今回の相談は、SNSで知り合った相手と株の情報交換を始め、LINEとSignalのグループに加わったのが始まりです。岩手県警も、グループ内の利益の投稿で信用させて投資アプリに登録させる手口に注意を呼びかけています。
相談者は参加者がデイトレードで毎日利益を得ているように見えたことから、「JTRADE」と名乗る株の取引アプリ(www.exiondusty.com)に銀行振込で入金しました。ところが出金しようとすると、パスワードを求められて引き出せませんでした。
調べると、JTRADEの出金のパスワードは利用者が自分で決める作りで、相手から教わるものではありませんでした。デイトレードの銘柄は、4桁の「取引キー」を知る人しか買えない作りです。振込先を示す画面はなく、入金のボタンはチャットを開くだけです。
本記事では、JTRADEのプログラムと、秒まで同じ時刻に取得された4つのアドレスの登録情報を確かめた結果について弁護士が解説します。出金の前にお金の話が出たときにどこを見れば立ち止まれるかも取り上げます。
JTRADEに関するトラブルの概要

相談者は、SNSで知り合った相手と株の情報交換を始め、LINEとSignalのグループを経て、「JTRADE」と名乗る株の取引アプリ(www.exiondusty.com)に入金しました。アプリの残高は毎日増えていましたが、出金しようとするとパスワードを求められて引き出しできない状態です。
この章では、JTRADEの画面に出ている名前と登録の仕組み、運営会社の表示の有無、グループで利益を見せて投資アプリへ誘う手口と、時間外の取引を勧める手口への公的機関の注意喚起を順に確かめます。
JTRADEは招待コードがないと登録できない株の取引アプリ
www.exiondusty.comでは、マイページなどのアドレスを直接入れても、表示されるのはログイン画面です。ログイン画面に並ぶのは「電話番号」と「パスワード」の欄だけで、左上に「JT」のロゴ、ブラウザ最上部のタブに「JTRADE」の名前が出ます。
▼JTの文字のロゴを掲げたJTRADEのログイン画面

出典:JTRADE
「新規登録」を押すと、電話番号とパスワードの下に「招待コード」の欄が現れます。プログラムを調べたところ、この欄は空のままでは登録できない作りでした。案内を受けて招待コードを教わった人しか口座を作れないということです。
▼招待コードの欄がある新規登録の画面

出典:JTRADE
ログインした後に開く画面の中身は、プログラムを取得して調べました。日本株と米国株の売買、IPOの申込、「デイトレード」「立会外取引」「立会外割引取引」、「AIスマートクォンツ自動ファンド」、「融資」の画面が用意されています。
運営会社の名前も許認可も示していない
ログインしなくても開けるのは、ログイン・新規登録・言語の切り替えの3つの画面だけです。そのどこにも、運営会社の名前・所在地・許認可の番号・利用規約は載っていません。
プログラムに書かれた画面の一覧(41の行き先)を見ても、会社概要や規約の画面はありませんでした。JTRADEが日本で登録を受けた業者によって運営されていることを示す情報は確認できていません。
株の売買を扱う業者は金融庁の登録が必要で、登録を受けた業者なら金融庁の一覧で名前を確かめられます。運営会社の名前が分からないアプリでは、その確認さえできません。
グループで利益を見せて投資アプリに登録させる手口を岩手県警が示している
岩手県警は、株の情報を入口にLINEのグループへ招待され、投資アプリに入金した被害を公表しています。その被害の概要の2つ目の項目です。
参加したLINEは投資グループのもので、女性アシスタントを名乗る者から投資に誘うメッセージが送られてきたことや、グループ内の人が投資で大きな利益を出している投稿を見て被害者は信用し、勧められた投資アプリに登録して指定口座に複数回にわたり現金を送金した。
▼グループ内の利益の投稿で信用させる手口を示す岩手県警の公表

