今回の相談は、著名人の名前を使った広告から入ったSignalのグループで、代表を名乗る人物にAIを使った取引を勧められたのが始まりです。警察庁も、著名人をかたる広告からSNSの投資グループへ誘う手口に注意を呼びかけています。
投資先は、「Scientech」の名前で案内された株の取引サイトscientechquant.comでした。相談者は指定された口座へ振込を重ねましたが、やがて画面に融資が加えられ、返済しないと出金できないと告げられました。
調べると、代表を名乗る人物が「レイメイ・フィナンシャル・キャピタル」の公式サイトとして案内したrfcapitalspro.comは、正規のモニクルフィナンシャルのサイトの写しでした。取引サイトのプログラムにも、融資を返す機能や融資を理由に出金を止める処理はありませんでした。
本記事では、公式サイトの中身と取引サイトのプログラムから分かったことを、弁護士が解説します。返済や手渡しを迫られたときに何を確かめ、誰に相談すればよいかもまとめました。
Scientech(scientechquant.com)に関するトラブルの概要

今回の相談者は、著名人の名前を使った投資の広告をきっかけに投資グループへ誘われ、「Scientech」の名前で案内された株の取引サイトに資金を振り込みました。その後、画面に融資が加えられ、返済しないと出金できないと告げられています。
まず、取引サイトがどう名乗っているかを画面とプログラムで確かめ、名前を使われた正規のScientechの事業と日本での登録を見ます。続いて、Scientechの名前を騙る業者を載せた金融庁の一覧と、著名人をかたる広告を扱った警察庁の資料を取り上げます。
scientechquant.comは会社名を示さずSTとだけ名乗る株の取引サイト
相談者に示された取引サイトは、scientechquant.comです。ブラウザ最上部のタブには「ST」とだけ表示され、ログイン画面にあるのは電話番号とパスワードの入力欄、「新規登録」のリンクだけです。
▼タブにSTとだけ出る取引サイトのログイン画面

出典:scientechquant.com
配信されているプログラムを読むと、ログイン後に並ぶのは日本株・米国株の売買、IPO(新規公開株)、立会外の取引、AI運用ファンド、そして「融資」の画面です。サイトの中を探しても、運営会社の名前や所在地、日本の許認可は出てきません。
正規のScientechは自己資金で取引する米国の会社で日本では高速取引行為者の登録だけを受けている
Scientechの名前を持つ正規の会社は、米国ニュージャージー州のScientech Research LLCです。同社のものとみられる公式サイトは、事業を次のように紹介しています。
(前略)
As a proprietary trading firm, we utilize our own capital to deploy investments, accessing major global electronic markets.
(後略)
▼自己資金で取引すると説明する正規のScientechのサイト

出典:Scientech Research
自社の資金で投資を行う会社だという説明で、連絡先として示されるのも米国のジャージーシティだけです。個人の投資家向けの口座やアプリ、日本語の窓口の案内は見当たりません。
日本では、金融庁の「高速取引行為者」として登録されています(関東財務局長(高速)第73号)。個人から資金を預かったり、投資を勧めたりする業者としての登録ではありません。正規のScientechによって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
金融庁はScientechの名前を騙る業者を無登録で金融商品取引業を行う者として公表している
令和7年11月、金融庁は無登録業者の一覧に、名称を「不明(高速取引行為者Scientech Research LLCの商号等を詐称)」とする行を加えました。公表の理由として、備考の欄はこう説明しています。
当該業者は、「Scientech社」、「SCNT」などと騙り、SNS上で「有価証券の募集の取扱いを行う」旨の表示をしていた。
なお、高速取引行為者はIPO銘柄の配分に関与できないにもかかわらず、IPO銘柄の配分に関与している旨の虚偽の説明を行っていた。
▼Scientechの名前を騙る業者を載せた金融庁の一覧

