今回の相談は、出会い系サイトで知り合った女性から、Bitget Walletの中でJPYCを使う運用に誘われたのが始まりです。国民生活センターも、出会い系サイトなどで知り合った相手が紹介する投資サイトは架空のことがあると注意を呼びかけています。
相談者は、アプリで開いたサイト(8.16816868.com)でJPYCを購入し、相手が指定した個人名義の口座へ振り込みました。その後、資金を引き出そうとすると先に税金を払うよう求められています。
調べると、サイトの「JPYC」はUSDTの設定に名前とロゴを付け替えたもので、白書の欄はTetherのページでした。正規のBitget Walletの公式検証でも、このアドレスは「非公式チャンネル」と出ます。サイトには、出金の前に税金を払う仕組みもありません。
本記事では、サイトのデータと、正規のBitget WalletとJPYC株式会社の案内を照らし合わせた結果を弁護士が解説します。出金の前に支払いを求められたとき、手元で確かめられる記録も紹介します。
Bitget Walletを装う偽サイトに関するトラブルの概要

相談者は、出会い系サイトで知り合った女性から、Bitget Wallet(ビットゲットウォレット)の中で開くサイト(8.16816868.com)でのJPYCを使った運用に誘われました。相手が指定した個人名義の口座へ振り込むとサイトに残高が表示されましたが、出金の前に税金を払うよう求められています。
この章では、サイトが名乗る名前と画面の作り、正規のBitget Walletが公式検証で示した結果、正規のJPYCの手に入れ方、出会い系サイトをきっかけとする投資詐欺への国民生活センターの注意喚起を順に確かめます。
8.16816868.comはBitget Walletを名乗りJPYCで運用させる取引サイトとして作られている
8.16816868.comを開くと、ブラウザ最上部のタブに「Bitget Wallet」と表示され、ウォレットを接続する画面に移ります。ページのソースにも「ビットゲットウォレット」の文字があり、サイトがこの名前を名乗っていることが分かります。一方で、接続の画面の見出しには別の名前が出ています。
▼タブにBitget Walletと出るウォレットの接続画面

出典:8.16816868.com
サイトのプログラムを取得し、ログインの後に出る画面を確かめました。「ステーキング」の画面は預ける通貨をUSDTとJPYCで切り替える作りで、秒単位の取引の画面でも支払いにJPYCを選べます。資産の画面にはJPYCの残高を表示する欄が用意されていました。
正規のBitget Walletの公式検証では8.16816868.comは公式チャンネルと表示されない
正規のBitget WalletはBGW Technology Limitedが提供する、利用者が自分で資産を管理するウォレットです。アプリの中のブラウザでは、ほかの事業者が作ったサイトも開けます。そうした第三者のサイトの扱いについて、英語の利用規約には次の一文があります。
(前略)
We do not verify or control Third Party Content and we do not control Third Party Services.
(後略)
第三者のコンテンツを検証も管理もせず、第三者のサービスも管理しないという意味です。正規のBitget Walletのサイトには、ドメインやメールアドレスが公式のものかを調べる「公式チャンネル認証」があります。ここに8.16816868.comを入れると次のように表示されました。
非公式チャンネル
▼8.16816868.comを非公式チャンネルと示す正規のBitget Walletの公式検証

出典:Bitget Wallet
正規のBitget Walletのアプリの中で開いたとしても、8.16816868.comを正規のBitget Walletが運営していることを示す情報は確認できませんでした。
正規のJPYCは発行会社の口座へ本人名義で振り込んで手に入れる
正規のJPYCは、資金移動業者として登録を受けたJPYC株式会社(関東財務局長第00099号)が発行する、円建てのステーブルコインです。JPYC株式会社のヘルプは、手に入れる手順を次のように案内しています。
注文額: 購入したい数量を日本円で入力します(1 JPYC = 1円)。1回の発行上限は1,000,000円です。
「発行予約完了」画面が表示されたら、指定の銀行口座情報へ、ご注文いただいた金額と同額の日本円を入金してください。
▼日本円を指定の口座へ入金して発行を受けるJPYCの手順

