9億円に上りました。いずれも前年の同じ時期を大きく上回り、件数で3,020件、金額で444.9億円の増加です。

一度のトラブルで動く金額が大きいことも、この手口の特徴です。既遂1件当たりの被害額は1,362.5万円に達します。

当初接触手段では、バナー等広告が最も多いとされ、被害額でみると前年同期比で252.5%増加しています。当初接触ツールでは、InstagramとX(Twitter)が増加傾向にあると示されています。

名称が使われた事業者の実在状況

案内されたサイトのドメインは「pipersandler.market」です。この「Piper Sandler」という名称で実在するのは、米国の投資銀行であるPiper Sandler Companiesです。

名称Piper Sandler Companies
創業1895年
本店所在地米国ミネソタ州ミネアポリス
主な事業投資銀行業務、公共債、リサーチ、債券、オルタナティブ運用、株式
米国での登録PIPER SANDLER & CO./CRD番号665/SEC番号801-108049
英国での登録PIPER SANDLER LTD./FCA参照番号191657
公式ドメインpipersandler.com
公式ドメインの登録日2019年6月25日
日本での金融商品取引業の登録確認できない

米国での登録状況は、金融取引業規制機構(FINRA)が運営するブローカーチェックで公開されています。

▼FINRAのブローカーチェックに掲載されているPiper Sandler & Co.の登録情報

PSDLR-FINRAのブローカーチェックに掲載されているPiper Sandler & Co.の登録情報

出典:FINRA(金融取引業規制機構)

ここでは、CRD番号665、SEC番号801-108049として登録され、本店がミネソタ州ミネアポリスにあることが確認できます。旧商号として「PIPER JAFFRAY & CO.」なども併記されています。

一方、今回案内されたサイトのドメインは「pipersandler.market」で、正規のドメインである「pipersandler.com」とは異なります。両者は別のドメインであり、登録した事業者も管理しているネットワークも別系統でした。

なお、案内されたサイトの画面上に「Piper Sandler」という表記は確認できませんでした。サイトが名乗っているのは「PSDLR」という名称で、掲載されているロゴも正規のPiper Sandler社のものとは異なります。

正規のPiper Sandler社が公式サイトで注意喚起している

正規のPiper Sandler社は、公式サイトのトップページに自社の名称が無断で使われていることへの注意喚起を掲載しています。

▼Piper Sandler社の公式サイトに掲載されている注意喚起

PSDLR-Piper Sandler社の公式サイトに掲載されている注意喚起

出典:Piper Sandler Companies公式サイト

「Important Message – Fraud Alert」と題されたこの記載では、一部の人物がPiper Sandlerの従業員を名乗り、詐欺の疑いのある投資ポータルに関連して無断でPiper Sandlerの名称を使用していることを把握したと説明されています。

あわせて、それらのポータルや手口は正規のものではないこと、同社はWhatsAppをはじめとするチャットアプリで営業を行うことはないことが明記されています。米国証券取引委員会(SEC)と連邦捜査局(FBI)の注意喚起へのリンクも並べられています。

この記載が本記事のトラブルと同一の案件を指すかどうかまでは確認できません。ただし、名称をかたられた事業者自身が注意を呼びかけている点は見落とせません。

公的機関が同種の手口に注意喚起している

SNSを入口とした投資勧誘については、金融庁も繰り返し注意を呼びかけています。

▼金融庁が公表している証券口座を装ったアプリの事例

PSDLR-金融庁が公表している証券口座を装ったアプリの事例

出典:金融庁

ここでは「証券口座を装ったスマホアプリが使われている事例」として、「既存の金商業者に似せた名称がアプリに使われていることがある」「入金に個人名義の口座を指定してくる」といった特徴が挙げられています。

さらに、「アプリ上で、振り込んだ額と同額が入金されたかのように残高表示される」「最初のうちは出金できるが、まとまった金額を出金しようとすると理由をつけて断られ、その後出金できなくなる」という流れも示されています。

国民生活センターも2026年9月1日に、SNSで著名人が勧める投資をめぐるトラブルについて注意喚起を公表し、「投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺です。振り込まないでください」と明記しています。

これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、SNSやメッセージアプリを通じて投資を勧められた場合は、送金の前に信頼できる第三者へ相談することが重要です。

【参考】

・PSDLR(https://pipersandler.market/)

・Piper Sandler Companies公式サイト(https://www.pipersandler.com/)

FINRA-ブローカーチェック(PIPER SANDLER & CO.)

