Binicse(binicse.com)は詐欺?番号で照会すると別の会社名が出る米国の登録書類と取引量不足で出金できない実態や口コミ・評判・返金対策

今回の相談は、「binicse VIP」と表示される相手から、取引や入金の進め方を伝えられたのが始まりです。金融庁は、出金のためと称して追加で入金しても、お金を取り戻すのは難しいと注意を呼びかけています。

相談者は、Binicseを名乗る暗号資産の取引サイト(binicse.com)にイーサリアムを送り、相手が指定した口座へネットバンキングで振り込みました。その後「取引量不足」で出金できないと言われ、口座の資金と同じ額の預入を期限付きで求められています。

調べると、サイトが掲げる米国の書類は、番号で発行元に照会すると別の会社の名前が出るものでした。管理画面のプログラムには、信用スコアが60以下なら出金できない設定や、勝ち負けを選ぶ欄があります。相談の後、サイトの名前はBitterBeatに替わっています。

本記事では、Binicseが示した書類を発行元の記録と突き合わせ、プログラムの中身とあわせて弁護士が解説します。出金の条件として追加の入金を求められたときの確かめ方も紹介します。

Binicseに関するトラブルの概要

出金できない理由を確かめる。送金と振込の後に出金を拒まれた。サイト表示と運営情報を照合。追加の支払いは止める。事案名「binicse.com」を右上に示す説明図。

相談者は、Binicseを名乗る暗号資産の取引サイト(binicse.com)を使い、「binicse VIP」と表示される相手とやり取りしていました。イーサリアムの送金と、相手が指定した口座への振込を重ねたあと「取引量不足」を理由に出金できないと告げられています。

この章では、Binicseがうたう取引の中身、追加の入金を求める手口への金融庁の注意、運営会社の名前の出どころ、ネットバンキングでの振込にかかわる被害の統計を順に確かめます。

Binicseは暗号資産の取引をうたうサイトで今のタブにはBitterBeatと出る

binicse.comを開くと、どのページを指定しても英語のログイン画面に戻されます。画面には「Account login」と「Wallet login」のボタンが並ぶだけで、サイトの名前はどこにも出てきません。

名前が出るのは、ブラウザ最上部のタブだけです。2026年10月14日に確認したところ、タブには「BitterBeat」と表示されていました。相談者の画面に出ていた名前は「Binicse」で、今のタブの名前とは違います。名前が替わった経緯は不審点の章で確かめます。

▼タブの名前がBitterBeatのログイン画面

binicse-タブの名前がBitterBeatのログイン画面

出典:Binicse

プログラムを調べたところ、ログインした後の画面には、相場が上がるか下がるかを25秒から450秒で当てる取引(利益は15%から85%)や先物の取引、「AI運用」があります。AI運用の一覧は、1日あたり1.2%から4.0%の収益をうたっていました。

Binicseが日本で登録を受けた業者によって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。1日に数%の収益をうたう運用は、それだけで立ち止まる理由になります。

出金のためと称して追加の入金を求める手口に金融庁が注意を呼びかけている

金融庁の金融サービス利用者相談室は、SNSを通じて知り合った人からの勧誘について、出金を求めた後に高額な入金を求められる手口を紹介しています。その説明は、次の一文で締めくくられています。

(前略)
こうしたケースでは、追加入金しても、投資した金銭や追加で支払った金銭を回収することは難しく、その後は、連絡が取れなくなったという事例が金融庁にも多く寄せられています。

これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、本件の相談者も、出金できない理由を告げられたうえで追加の預入を求められていました。

追加で払えば引き出せるという説明は、払った後も引き出せる保証にはなりません。出金の条件として新たな入金を求められた時点で、それ以上の送金を止めることが大切です。3営業日以内の納税を迫られた例もあります。