出典:JPYC株式会社
入出金のルールでは、振り込む口座の名義を登録した本人の名義と「完全に一致させてください」としています。相手が指定した個人名義の口座へ振り込む手順は、正規のJPYCの発行の流れにはありません。
出会い系サイトなどで知り合った相手が勧める投資サイトは架空のことがあると国民生活センターが示している
国民生活センターが2021年2月に公表した注意喚起は、出会い系サイトやマッチングアプリを使う機会が増えた背景に触れたうえで、こう述べています。
このようなサービスでは、オンラインで気軽にパートナーを探せる一方、本人確認の徹底が難しいことから、本来の利用方法ではない目的で近づいてくる人物とマッチングしてしまうこともあります。中でも、現在経済的に見通しの立ちにくい状況が続いているためか、詐欺的な賭け事や投資等の海外サイトに勧誘する手口が目立っています。
同じページは、相談事例から見た問題点として「メッセージのやり取りだけでは本人確認が難しい」「紹介された投資サイト等が架空」「出金ができなくなり、結局損失となる」などを挙げています。
▼紹介された投資サイトが架空と指摘する国民生活センターの注意喚起

出典:国民生活センター
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、本件の相談者も、出会い系サイトの相手から特定のサイトを開くよう案内されています。会ったことのない相手が開くよう勧めたサイトには、振り込む前に専門家に相談してください。
【参考】
・8.16816868.com(https://8.16816868.com/)
・Bitget Wallet-公式チャンネル認証(https://web3.bitget.com/ja/about/official-verification)
・Bitget Wallet-Terms of Use(https://web3.bitget.com/BitgetWallet_Terms_of_Use.pdf)
・JPYC株式会社-JPYCの発行方法(https://faq.jpyc.co.jp/s/article/jpyc-issue-how-to)
・JPYC株式会社-日本円の入出金ルール(https://faq.jpyc.co.jp/s/article/jpy-deposit-withdrawal-rules)
・国民生活センター-出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとする投資詐欺にご注意を-恋話(コイバナ)がいつの間にかもうけ話に-
Bitget Walletを装う偽サイトへ誘導され被害につながるまでの経緯

この章では、出会い系サイトで知り合った女性からの勧誘、相手が指定した口座への振込、出金の前の税金の要求という3つの段階に分けて、被害までの流れを順に見ていきます。
出会い系サイトで知り合った女性からBitget WalletでJPYCを使う運用に誘われた
相談者は、出会い系サイトで知り合った女性と親しくなった後、Bitget Walletの中でJPYCを使う運用を勧められました。相談者が残した画面には、Bitget Walletのアプリと、アプリの中のブラウザ(DAppブラウザー)で開いた8.16816868.comが写っています。
相手が指定した個人名義の口座へ振り込むとサイトにJPYCの残高が表示された
相談者はJPYCを購入し、相手が指定した複数の個人名義の口座へ銀行振込で送金しました。受け取る口座の名義に会社名はなく、どれも別々の個人の名前でした。その後、8.16816868.comの画面にはJPYCの残高が表示されていました。
引き出そうとすると先に税金を払わなければ出金できないと告げられた
相談者が資金を引き出そうとすると、税金を先に払うまでは出金できないと言われました。相談者はこの時点で問題に気づいています。それまでに振り込んだお金は、相手が指定した個人名義の口座に渡っています。
出会い系サイトで知り合った相手を信頼し、指定された個人名義の口座へ振り込み、画面の残高を引き出そうとした段階でさらに支払いを求められる。本件の被害は、この流れの中で生じました。
Bitget Walletを装う偽サイトの関連サイトの情報を調査した結果

8.16816868.comのドメインの登録情報(RDAP)、サイトのプログラムが接続先として持つ166885.comの中身と過去の記録、名乗る名前が金融庁の名簿に載っているかを調べました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 画面の名前 | Bitget Wallet(タブ)/Coincheck Digital banking(ウォレットの接続の画面) |
| 取引サイト | 8.16816868.com |
| ドメインの取得日時 | 2026年8月28日 20時39分(日本時間) |
| 登録を扱った事業者 | TuringSign Inc. d/b/a Cosmotown(有効期限は2027年8月28日) |
| プログラムの接続先 | 166885.com(2026年6月16日取得) |
| 運営会社・所在地の表示 | なし |
| 金融庁の登録 | 確認できず(Bitget Wallet・Coincheck Digital bankingで照会) |
| 窓口 | サイトの中のチャット |
16816868.comは2026年8月下旬に取得されたドメイン
RDAPで16816868.comの「registration」の行を見ると、登録は「2026-08-28T11:39:31Z」で、日本時間の8月28日20時39分です(Zは協定世界時の印)。取り次いだ登録事業者は米国のCosmotownで、名義人の情報は伏せられています。
▼2026年8月28日の取得を示す16816868.comの登録情報