出典:岩手県警
同じページの「投資詐欺を見抜くポイント」には、アプリの上で利益が出ているように見せかけ、「口座凍結の解除」や「出金の手数料」などの嘘を理由に金銭を求める手口も挙げられています。同様に、出金に利益の5%を求める事例もあります。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、本件の相談者がJTRADEへの入金を決めたのも、Signalのグループで参加者たちが毎日大きな利益を得ているように見えたからでした。グループの中で見せられる利益は、それだけでは本物の取引の証拠になりません。
時間外取引を勧めて送金させる株の投資グループの事例を国民生活センターが挙げている
国民生活センターは、2026年9月1日に公表したSNSの投資の勧誘への注意喚起で、株式投資のグループに加わった人の相談を紹介しています。
(前略)投資グループに加入し、トレーダーやアシスタントを名乗る人とメッセージアプリでやり取りをし、株式投資を行った。教えてもらった2つの銘柄をそれぞれ50万円で注文するため、指定された個人名義の口座へ送金した。指示通りに売却したところ利益が出て約30万円を出金できたので信用した。その後時間外取引を勧められ、指定された銘柄を注文するため約400万円を送金したが、トレーダー、アシスタントともに連絡が取れなくなった。騙されたのか。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、JTRADEのアプリにも「立会外取引」や「立会外割引取引」という、取引所のふだんの売買(立会)の外で行う取引をうたう画面があります。
グループでのやり取りをきっかけに、指定された口座への振込で株の取引に加わる流れは、この事例と重なります。ふだんの売買とは別の特別な取引だと言われたら、振り込む前に専門家に相談してください。
【参考】
・JTRADE(https://www.exiondusty.com/index.html#/login)
・岩手県警察-投資話で「LINEグループに招待」はサギの可能性アリ。(R7.10.29)
・国民生活センター-SNSで著名人が勧める“もうかる方法” それって本当!?金融商品・サービスのトラブルにご注意!
JTRADEへ誘導され被害につながるまでの経緯

ここでは、SNSで知り合った相手との株の情報交換からLINEのグループ、Signalのグループへと進み、JTRADEのアプリに入金を重ねたあと、出金の段階でパスワードを求められるまでの経緯を相談の内容に沿ってたどります。
株の情報交換を続けるうちにLINEのグループへ招待された
SNSで知り合った相手とは、株の情報を交換する間柄から始まりました。やり取りを続けるうちにLINEのグループへ招待され、そこで株の情報を聞くようになっています。入口は投資の勧誘ではなく、株の情報の交換でした。
Signalのグループで参加者の利益を見てJTRADEに入金を重ねた
その後、相談者はSignalのグループにも加わりました。グループでは参加者たちがデイトレードで毎日大きな利益を得ているように見え、相談者も取引に参加することにしています。
取引に使ったのがJTRADEのアプリです。入金は相手方の口座への銀行振込で、相談者は「銀行から入金するとアプリに反映される」と説明しています。アプリの上では、デイトレードによって残高が毎日増えていました。
出金を申し込むと引き出しパスワードの入力を求められた
相談者は、いつでも自由に引き出せると聞いていました。ところが、アプリで出金しようとするとパスワードが必要と表示され、引き出せませんでした。聞いていた話と違うことから不審に思い、詐欺を疑っています。出金用のパスワードを相手に尋ねる前に相談に至りました。
グループで見た利益をきっかけに入金を重ね、アプリの上で増えていく残高を引き出そうとしたところで、出金の手前の壁に突き当たっています。入金したお金がアプリの外へ戻らないまま、相手に次の指示を求める前の段階で立ち止まったのが本件の経緯です。
JTRADEの関連サイトの情報を調査した結果

www.exiondusty.comのドメインについて、登録情報(RDAP)で取得の日時を、末尾だけが違う同じ名前のアドレスで取得の時刻と画面を確かめました。JTRADEという名前が金融庁の名簿に載っているかも、2026年10月16日に調べています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 画面の名前 | JTRADE |
| 取引のアプリ | www.exiondusty.com |
| ドメインの取得日時 | 2026年9月10日 19時27分(日本時間) |
| 登録を扱った事業者 | Dynadot Inc(有効期限は2027年9月10日) |
| 同じ秒に取得された名前 | exiondusty.biz・exiondusty.org・exiondusty.xyz |
| 運営会社・所在地の表示 | なし |
| 金融庁の登録 | 確認できず(JTRADE・ジェイトレード・exiondustyで照会) |
| 窓口 | アプリの中のチャット(SaleSmartly) |
exiondusty.comは相談者が振り込む3週間ほど前の夜に取得された
exiondusty.comのRDAPでは、「registration」(登録)の欄の日時が「2026-09-10T10:27:27Z」です。Zは協定世界時の印で、日本時間に直すと9月10日の19時27分です。登録を取り次いだのは米国のDynadotで、持ち主の名前は公開されていません。
▼2026年9月10日の取得を示すexiondusty.comの登録情報

