InstagramのDMで知り合った相手から投資を持ちかけられ、「Euronext 取引所」と名乗るeuesatp.comで取引と利益を確かめていた方から、相談が寄せられました。出金しようとするたびに保証金や納税を理由に振込を求められ、振込先の金融機関もそのたびに替わっています。
euesatp.comのプログラムを調べると、出金の画面が示す費用は手数料1.5%だけで、保証金や税の手順はどこにもありませんでした。PC向けの画面は今も「Log in to Morgan」と表示され、画面の言葉の元には「EDX-Markets」という別の名前が残っています。
ログインした後の商品説明には、「元本保証」や「FDIC 資金保証」の言葉まで並びます。本記事では、こうした表示が正規のEuronextや米国の預金保険の説明とどこで食い違うのかを弁護士が解説します。振込のたびに替わった口座からお金を取り戻すための手続きと相談先は、最後の章でまとめています。
DMの投資話からeuesatp.comで保証金と納税を求められるまで

今回の相談は、Instagramのダイレクトメッセージ(DM)で知り合った相手から、投資の話を持ちかけられたことに始まります。取引と利益の確認に使っていたのは、取引サイトeuesatp.comでした。
この章では、DMでの投資の勧誘、euesatp.comでの取引と利益の確認、出金の前に重なった保証金と納税の振込の3つの場面をたどります。サイトが名乗る名前と請求の名目が本当かどうかは、次の章から順に確かめます。
Instagramのダイレクトメッセージから投資の話が始まった
相談者は、InstagramのDMで知り合った人物から投資を持ちかけられました。最初の接点は投資の広告ではなく、個人どうしでやりとりするDMです。こうしたDMから始まる投資の勧誘は、本件だけの話ではありません。
警察庁が令和7年のSNS型投資詐欺の被害をまとめた確定値では、当初の接触手段がダイレクトメッセージだった被害について、「ダイレクトメッセージのツール別内訳は、Instagramが1,000件」と集計しています。LINEの633件、Facebookの485件を上回り、前の年より456件増えました。
euesatp.comの画面で取引と利益を確かめていた
euesatp.comのログイン画面には欧州の市場を運営する会社と同じ「EURONEXT」のロゴが置かれ、見出しは「ログイン Euronext」、その下に「Euronext 取引所」と書かれています。
▼「Euronext 取引所」と名乗るログイン画面

出典:euesatp.com
プログラムを調べたところ、ログインした後の画面には、取引の区分として暗号通貨・外国為替・エネルギーの3つが用意されていました。相談者は、こうした画面に表示される取引の結果と利益を見ながら、入金を重ねていったことになります。
出金の前に保証金と納税の名目で振込が重なった
相談者が資金を引き出そうとすると、保証金や納税を理由に、追加の振込を何度も求められました。求められるままに振り込んでも出金には至らず、相談の時点でも資金を引き出せていません。
振込の宛先は、そのたびに別の金融機関にある口座でした。口座の名義には個人のものと法人のものが交じり、相談者は同じ口座へ続けて振り込んだわけではありません。振込の明細には、振込先の金融機関がすべて違う形で残っています。
まとめると、InstagramのDMで始まった投資の話から、利益が出ているように見えるeuesatp.comの画面へ進み、出金の前に保証金や納税の名目で振込を重ねたことが被害につながった経緯です。
次の章では、画面が名乗るEuronextが本来どのような会社で、個人に投資を勧めることがあるのかを、Euronext自身が公開している資料から確かめます。あわせて、euesatp.comが自らについて書いている文書も読みます。
【参考】
・euesatp.com(https://euesatp.com/)
・警察庁-令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)
正規のEuronextは欧州の市場を運営し個人に投資を勧めない