出典:rdap.verisign.com
同じ日の日付で、通信の暗号化に使う証明書の発行も始まりました。サイトが動いているのは先頭に「8.」を付けたアドレスだけで、16816868.comやwww.16816868.comは開きません。数字だけのドメインに、さらに数字を足したアドレスで運営されていることになります。
データの置き場所の166885.comは駐車ページだったドメインを取り直したもの
8.16816868.comのプログラムには、接続先として166885.comというアドレスが書き込まれています。166885.comのRDAPでは、取得は2026年6月16日、登録を取り次いだのはチェコのGransyです。
166885.comを開くと、8.16816868.comと同じウォレットの接続画面が表示され、タブに「Bitget Wallet」と出ます。プログラムを調べたところ、トップのページはファイルの中身まで同じで、通貨の設定のデータもJPYCの行まで一致していました。
▼166885.comでも同じ名前のタブで開くウォレットの接続画面

出典:166885.com
Internet Archiveに残る2025年1〜2月の166885.comの記録は、別のページへ移すだけの駐車ページでした。空いていたドメインを取り直し、同じサイトを置いたとみられます。8.16816868.comが開けなくなっても、166885.comで同じ画面とデータを出せる作りです。
金融庁の名簿にBitget Walletの名前はなく同じ名前の取引所の運営会社は警告を受けている
金融庁の金融事業者一括検索で「Bitget Wallet」「Coincheck Digital banking」を照会しても、該当する事業者は出てきませんでした。一方で、「Bitget」の名前の取引所の運営会社には、金融庁が令和5年3月31日と令和6年11月28日の2回警告書を出しています。
・内 容 等:インターネットを通じて、日本居住者を相手方として、暗号資産交換業を行っていたもの
▼Bitgetの名前の取引所の運営会社に出された金融庁の警告書

出典:金融庁
無登録業者の一覧(令和8年9月25日更新)にも、「Bitget」のサービスを提供する別の会社が載っています。Bitgetの名前を持つサービスも、日本で登録を受けた業者ではありません。正規のBitget Walletの名前で勧められても、日本の登録業者の保護があるとは考えないでください。
なお、正規のコインチェックは暗号資産交換業者として登録を受けていますが、一括検索に「Coincheck Digital banking」という名前は出てきません。ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。
その他、次の3点についても確認しました。
- Googleのセーフブラウジングで調べても、8.16816868.comと166885.comに危険なサイトとの判定は出ていない
- urlscan.io・archive.today・Common Crawlのいずれにも、2つのアドレスの画面の記録が残っていない
- 2つのアドレスはいずれもCloudflareを通しており、同じサーバーにある別のサイトは調べられない
開くよう勧められたアドレスは、RDAPで取得日を確かめ、正規のBitget Walletの公式チャンネル認証にも入れてみてください。振込を済ませた後で気づいたときは、追加の支払いに応じる前に専門家に相談してください。
【参考】
・rdap.verisign.com-16816868.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/16816868.com)
・rdap.verisign.com-166885.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/166885.com)
・166885.com(https://166885.com/)
・金融庁-無登録で暗号資産交換業を行う者について(Bitget Limited)
Bitget Walletを装う偽サイトに関する不審点

8.16816868.comについて、次の6点を2026年10月19日に確かめました。JPYCの設定の中身と値段、ウォレットの接続の仕組み、日本語の画面にだけある一文、画面ごとに変わる名前、出金の条件です。
6つの不審点に共通するのは、サイトが名乗る名前も、扱う「JPYC」も、表示される残高も、サイトの側のデータで決められていることです。正規の事業者や通貨の名前が画面に出ていても、その中身はサイトの運営者が書き換えられます。
サイトのJPYCはUSDTの設定を写したもので白書と公式サイトの欄がTetherを指している
8.16816868.comには、扱う通貨の設定を返すデータがあり、ログインしなくても開けます。そこに並ぶ通貨は、ドル建てのステーブルコインであるUSDTとJPYCの2つだけです。
JPYCの行をUSDTの行と項目ごとに比べると、30の項目で値がまったく同じでした。作成日時はどちらも「2021-02-21 09:28:22」と秒まで一致し、発行総量と流通量も同じ数字です。白書と公式サイトの欄には、USDTを発行するTetherのページのアドレスが入っていました。
▼白書と公式サイトの欄がTetherを指すサイトのJPYCの設定