出典:rdap.verisign.com
相談者が最初に振り込んだのは、この取得から3週間ほど後のことです。暗号化の通信に使う証明書も、ドメインと同じ9月10日の日付で最初の1枚が出ています。相談者が振込を始めたとき、このアドレスはまだ用意されて1か月もたっていなかったことになります。
同じ名前のアドレス4つが同じ秒に取得され3つが同じ画面を返す
「exiondusty」という名前は、末尾が「.com」のほかに「.biz」「.org」「.xyz」でも取得されていました。4つの登録情報を見ると、取得の時刻はいずれも2026年9月10日19時27分27秒で、登録を扱った事業者もネームサーバーも同じです。
このうちwww.exiondusty.bizとwww.exiondusty.orgを開くと、タブに「JTRADE」と出て、JTのロゴの同じログイン画面が表示されます。プログラムを調べたところ、配られているプログラムやロゴのファイルも、.comと中身がそろっていました。
▼タブにJTRADEと出る.bizと.orgのログイン画面

出典:JTRADE(www.exiondusty.biz、www.exiondusty.org)
.xyzには画面がなく、名前だけが押さえられています。秒数まで同じ時間に4つの末尾をまとめて取り、そのうち3つで同じアプリを出していることから、1つのアドレスが止められても別のアドレスで続けられる用意とみられます。
JTRADEやジェイトレードで金融庁の検索を引いても0件になる
金融庁の金融事業者一括検索で「JTRADE」「J-TRADE」「ジェイトレード」「exiondusty」を照会しても、該当する事業者は出てきませんでした。金融庁が警告した無登録の業者を並べた一覧(令和8年9月25日更新)を見ても、JTRADEやexiondustyの名前は出てきません。
なお、「JTRADE」に近い名前の会社やアプリは国内外にほかにもありますが、本件のアプリとのつながりを示す材料はありません。名前が同じでも同じものとは限らないので、確かめるときはアドレスで照らし合わせてください。
ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。金融庁の一覧に載るのは、当局が無登録の営業を確かめて警告した業者で、取得されて間もないアドレスはまだ載っていないことがあります。
このほか、画面の記録の有無とサーバーについては次のとおりです。
- Googleのセーフブラウジングで調べても、www.exiondusty.comに危険なサイトとの判定は出ていない
- Internet Archive・urlscan.io のいずれにも、4つのアドレスの画面の記録が残っていない
- 画面を出す3つのアドレスはいずれもCloudflareを通しており、同じサーバーにある別のサイトは調べられない
案内されたアプリのアドレスは、RDAPで取得日を確かめ、運営会社の名前と金融庁の登録が示されているかを見てください。どちらも分からないまま入金してしまった場合は、それ以上の振込を止めて専門家に相談することが大切です。
【参考】
・rdap.verisign.com-exiondusty.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/exiondusty.com)
・rdap.nic.biz-exiondusty.biz(https://rdap.nic.biz/domain/exiondusty.biz)
・rdap.publicinterestregistry.org-exiondusty.org(https://rdap.publicinterestregistry.org/rdap/domain/exiondusty.org)
・rdap.centralnic.com-exiondusty.xyz(https://rdap.centralnic.com/xyz/domain/exiondusty.xyz)
・JTRADE(https://www.exiondusty.biz/index.html#/login)
・JTRADE(https://www.exiondusty.org/index.html#/login)
JTRADEに関する不審点

この章ではJTRADEに関する不審点として、出金のパスワードの作り、出金の時間と審査、入金のボタンの行き先、銘柄を買うための「取引キー」、AIファンドの収益の付け方、日本以外の通貨と項目の名残の6点を取り上げます。
どれも、お金の出し入れや銘柄を買う鍵が、アプリの外で相手から教わる形になっていることを示すものです。調べた材料はwww.exiondusty.comから取得したプログラムで、ログインしないと見られない画面の文言も、このプログラムそのものを取得して確認しました。
出金パスワードは利用者が自分で決める作りで相手から教わるものではない
プログラムを調べたところ、出金の画面では金額と銀行口座を選んだあと、「引き出しパスワードを入力します」と求められます。サーバーの返事によっては、1.5秒後に「取引パスワード」の画面へ移るよう作られていました。
▼出金時のパスワードと初期パスワードの設定を定めたプログラム