警察庁-令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)

金融庁-それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!

国民生活センター-SNSで著名人が勧める“もうかる方法” それって本当!?金融商品・サービスのトラブルにご注意!

PSDLRへ誘導され被害につながるまでの経緯

広告から閉じた勧誘へ:書籍と勉強会で誘導、LINEからZoomへ、招待コードで登録

今回のトラブルは、広告を見てから送金に至るまでに複数の段階を踏んでいます。各段階で別の理由が示され、少しずつ深く関わっていく構造でした。SNSの広告を見かけてから追加の送金を求められるまでを、順を追って整理します。

SNSで投資の広告を見かけLINEグループに参加する

最初の接点は、SNSのタイムラインに流れてきた投資の広告でした。そこから連絡を取ったところ、投資の情報を共有しているというLINEのグループへ案内されています。

金融庁の注意喚起でも、「投資関連の投稿をフォローするとDMが届き、最終的にクローズドチャットへ誘導される」という流れが示されています。公開された場から、参加者が限られた場へ移す点が共通しています。

投資の勉強会や書籍のプレゼントで参加を促される

グループ内では、投資の勉強会への参加や、投資関連の書籍のプレゼントが案内されています。これをきっかけに、投資への参加を促される形になっていました。

金融庁は同じ注意喚起の中で、「情報交換や勉強会などから始まり、その後、虚偽の成功談をもとに投資話を持ち掛ける」事例を挙げています。いきなり投資を勧めるのではなく、学びや特典を先に置く進め方です。

無償で受け取ったものがあると、相手への警戒は下がりやすくなります。断りにくさが生まれ、次に示された話も受け入れやすくなるためです。

負担がないのは入口だけで、その先には送金が控えています。今回も、書籍と勉強会の案内に続いて投資資金の振込を求められる流れになりました。

無料という言葉が出てきた段階で、その後にどれだけの支払いが想定されているのかを確かめ、金額が示されないまま話が進むようであれば距離を置くことが必要です。

情報漏洩への対策としてLINEからZoomへ移される

やり取りが進んだ段階で、情報漏洩への対策という説明を受け、連絡手段をLINEからZoomへ移すよう求められています。

国民生活センターにも、「SNSの広告をきっかけにWEB会議システムで勧誘されてサポート契約をしたが、解約したい。」という相談が寄せられています。ウェブ会議に場を移す進め方は、投資以外の勧誘でも確認されているものです。

ウェブ会議は口頭のやり取りが中心です。メッセージが手元に残らないため、後から内容を確かめ直すことが難しくなります。

PSDLRに登録して取引を始める

案内されたのは「PSDLR」という名称の取引サイトです。URLは「https://pipersandler.market/register」で、登録画面へ直接つながるものでした。

▼PSDLRのトップページ

PSDLR-PSDLRのトップページ

出典:PSDLR

トップページには「PSDLR」の名称とロゴが掲げられ、マーケット情報や株式取引アプリ、金融ニュースを提供すると日本語で説明されています。

このサイトの登録画面では、招待コードの入力が必須になっています。コードを持っていなければ登録できないため、検索などで偶然たどり着いた人が中を確認することはできません。

指定された口座へ繰り返し振り込む

登録後は、指示に従って投資資金を振り込む流れになっています。指定されたのは、サイトが掲げている運営者の名称とは結びつかない個人名義や法人名義の口座でした。

振込は一度ではなく、複数回に分けて行われています。その都度異なる口座が案内されており、送金先が固定されていなかった点が特徴です。

国民生活センターが個人名義の口座への振込に強い注意を促していることは、前章で触れたとおりです。振込先の名義と、取引しているはずの事業者の名称が一致しているかは送金の前に必ず突き合わせておきたい点です。

IPOに当選したと告げられ出金できなくなる

取引を続けるなかで、IPO(新規公開株)に当選したという案内を受けています。ところが当選したとされる株数が多く、支払いに必要な資金が用意できない状態になりました。

そこで当選の取り消しを求めたものの応じてもらえず、それまでに預けた元本の出金も認められていません。

続いて示されたのは、機関から融資を受けるための保証金という名目での追加の振込でした。当選分の支払いに充てる資金を借りるために、さらに送金が必要だという説明です。

出金を求めた側が、逆にさらなる送金を迫られる形です。条件を満たせば引き出せるという説明があっても、応じた資金が戻る保証はありません。支払いに応じる前に手を止め、それまでのやり取りと振込の記録をそろえたうえで、弁護士などの専門家へ状況を伝えて判断を仰いでください。

【参考】

・PSDLR(https://pipersandler.market/)

金融庁-それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!