出典:8.16816868.com
USDTの行と違うのは、名前とロゴ、表示する画面、入金に関わる項目などだけです。サイトの「JPYC」は、USDTの設定に名前とロゴを付け替えて作られたとみられます。正規のJPYCの発行会社とのつながりを示すものは、この設定のどこにもありません。
サイトはJPYCを1ドルとして扱い暗号資産での入金を受け付けない設定にしている
同じJPYCの行で、ドルでの値段(usd_price)と発行時の値段(issue_price)は、どちらも「1.00」でした。正規のJPYCは「1 JPYC = 1円」ですが、サイトの設定では1JPYCが1ドルとして扱われています。
入金の可否を表すとみられる項目(open_recharge)は、USDTが「1」、JPYCが「0」です。JPYCとUSDTの取引の組も、2026年9月24日に作られたばかりでした。相談者の画面のJPYCの残高は、正規のJPYCをウォレットから送って積み上がったものではないとみられます。
ウォレットの接続はアドレスを会員番号にするだけで残高はウォレットの中にない
ウォレットの接続の画面で「Connect Wallet」を押すと、サイトはウォレットのアドレスを読み取り、アドレスの文字列への署名を求めます。プログラムを調べたところ、そのアドレスと署名、招待コードをサイトのログインの窓口に送るだけの作りでした。
▼ウォレットのアドレスでログインするだけのサイトのプログラム

出典:8.16816868.com
利用者側のプログラムには、ウォレットの中のトークンを動かしたり、使う許可を求めたりする処理が見当たりません。サイトに出る残高は、ウォレットの中身ではなくサイトが記録している数字です。正規のJPYCの発行会社も、見た目だけでは本物か分からないと注意しています。
画面上で「JPYC」という名称や画像が表示されていても、それは偽装可能です。
▼名称や画像の表示は偽装できると注意するJPYCのヘルプ

出典:JPYC株式会社
日本語の画面にだけBitgetの3億ドルの保証金をうたう一文がある
サイトの言葉の辞書を言語ごとに比べると、日本語の辞書にだけあって英語の辞書にない項目が2つありました。そのうちの1つは、Bitgetの名前を出して保証をうたう一文です。
Bitgetは3億ドル規模の保証金を用意し、ユーザーの皆様により安定した、安全なサービス環境を提供できるよう取り組んでいます。
▼日本語の辞書のAIfinance_desc2に書かれたBitgetの一文

出典:8.16816868.com
この文を使うのは、JPYCとUSDTを切り替えて預ける「ステーキング」の画面だけです。正規のBitget Walletも保護基金の金額として3億ドルを掲げていますが、その対象を次のように説明しています。
(前略)
Bitget Walletプラットフォーム自体に起因する問題によりユーザーの資産損失が発生した場合、リスク保護基金を活用してユーザーの資産保護を行い、ユーザーの権利と利益が完全に保護されるようにします。
▼対象をBitget Wallet自体に起因する問題とする正規の保護基金

出典:Bitget Wallet
サイトの一文は、正規の保護基金の言葉を借り、日本の利用者に向けて書き足されたものとみられます。3億ドルという数字が出てきても、このサイトでの損失がその対象になるとは読めません。
ウォレットをつなぐ画面にはCoincheck Digital bankingという別の名前が出る
タブには「Bitget Wallet」と出るのに、ウォレットの接続の画面の見出しは「Coincheck Digital banking」です。この名前はプログラムを調べたところ、データから読み込まれるのではなく、画面の部品に固定の文字として入っていました。
ログインした後のトップのロゴは「XK」の図柄で、Bitgetのロゴでもありません。正規のコインチェックは、自社のサイトのアドレスを次のように示しています。
(前略)
ドメインが「coincheck.com」「〇〇〇.coincheck.com」または「coincheck.blog」ではないサイトは偽サイトです。
(後略)
▼自社のドメイン以外を偽サイトとする正規のコインチェックの注意