Binicseが示す運営会社の名前は米国の書類の上にしか出てこない

ログインした後の会社概要は、ログインしなくてもデータそのものを取得して読めます。日本語の文は「Binicse は、Web3ウォレット公式の暗号セカンドコントラクト取引所です。」で始まり、送受信や運用ができると続きます。

会社概要のどこを読んでも、運営会社の名称・所在地・日本での登録番号は見当たりません。運営会社らしい名前「BitterBeat Ltd」が出てくるのは、メニューの「Business License」「IRS」「MSB」から開く米国の書類だけです。

画面の上で運営会社を名乗る表示はなく、名前は書類の中にしか出てきません。その書類を発行元で照会した結果は不審点の章で、日本での登録の有無は関連サイトの調査の章で確かめます。

インターネットバンキングでの振込がSNS型投資詐欺の振込の7割を占める

警察庁がまとめた令和7年の確定値によると、SNS型投資詐欺の被害額は1,288.0億円、認知件数は9,523件です。同じ資料は、銀行口座への振込(振込型)のうち、インターネットバンキングを使ったものを次のようにまとめています。

・振込型におけるIB利用の認知件数は5,049件(+1,522件、+43.2%)、被害額は807.2億円(+244.3億円、+43.4%)で、振込型全体に占める割合は、認知件数が70.8%(+6.9ポイント)、被害額が80.7%(+7.0ポイント)。

これらの統計が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、本件の相談者も、相手からインターネットバンキングでの振込を案内され、相手が指定した口座へ振り込んでいました。

ネットバンキングは、窓口やATMを通らずに、その場で振込を済ませられます。取引サイトへの入金のために個人や会社の口座を指定されたら、振り込む前に専門家に相談してください。

【参考】

・Binicse(https://binicse.com/)

・金融庁-(3-2)投資詐欺等に関する利用者からの相談事例等と相談室からのアドバイス等

・警察庁-令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)

Binicseへ誘導され被害につながるまでの経緯

支払いが重なった経緯。送金先は相手の案内で決まった。振込後に画面と身分証の写真を要求。出金のための支払いを重ねて求められた。事案名「binicse.com」を右上に示す説明図。

ここでは、「binicse VIP」とのやり取りの中で重ねたイーサリアムの送金、相手が案内したネットバンキングでの振込、そして「取引量不足」を理由に追加の預入を求められるまでを相談の記録に沿って順にたどります。

binicse VIPとのやり取りの中でイーサリアムの送金を重ねる

相談の記録によると、相談者と相手のやり取りには「binicse VIP」と表示されていました。取引の進め方や入金、出金の条件についての連絡はこのやり取りの中で伝えられています。

相談者は、相手が示したアドレスへイーサリアム(ETH)を送る形で入金を重ね、Binicseの画面にはUSDTでの入金の記録と残高が表示されました。途中で相談者が最新の送金先を尋ね、相手が答えた場面もあります。送金先のアドレスは、サイトの画面ではなく相手の言葉で決まっていたことになります。

ネットバンキングでの振込を案内され振込後の画面と本人確認書類を求められる

相談者が入金すると伝えると、相手はインターネットバンキングでの振込を案内し、振込先として口座を指定しました。暗号資産の送金とは別に、銀行の口座から相手側へお金が渡ったことになります。

振込のあと、相手は振込を終えた画面を求め、続けて本人確認書類の写真も求めました。取引サイトの外の口座へ振り込ませたうえで、その証拠と身分証の写真まで求めていた流れです。身分証の写真を渡すと、別で悪用されるおそれもあるので慎重に対応する必要があります。

取引量不足を理由に出金できないと言われ口座の資金と同じ額の預入を求められる

入金が反映されていないと相談者が尋ねると、相手は資金は口座に送金済みだと答える一方で、取引量が足りないために取引も出金もできないと説明しました。取引するには口座の資金と同じ額を追加で預け入れる必要があり、取引が3回を超えれば出金できるというものです。