euesatp.comは画面で「Euronext 取引所」と名乗っています。この章では、正規のEuronextがどのような会社か、正規のEuronext自身がSNSでの勧誘についてどう呼びかけているか、euesatp.comが自らについてどう書いているかの3つを並べます。
Euronextはアムステルダムに本社を置く市場の運営会社
正規のEuronextは、オランダの持株会社Euronext N.V.を中心とするグループで、本社はアムステルダムにあります。アムステルダムやパリ、ミラノなど8つの都市で、株などを売り買いする規制市場を運営しています。
Euronextの市場で株に投資する方法について、Euronext自身は「Euronextの現物市場の会員である証券会社を通じて注文を出す」よう案内しています。個人の投資家は、取引所ではなく自分の証券会社に口座を持ち、そこから注文を出す仕組みです。
金融庁の金融事業者一括検索では、「Euronext」「ユーロネクスト」「euesatp」のどれを引いても0件でした。ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。
Euronext自身がSNSの偽プロフィールに注意を呼びかけている
正規のEuronextは、2024年12月1日の注意喚起で、名前を使って投資家を誘い込む偽のプロフィールが増えているとして次のように書いています。
Euronext does not offer trading services or advertise financial products on social media. Any profile doing so is unauthorised and not affiliated with the Exchange.
SNSで取引サービスを提供したり金融商品を宣伝したりすることはなく、そうしたプロフィールは取引所と関係がないという内容です。本件の相手も、InstagramのDMで投資を持ちかけていました。
▼SNSでの取引サービスを否定する正規のEuronextの注意

出典:Euronext
2026年7月24日の注意喚起は、「We do not provide investment advice or contact individuals to promote investment opportunities.」(投資の助言をせず、投資を勧めるために個人へ連絡しない)と明記します。
同じページが公式の窓口として挙げるのは、euronext.com、live.euronext.com、InstagramのeuronextgroupなどのアドレスやSNSのアカウントで、euesatp.comは含まれていません。
▼個人に投資を勧めないとする正規のEuronextの注意喚起

出典:Euronext
金融庁の金融サービス利用者相談室も、「実在する金融機関を詐称する者等を通じて投資勧誘を受けて」、FXや暗号資産などの取引で損害を被った相談が多いと伝えています。これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、名前の使われ方は共通します。
euesatp.comの文書は社名を示さずセーシェルの法律に従うとする
一方のeuesatp.comは、ログインしなくても開ける「会社紹介」が見出しだけで、中身がありません。「免責事項」も同じで、利用規約の画面には中国語の「用户协议」と「[object Object]」という文字しか出ません。
▼見出しだけで中身のないeuesatp.comの会社紹介

出典:euesatp.com
中身のある文書はプライバシーポリシーだけですが、運営者は「Euronext」と名乗るだけで社名も所在地もありません。末尾の一般条項には、次の2つの段落があります。
本ウェブサイトまたはその利用に起因または関連するあらゆる請求は、法の抵触に関する原則を考慮することなく、セーシェル共和国の法律に準拠し、これに従って解釈されるものとします。
お客様は、本ウェブサイトの利用に起因または関連するすべての紛争について、セーシェル共和国の裁判所が専属的な管轄権および裁判地であることに同意するものとします。
▼セーシェル共和国の法律と裁判所を定めるプライバシーポリシー

出典:euesatp.com
正規のEuronextはオランダの会社で、公式サイトの規約や方針にセーシェル共和国の名前は出てきません。名乗る会社と、文書が従うとする国の法律が合っていないことになります。
名前を見て正規の取引所だと感じたら、その会社の公式サイトが挙げるアドレスと、サイトの会社紹介や規約にある社名・所在地を見比べてください。社名や所在地が合わないまま振込を求められた段階で手を止め、専門家に相談することが大切です。
【参考】
・Euronext-About Euronext(https://www.euronext.com/en/about)
・Euronext-Privacy statement(https://www.euronext.com/en/privacy-statement)
・Euronext-Equities(https://live.euronext.com/en/products/equities)
・Euronext-Beware of fake Euronext profiles on social media(https://live.euronext.com/en/news/beware-fake-euronext-profiles-social-media)
・Euronext-Protecting yourself against fraudulent impersonations of Euronext(https://www.euronext.com/en/news/protecting-yourself-against-fraudulent-impersonations-euronext)
・金融庁-投資詐欺等に関する利用者からの相談事例等と相談室からのアドバイス等
・金融庁-金融事業者一括検索
・euesatp.com-会社紹介(https://euesatp.com/#/companyIntroduction)
・euesatp.com-プライバシーポリシー(https://euesatp.com/#/privacyPolicy)
euesatp.comの裏に残る「EDX-Markets」と「Morgan」の名前