出典:金融庁
scientechquant.comの取引サイトにも、IPOの申込みの画面が組み込まれています。これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、SNSでScientechの名前を出してIPOを持ちかける勧誘を、金融庁は登録のない業者の行為として扱っています。
著名人の名前を出す広告を入口にした投資詐欺を警察庁が統計の中で取り上げている
警察庁は、令和7年のSNS型投資・ロマンス詐欺の統計の【トピックス2】で、バナー等広告から始まる手口を取り上げています。
(前略)
特に、著名人をかたるバナー等広告からSNSの投資グループに誘導し、投資等の名目で金銭等をだまし取る手口が目立っており、
○ 動画において、口の動きと声が合わない、日本語の表記が誤っているなど不自然である
○ 著名人をかたっているのに未認証アカウントを使用している
○ LINE登録に誘導する
○ 「必ずもうかる」「元本保証」等の甘い文句で誘う
といった特徴が確認されている。
▼著名人をかたる広告の特徴を挙げた警察庁の資料

出典:警察庁
相談者の入口も、著名人の名前を使った広告からLINEに登録し、投資グループへ移る流れでした。名前を使われた実業家の堀江貴文氏も、2023年7月19日に公開した動画で自分の名前や写真を使った詐欺広告に注意を呼びかけています。
広告の中の著名人が投資を勧めていても、お金を送る前に本人の公式の発信を確かめてください。警察庁も、著名人が無料で投資教室を開くことは基本的にないとして、なりすましをまず疑うよう呼びかけています。
【参考】
・ST(https://www.scientechquant.com/#/login)
・Scientech Research(https://www.scientechresearch.io/)
・警察庁-令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)
・YouTube-【注意喚起】私を利用した詐欺が頻発しています(https://www.youtube.com/watch?v=hJJ5jVifzX0)
Scientechへ誘導され被害につながるまでの経緯

広告を入口に投資グループへ入った相談者が、融資の返済を出金の条件とされるまでには、3つの段階がありました。段階が進むごとに、相手が名乗る名前とお金を求める名目が変わっていきます。
著名人の名前を使った広告からLINEを経てSignalのグループで連夜の講義を受けた
始まりは、著名人の名前を使った投資の広告です。広告から進んだLINEで、相手とのやり取りが始まりました。その後の勧誘は、Signalのグループと個別の連絡で進みます。9月24日ごろからは、代表を名乗る人物が毎晩のように相場の講義を開き、AIを使ったOTC取引は勝率10割だとうたっていました。
代表を名乗る人物は、自分は「レイメイ・フィナンシャル・キャピタル株式会社」の代表で、その著名人と共同で経営していると説明しました。公式サイトとして案内されたのが、rfcapitalspro.comです。著名人本人がこの会社や勧誘に関わっていることは確認されていません。
体験金の後に相手の指定する口座へ振込を重ねたが自分の銀行口座が凍結された
投資先の名前は「Scientech」で、相談者が投資サイトとして示したのはscientechquant.comです。まず体験金を払い、その後も投資資金として、相手が指定した口座への振込が重なっていきます。
その後、相談者自身の銀行口座が凍結され、ネットバンキングのアプリも使えなくなりました。グループでは、凍結が相次いでいるとして、銀行振込ではなく現金の手渡しが勧められています。ほかの参加者の名義の「現金預かり証」も共有され、そこにはScientechやティーロウプライスジャパンの表示がありました。
画面に融資が加えられ返済しないと出金できないと告げられた
相談者が見ていた取引サイトには、「利用可能資金」や「実現損益」の欄に数字が並んでいました。そこへ融資の額が示され、返済しないと出金できないとされます。「Scientech オンラインカスタマー…」と表示されたチャットからは、融資の申請は承認された後にはキャンセルできないと伝えられました。
さらに融資が上乗せされ、相談者は自分の資金と合わせた額を返すよう求められていると受け止めています。代表を名乗る人物は、訴訟の可能性にも触れました。画面には資金と利益が表示されているのに引き出せず、融資の返済という新しい名目で支払いを迫られているのが今回の被害の経緯です。
Scientechの関連サイトの情報を調査した結果