国民生活センター-情報商材

PSDLRの関連サイトの情報を調査した結果

公式ドメインとの違いを照合:新しいドメイン、管理用に別ドメイン、日本での登録は確認できず

ここでは、公開されている記録からPSDLRの足取りをたどります。確認に使ったのは、ドメインの登録記録(RDAP)、証明書の発行履歴、サイトのプログラムに書かれた設定、金融庁などが公表している業者の一覧です。

案内されたサイトのドメイン情報

まず、「pipersandler.market」の登録記録です。ドメインの登録日や有効期限は、レジストリが提供するRDAPというしくみで公開されています。

ドメインpipersandler.market
登録日2026年5月14日
有効期限2027年5月14日
登録情報の最終更新2026年8月11日
レジストラNameCheap, Inc.
ネームサーバーdns1.registrar-servers.com/dns2.registrar-servers.com
証明書の初回発行日2026年5月14日
配信Amazon CloudFront経由

▼pipersandler.marketのドメイン登録記録

PSDLR-pipersandler.marketのドメイン登録記録

出典:Identity Digital(RDAP)

「”eventAction”: “registration”」の行に、登録日として「2026-05-14」が記録されています。

相談者が送金を始めたのは、このドメインが登録されてから約3か月後のことでした。有効期限は2027年5月14日で、登録から1年しか設定されていません。

前章で触れた正規のPiper Sandler社のドメイン「pipersandler.com」は、2019年6月25日に登録され、ネームサーバーもレジストラも別のものが使われています。名称が似ていても、登録の記録に共通点はありません。

証明書の記録から見たサイトの公開時期

サイトに使われるSSL証明書の発行履歴は、証明書透明性ログという公開された記録に残ります。これを見ると、そのドメインでいつからサイトが動いていたかをたどれます。

▼pipersandler.marketに発行された証明書の一覧

PSDLR-pipersandler.marketに発行された証明書の一覧

出典:crt.sh(証明書透明性ログ)

記録されている証明書は10件で、最も古い発行日は2026年5月14日です。ドメインの登録日と同じ日で、取得してすぐにサイトを立ち上げていることが分かります。

注目したいのは、2026年6月15日に発行された証明書から「jp.pipersandler.market」という日本向けとみられる名前が加わっている点です。日本語での運用が始まったのは6月中旬以降とみられます。

サイトの設定に書かれているもう1つのドメイン

「pipersandler.market」のプログラムを確認したところ、このサイトとは別のドメインが管理用の画面として設定に記録されていることが分かりました。

該当するのは「pattonyd.com」です。取引アプリの設定には「VITE_ADMIN_DASHBOARD_URL:”https://pattonyd.com”」、つまり管理ダッシュボードのURLとしてこのドメインが書かれています。

ページのソースに書かれた通信先の制限(コンテンツセキュリティポリシー)にも、接続を許可する相手として「pattonyd.com」が並びます。利用者向けのサイトとこの別ドメインは、同じ運営のもとでつながっているとみられます。

このドメインの登録記録も公開されています。

▼pattonyd.comのドメイン登録記録

PSDLR-pattonyd.comのドメイン登録記録

出典:Verisign(RDAP)

登録日は 2026年2月9日で、「pipersandler.market」より3か月ほど早く取得されています。2つのドメインを並べると、次のようになります。

pipersandler.marketpattonyd.com
用途利用者向けのサイトと取引アプリ設定上は管理ダッシュボード
登録日2026年5月14日2026年2月9日
有効期限2027年5月14日2027年2月9日
レジストラNameCheap, Inc.NameCheap, Inc.
ネームサーバーdns1/dns2.registrar-servers.comdns1/dns2.registrar-servers.com

レジストラもネームサーバーも一致し、どちらも有効期限は1年です。先に管理側のドメインが用意され、後から利用者向けのドメインが加えられた形になっています。

日本での登録状況

日本に住む人へ投資を勧め、その資金を預かるには金融商品取引業の登録が欠かせません。登録の有無を確かめるため、金融庁と関東財務局が公開している一覧を当たりました。

金融庁「金融商品取引業者登録一覧」(全業者数1,951)該当なし
金融庁「金融事業者一括検索」該当なし
金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」該当なし
関東財務局「無登録で金融商品取引業等を行っている者に対する警告」(2026年8月27日現在)該当なし