euesatp.comの「Euronext」という名前は、サイトの作りの上では後から差し込まれたものとみられます。この章では、PC向けの画面、画面に出す言葉の一覧、文書の日付とアドレスの登録日、データの送り先の4つからその跡を示します。
PC向けの画面は今も「Log in to Morgan」と表示する
euesatp.comには、ログインしなくても開けるPC向けの画面(アドレスの末尾が「#/pc」)があります。開くと、見出しは「Log in to Morgan」で、ロゴには「Morgan」の文字と白い線で描いた「B」の図柄が並びます。Euronextの名前はどこにもありません。
▼EuronextとMorganを名乗る同じアドレスの画面

出典:euesatp.com
同じアドレスの中で、スマホ向けのログイン画面は「Euronext」、PC向けの画面は「Morgan」と別の名前を名乗っていることになります。日本語の画面で開いても、PC向けの見出しは英語のまま出ます。
画面の言葉の元の名前は「EDX-Markets」だった
プログラムを調べたところ、画面に出す言葉を言語ごとに置き換える一覧では、元になる中国語の文に「EDX-Markets」という別の名前が書かれていました。この名前は画面には出ず、利用者が目にするのは訳の側だけです。
たとえば「EDX-Markets交易所」の日本語訳は「Euronext 取引所」で、名前の部分だけが入れ替わっています。ロゴなどの画像の置き場所も「edx」という名前のフォルダです。
▼訳でEuronextとGEM-Marketsに分かれる名前

出典:euesatp.com
訳が「Euronext」になっているのは、画面の言語切り替えで選べる英語・日本語・中国語(繁体字)の3つだけです。選べないスペイン語やロシア語など6つの言語の訳には、3つ目の名前「GEM-Markets」が残っていました。利用者の目に触れる言語だけ、名前を直したとみられます。
文書の発効日はeuesatp.comの取得より1年以上前
euesatp.comのプライバシーポリシーの冒頭には、「発効日:2025年5月18日」と書かれています。一方、登録情報(RDAP)では、euesatp.comの登録日時は2026年7月13日10時28分(日本時間)です。
▼2025年5月18日とされるプライバシーポリシーの発効日

出典:euesatp.com
▼2026年7月13日とされるeuesatp.comの登録日

出典:rdap.verisign.com
文書の発効日は、アドレスが取られる1年以上前ということになります。文書や名前の設定はeuesatp.comより前から用意され、euesatp.comは後からそこに載せたアドレスの一つである可能性があります。
裏側のサーバーには別の名前の取引サイトも同居する
euesatp.comの画面は、取引のデータをfxdirect.evfbac.comというアドレスに送っています。プログラムを調べたところ、同じevfbac.comの別のサブドメインを、別の名前を名乗る取引サイトも送り先にしていました。少なくとも2つのアドレスがあり、2つは同時刻に登録されています。
1つの裏側の仕組みに、名前だけを替えた取引サイトをいくつも載せられる作りとみられます。画面の名前やロゴは、それだけでは運営者を示す根拠になりません。名乗る会社の公式サイトが挙げるアドレスと、いま開いている画面のアドレスが同じかどうかを入金の前に確かめてください。
【参考】
・euesatp.com-PC向けの画面(https://euesatp.com/#/pc)
・euesatp.com-プライバシーポリシー(https://euesatp.com/#/privacyPolicy)
・euesatp.com-プログラム(https://euesatp.com/assets/index-5f9a1926.js)
・RDAP-euesatp.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/euesatp.com)
euesatp.comの出金画面が示す費用は手数料1.5%だけ