出典:JTRADE(www.exiondusty.com)
その画面は、パスワードをまだ決めていなければ「パスワードを入力」の欄を1つ出し、決めてあれば古いものと新しいものを入れて変える作りです。どちらも数字6桁で、出金のパスワードは利用者が自分で決めるもので、運営から教わる仕組みはありません。
パスワードの発行や解除の名目になりそうな「手数料」「保証金」「税」の語も、日本語の画面の言葉319語の中に1つもありませんでした。仮に相手からパスワードのために支払いを求められても、それはアプリの仕組みの外の話です。
出金は営業日の日中に審査を経て行う決まりで「いつでも自由に」とは食い違う
出金の画面には、注意書きとして次の文が書き込まれていました。
2 出金可能時間:9:00~15:30(営業日)
3 処理時間:出金申請後、申請内容が審査・処理され24時間以内にご登録銀行口座に着金いたします。実際の着金は銀行により異なる場合がございます。
英語の欄にも「2. Withdrawal Time: 09:00 – 15:30 (on trading days)」と同じ内容があります。アプリ自身が、出金は営業日の日中に限られ、運営の審査を経ると定めていることになります。
▼出金の時間と審査を定めた英語の注意書きのプログラム

出典:JTRADE(www.exiondusty.com)
相談者は「いつでも自由に引き出せる」と聞いていましたが、アプリの決まりはそうなっていません。勧誘の言葉とアプリに書かれた条件が食い違っていたら、その時点で入金を止める理由になります。
入金のボタンを押すと振込先ではなく提供元の表示を消したチャットが開く
利用者の側のプログラムにある入金の仕組みは「入金履歴」の一覧だけで、振込先の口座を示す画面はありません。マイページの「入金」ボタンは、SaleSmartly(セールスマートリー)というチャットのサービスの窓口を開く命令を呼ぶだけでした。
▼チャットを開く命令と提供元の表示を消す処理

出典:JTRADE(www.exiondusty.com)
チャットを開くと、窓口の下に出るSaleSmartlyの名前の表示を見えなくする処理が続きます。ログインした後は、利用者の電話番号とメールアドレスもチャットに渡されます。どの口座へ振り込むかは、チャットの相手が利用者ごとに知らせる作りとみられます。
相談者が銀行から入金するとアプリに反映されると説明していたのも、この作りと食い違いません。振込先の口座がアプリの画面ではなくチャットで示されるなら、その口座が誰のものかを確かめる手がかりはありません。
デイトレードや立会外の銘柄は4桁の取引キーを知る人しか買えない
「デイトレード」「立会外取引」「立会外割引取引」の画面は、同じ部品で作られていました。銘柄には「割引価格」と「現在価格」が並び、「購入数量 ※1ロット=100株」で注文します。
▼4桁の取引キーを入れさせる購入の確認のプログラム

出典:JTRADE(www.exiondusty.com)
プログラムを調べたところ、銘柄に鍵が設定されていると、注文の前に「取引キー」を4桁で入れる欄が開く作りでした。鍵を知らなければ、画面に銘柄が出ていても買えません。同じ入力の欄は、IPOの申込やAIファンドの画面にも組み込まれています。
キーは、運営の側か、キーを教わった人からしか分かりません。グループで銘柄と鍵が伝えられ、知っている参加者だけが「割引価格」で買って利益を報告するという見せ方ができる作りになっている可能性があります。
AIファンドの収益は相場ではなく決められた日々の利回りで付く
「AIスマートクォンツ自動ファンド」の画面では、商品ごとに「日次収益率」と日数、「最小」の買付額が示されます。プログラムを調べたところ、買った後の履歴は、申し込んだときの率と日数をもとに「日収益」と「総収益」を出す作りでした。
▼日次の利回りと日数で収益を出すAIファンドのプログラム