金融庁が公開している金融事業者の検索では、「Piper」で検索しても結果は表示されませんでした。

▼金融庁の金融事業者一括検索の結果

PSDLR-金融庁の金融事業者一括検索の結果

出典:金融庁

返ってきたのは「該当するデータはありませんでした。」の一文です。画面には「このサービスで検索されない業者は、金融庁、各財務局がデータ更新処理後に新規登録を行ったか、無登録業者である可能性があります。」という但し書きも併記されています。

警告を受けた無登録業者の一覧を調べても、結果は同じでした。

▼金融庁の無登録業者一覧をページ内検索した結果

PSDLR-金融庁の無登録業者一覧をページ内検索した結果

出典:金融庁

ページ内を「Piper」で検索した結果は0件です。同じく、関東財務局が公表している警告業者の一覧にも該当はありませんでした。

ここで注意したいのは、掲載がないことが安全の根拠にはならないという点です。この一覧に載るのは警告が行われた業者に限られるため、掲載がないことは「まだ把握されていない」という意味にもなります。

つまり「pipersandler.market」は、登録業者としても、警告を受けた無登録業者としても、日本の公的な記録のどこにも現れていない状態です。資金を預けた場合に、どの当局へ相談できるのかもはっきりしません。

【参考】

・PSDLR(https://pipersandler.market/)

Identity Digital-pipersandler.marketの登録記録(RDAP)

Verisign-pattonyd.comの登録記録(RDAP)

crt.sh-pipersandler.marketの証明書発行履歴

金融庁-免許・許可・登録等を受けている業者一覧

金融庁-金融事業者一括検索

金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)

関東財務局-無登録で金融商品取引業等を行っている者に対する警告

PSDLRに関する不審点

運営側が当選株数を変更:当選数量を調整、未返済なら出金制限、運営者の記載なし

ここからは、PSDLRを調べる過程で確認できた不審な点を取り上げます。

利用者向けの画面は、入金・出金・IPO・保有状況のいずれもログインしなければ開けません。そこで、サイトが配信しているプログラムそのものを取得して内容を確認しました。以下で引用する文言は、そこに書かれていたものです。

なお、調査にあたって登録・ログイン・入金・チャットの送信は一切行っていません。

運営側の管理画面が公開状態で表示がすべて中国語

前章で触れたとおり、取引アプリの設定には管理ダッシュボードとして「pattonyd.com」が記録されています。このURLを開くと、ログイン画面が表示されます。

▼設定に管理ダッシュボードとして記録されているドメインを開いた画面

PSDLR-設定に管理ダッシュボードとして記録されているドメインを開いた画面

出典:pattonyd.com

画面に掲げられているのは「后台管理系统」、日本語にすると「バックエンド管理システム」です。入力欄は「请输入手机号或账号(携帯番号またはアカウントを入力してください)」「请输入密码(パスワードを入力してください)」で、日本語も英語も一切使われていません。

同じドメイン配下のAPIに接続すると、やはり中国語の応答が返ってきます。

▼同じドメイン配下のAPIが返す応答

PSDLR-同じドメイン配下のAPIが返す応答

出典:api.pattonyd.com

返ってくるメッセージは「后端 API 已启动。(バックエンドAPIが起動しました)」です。日本語で提供されているサービスの裏側が、中国語で運用されていることがうかがえます。

IPOの当選株数を運営側が管理画面から決められる

管理画面のプログラムには画面ごとの表示文言が含まれ、そこに運営側が利用者に対して何をできるのかが並んでいました。

原文(中国語)日本語訳
充值扣款入金・引き落とし
客户提现顧客の出金
客户管理顧客管理
股票配售株式の配分
新股申购新規公開株の申込
股票卖出株式売却の案件管理
贷款管理ローン管理(申請・返済・延滞)
涨跌停板値幅制限の管理
市场配置市場の設定(取引日とカレンダー)
交易与客户端设置取引と利用者向けアプリの設定

このうち「股票配售(株式の配分)」の画面には、次の説明が書かれています。

集中处理大宗交易配售、IPO中签、退款和未中签标记。 (大口取引の配分、IPOの当選、返金、落選のマーク付けを一元的に処理します)