相談者は、出金の前に保証金や納税の名目で振込を求められました。この章では、euesatp.comの出金の画面の注意書き、プログラム全体での「保証金」「税」の扱い、入金の画面の作りの3つをその請求と照らし合わせます。
出金の注意書きにあるのは手数料と24時間以内の着金
出金の画面は、ログインした利用者だけが開ける作りです。注意書きの文言は、画面を組み立てるプログラムそのものを取得して読み取りました。5つの注意書きのうち、金額と費用にかかわるのは次の2つです。
(前略)
・最小出金金額は 100USDT です。最大出金金額はあなたの口座の利用可能金額を超えてはいけません。
・現金引き出しには手数料の1.5%、現金引き出し後24時間以内に口座が受け取られます。
ご不明な点がございましたら、カスタマーサービスにお問い合わせください
(後略)
画像は、プログラムの中の同じ注意書きの英語の行(「A 1.5% fee is required for withdrawals」)です。費用として示されているのは出金の額にかかる1.5%の手数料だけで、出金の前に別の口座へ振り込む手順はどこにも書かれていません。
▼出金の費用を手数料1.5%とするプログラムの注意書き

出典:euesatp.com
受け取る方法の選択肢は、暗号資産のUSDTの2種類と銀行の3つです。出金の申請で入力するのは、受け取る方法と金額、送り先(暗号資産のアドレスか銀行の口座)、取引パスワードだけです。保証金を納めたかどうかや、税を払ったかどうかを確かめる欄はありません。
サイトのプログラムに「保証金」「税」の語は1つもない
euesatp.comが読み込むプログラム117本を調べたところ、画面に出す日本語に「保証金」「税」「納税」の語は1つもありませんでした。似た言葉の「証拠金」は出てきますが、レバレッジをかけた取引の画面で使う言葉で、出金の手続きとは関係しません。
相手が告げた保証金や納税は、euesatp.comの出金の仕組みの中には見当たりません。請求の名目は、サイトの外で相手が独自に持ち出したものとみられます。サイトの画面に名目が出ていないなら、そのお金を払っても画面の残高が引き出せるようになる保証はありません。
入金の「次のステップ」を押すと窓口へ移るだけ
入金の画面には、暗号通貨の選択肢と「入金額(USD)」の欄、「次のステップ」のボタンが並びます。プログラムを調べたところ、このボタンはサポートの窓口を開く処理につながっていて、窓口が1つならそのまま窓口の画面に移ります。
入金の申請をサーバーへ送る処理は、この画面からは呼ばれていません。どの口座へ振り込むかは、euesatp.comの画面のどこにも出てきません。振込のたびに金融機関の違う口座が示されても、サイトの側にその記録が残る作りではありません。
画面の注意書きにない費用を出金の条件にされたら、それ以上は振り込まずに、告げられた名目と口座を書き留めてください。そのメモを持って専門家に相談すれば、次の請求にどう向き合うかを一緒に考えられます。
【参考】
・euesatp.com-プログラム(https://euesatp.com/assets/index-5f9a1926.js)
euesatp.comがうたう「元本保証」と「FDIC資金保証」

euesatp.comには、ログインした後に「契約取引」という商品の画面があります。この章では、その説明に出てくる「元本保証」と、購入の画面に出てくる「FDIC資金保証」の2つの表示を、表示の根拠とされる側の資料と照らし合わせます。
ログイン後の契約取引は「元本保証型」と説明される
契約取引の画面も、ログインした利用者だけが開ける作りです。そこで画面を組み立てるプログラムそのものを取得し、日本語の画面に出る説明として次の一文を確かめました。
Euronext 契約取引は元本保証型構造化ファイナンスにおいて、固定収益商品と金融デリバティブを組み合わせた革新的な金融商品です。投資方法が簡単で、低リスクを好む堅実な投資ユーザーに非常に適しています。
▼契約取引をprincipal-guaranteedとする説明