出典:JTRADE(www.exiondusty.com)
AIの運用をうたいながら、収益は相場の動きではなく、あらかじめ決めた率で毎日付く仕組みです。値動きのある株などの運用で、毎日の利回りを前もって決めておくことは通常できません。毎日決まった率で増える残高は、それだけで疑う理由になります。
ウォンの記号や「MY Stocks」が残り日本以外向けの作りを転用した可能性がある
プログラムには、通貨の記号を出す処理として「USD」「KRW」「JPY」の3つが並び、通貨ごとに旗の画像を出す処理には「KRW」「USD」「JPY」「SGD」の4つがありました。KRWは韓国ウォン、SGDはシンガポールドルです。
▼ウォンの通貨と日本株にあたるMY Stocksの項目が残るプログラム

出典:JTRADE(www.exiondusty.com)
言葉の一覧では、「MY Stocks」という項目に英語で「Japan Stocks」、日本語で「日本株」が当てられています。項目の名前と、当てられた中身が合っていません。日本語の訳にも「本気ですか?」(確認の問いかけ)などの不自然な言い回しが残っていました。
ウォンの記号も「MY Stocks」も、日本以外の国に向けて作られたものを転用した可能性を示す名残です。日本の証券会社のアプリと見えても、中身は誰がどこで作ったか分からないものと考えてください。
【参考】
・JTRADE-出金の画面のプログラム(https://www.exiondusty.com/js/index-legacy-B1rJmOLq.js)
・JTRADE-取引パスワードの画面のプログラム(https://www.exiondusty.com/js/index-legacy-BfbdLh8i.js)
・JTRADE-トップのプログラム(https://www.exiondusty.com/js/index-legacy-D261uUuy.js)
・JTRADE-デイトレード・立会外の画面のプログラム(https://www.exiondusty.com/js/index-legacy-C0hXK_uj.js)
・JTRADE-AIファンドの画面のプログラム(https://www.exiondusty.com/js/index-legacy-uYOBFsth.js)
Signalのグループと招待制の株アプリが投資詐欺に悪用されやすい理由

本件では、Signalのグループで参加者の利益を見せられ、招待コードがないと入れないアプリに入金しています。この章では、名前の確認をしないメッセージアプリのグループ、高い収益の報告、立会外の取引という言葉、招待制のアプリがそれぞれ勧誘に使われやすい理由を確かめます。
Signalは名前や本人の確認をしないため参加者が誰でも名乗れる
Signalは、やり取りの中身を暗号化して届けるメッセージアプリです。Signal自身がサポートのページで、利用者の名前について次のように書いています。
Signalはプロフィールネームの確認や本人確認をおこないません。
▼プロフィールネームも本人も確認しないと示すSignalのサポート

出典:Signal
グループに並ぶ名前や肩書きは、誰でも自由に付けられるということです。利益を報告している参加者が別々の人なのか、同じ相手が名前を変えているのかは、グループの外からは確かめようがありません。勧誘する側にとっては、参加者を何人にも見せられる場になります。
グループの参加者が利益を報告すると自分も取れると思いやすい
Signalは、よくある詐欺の種類を表にまとめたページで、投資の勧誘を典型の1つに挙げています。表の「景品、求人、投資詐欺」の行は、高い収益をうたう投資の紹介に「まず疑いを持ちましょう」と呼びかけるものです。
▼高収益の投資の紹介を詐欺の典型に挙げるSignalの表

出典:Signal
グループで毎日のように利益の報告を目にしていると、自分だけが取り残されている気持ちになりやすいとみられます。利益の報告がいくつ並んでも、自分の入金を引き出せる保証にはなりません。本件の相談者も、参加者の利益を見て取引に加わっていました。
立会外分売という正規の制度があり割引の銘柄の話が本物らしく聞こえる
JTRADEの画面にある「立会外取引」という言葉は、実在する取引所の制度の名前です。日本取引所グループ(JPX)は、東京証券取引所の取引の仕組みを次のように説明しています。
ToSTNeT(Tokyo Stock Exchange Trading NeTwork System)取引は、東京証券取引所の立会外取引です。
▼ToSTNeT取引を東京証券取引所の立会外取引と説明するJPX