相手は3日以内の預入を求め、その後も期限を示しました。相談者が残りの資金を送ったと伝えると、受け取ったので24時間以内に処理すると答えています。さらに、イーサリアムを買うときの手数料で資金が足りなくなったとして、期限付きで追加の入金を求めました。

「binicse VIP」の案内に従ってイーサリアムを送り、指定の口座へ振り込んだ後に、出金の条件として預入と入金を次々に求められています。暗号資産の送金と銀行振込の両方で相手側にお金が渡り、出金の見込みがないまま支払いを重ねる形で被害につながりました。

Binicseの関連サイトの情報を調査した結果

アドレスと登録情報を調べる。取得日は2026年6月12日。管理画面の入口は中国語表示。名簿にないことは安全の証拠ではない。事案名「binicse.com」を右上に示す説明図。

binicse.comについて、ドメインの登録情報(RDAP)から取得の時期を、同じアドレスの下にある管理画面の入口から運営の側が使う言語を確かめます。あわせて、金融庁の名簿と海外の当局の警告の一覧を2026年10月14日に照会しました。

項目内容
アドレスbinicse.com
名乗る名前Binicse(会社概要の表記)。ブラウザのタブは「BitterBeat」
取得日時2026年6月12日 18時04分(日本時間)
登録を扱った事業者Metaregistrar BV(有効期限は2027年6月12日)
管理画面の入口lhikorrex.binicse.com(中国語のログイン画面)
運営会社・所在地の表示画面にはなし(メニューの書類に「BitterBeat Ltd」)

Binicseのアドレスは6月に取得され送金が始まるまで87日空いている

binicse.comの登録情報には、取得の日時として「2026-06-12T09:04:32Z」が記録されています。末尾のZは協定世界時を表し、9時間を足すと日本時間の6月12日18時04分です。持ち主の名前は伏せられ、公開されているのは登録を取り次いだ事業者の名前と有効期限です。

▼2026年6月12日の登録を示すbinicse.comの登録情報

binicse-2026年6月12日の登録を示すbinicse.comの登録情報

出典:rdap.verisign.com

相談者がイーサリアムを初めて送ったのは、そこから87日後でした。アドレスの取得から最初の送金までには、3か月近く間があります。取得から時間がたっているアドレスでも、それだけで信用の材料にはなりません。

Binicseの管理画面は中国語の表示でアドレスを知っていれば誰でも入口を開ける

binicse.comの下には、利用者向けの画面とは別にlhikorrex.binicse.comというアドレスがあります。開くと、ブラウザ最上部のタブに「登录 – Admin」と出て、中国語のログイン画面が表示されます。

▼タブに登录 – Adminと出る中国語のログイン画面

binicse-タブに登录 - Adminと出る中国語のログイン画面

出典:Binicse(lhikorrex.binicse.com)

ログインの枠の中も「账号」(アカウント)、「密码」(パスワード)と中国語で、3つ目の欄はGoogleの認証コード(「谷歌验证码」)を求めています。サイトを運営する側が使う画面とみられ、日本語で勧誘される取引サイトの裏側が中国語で動いていることが分かります。

管理画面そのものにはログインしないと入れませんが、入口が読み込むプログラムのファイルは、アドレスを開けば誰でも中身を見られます。そこに書かれた運営側の設定は、次の不審点の章で確かめます。

Binicseも書類上の法人名も金融庁の名簿や海外の警告に載っていない

金融庁の一括検索で「Binicse」「BitterBeat」と書類の上の法人名を照会しても、該当する事業者は出てきませんでした。カタカナの「ビニクセ」「ビタービート」などに替えても結果は同じです。登録を受けた暗号資産の交換業者27業者(令和8年9月1日現在)の中にも、該当する名前は見当たりません。

海外では英国の金融行為規制機構(FCA)、香港の証券先物委員会(SFC)、シンガポール金融管理局(MAS)の一覧を調べましたが、いずれにも本件の名前はなく、金融庁が無登録の業者として警告書を出した先の一覧にも載っていません。

ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。警告は当局が営業を確かめた業者に出されるもので、名前やアドレスを替えたばかりのサイトは、どの一覧にもまだ載っていないことがあります。

画面の記録とサポートの窓口についても調べました。

  • Googleのセーフブラウジングで調べても、binicse.com・lhikorrex.binicse.comに危険なサイトとの判定は出ていない
  • Internet Archive や urlscan.io には、binicse.comの画面の記録が残っていない
  • サポートの窓口のアドレス(en-imchat.top)は、相談者が最初にイーサリアムを送ったのと同じ日に取得されている

勧められた取引サイトは、名前を金融庁の一括検索で探すだけでなく、RDAPでアドレスの取得日も確かめてください。登録のない業者に、暗号資産や振込でお金を送る前に専門家に相談することが大切です。

【参考】

・rdap.verisign.com-binicse.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/binicse.com)

・Binicse-管理画面の入口(https://lhikorrex.binicse.com/)

・rdap.zdnsgtld.com-en-imchat.top(https://rdap.zdnsgtld.com/top/domain/en-imchat.top)

・金融庁-金融事業者一括検索

・金融庁-暗号資産交換業者登録一覧

・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について

Binicseに関する不審点

書類と出金設定の食い違い。書類の番号は別会社の記録に一致。信用スコアは利用者に見えない。取引量の条件は相手の言葉で示された。事案名「binicse.com」を右上に示す説明図。

ここではBinicseに関する不審点として、許認可として示された米国の書類、IRSの通知、管理画面の信用スコアと勝ち負けの設定、相手が告げた出金の条件、相談の後の名前とアドレスの切り替えの6点を取り上げます。

前半の2点は、信用の裏付けとして出された書類が発行元の記録と食い違うことを示しています。後半の4点は、引き出せるかどうかの鍵を運営が握る仕組みに関わるものです。以下は2026年10月14日に確認した書類とプログラムの内容で、相談者が見た当時の画面と同じとは限りません。

許認可の書類の番号を発行元で照会すると別の会社の名前が出る

Binicseのメニューの「Business License」から開く書類は、米国コロラド州の州務長官が出す設立書類の写しです。会社名は「BitterBeat Ltd」で、確認番号「17754399」が記され、州のサイトの照会画面に番号を入れれば本物か確かめられると注記されています。

▼会社名がBitterBeat Ltdとなっている設立書類の写し

binicse-会社名がBitterBeat Ltdとなっている設立書類の写し

出典:Binicse(binicse.com)

書類はログインした後のメニューから開くものですが、ファイルのアドレスを直接開けば誰でも読めます。注記のとおりに確認番号を照会すると、州の画面に表示された会社名は「gfdcoin Ltd」でした。

▼確認番号で照会するとgfdcoin Ltdと出る州の画面

binicse-確認番号で照会するとgfdcoin Ltdと出る州の画面

出典:コロラド州務長官

州の法人の記録でも、同じ番号の会社はgfdcoin Ltdで、所在地・設立日・登録代理人は書類と同じです。違うのは会社名だけで、名前を変えた届け出の記録もありません。州のよくある質問は、証明書について次のように書いています。

If the Certificate is altered or the page count is inaccurate, the Certificate is void.

▼書き換えた証明書は無効と書く州のよくある質問

binicse-書き換えた証明書は無効と書く州のよくある質問

出典:コロラド州務長官

「MSB」から開く米国財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)の登録の写しも、会社名はBitterBeat Ltdです。ところが、そこに書かれた登録番号「31000312037209」をFinCENの検索に入れると、出てくる会社名はやはりgfdcoin Ltdでした。

▼登録番号で検索するとgfdcoin Ltdと出るFinCENの画面

binicse-登録番号で検索するとgfdcoin Ltdと出るFinCENの画面

出典:FinCEN

gfdcoin LtdがBinicseを運営しているとは言えません。分かるのは、別の会社の公開記録の番号がBitterBeat Ltdの名前で示されているということです。