本件で確かめたアドレスは7つです。取引サイトとレイメイ・フィナンシャル・キャピタルの公式サイトに加え、同じ名前の別のドメインや公式サイトのソースに残るアドレスがあります。
下の表には、それぞれの取得日と今の状態をドメインの登録情報(RDAP)から書き出しました。表の後で、名乗られた会社名が金融庁の検索で出てくるかも見ていきます。
| アドレス | 役割 | 取得日(日本時間) | 状態 |
|---|---|---|---|
| www.scientechquant.com | 株の取引サイト(画面の名前は「ST」) | 2026年9月23日 | 稼働 |
| scientechquant.org・scientechquant.biz | 取引サイトと同じ名前の別のドメイン | 2026年9月23日(.comと同時刻) | 稼働 |
| www.rfcapitalspro.com | レイメイ・フィナンシャル・キャピタルの公式サイトとして案内 | 2026年7月28日 | 稼働 |
| gcic-jp.com | rfcapitalspro.comのソースに残るアドレス | 2026年3月23日 | 停止(client hold) |
| rfcapitals.com | 同じ「rfcapital」の名前を持つ別のドメイン | 2026年3月24日 | 停止(client hold) |
| mncf-mail.ltd | rfcapitalspro.comの問い合わせ先のメール | 登録なし | - |
| www.scientechresearch.io | 正規のScientech | 2019年7月12日 | 稼働 |
scientechquant.comは講義が始まる前日に取得された
scientechquant.comの登録情報を開くと、「registration」の欄に「2026-09-23T06:49:54Z」とあります。協定世界時での記録なので、日本の時刻に直すと2026年9月23日の午後3時49分になります。
▼講義の前日の取得を示す取引サイトのドメインの登録情報

出典:rdap.verisign.com
相談者が代表を名乗る人物の講義を受け始めたのは9月24日ごろです。講義が始まる前日には、のちに投資先として示される取引サイトのドメインがすでに取得されていたわけです。同じ名前の.orgと.bizも、秒まで同じ時間に取得されています。
rfcapitalの名前のアドレスは止められるたびに取り直されている
公式サイトとして案内されたrfcapitalspro.comの取得は、2026年7月28日です。同じ「rfcapital」を含むrfcapitals.comは、その4か月前の3月24日に取得されていました。登録情報の状態は「client hold」で、最後の更新は5月5日です。
▼停止の状態を示すrfcapitals.comの登録情報

出典:rdap.verisign.com
client holdについて、ドメインの管理を担うICANNは次のように説明しています。
This status code tells your domain’s registry to not activate your domain in the DNS and as a consequence, it will not resolve.
名前の解決を止め、アドレスを開けなくする状態という意味です。rfcapitalspro.comのソースに残るgcic-jp.com(3月23日取得)も、5月29日を最後の更新として同じclient holdになっています。
春に取られた2つのアドレスが止まった後に、夏になって今のアドレスが取り直されたという順番が、登録情報の日付から読み取れます。「rfcapital」の名前は残したまま、開けなくなるたびにアドレスだけが替わってきたとみられます。
金融庁の検索でレイメイ・フィナンシャル・キャピタルは見つからずScientechは正規の会社と詐称の2件が並ぶ
事業者検索で「Scientech」を引くと、出てくるのは2件です。正規のScientech Research LLCと、前の章で見た「不明(高速取引行為者Scientech Research LLCの商号等を詐称)」の行で、後者には無登録業者の印が付いています。
▼正規の会社と詐称の行が並ぶ金融庁の事業者検索

出典:金融庁
一方、代表を名乗る人物が自分の会社だとした「レイメイ」「レイメイ・フィナンシャル」「Reimei」は、同じ検索で1件も出てきません。国税庁の法人番号公表サイトでも、この商号の会社は見つかりませんでした。金融商品を扱う登録も、日本の会社としての登記も確かめられない名前ということになります。
その他、以下についても確認を行いました。
- Googleのセーフブラウジングでは、scientechquant.comとrfcapitalspro.comに「安全ではありません」の判定は出ていませんでした(判定が出ていないことは安全の根拠になりません)
- Internet Archiveとurlscan.ioには、scientechquant.comとrfcapitalspro.comの過去の画面の記録がありませんでした
勧誘の中で示された会社名は、金融庁の事業者検索と法人番号公表サイトで、誰でも自分で引くことができます。見つからない名前の会社から入金や返済を求められた段階で、送金を止めて専門家に相談してください。
【参考】
・ST(https://www.scientechquant.com/#/login)
・レイメイ・フィナンシャル・キャピタル(https://www.rfcapitalspro.com/)
・rdap.verisign.com-scientechquant.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/scientechquant.com)
・rdap.verisign.com-rfcapitals.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/rfcapitals.com)
・rdap.verisign.com-gcic-jp.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/gcic-jp.com)
・ICANN-EPP Status Codes(https://www.icann.org/resources/pages/epp-status-codes-2014-06-16-en)
・金融庁-金融事業者一括検索
・国税庁-法人番号公表サイト
Scientechに関する不審点