出典:コインチェック株式会社
正規のコインチェックが示すサービスの中に、「Digital banking」という名前は見当たりませんでした。画面ごとに別の会社の名前を名乗るサイトを、正規の事業者が運営しているとは考えにくい状況です。
出金の前に税金を払う手順はなく出金の条件はリチャージ額の80%の消費と書かれている
出金の画面はログインの後でないと見られないので、注意書きはプログラムそのものを取得して読みました。日本語の辞書には、英語の辞書にない次の一文があります。
プラットフォームでのマネーロンダリングや裁定取引を防ぐために、引き出しを開始するには、消費額がリチャージ額の80%(累積)に達する必要があります。
一方、「税」の文字が出てくるのは、会員の段階の説明にある「免税」と、規約の一般的な文言だけでした。出金の前に税金を払う画面や手順は、サイトのプログラムにありません。相談者が求められた税金の支払いは、サイトの仕組みの外で持ち出されたことになります。
解約の画面には「途中解約の場合、違約金が発生します。」という文もあります。出金の前に支払いを求められたら、サイトの画面ではなく相手の言葉だけで決まっていないかを確かめ、払う前に専門家に相談してください。
【参考】
・8.16816868.com-通貨の設定(https://8.16816868.com/api/market/currency_matches)
・8.16816868.com-プログラム(https://8.16816868.com/static/js/index.9f2bbeb7.js)
・JPYC株式会社-偽のトークン(偽JPYC)取引に関する注意喚起(https://faq.jpyc.co.jp/s/article/fake-jpyc-warning)
・Bitget Wallet-保護基金(https://web3.bitget.com/ja/about/safety-commitment)
・コインチェック株式会社-暗号資産を安全にお取引いただくために(https://corporate.coincheck.com/security)
Bitget WalletとJPYCの名前が勧誘に悪用されやすい理由

正規のBitget WalletとJPYCは、いずれも名前を使われた側です。それでも勧誘の材料に選ばれやすい理由として、円と同じ値動き、保護基金の言葉、同じ名前の取引所との区別、ウォレットをつなぐだけで始められる手軽さの4つを挙げます。
JPYCは1円と同じ価値で動かないためサイトの残高が円の預金のように見える
正規のJPYCは「1 JPYC = 1円」で発行される円建てのステーブルコインで、値動きの大きい暗号資産とは性質が違います。画面に並ぶJPYCの数字は、そのまま円の金額として読めてしまいます。
サイトの残高が増えていくと、預けた円が増えているように受け取りやすいとみられます。ただし、前章で見たとおり、8.16816868.comの「JPYC」は正規のJPYCとつながっていません。数字が円の単位に見えることと、その円を引き出せることはまったく別の話です。
正規のBitget Walletの保護基金を引き合いに出すと損失が補われるように聞こえる
正規のBitget Walletは、「お客様の資産と取引を保護する3億ドルの保護基金。」という見出しを掲げています。勧誘の中で同じ金額を聞かされると、万一のときも補ってもらえると考えやすくなります。
しかし、その基金が向けられているのは、Bitget Walletそのものに原因がある損失です。アプリの中で開いた別のサイトで生じた損失まで対象になるとは読めません。保証をうたう話を聞いたら、誰の、どの損失に向けた保証かを確かめることが欠かせません。
Bitgetの名前の取引所とウォレットは別のサービスで区別がつきにくい
「Bitget」の名前は、取引所の名前としても、ウォレットの名前としても使われています。正規のBitget Walletの保護基金のページも、Bitgetが構築した仕組みと基金を共有すると説明しており、利用者から見ると両者は近いものに映ります。
そのため、「Bitgetで運用」「Bitget Walletで運用」と言われても、どのサービスの話なのかを利用者が見分けるのは容易ではありません。8.16816868.comも、タブでBitget Walletを名乗りながら、日本語の画面ではBitgetの保証金を持ち出していました。
勧誘の中で聞いた名前をうのみにせず、案内されたアドレスがその会社のものかを会社の公式サイトで照らし合わせることが大切です。正規のBitget Walletなら、公式チャンネル認証でアドレスを確かめられます。
ウォレットをつなぐだけで始められ運営会社と契約を結んだ意識が生まれにくい
8.16816868.comには、会員登録や本人確認、規約への同意の手続きがありません。ウォレットをつないで署名すれば、そのまま運用の画面に進めます。相手の会社名を一度も目にしないまま、入金を重ねてしまいやすい作りです。
正規のBitget Walletのヘルプも、ソーシャルメディアを使った詐欺について次のように注意しています。
詐欺師は、カスタマーサポートやエアドロッププロジェクトチーム、あるいは「投資アドバイザー」を装い、積極的にDMを送り、資金の送金やシードフレーズ開示、悪意のあるリンクのクリックを誘導しようとします。
▼投資アドバイザーを装う詐欺に注意を促す正規のBitget Walletのヘルプ