IRSの通知は会社名と照合用の4文字が合わず日付も設立より前になっている

「IRS」から開く書類は、米国の内国歳入庁(IRS)が会社に納税者番号を割り当てたときの通知です。宛先はBitterBeat Ltdなのに、本文は照合用の4文字を「BFIN」としています。

▼照合用の4文字がBFINとなっているIRSの通知

binicse-照合用の4文字がBFINとなっているIRSの通知

出典:Binicse(binicse.com)

IRSの内部の規程は、会社の照合用の4文字を会社名の最初の4文字と定めています。BitterBeat Ltdであれば「BITT」になるはずで、通知の「BFIN」は会社名と合いません。

▼会社名の最初の4文字と定めるIRSの規程

binicse-会社名の最初の4文字と定めるIRSの規程

出典:IRS

通知の日付は2025年9月11日で、州の記録にある設立日(10月4日)より23日早くなっています。所在地も、設立書類とFinCENの写しはアリゾナ州フェニックスですが、この通知はカリフォルニア州ロサンゼルスとなっていて、同じ会社を名乗る書類の中で食い違っています。

信用スコアが60以下なら出金できない設定が利用者には見えないところにある

利用者向けのプログラムで出金を断る文を探すと、「引き出しのための信用スコアが低すぎます。カスタマーサービスにお問い合わせください」が見つかります。英語の版は「Your credit score is too low for withdrawal.」です。

▼信用スコアが低いと出金できないとする文言

binicse-信用スコアが低いと出金できないとする文言

出典:Binicse(binicse.com)

ところが、プログラムのどの画面を見ても、利用者が自分の信用スコアを確かめられる表示はありません。管理画面のプログラムを調べたところ、利用者ごとに「信用分」(信用スコア)を打ち込む欄があり、「信用分低于或等于60时无法提现」(信用スコアが60以下なら出金できない)と説明されていました。

▼利用者ごとの信用スコアの欄がある管理画面のプログラム

binicse-利用者ごとの信用スコアの欄がある管理画面のプログラム

出典:Binicse(lhikorrex.binicse.com)

利用者に見えない数字を運営が打ち込むだけで、出金を止められる作りです。管理画面には、大口の出金を制限する切り替えや資金を凍結する画面もあり、出金を断る理由は運営の側でいくつも用意できます。

勝ち負けを利用者ごとや秒単位の取引の注文ごとに決める設定がある

同じ利用者の管理の欄には「输赢控制」という項目もあり、取引の勝ち負けを操作する設定とみられます。選べるのは「不控制」(操作しない)、「输」(負け)、「赢」(勝ち)の3つです。

▼勝ち負けを選ぶ欄がある管理画面のプログラム

binicse-勝ち負けを選ぶ欄がある管理画面のプログラム

出典:Binicse(lhikorrex.binicse.com)

秒単位の取引の注文を一覧にする画面(「订单管理-秒合约」)にも、注文ごとに同じ勝ち負けの欄があります。利用者側のプログラムは、取引の結果を自分で計算せず、サーバーから受け取って表示するだけです。

▼注文ごとに勝ち負けを決める欄があるプログラム

binicse-注文ごとに勝ち負けを決める欄があるプログラム

出典:Binicse(lhikorrex.binicse.com)

設定が使われれば、利益が出たか損をしたかは、値動きではなく運営の選んだ側に決まることになります。Binicseの画面に表示された残高や利益が、そのまま引き出せるお金だとは言えません。

相手が告げた取引量や追加の預入という出金の条件はプログラムに見当たらない

相手は、取引量が足りない、口座の資金と同じ額を預け入れる、取引が3回を超えれば出金できると説明していました。プログラムの日本語と英語の言葉を調べても、こうした条件を示す文言はありません。「取引量」が出てくるのは、相場の画面で24時間の値動きと並べる「24時間取引量」の1か所だけです。