この章では、Scientechに関する不審点として、レイメイ・フィナンシャル・キャピタルの公式サイトの中身、その問い合わせ先、取引サイトの名乗り、融資と出金の仕組み、入金の記録、現金預かり証に出てくる会社名の6点を取り上げます。
前半の3点は、名乗られた会社や名前に裏付けがないことを示しています。後半の3点は、出金や入金、手渡しの条件が、サイトの仕組みの外で相手から告げられていることに関わります。また、実在業者を装う海外FXの偽サイトもあります。
RFCの公式サイトはモニクルフィナンシャルのサイトの写しでソースに元の会社の名前が残る
rfcapitalspro.comを開くと、左上にRFCのロゴがあり、「資産運用 未来を創る」の見出しが続きます。ところが、ブラウザ最上部のタブに出ているのは「モニクルフィナンシャル | 金融の力で安心を届ける」という別の実在の会社の名前です。
▼RFCのロゴの上のタブに別の会社名が出る公式サイト

出典:www.rfcapitalspro.com
ページのソースを表示すると、元になったサイトの跡がほかにも残っています。正規のサイトを示す欄(canonical)は正規のモニクルフィナンシャルのアドレスで、共有用の欄(og:url)には前の章で見たgcic-jp.comが入っています。
コメントとして隠された行には「MNCF第6期オンライン株投資コースがスタートしました!」があり、画像の説明には日本語では使わない簡体字で「资产运用」と書かれていました。
▼別のアドレスや前の名前が残る公式サイトのソース

出典:www.rfcapitalspro.com
正規のモニクルフィナンシャルは、2025年11月13日に次のお知らせを出しています。
現在、当社公式ウェブサイトのトップ画面と酷似したウェブサイトが確認されており、その中で当社著作物が不当に利用されております。また、特定のLINEグループへ招待し株式の売買を推奨する際に、上記ウェブサイトが利用されているケースが確認されています。
▼自社のサイトに酷似したサイトに注意を促す正規の会社の告知

出典:モニクルフィナンシャル
このお知らせが指すサイトとrfcapitalspro.comが同じものかは確認できませんが、正規の会社のサイトを写し、名前だけを差し替えて株の投資グループに使う手口は、名前を使われた会社自身が注意を呼びかけている型と重なります。
RFCのサイトが示す問い合わせ先のドメインは登録すらされていない
rfcapitalspro.comの問い合わせ先には、[email protected]というメールアドレスが書かれています。ここにも「MNCF」の名前が使われています。このドメインを、ドメインの管理を担うICANNの照会ツールで調べた結果が次の画面です。
▼問い合わせ先のドメインが見つからないICANNの照会結果

出典:ICANN
結果の欄には「The requested domain was not found in the Registry or Registrar’s RDAP server.」と出ました。つまり、このドメインはどの登録機関にも登録されていないということです。
存在しないドメインのアドレスには、メールを送っても届きません。サイトにはほかに「LINEで相談」のボタンがあるだけで、相手と連絡を取る手段はLINEに限られています。
取引サイトの画面はSTとだけ名乗りScientechの名前はプログラムに1つもない
勧誘の中で投資先として告げられたのは「Scientech」でした。ところが、取引サイトのタブやホーム画面に追加したときの名前は「ST」で、画面のどこにもScientechの名前は出てきません。
取引サイトのトップのプログラムは78万字あり、ログイン後の画面の言葉も含まれています。このファイルを開いてページ内検索で「scientech」を探すと結果は0件でした。
▼scientechを探しても0件の取引サイトのプログラム