出典:euesatp.com
画像は同じ説明の英語の行で、「principal-guaranteed」(元本保証)と書かれています。英語の画面でも、損をしない商品として紹介していることになります。
名前を使われた正規のEuronextは、2026年7月24日の注意喚起で、警告のサインの一つに「Promises of unusually high or guaranteed investment returns」(異常に高い、または保証された投資収益の約束)を挙げています。
FDICの保険が守るのは米国の銀行の預金だけ
契約取引の購入の画面には、「FDIC 資金保証」という言葉と、米国の連邦預金保険公社(FDIC)のロゴの画像が置かれています。保険で守られているかのように見せる表示です。
▼購入の画面に「FDIC Guarantee」と出すプログラム

出典:euesatp.com
FDIC自身は、暗号資産の会社と預金保険についての資料で、保険の範囲を次のように説明しています。
By federal law, the FDIC only insures deposits held in insured banks and savings associations (collectively, “insured banks”) and only in the unlikely event of an insured bank’s failure. The FDIC does not insure assets issued by non-bank entities, such as crypto companies.
(中略)
FDIC deposit insurance does not apply to financial products such as stocks, bonds, money market mutual funds, other types of securities, commodities, or crypto assets.
(後略)
FDICの保険が守るのは保険に加入した米国の銀行の預金だけで、銀行でない会社の資産や、株・暗号資産などの金融商品は対象外という内容です。FDICの名前は、euesatp.comの商品が守られている根拠にはなりません。
▼保険の対象を銀行の預金に限るとするFDICの説明

出典:FDIC
「元本保証」は警察庁が挙げる投資詐欺の広告の文言
警察庁は、令和7年のSNS型投資詐欺の確定値で、増えているバナー等広告について「『必ずもうかる』、『元本保証』などの文言を含む広告も見られた」と書いています。金融庁も、「元本も保証します!」という誘い文句を詐欺的な投資勧誘の例に入れています。
本件で元本保証が書かれていたのは広告ではなくサイトの商品説明ですが、損をしないと思わせる言葉で入金を促す点は同じです。投資の勧誘で元本保証や外国の公的な保険の名前を見たら、その保険を運営する機関の説明で対象を確かめ、入金の前に専門家に相談してください。
【参考】
・euesatp.com-プログラム(https://euesatp.com/assets/index-5f9a1926.js)
・euesatp.com-FDICの画像(https://euesatp.com/images/edx/fdic.svg)
・Euronext-Protecting yourself against fraudulent impersonations of Euronext(https://www.euronext.com/en/news/protecting-yourself-against-fraudulent-impersonations-euronext)
・FDIC-Fact Sheet: What the Public Needs to Know About FDIC Deposit Insurance and Crypto Companies(https://www.fdic.gov/news/fact-sheets/crypto-fact-sheet-7-28-22.html)
・警察庁-令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)
・金融庁-詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!
同じサイトを入口を替えて見比べると分かる5つの食い違い