出典:日本取引所グループ
このうち「立会外分売」について、JPXは実施日・銘柄・終値・分売値段・「買付顧客1人につき」の上限をホームページで公表しています。2026年9月25日に実施されたある銘柄では、終値1,401円に対して分売値段は1,373円で終値より安い値段が付いていました。
正規の制度があるために、「立会外の割引価格で買える」と言われても不自然に聞こえにくいのです。アプリの中だけで割引の銘柄が示され、鍵を教わって買う取引は、取引所の公表と照らし合わせて確かめる必要があります。
招待制のアプリは外から中身が見えず確かめる手がかりが少ない
JTRADEは、招待コードがなければ登録できず、外から開けるのはログインの画面だけです。どんな銘柄を扱い、どこの会社が運営しているのかを入る前に確かめる方法がありません。
招待制は特別な人だけが入れる場のように見せる効果もある一方で、画面の記録も口コミも外に残りにくくなります。入る前には中身を確かめられず、入った後はグループの言葉だけが手がかりになるとみられます。招待コードを渡されたら、その時点で運営会社の名前と金融庁の登録を確かめてください。
【参考】
・Signal-被害に遭わないためのSignal内での対策方法(https://support.signal.org/hc/ja/articles/9932632052378)
・Signal-フィッシング、詐欺、なりすましから身を守る(https://support.signal.org/hc/ja/articles/9932566320410)
JTRADEの不審点を見抜く方法

JTRADEを使うには、登録するための招待コード、銘柄を買うための取引キー、入金の振込先と、いくつもの情報を相手から教わる必要がありました。アプリの画面だけでは、取引を始めることも、お金を入れることもできない作りです。
相手から何かを教わる場面ごとに、立ち止まって確かめる点を6つに分けました。招待コードを受け取る段階から出金の段階まで、本件のアプリで見つかった作りと合わせて並べています。
- 【招待コード】招待コードがないと入れないアプリは、入る前に運営会社と中身を確かめられないものと考える
- JTRADEは、招待コードの欄が空では登録できず、外から開けるのはログインの画面だけでした。運営会社の名前や規約を載せた画面もありません。
- 【グループの利益】Signalなどのグループで報告される利益は、名前も本人も確かめられていないものとして受け取る
- Signal自身が、プロフィールネームの確認や本人確認をしないと明記しています。何人もの参加者が利益を報告していても、別々の人だという保証はありません。
- 【取引キーと割引の銘柄】鍵を教わって割引の値段で買う銘柄は、取引所の公表と照らし合わせる
- JTRADEのデイトレードや立会外の銘柄は、4桁の取引キーを知らないと買えない作りでした。正規の立会外分売なら、銘柄と分売値段がJPXのページに出ています。日々の利回りが決まったAIファンドも同じく疑ってください。
- 【振込先】振込先の口座をチャットで個別に教わるアプリには入金しない
- JTRADEの「入金」ボタンは、振込先を示さずにチャットの窓口を開くだけでした。口座の名義が誰であっても、アプリの運営とのつながりを確かめる方法はありません。
- 【出金のパスワード】出金のパスワードは自分で決めるものなので、発行や解除の名目で支払いを求められたら払わない
- JTRADEの出金のパスワードは、利用者が数字6桁を自分で設定する作りでした。手数料や保証金の名目はプログラムにありません。パスワードを理由にお金を求められても応じず、専門家に相談して次の手を決めてください。
- 【アドレス】教わったアドレスの取得日を調べ、名前を金融庁の一覧で引く
- www.exiondusty.comは最初の振込の3週間ほど前に取得され、秒まで同じ時間に末尾の違う3つのアドレスも取られていました。JTRADEの名前は金融庁の検索で0件です。韓国ウォンの記号など、日本向けとは思えない名残もありました。
教わった情報で開いたアプリの数字は、教えた側がいくらでも用意できるものです。アプリの残高がどれだけ増えても、そのお金が手元に戻ってくるとは限りません。振込の明細と、グループやチャットのやり取りの画面を手元に残し、それ以上の入金を止めて信頼できる第三者に相談してください。
JTRADEに関する口コミや被害事例