出典:www.scientechquant.com
一方で、ホーム画面の見出しとして「高速取引で」「チャンスを先取り」という言葉がプログラムに書かれていました。Scientechの名前はグループと窓口で告げられるだけで、サイト側は正規のScientechとの関係を一言も示していません。
融資は申込書を出す作りで返済の画面はなく出金の画面は融資を見ていない
融資と出金はログインした後に開く画面なので、プログラムそのものを取得して、それぞれの仕組みを確かめました。融資について利用者が使える機能は、「申込」「申込の履歴」「件数」の3つだけです。
▼申込と履歴と件数の3つだけが並ぶ融資のプログラム

出典:www.scientechquant.com
申込の画面では、申込金額のほか、名前、IDカード、住所、連絡先、電子メールを入力させます。「メリット」として「柔軟な返済」「明瞭な金利」をうたいますが、金利の数字や返済の期限、返し方の説明はどこにもありません。
返済や取り消しのボタンもなく、履歴の画面に「一部返済」「返済済み」と表示されるだけで、その状態を付けるのは運営の側です。出金の機能も「出金の申請」と「出金の履歴」の2つで、出金の画面のプログラムには融資に触れる処理がありません。
▼申請と履歴の2つだけが並ぶ出金のプログラム

出典:www.scientechquant.com
「融資を返さないと出金できない」という条件はサイトの仕組みのどこにも書かれておらず、窓口が告げているだけです。申し込んだ覚えのない融資であっても、身分証の画像や住所を出せば、個人情報が相手に渡ることにも注意が必要です。
入金の記録は運営が付けた数字を読み出すだけで支払いの証拠にならない
入金についても、利用者の側にある機能は「入金履歴を読み出す」ものだけです。利用者が金額を入れて入金を申し込む機能はなく、入金履歴の画面は運営の側が記録した数字をそのまま表示します。
▼入金履歴の読み出しだけを持つ入金履歴の画面のプログラム

出典:www.scientechquant.com
相談者の画面の入金履歴にも、相談者が振り込んだと話す額と合わない入金の記録が含まれていました。画面の「入金」や「利用可能資金」「実現損益」は、実際に振り込んだお金や引き出せるお金を示すものではありません。手元の振込の控えと突き合わせて、実際に出ていったお金を確かめてください。
現金の預かり証のティー・ロウ・プライスは正規の会社が現金の受け渡しを求めないと明言している
グループで共有された現金預かり証には、「ティーロウプライスジャパン」の表示がありました。名前を使われたとみられる正規の会社は、関東財務局長(金商)第3043号の登録を受けるティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社です。
相談者が検索で見たという「ティーロープライスジャパン合同会社」は、法人番号公表サイトで見つかりませんでした。その正規の会社は、2025年9月12日付の注意喚起で次のように書いています。
(前略)
また、SNSメッセージ、対面、電話等により、口座開設、振込、送金、現金の受け渡し、または出資をするように直接働きかけることはありません。
(後略)
▼現金の受け渡しを求めないと明言する正規の会社の注意喚起

出典:ティー・ロウ・プライス・ジャパン
預かり証にあった「Scientech.Research.LLC」も、アドレスのように見えますが、research.llcというドメインは登録されていません。名前を使われた会社自身が現金の受け渡しを否定しているので、手渡しを求められても応じず専門家に相談してください。
【参考】
・レイメイ・フィナンシャル・キャピタル(https://www.rfcapitalspro.com/)
・モニクルフィナンシャル-【注意喚起】当社公式ウェブサイトに酷似したウェブサイトに関するお知らせ(https://moniclefinancial.co.jp/news/20251113)
・ICANN-Registration data lookup tool(https://lookup.icann.org/en/lookup)
・ST-プログラム(https://www.scientechquant.com/js/index-legacy-Df7VVKiq.js)
・ST-融資のプログラム(https://www.scientechquant.com/js/Borrow-legacy-DkfJcIqf.js)
・ST-出金のプログラム(https://www.scientechquant.com/js/Withdraw-legacy-Gliqm4tb.js)
・ST-入金履歴の画面のプログラム(https://www.scientechquant.com/js/index-legacy-CNpDwcqt.js)
・ティー・ロウ・プライス・ジャパン-ティー・ロウ・プライスを騙った投資勧誘にご注意ください(https://www.troweprice.com/financial-intermediary/jp/ja/about/fund-notices/20240130.html)
・国税庁-法人番号公表サイト
Scientechの名前が投資勧誘に悪用されやすい理由