さらに、操作を確定する際の確認メッセージとして、次のような文言が用意されていました。

可修改中签数量,最多 {n} 股。 (当選数量を変更できます。最大{n}株)
确认将订单 {orderNo} 标记为未中签(分配 0 股)? (注文を落選(0株配分)としてマークしますか)
最终配售最多 {H} 股(中签上限)。余额可覆盖 {x} 股,超出将进入待缴清。 (最終配分は最大{H}株。残高でカバーできるのは{x}株で、超過分は未払いに回されます

利用者向けのアプリ側にも、「管理画面で公開されたIPO案件」という説明と、「未払い金額はIPO現地通貨の利用可能残高からのみ差し引かれ、残高不足の場合は支払いできません。」という文言が確認できました。

つまり、誰がいくつ当選するかも、落選にするかも、運営側が管理画面で決められる構造です。残高を超える株数を割り当てれば、利用者の側には支払えない未払いが残ります。相談者が置かれた状況は、この仕組みで作り出せるものと一致します。

未返済のローンがあると出金できないと実装されている

出金の画面にあたるプログラムには、出金を止めるための文言が用意されていました。

未返済ローン残高: {debt}。返済が完了するまで出金できません。 出金申請前に未返済ローン {debt} を返済してください。

ローンについては、「ローン申請は管理者の承認が必要です。」「現在のローンが有効な間は新しいローンを申請できません」「未返済残高を一括返済します(部分返済不可)」といった文言が並びます。

管理画面側の「贷款管理(ローン管理)」も、申請・返済・延滞を扱う機能として用意されています。借入を承認するのも、返済が済んだと判断するのも運営側です。

相談者は、IPOの支払いに充てる資金として機関から融資を受けるための保証金を求められています。ここで見たとおり、借入と出金制限を結びつける仕組みはあらかじめアプリに組み込まれていました

出金を申し出た後に借入を勧められた場合は、そこで応じずに手を止めてください。借入に応じても、出金の条件は運営側の判断で変えられます。

利用規約が日本に存在しない機関を根拠に掲げている

PSDLRの利用規約は、ログインしなくても読めます。登録画面から開ける「ユーザー規約」がそれにあたります。

▼PSDLRの利用規約の第1条

PSDLR-PSDLRの利用規約の第1条

出典:PSDLR

第1条は次のように書かれています。

本ユーザー規約は、日本資本市場の関連法令および資本市場委員会が定める投資サービス契約要件に基づき作成されています。

ここで挙げられている「資本市場委員会」は、日本の金融規制当局の名称ではありません。日本で金融商品取引業を監督しているのは金融庁です。この名称は規約の中で繰り返し使われ、末尾にも「資本市場委員会の最新基準に基づいて作成されています」と記されています。

あわせて「日本資本市場法」「日本の資本市場法規」という表現も出てきます。日本にこの名称の法律はなく、該当するのは金融商品取引法です。根拠に掲げられた法令名も機関名も、日本には存在しないものでした。

運営者の名称も所在地も連絡先も書かれていない

条文の主語として使われているのは「当機関」「金融機関」「証券会社」「仲介機関」といった一般名詞ばかりで、具体的な事業者名が一度も出てきません。

▼PSDLRの利用規約の末尾

PSDLR-PSDLRの利用規約の末尾

出典:PSDLR

末尾まで読み進めても、運営者の商号・所在地・連絡先・準拠法・管轄裁判所はどこにも記載されていません。トラブルが起きたときに、誰を相手にどの国の法律で解決を求めるのかが分からない状態です。

条文の中身も、口座開設を断る事由と本人確認の手続きに終始しています。入出金・手数料・ローン・IPO・出金の制限といった、利用者が実際に直面する事柄についての条項は1つもありません。

前章で見たとおり、この事業者は日本の登録一覧にも警告の一覧にも現れていません。規約に事業者名がない以上、登録の有無を調べようにも金融庁の一覧と突き合わせる名前が手元にないということです。

利用規約を開いたら、条文の中身より先に運営者の商号と所在地、準拠法と管轄裁判所が書かれているかを確かめてください。この4つが欠けたまま資金を預けると、後から相手を特定することが難しくなります。

日本以外の国に向けて作られた実装が残っている

「/app」配下の画面はほとんどがログイン必須ですが、「AI金融」のページだけはログインなしで開けます。このページには、投資の助言者として1人の人物が紹介されていました。