出典:Bitget Wallet
同じヘルプは、防ぐ方法として「ログインまたはウォレット接続前にURLを再確認してください。」とも書いています。ウォレットをつなぐ前にアドレスを確かめ、迷ったら専門家に相談してください。
【参考】
・Bitget Wallet-保護基金(https://web3.bitget.com/ja/about/safety-commitment)
・Bitget Wallet-ソーシャルプラットフォームにおけるプライベートメッセージ詐欺(https://web3.bitget.com/ja/helpCenter/418)
・JPYC株式会社-JPYCの発行方法(https://faq.jpyc.co.jp/s/article/jpyc-issue-how-to)
Bitget Walletを装う偽サイトの不審点を見抜く方法

8.16816868.comの画面に出ていた名前や残高は、どれもサイトの中で作られたものでした。反対に、ウォレットの中身、銀行の振込の記録、ドメインの登録情報などは、サイトの運営者が書き換えられない場所に残ります。
そこで、確かめる事実の記録がどこに残っているかで、見抜く方法を6つに分けました。サイトの画面の外にある記録と照らし合わせることが、どの項目にも共通する考え方です。
- 【ウォレットの中】サイトの残高ではなく、正規のBitget Walletの資産の一覧にそのJPYCがあるかを見る
- 8.16816868.comはウォレットのアドレスをログインに使うだけで、ウォレットの中のトークンを動かす処理を持っていませんでした。サイトに出る残高は、サイトが記録している数字です。
- 【発行会社の口座】JPYCを手に入れるために個人名義の口座へ振り込ませる話は疑う
- 正規のJPYCは、JPYC株式会社が案内する口座へ、登録した本人の名義で日本円を入金して発行を受けるものです。知り合った相手が指定する個人名義の口座は、その流れにありません。
- 【正規の公式の窓口】名乗られた名前は、その会社の公式の確認手段で照らし合わせる
- 正規のBitget Walletの公式チャンネル認証では、8.16816868.comは「非公式チャンネル」と表示されました。正規のコインチェックも、coincheck.comなど自社が示すドメイン以外のサイトを偽サイトとしています。
- 【サイトのデータ】通貨や保証の説明が正規の事業者の説明と食い違えば入金しない
- サイトの「JPYC」は白書と公式サイトの欄がTetherを指し、1JPYCを1ドルとして扱っていました。日本語の画面にだけあるBitgetの保証金の一文も、正規の保護基金の対象とは合いません。
- 【請求の文言】出金の前の税金はサイトの仕組みの外で求められたものとして扱い、払う前に専門家に相談する
- 8.16816868.comのプログラムには、出金の前に税金を払う画面も手順もありませんでした。支払いの名目が相手の言葉の中にしかないなら、払う前に専門家に相談してください。
- 【ドメインの登録】開くよう言われたアドレスの取得日と、運営会社名の金融庁での扱いを確かめる
- 16816868.comは2026年8月28日、接続先の166885.comは同じ年の6月16日に取得されたばかりでした。Bitgetの名前の取引所の運営会社には、金融庁が警告書を出しています。
画面の中の数字は、相手がいつでも書き換えられます。残しておくべきなのは、振込の明細、相手とのやり取り、サイトのアドレスと画面の記録です。それらを手元にまとめ、それ以上の支払いを止めたうえで信頼できる第三者に相談してください。
Bitget Walletを装う偽サイトに関する口コミや被害事例