正規のScientechは、日本の個人と取引する会社ではありません。それでも名前が勧誘に使われるのは、金融庁の登録簿に載っていること、会社の事業の性格、日本語の情報の少なさ、社名や業務の言葉の響きという4つの事情が重なるためとみられます。
高速取引行為者として登録簿に載っているため実在の会社の話だと受け取られやすい
金融庁の高速取引行為者の登録一覧には、令和8年10月6日現在で54の業者が載っており、Scientech Research LLCもその1社です。登録番号や登録日まで公開されているので、勧誘の中で「金融庁に登録された会社」と言われると、調べた人ほど本物だと受け止めてしまいます。
一方で、令和8年9月25日更新の金融庁の無登録業者の一覧には、「高速取引行為者〇〇の商号等を詐称」とする行が、Scientechの行を含めて12件あります。名前の知られていない海外の高速取引行為者を名乗る手口は、Scientechに限らず繰り返し使われている型です。
高速取引行為者の登録は、個人に投資を勧めてよいという許可ではありません。登録簿で名前を確かめられても勧誘する資格の裏付けにはならないので、勧誘の中で高速取引行為者の名前が出てきたら、その時点で疑ってください。
自己資金だけで取引する会社のため個人向けの窓口と比べる手がかりがない
前の章で見たとおり、正規のScientechは自社の資金で売買する会社で、公式サイトに個人向けの口座開設やアプリ、日本語の問い合わせ先の案内はありません。ページの多くは採用の案内です。
本物の顧客向けの画面や窓口が存在しないため、勧誘で見せられた取引サイトを「本物と比べて違う」と確かめることができません。
比べる相手がないことが、取引サイトの「ST」の名前や見慣れない画面を疑うきっかけを奪っています。個人向けの窓口がない会社の名前で口座を作らされた時点で、おかしいと判断できます。
日本語の公式情報も注意喚起もないため偽物を打ち消す情報が届きにくい
正規のScientechの公式サイトは英語だけで作られ、名前を騙る勧誘についての注意喚起も見当たりません。ティー・ロウ・プライスやモニクルフィナンシャルが日本語で注意を呼びかけているのとは対照的です。
そのため、日本の利用者が名前で検索しても、正規の会社自身が偽物を否定する言葉にたどり着けません。検索で目立つのは返金をうたう業者などの記事で、正規の会社の声は届きにくい状態です。正規の会社が否定していないことを、勧誘が本物である根拠と受け取らないでください。
クオンツや高速取引という言葉があるためAIの自動売買の話が本物らしく聞こえやすい
正規のScientechは、公式サイトで自らを「quantitative trading firm」、つまり数理モデルで売買するクオンツの会社と紹介しています。
本件の取引サイトのアドレスにも「quant」の文字が入っています。さらにプログラムには、ホーム画面の見出しとして「高速取引で」「チャンスを先取り」という言葉が書かれていました。
こうした言葉は、勧誘で語られた「AIを使ったOTC取引」「勝率10割」の話と結びつき、専門的で確かな仕組みのように聞こえます。しかし、クオンツや高速取引の会社が個人から資金を集めて運用し、勝率を約束することはありません。難しい言葉で説明されるほど、登録の種類と運用の相手を確かめてください。
【参考】
・Scientech Research(https://www.scientechresearch.io/)
・金融庁-高速取引行為者登録一覧
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について
・ティー・ロウ・プライス・ジャパン-ティー・ロウ・プライスを騙った投資勧誘にご注意ください(https://www.troweprice.com/financial-intermediary/jp/ja/about/fund-notices/20240130.html)
・モニクルフィナンシャル-【注意喚起】当社公式ウェブサイトに酷似したウェブサイトに関するお知らせ(https://moniclefinancial.co.jp/news/20251113)
Scientechの不審点を見抜く方法