▼ログインせずに開けるAI金融ページの紹介文

PSDLR-ログインせずに開けるAI金融ページの紹介文

出典:PSDLR

掲げられているのは「Prof. Dr. Serkan Arslan」という名前で、「Garanti BBVAのマクロ金融主席アドバイザーであり、デジタル投資戦略委員会のシニアアドバイザーです。」と説明されています。ページ内では、IMFでの経験やSabancı大学でのラボ創設も実績として挙げられています。

Garanti BBVAはトルコの大手銀行、Sabancı大学はトルコ・イスタンブールの大学です。ただし、この名前の人物が同行のマクロ金融主席アドバイザーを務めているという情報は確認できませんでした。

同じページには、運用の実績とされる表示も置かれています。

▼同じページに掲げられている運用プランの表示

PSDLR-同じページに掲げられている運用プランの表示

出典:PSDLR

「PSDLR AIプラン 2023」として、「500%リターン」「2か月」「Citibank提携」と表示されています。いずれについても、裏づけとなる情報は確認できませんでした。

痕跡はほかにもあります。このページのプログラム上の名前は「AiFinans」で、「Finans」はトルコ語で金融を意味する綴りです。

銀行口座の登録画面には、日本では使わないIBAN(国際銀行口座番号)を検証するための項目が残っていました。さらに、日本語化されずに残った中国語のエラーメッセージも複数確認できます。

これらを合わせると、もともと日本以外の国に向けて作られたものを、日本向けに転用した可能性があります。表示されている経歴や実績を、日本の利用者が確かめる手立てはありません。

【参考】

・PSDLR(https://pipersandler.market/)

・PSDLR 利用規約(https://pipersandler.market/terms)

・PSDLR AI金融ページ(https://pipersandler.market/app/ai-finans)

・pattonyd.com(https://pattonyd.com/)

PSDLRのようなサイトが信用されやすい理由

信用の根拠を取り違えない:似た名称のURL、画面上の残高、少額の出金実績

ここまで見てきた不審な点は、いずれも調べれば分かるものです。それでも被害が続くのは、利用者が自分で確かめようとした行動がかえって信用を強める方向に働く場面があるためです。

この章では、PSDLRのようなサイトがなぜ信じられてしまうのかを5つの角度から整理します。

ドメイン名だけが実在する投資銀行を想起させる

このサイトは、画面上で「Piper Sandler」を名乗っていません。表示名は「PSDLR」で、ロゴも正規のものとは別です。正規の事業者と結びつくのは、「pipersandler.market」というドメイン名だけです。

ところが利用者の目に最初に入るのはそのURLです。名称を検索すれば1895年創業の米国の投資銀行が出てくるため、自分で調べて裏づけを取ったつもりになります。しかし検索で分かるのは「その名前の会社が実在するかどうか」までで、案内されたURLがその会社のものかは分かりません。

確かめる順序を逆にすると見え方が変わります。先に公式サイトを開き、案内されたURLがそこに載っているかを探してください。今回であれば、そのトップページで迎えるのは冒頭で取り上げた注意喚起です。

残高や約定を運営側が管理画面から動かせる

利用者が状況を確かめる手段は、基本的にアプリの画面表示だけです。その数字を作っているのが運営側であるという点がこの手口の根幹にあります。

前章で触れたとおり、管理画面には「充值扣款(入金・引き落とし)」という機能が用意されていました。値幅制限の管理や市場の設定も運営側の操作対象です。

金融庁も、「アプリ上で、振り込んだ額と同額が入金されたかのように残高表示される」事例を挙げています。振り込んだ金額が画面に反映されること自体は、資金が保全されている証拠になりません。

画面の数字を根拠にせず、実際に自分の銀行口座へ着金したかどうかで判断してください。入出金明細に記録が残らない利益は、確認できたことになりません。

少額の出金に応じて信用を作る

出金できた経験は、そのサービスへの信頼を大きく高めます。

金融庁の注意喚起では、最初のうちは出金できるものの、まとまった金額になると理由をつけて断られるという流れが示されています。少額の出金は、信用を作るための段階として組み込まれている場合があります。

今回のケースでも、出金を求めた段階で初めて未払いや保証金という条件が示されました。条件が出てくるのは、預けた資金がまとまった額になってからです。

出金できた実績は、次も出金できる保証にはなりません。預ける金額を増やす前に、これまでに引き出せた金額と預けた金額を並べて確かめてください。

招待コードがなければ中を確認できない

PSDLRの登録には招待コードが必要です。コードを持っていない人は、登録画面から先へ進めません。

この仕組みには2つの働きがあります。ひとつは、検索や口コミからたどり着いた第三者に中身を見せないこと。もうひとつは、招待された人にとっては「選ばれた場」に見えることです。