JTRADEとwww.exiondusty.comの名前で、X・Yahoo!知恵袋・掲示板の投稿を探しました。あわせて、株の取引をうたうアプリで出金できなくなった事例として、警察が公表した2件を取り上げます。
JTRADEやexiondusty.comの名前での口コミは見つからなかった
2026年10月16日の時点で、X・Yahoo!知恵袋・5ちゃんねる・爆サイなどを探しましたが、JTRADE・exiondusty・ジェイトレードの名前で、アプリを使った人の投稿や質問は確認できませんでした。知恵袋でも、本件のアプリを取り上げた質問は見当たりません。
「JTRADE」で検索すると、同じ名前の別の事業者やサービスの情報が先に並びます。本件のアプリについて書かれたものとして目立つのは、利用者の体験談ではなく、相談を呼びかける記事でした。こうした記事との付き合い方は、口コミが少ない理由の章で触れます。
利益を出金しようとしてもシステムエラーで出金できなかった事例
和歌山東警察署は、2026年8月22日の広報資料で、株の売買の投稿をきっかけに入金を重ねた30代の男性の被害を公表しています。「5 状況」の最初と最後の段落は次のとおりです。
令和8年4月12日頃、被害者が自宅でSNSを見ていたところ、株の売買に関する投稿を見つけ、投稿者と連絡をとったところ、証券会社担当者等のSNSアカウントを紹介され、その者らと連絡をとり始めました。
(中略)
ところが、利益を出金しようとしてもシステムエラーとなり出金できず、さらに、これまでやりとりしていた者らとも連絡がとれなくなったことから、騙されたと思い、警察に届け出たものです。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、本件と同じく、株の話から始まって指定の口座に何度も入金し、出金の段階で引き出せなくなっています。入口は投稿で、Signalのグループやパスワードは出てきません。
出金できない理由は、パスワード・システムエラー・手数料など、事案ごとに形を変えて示されます。理由がどう説明されても、出金できないまま入金を求められる流れは同じだと考えてください。
分配金を受け取るにはさらに入金が必要と言われた事例
岩手県警は、投資アプリで株式投資を始めた人の被害を2026年5月21日付で公表しています。被害者はアシスタントの指示で投資アプリを入れ、「日本の金融庁にも登録されています」と説明された投資会社を信じて、指定された口座に何度も振り込みました。
被害に気付いたきっかけは、アシスタントからの次のメッセージでした。
その後、アシスタントから「分配金をもらうためには、さらに1,000万円の入金が必要」とのメッセージを受けたことで不審に思い、警察に相談したことで詐欺の被害に気付いたもの。
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、投資アプリで株を買い、振込を何度か重ねた後、お金を受け取る段階で新しい条件が持ち出される点は本件と重なります。
ただし、本件で示された条件はパスワードで、相談の時点では入金はまだ求められていません。入口もInstagramとLINEで、本件のようにSignalのグループへ移る場面は出てきません。
同じページは、送金先が個人の口座なら詐欺を疑うよう呼びかけています。分配金や出金と引き換えに入金を求めるのは、受け取る前に払わせる形です。入金の前に専門家に相談し、その条件が本当かを一緒に確かめてください。
【参考】
・和歌山東警察署-特殊詐欺事件の発生について(令和8年8月22日の広報資料)
・岩手県警察-SNSを利用した投資詐欺の被害が多発しています!(R8.5.21)
JTRADEに関する口コミが少ない理由

1つ目の理由は、JTRADEが招待コードのある人しか入れないアプリだという点です。外から開けるのはログインの画面だけで、2026年9月に取得されたアドレスの画面の記録もInternet Archiveなどに残っていません。中を知る人が招待された人に限られ、体験談が外に積み重なりにくいとみられます。
2つ目は名前です。「JTRADE」で検索すると、同じ名前の別の事業者やサービスが先に並びます。アドレスのexiondustyも辞書にない文字の並びで、覚えて検索されることは少ないとみられます。被害の投稿があっても、名前で探す人の目に届きにくくなります。
3つ目は、やり取りの場がLINEからSignalのグループへ移っている点です。グループの中の会話は外から見えず、被害に遭った人が投稿しても、JTRADEの名前と結びつきにくいとみられます。検索で目立つのは、本件の名前を使って相談や返金を呼びかける記事のほうで、二次被害にも注意が要ります。
ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。口コミが見つからないのは、確かめる材料が外に出ていないだけです。パスワードの発行や出金の解除のためと称して支払いを求められたときは、送金の前に専門家に相談してください。