今回の勧誘では、相手が次々に「確かな材料」を見せてきました。著名人の広告、会社の公式サイト、取引サイトの画面、入金の記録、融資の条件、そしてほかの参加者の現金預かり証です。
見せられたものは相手が用意したものです。一つずつ、相手の手の届かない場所で裏を取れば、どこで話が食い違うかが見えてきます。見せられた順に確かめる点をまとめます。
- 【広告】著名人が投資を勧める広告は、まずなりすましを疑う
- 警察庁は、著名人が無料で投資教室を開くことは基本的にないとしています。名前を使われた本人も、自分の名前を使った詐欺広告に注意を呼びかけています。
- 【公式サイト】会社のサイトは、タブの名前とソース表示に別の会社の名前が残っていないかを見る
- rfcapitalspro.comは、タブとソースにモニクルフィナンシャルの名前が残り、問い合わせ先のメールのドメインは登録されていませんでした。
- 【取引サイトの名前】画面が名乗る名前と相手が告げた会社名が同じかを確かめる
- 投資先は「Scientech」と告げられましたが、取引サイトは「ST」とだけ名乗っていました。食い違ったら、両方の名前を金融庁の事業者検索と法人番号公表サイトで検索してください。
- 【入金の表示】画面の入金や利益の数字を振込の控えと突き合わせる
- 本件の取引サイトの入金履歴は、運営が記録した数字を読み出すだけの作りでした。画面の数字は、実際に振り込んだお金や引き出せるお金の証拠になりません。
- 【融資と返済の条件】申し込んでいない融資や返済しないと出金できないという条件に応じない
- 取引サイトのプログラムには、返済の機能も、出金を融資で止める処理もありませんでした。返済の名目で振込を迫られても、その場では応じず専門家に相談するまで手を止めてください。
- 【現金の預かり証】手渡しを勧められたら、預かり証に名前の出ている会社自身の告知を見る
- 正規のティー・ロウ・プライスは、現金の受け渡しを求めないと明言しています。他人名義の預かり証は、手渡しに応じる理由になりません。
6つのうち一つでも食い違いが見つかれば、それ以上お金を送らないでください。すでに振り込んでしまった場合や、口座の凍結などで手元の資金が動かせない場合も、一人で相手と交渉せず信頼できる第三者である専門家に早めに相談することが大切です。
Scientechに関する口コミや被害事例

本件の取引サイトや公式サイトのアドレス、レイメイ・フィナンシャル・キャピタルの名前で、本件を指す書き込みは見つかりませんでした。一方、Yahoo!知恵袋には、融資の返済を出金の条件とされた相談や、「SCIENTECH」「MNCF」の名前が出てくる質問があります。
この章では、まずどこを探し、何が見つからなかったかを示します。そのうえで知恵袋の3件の質問を投稿の新しい順に取り上げ、それぞれ本件と重なる点と違う点を添えて紹介します。
Scientechやレイメイ・フィナンシャル・キャピタルの名前で本件を指す投稿は見当たらなかった
X(旧Twitter)、5ちゃんねる、Yahoo!知恵袋で、scientechquant.comやrfcapitalspro.com、レイメイ・フィナンシャル・キャピタルの名前を探しましたが本件の書き込みは見当たりませんでした。
名前で検索して上位に出てくるのは、正規のScientechの情報と金融庁の公表のほかは、調査会社や返金をうたう業者の記事です。こうした記事の多くは、最後にLINEでの相談へ誘導しています。被害を取り戻せると持ちかけて費用を求める二次被害もあるため、相談先は自分で選んでください。
証券会社を名乗るアプリで融資を受け返済しないと引き出せないと言われた事例
2026年3月11日の質問は、SNS型投資詐欺に遭ったと気づいた人の相談です。
(前略)
その証券会社を謳うアプリの中で融資を受けました。
・返済を完了しないと資金の引き出しは出来ない
・返済期限2週間、延滞1日10%
(後略)
▼アプリの融資の返済を引き出しの条件とされた知恵袋の質問