招待でしか入れないサービスについては、第三者の評価が存在しない前提で判断してください。グループ内で共有される実績は、参加者以外の誰にも検証できません。

説明の場がZoomに移ると後から検証できない

今回の勧誘でも、途中で連絡手段がLINEからZoomへ切り替えられました。説明が口頭に移ると、送金先や出金の条件といった重要な内容が手元に残りません。後から読み返すことも、矛盾に気づくことも、家族や専門家に経緯を見てもらうことも難しくなります。

連絡手段を変えるよう求められたら、振込先・手数料・出金の条件だけは文字で送ってもらってください。文字で残すことを断られる場合は、その時点で送金を保留する判断が必要です。

【参考】

・PSDLR(https://pipersandler.market/)

・Piper Sandler Companies公式サイト(https://www.pipersandler.com/)

金融庁-それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!

PSDLRの不審点を見抜く方法

送金前に運営者を確認:規約の商号と所在地、金融庁の登録、振込先と出金条件

ここまで取り上げた不審な点は、いずれも登録も送金もせずに公開情報だけで確かめられるものでした。

投資を勧められた段階で同じ手順をたどれば、資金を預ける前に判断できます。確かめる順番に沿って6つ整理します。

  • 利用規約に運営者の商号・所在地・連絡先・準拠法・管轄裁判所が書かれているかを確かめる
    • 条文の中身より先に、誰が運営しているのかが特定できるかを見てください。PSDLRの規約は主語が「当機関」「仲介機関」といった一般名詞のみで、最後まで読んでも事業者名が出てきませんでした。運営者を特定できないサービスでは、登録の有無を調べようにも照合する名前がありません。
  • 規約が根拠に挙げている法令名と監督官庁名が実在するかを確かめる
    • 日本で金融商品取引業を監督するのは金融庁で、根拠となる法律は金融商品取引法です。PSDLRの規約は「資本市場委員会」「日本資本市場法」を根拠として挙げていました。聞き慣れない機関名や法令名が出てきたら、その名称をそのまま検索してください。日本の当局の一覧に見当たらなければ、そこで一度止まる判断ができます。
  • 金融庁の一覧で、その事業者の登録の有無を確かめる
    • 投資の勧誘と資金の受け入れを日本で行うには、金融商品取引業の登録が前提になります。調べる窓口は金融庁の金融事業者一括検索で、商号を入力すれば結果が返ります。ただし、どちらの一覧にも名前がないことは、適法だという意味にはなりません。登録業者としても警告を受けた業者としても現れない場合は、公的な記録に痕跡がない状態だと考えてください。
  • かたられた事業者の公式サイトを先に開き、案内されたURLが載っているかを確かめる
    • 名称を検索して実在の会社が出てくることと、案内されたURLがその会社のものであることは別です。検索結果ではなく、公式サイトの中から案内されたURLを探すという順番にしてください。正規のPiper Sandler社のように、名称の無断使用について注意喚起を掲げている事業者もあります。
  • ドメインの登録日と有効期限を確かめる
    • ドメインの登録記録はRDAPというしくみで公開されており、誰でも閲覧できます。「https://rdap.org/domain/」の後ろにドメイン名をつなげて開けば、登録日と有効期限が確認できます。登録から日が浅く、有効期限が1年しか設定されていないドメインで高額な資金を扱っている場合は、運営期間と規模が釣り合っているかを考える材料になります。
  • 送金先の名義を確かめ、出金のときに追加の入金を条件にされていないかを見る
    • 個人名義の口座を投資資金の振込先に指定された場合について、国民生活センターははっきりと詐欺だと述べています。振込のたびに口座が変わる場合や、名義が案内された事業者と結びつかない場合も同じです。出金を申し出た後に未払いの精算や保証金、借入を持ちかけられたら、そこで応じずに手を止めてください。

このうち最初の2つは、利用規約を開くだけで数分で確かめられます。すでに送金してしまった場合でも、振込の控え、アプリの画面、LINEやZoomでのやり取りを保存したうえで、追加の入金には応じず弁護士などの専門家へ状況を伝えてください。

【参考】

・PSDLR 利用規約(https://pipersandler.market/terms)

・Piper Sandler Companies公式サイト(https://www.pipersandler.com/)

金融庁-金融事業者一括検索

金融庁-免許・許可・登録等を受けている業者一覧

金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について

国民生活センター-SNSで著名人が勧める“もうかる方法” それって本当!?金融商品・サービスのトラブルにご注意!