8.16816868.comそのものを名指しした口コミは見つかっていません。一方で、JPYCとBitget Walletの名前を組み合わせた勧誘を受けたという投稿や、出会いをきっかけにBitget Walletを勧められたという相談は同じ時期の前後に見られます。
8.16816868.comや166885.comを挙げた被害の投稿は確認できない
X、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる、爆サイ等で、8.16816868.comや166885.com、接続の画面の名前「Coincheck Digital banking」に触れた投稿や質問を探しましたが、2026年10月19日の時点では1件も見つかりませんでした。
「Bitget Wallet」や「JPYC」の名前で探すと、正規のサービスの使い方や新しい機能の話題が大半を占めます。偽サイトの被害を書いた投稿があっても、正規のサービスの話題に紛れて見つけにくい状況です。
Bitget WalletでJPYCをステーキングすれば毎日報酬が入ると誘われたという投稿
Xには、2026年10月11日に、日本人の女性から勧誘を受けたという個人の投稿があります。冒頭は次のとおりです。
今日、日本人の女性から詐欺を疑う仮想通貨の勧誘を受けた。
「JPYCをBitget Walletでステーキングすると、毎日ザクザク報酬が入る」という話。
(後略)
▼JPYCをBitget Walletで増やす話を女性から持ちかけられた投稿

出典:X
この投稿が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、女性からの勧誘、Bitget WalletとJPYCの組み合わせ、ステーキングという言葉は本件のサイトの作りと重なります。
一方で、投稿者は送金先を確かめる前にやり取りを終えており、案内されたサイトのアドレスや出会いの場は書かれていません。名前の組み合わせが同じでも、アドレスを確かめるまでは同じサイトとは言えません。
マッチングアプリの相手にBitget Walletを勧められたという相談が知恵袋に寄せられている
Yahoo!知恵袋には、2025年10月13日にマッチングアプリで知り合った相手からBitget Walletを勧められたという質問があります。
(前略)
マッチングアプリでマッチングした方にBitget Walletを一緒にやって欲しいと言われました
私には知識が無いのでお断りしましたら必ずプラスになって貯蓄できる、自分を信じて欲しいと何度もBitgetに勧誘されます
(後略)
この質問への回答には、2024年11月23日の別の質問が引かれていました。マッチングアプリで知り合った女性からBitget Walletを経て投資のアプリへ誘われ、指定された個人名義の口座へ入金を重ねたのち、出金の前に利益の一部の支払いを求められたという内容です。
どちらの質問も本件より前のもので、サイトのアドレスや支払いの名目は本件と違います。それでも、出会いの相手がBitget Walletの名前を出し、個人名義の口座への入金と出金の前の支払いへ進む流れは本件と同じです。名目が何であれ、出金の前の支払いに応じる前に専門家に相談してください。
【参考】
・X-2026年10月11日の投稿(女性からJPYCとBitget Walletの運用を勧められたという書き込み)(https://x.com/i/status/2109262349588926493)
・Yahoo!知恵袋-2025年10月13日の質問(マッチングアプリの相手にBitget Walletを勧められたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12321057337)
・Yahoo!知恵袋-2024年11月23日の質問(出金の前に利益の一部の支払いを求められたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10307089775)
Bitget Walletを装う偽サイトに関する口コミが少ない理由

8.16816868.comは、数字だけのドメインに「8.」を付けたアドレスでしか開きません。取得も2026年8月と新しく、今のサイトの画面を保存した記録も見当たりません。覚えにくく外から見える記録も少ないため、同じサイトの話として口コミが積み重なりにくいとみられます。
また、被害に遭った人の記憶に残るのは、アドレスより「Bitget Wallet」や「JPYC」という正規の名前です。その名前で探すと、正規のサービスの情報が先に並びます。サイトのデータを調べたところ、2024年に作られた日本語の告知も残っており、アドレスだけを替えて運営が続いている可能性もあります。
さらに、勧誘は出会い系サイトで知り合った相手との個別のやり取りの中で進みます。打ち明けにくい事情も重なり、サイトの名前と結びついた書き込みは表に出にくいと考えられます。検索の上位に出るのは、Bitget Walletの名前で返金を持ちかける宣伝で、二次被害に気をつける必要があります。
口コミが少ないのはここまで見た作りによるもので、サイトが安全だという意味ではありません。出金の前に税金を払うよう言われた段階で手を止め、振込の明細と相手とのやり取りを持って専門家に相談してください。