euesatp.comのスマホの画面だけを見ていると、正規のEuronextと同じロゴが置かれ、名前も一貫しているように見えます。食い違いが表に出たのは、同じサイトを入口を替えて開き、書かれていることを1つずつ見比べたときでした。
開く順に、見比べる場所と見るものを5つ挙げます。
- ログイン画面のアドレス:開いているアドレスが、正規のEuronextが公式に挙げるeuronext.comやlive.euronext.comかを見てください。正規のEuronextはSNSで取引サービスを提供しないと明言しているので、DMで知り合った相手に案内された取引サイトという時点で、公式の窓口ではありません。
- PC向けの画面の名前とロゴ:同じサイトにPC向けなど別の入口があれば、名前とロゴがスマホの画面と同じかを比べます。euesatp.comでは、PC向けの画面が「Morgan」と名乗っていました。
- 会社紹介と規約の社名・準拠法:運営する会社の名前と所在地が書かれているかを見ます。書かれていても、文書が従うとする国の法律が、名乗る会社の国と合っているかまで確かめてください。
- 商品説明にある「保証」の出どころ:「元本保証」や、外国の公的な保険の名前が出てきたら注意が必要です。その保険を運営する機関自身の説明で、守られる範囲を確かめます。FDICが守るのは、米国の保険加入銀行の預金だけです。
- 出金の画面の名目と振込先:画面の注意書きにない名目(保証金・納税など)を求められていないかを見ます。振込先が名乗る会社の名義でなく、振込のたびに違う口座を示されるなら、サイトの仕組みの外でお金が動いています。
画面どうしで名前や会社の情報が合わないと分かった時点で、追加の振込には応じないでください。見比べた画面を保存し、振込の明細とあわせて専門家に相談すれば次に何をすべきかを整理できます。
【参考】
・Euronext-Protecting yourself against fraudulent impersonations of Euronext(https://www.euronext.com/en/news/protecting-yourself-against-fraudulent-impersonations-euronext)
・Euronext-Beware of fake Euronext profiles on social media(https://live.euronext.com/en/news/beware-fake-euronext-profiles-social-media)
・euesatp.com-PC向けの画面(https://euesatp.com/#/pc)
・FDIC-Fact Sheet: What the Public Needs to Know About FDIC Deposit Insurance and Crypto Companies(https://www.fdic.gov/news/fact-sheets/crypto-fact-sheet-7-28-22.html)
Euronextを名乗るサイトの相談はアドレスを替えて続いている

euesatp.comそのものの口コミは、Yahoo!知恵袋、X、5ちゃんねる、爆サイのどこにも見つかりませんでした。一方で、Euronextを名乗る別のアドレスのサイトについては、2024年から相談が寄せられています。見つからない事情と、過去の相談の中身を順に取り上げます。
euesatp.comは読めない文字列で名前から探しにくい
euesatp.comのアドレスは、意味の読み取れない文字の並びです。利用者が覚えるのは、アドレスより「Euronext」の名前でしょう。ところが、Yahoo!検索で「euesatp」を引くと、結果に並ぶのは性格診断の「ESTP」の解説ページでした(2026年10月26日の時点)。
逆に「Euronext」で探すと、正規のEuronextの解説や株式市場の報道が上に並び、偽のサイトの話は埋もれます。保存の記録もなく、euesatp.comはInternet Archiveとurlscan.ioのどちらにも登場しません。
アドレスでも名前でもたどりにくいことが、口コミが見当たらない理由の一つとみられます。画面に出る名前だけを手がかりに探しても、同じサイトで困っている人の声にはたどり着きにくい状態です。
2024年と2025年にも別のアドレスで同じ名乗りの相談があった
Yahoo!知恵袋には、2024年11月18日に、Euronextを名乗るeuronextstvn.comが本物かどうかを尋ねる質問が投稿されています。質問者は、確かめたいサイトを①、正式なサイトとしてeuronext.comを②に挙げたうえで次のように書いています。
(前略)
素人で見て①の作り方が荒すぎる気がして。
(後略)
2025年6月11日には、SNSで知り合った人の指示でeuronextという取引所を使い、全額の出金を指示した後に9%の手数料を別に払うよう求められたという質問もありました。こちらは暗号資産を送る形の入金で、銀行振込の本件とは入金の方法が違います。
この質問への回答の一つは、証券取引所には個人ではなく証券会社が会員として取引に参加すると書き、質問者が使ったeuronextは偽サイトではないかとしています。回答者個人の見方ですが、正規のEuronextが個人の注文を会員の証券会社を通して受けると案内していることと合っています。
2つの質問のサイトとeuesatp.comが同じ運営なのかまでは、記録からは分かりません。それでも、Euronextの名前だけを借り、アドレスを替えて現れるサイトが以前からあることは分かります。アドレスが違うからといって別物と考えず、名前の持ち主の公式サイトで確かめることが大切です。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-2024年11月18日の質問(Euronextを名乗るサイトが本物かを尋ねる相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10306873120)
・Yahoo!知恵袋-2025年6月11日の質問(Euronextを名乗る取引所で出金の前に手数料を求められたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10316158665)
社名を示さないeuesatp.comへの振込を取り戻せる可能性