PSDLRに関する口コミや被害事例

口コミは別の会社と区別:サイト固有の投稿は未確認、検索結果は正規企業が中心、掲載元の本文を確認

PSDLRを利用した人の声や被害の報告が出ているのかを、SNS・質問サイト・掲示板の順に調べました。

はじめに検索結果の読み方を断っておきます。「pipersandler.market」を含めて検索しても、上位に並ぶのは正規のPiper Sandler社のサービス案内でした。検索結果が豊富に出てくること自体は、案内されたサイトの評価とは無関係です。

X(旧Twitter)の口コミ

Xでは、PSDLRや pipersandler.market に結びつく投稿を確認できませんでした

SNSの広告からLINEのグループへ誘導される投資勧誘そのものについては、注意を促す投稿が多数見られます。ただし、今回のサイト名やドメインを挙げたものは見当たりません。

Yahoo!知恵袋の口コミ

Yahoo!知恵袋に寄せられている投資関連の相談を見ると、グループチャットでの勧誘や、出金しようとした段階で追加の入金を求められたという内容が目立ちます。

ただし、PSDLRという名称や「pipersandler.market」というドメインを挙げた質問は確認できませんでした。サイト名で検索しても該当する相談は並びません。

掲示板の口コミ

掲示板にも、PSDLRを取り上げたスレッドや書き込みは見当たりませんでした。投資詐欺の被害情報を集約しているサイトを探しても、この名称とドメインは載っていません。

登録業者の一覧にも警告業者の一覧にも名前がなかったことは、前章までに確認したとおりです。利用者の声としても、公的な記録としても、このサイトの名前は現れていない状態です。

掲載されていると検索結果の要約に出てきた場合でも、そのページを開いて本文を確かめてください。開いてみると該当する記載がないことは珍しくありません。

【参考】

・PSDLR(https://pipersandler.market/)

・Piper Sandler Companies公式サイト(https://www.pipersandler.com/)

PSDLRの口コミが少ない理由

口コミがなくても安心しない:招待制で閉じた場、開設から間もない、正規企業の情報に埋もれる

利用者の声が見当たらないのは、このサイトの作りと勧誘の進め方に理由があります。

最も大きいのは、招待コードがなければ登録できないことです。コードを持たない人は登録画面から先へ進めないため、中身を見て感想を書ける立場の人が誘われた人だけに限られます。

運営されてきた期間の短さも影響しています。ドメインが登録されたのは2026年5月14日で、日本向けとみられる名前が証明書に加わったのは6月中旬以降でした。日本語での運用が始まってからまだ数か月しか経っていません。

検索のしにくさも重なります。「Piper Sandler」で検索すれば1895年創業の投資銀行が上位を占め、「pipersandler.market」を含めて調べても正規のサービス案内が並びます。このサイトについて書かれたものがあったとしても、正規の情報に押し流されてしまう位置関係です。

勧誘がたどった経路も、外から見えない作りになっていました。LINEのグループは招待された人だけが参加する閉じた場で、そこからさらにZoomへ移るため、やり取りの記録が参加者の手元にも残りません。

連絡先を交換していない参加者どうしでは、グループを離れた後に状況を照らし合わせる手立てもありません。同じ経験をした人を見つけにくく、被害の輪郭が外に出にくい構造です。

こうした条件が重なると、口コミがないこと自体は判断の材料になりません。評価が悪くないから見当たらないのではなく、評価を書ける人がほとんどいないためです。

投資を勧められたときは、口コミの有無ではなく、前章で挙げた6つの手順で運営者と登録の状況を自分で確かめてください。すでに送金してしまい、出金を断られているのであれば、追加の入金には応じず、記録をそろえて弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

【参考】

・PSDLR(https://pipersandler.market/)

金融庁-金融事業者一括検索

LEGAL CONSULTATION

投資詐欺・送金被害のご相談は、
翔躍法律事務所の弁護士へ。

元裁判官の弁護士が被害状況と資料を確認し、返金請求など取り得る法的対応をご案内します。資料が揃っていない段階でもご相談いただけます。