出典:Yahoo!知恵袋
ベストアンサーは、「融資したというのは詐欺グループが詐欺サイトの数字を動かしただけ」だとしています。これは回答者個人の見方で、相手が実際にお金を貸したかどうかまでは分かりません。
ただ、本件の取引サイトのプログラムでも、融資の状態は運営の側が付ける作りで、利用者が返済する機能はありませんでした。画面の中の融資を返す名目で振込を求められても、自分だけで判断せず専門家の意見を聞いてください。
SCIENTECHの名前の証券口座に入金を重ねた後でグループが消えた事例
2025年9月26日には、短い2行の質問が投稿されています。
SCIENTECHって会社
ネット証券みたいですが、詐欺じゃないですか?
6日後の10月2日にベストアンサーに選ばれた回答には、回答者自身の経験が書かれていました。
最近株式勉強の会とやらのライングループに入ると毎日勉強会のようなものがあり、1週間程経過すると、毎日値上がりする株の購入の為こちらのsientechという謎のネット証券に口座を開かされました。
(中略)
毎日積み上がっていく資産を見て信じた方が更に入金を繰り返し挙げ句の果てにはグループラインごと居なくなり失ったお金は戻ってきません。
(後略)
▼SCIENTECHの口座に入金後グループが消えた知恵袋の回答

出典:Yahoo!知恵袋
これは回答者個人の経験と見方です。株の勉強会、口座の開設、増えていく資産の表示という流れは本件と重なりますが、回答は本件の取引サイトのドメインが取得される約1年前のもので、アドレスも示されていません。同じ名前が1年前から投資グループの勧誘に使われていたことを示す事例として参考にしてください。
MNCFを名乗るLINEの投資コミュニティについての相談
2025年9月25日の質問は、rfcapitalspro.comのお知らせに残っていた「MNCF」の名前が出てくる相談です。
LINEの投資コミュニティの事です。
先生とアシスタントと呼ばれる方がいて検索するとMNCFモニクルフィナンシャルが引っ掛かります。HPはしっかりしたものだと思います。その中での投資グループの参加へは年62000円参加費が必要となっています。
(後略)
▼MNCFを名乗るLINEの投資グループを尋ねた知恵袋の質問

出典:Yahoo!知恵袋
質問者は補足で、サインインを7日続けるとAmazonギフト券2000円、30日で1万円、60日でiPhone16がもらえると書いています。グループで毎日「サインイン」させ、景品で参加を続けさせる仕組みです。
rfcapitalspro.comのお知らせ「第6期株投資学習グループ始動記念キャンペーン」の特典も、連続7日間で2,000円相当、30日間で10,000円相当、60日間でiPhone 16 Pro Maxです。日数も中身も一致します。
今の公式サイトに残る告知と同じ特典を掲げたグループが、1年前に「MNCF」の名前で動いていたことになります。「MNCF」から「RFC」へと看板を掛け替え、景品で人を引き留める投資グループが続いているとみられます。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-2026年3月11日の質問(証券会社を名乗るアプリで融資を受け返済しないと引き出せないと言われたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12326161262)
・Yahoo!知恵袋-2025年9月26日の質問(SCIENTECHという会社は詐欺ではないかという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12320396907)
・Yahoo!知恵袋-2025年9月25日の質問(MNCFを名乗るLINEの投資コミュニティは詐欺ではないかという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13320358088)
・レイメイ・フィナンシャル・キャピタル-第6期株投資学習グループ始動記念キャンペーン開催(https://www.rfcapitalspro.com/new3.html)
Scientechに関する口コミが少ない理由

勧誘は、Signalのグループと個別の連絡の中で進みました。外からは見えない場所でのやり取りで、グループには勧誘する側の参加者が混じっていることもあるため、被害に気づいた人の声が外に出るまでに時間がかかります。
取引サイトは、ログインした人しか中を見られません。画面が名乗る名前も「ST」の2文字だけで、名前で検索しても本件のサイトにたどり着きにくく、体験談が一か所に集まりません。
rfcapitalの名前のアドレスは止められては取り直され、グループの名前も「MNCF」から替わっています。同じ仕組みの被害でも、人によって覚えている名前が違えば、ひとつの事案の評判としてまとまることはありません。
この3つの事情は、被害に遭った人が少ないことを意味しません。名前で探して何も見つからなくても、手渡しや融資の返済の話が出た段階で、その場で決めずに専門家へ相談してください。