相談者は、最後の振込から日が浅く、出金のためにさらに保証金や納税を求められている段階です。その名目はeuesatp.comの仕組みにないので、次の請求には振り込まないことを前提にします。
そのうえで、振り込んだばかりの口座を止めてもらえるのか、戻るとしたらどう知らされるのか、社名もなく外国の法律に従うとする相手に請求できるのかの3つに順に答えます。
振込から日が浅いうちに振込先の口座を止めてもらう
銀行の口座への振込には、振り込め詐欺救済法という制度があります。犯罪に使われた口座を金融機関が止め、残っていたお金を被害者に分ける仕組みで、その入口は被害者が警察や金融機関に知らせて口座を止めてもらうことです(金融庁の「振り込め詐欺救済法 Q&A」に掲載のQ6参照)。
止めるまでの間に口座からお金が動かされれば、分けられる額はその分だけ小さくなります。振込から日が浅い今は、口座にまだお金が残っている可能性がある時期です。振込に使った自分の金融機関に振込の明細を見せ、振込先の口座を止めるよう頼んでください。
本件の振込先は、振込のたびに別の金融機関の口座でした。どの口座も止めてもらう必要があるので、明細は1件ずつそろえておきます。警察には、最寄りの警察署のほか、全国共通の「#9110」からも相談できます。
戻るお金は振込先の口座ごとの公告と申請の期間で決まる
口座が止められると、金融機関はその口座のお金を被害者に分けるための手続きに進み、公告を出します。「振り込め詐欺救済法 Q&A」によれば、公告には口座のある金融機関と店舗、口座番号、名義人の氏名や名称などが載ります(Q12)。
公告は預金保険機構の公告のページにまとめて掲載されるので、自分の振込の明細にある口座と照らし合わせられます。分配を受けるには、口座ごとに決められた期間のうちに申請しなければなりません。
「振り込め詐欺救済法 Q&A」は、申請期間内に申請できなかった場合について、「この法律による被害回復分配金の支払を受けることはできません」と答えています。振込先が複数の金融機関に分かれる本件では、それぞれの口座の公告と期限を見落とさないことが大切です。
セーシェルの法律に従うという文書があっても日本で請求する道は残る
口座に残らなかった分は、口座の名義人や勧誘した相手に、民事上の請求をして取り戻すことを考えます。ただ、相手について分かっているのはInstagramのアカウントだけで、名前も住所も分かりません。口座の名義人も、振込のたびに別の人や会社でした。
しかもeuesatp.comは社名を示さず、セーシェル共和国の法律と裁判所に従うとしています。それでも、外国の法律や裁判所を定めた文書があるからといって、請求をあきらめる理由にはなりません。日本に住む消費者を守る法律がどこまで認めるかは、別の問題だからです。
法の適用に関する通則法第11条は、外国の法律が選ばれていても、消費者が求めれば、住んでいる国の法律のうち必ず守るべき決まり(強行規定)も当てはめると定めています。民事訴訟法第3条の4と第3条の7は、消費者が日本の裁判所に訴える道を残し、外国の裁判所だけに限る約束の効力を限っています。
本件にどこまで当てはまるかは、個別の事情次第です。相談先の1つの弁護士は、弁護士会を通じて金融機関に名義人の住所などを問い合わせる手続き(弁護士法第23条の2)を使い、誰にどこで請求するかを組み立てることができます。
口座の停止も、公告の照らし合わせも、名義人への請求も、出発点は手元の記録です。振込の明細、InstagramのDMのやり取り、euesatp.comの画面は消さずに残し、次の請求が届く前に専門家に相談してください。
【参考】
・金融庁-振り込め詐欺救済法 Q&A
・預金保険機構-振り込め詐欺救済法に基づく公告
・政府広報オンライン-警察に対する相談は警察相談専用電話 「#9110」番へ
・e-Gov法令検索-犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律
・e-Gov法令検索-法の適用に関する通則法
・e-Gov法令検索-民事訴訟法
・e-Gov法令検索-弁護士法