プログラムにある出金を断る文言は、信用スコア、「出金額が大きすぎます。管理者に連絡してください」、本人確認の3種類です。相手の条件は、サイトの決まりではなく、やり取りの中の言葉として足されていたことになります。

入金も同じです。サイトの入金画面は暗号資産のアドレスを示すか、入金の証明の画像を送らせる作りで、相手が指定した口座への振込はサイトの外で行われています。出金画面には「出金申請が承認された後、通常24時間以内に指定の口座へ反映されます」とあり、出金は運営の承認しだいです。

相談の後に名前がBitterBeatに替わり予備のアドレスへ飛ばすページが用意された

相談者の画面の名前はBinicseでしたが、今のタブは「BitterBeat」です。そして、bitterbeatx1.com・bitterbeatx2.com・bitterbeatx3.comの3つのアドレスが、日本時間の10月11日午前2時台に約1分半の間続けて取得されています。

▼約1分半の間に取得された3つのアドレスの登録情報

binicse-約1分半の間に取得された3つのアドレスの登録情報

出典:rdap.verisign.com

bitterbeat.comは、中身のない転送のページです。ソースの中国語のコメントには「公開前に下の3つの例のアドレスを本物のドメインに置き換える」「開くたびに有効なアドレスから1つを無作為に選ぶ」という意味の説明があり、その下に3つのアドレスが並んでいます。

▼3つのアドレスへ無作為に飛ばす転送のページのソース

binicse-3つのアドレスへ無作為に飛ばす転送のページのソース

出典:bitterbeat.com

飛ばされる先の一つのbitterbeatx1.comは、binicse.comと1文字も違わない会社概要を返します。名前がBitterBeatに替わっても、中身は「Binicse は、Web3ウォレット公式の…」のままの同じ仕組みです。

▼bitterbeatx1.comが返すBinicseの会社概要

binicse-bitterbeatx1.comが返すBinicseの会社概要

出典:Binicse(bitterbeatx1.com)

ホワイトペーパーにも、BitterBeatの名前の中に「ZSX Trade」と「Binicse」が置き換え漏れのまま残っていました。名前は替わっても、同じ仕組みが別のアドレスで動き続けている点に注意が必要です。

【参考】

・Binicse(https://binicse.com/assets/businesslicense-D2wypcWo.pdf)

・Binicse(https://binicse.com/assets/IRS-BsM1QnfQ.pdf)

・Binicse(https://binicse.com/assets/MSB-5SRlBsjy.pdf)

・コロラド州務長官-Validate a certificate

・コロラド州務長官-Business FAQs

・FinCEN-MSB Registrant Search

・IRS-IRM 3.13.2 BMF Account Numbers

・Binicse(https://binicse.com/assets/index-4KKsVOs-.js)

・Binicse-管理画面のプログラム(https://lhikorrex.binicse.com/assets/user.data-Dx9nlzop.js)

・Binicse-管理画面のプログラム(https://lhikorrex.binicse.com/assets/drawer.vue_vue_type_script_setup_true_lang-D-qZcqoI.js)

・rdap.verisign.com-bitterbeatx1.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/bitterbeatx1.com)

・rdap.verisign.com-bitterbeatx2.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/bitterbeatx2.com)

・rdap.verisign.com-bitterbeatx3.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/bitterbeatx3.com)

・bitterbeat.com(view-source:https://bitterbeat.com/)

・Binicse(https://bitterbeatx1.com/api/config/about?lang=ja-jp)

・Binicse(https://binicse.com/assets/Book-B_qSTCXw.pdf)

米国の登録書類と後から足される出金の条件が投資詐欺に悪用されやすい理由

書類だけで信用しない。米国のMSB登録は事業の審査ではない。日本での登録も別に確かめる。後から足される出金条件に注意。事案名「binicse.com」を右上に示す説明図。

Binicseで見えた不審点は、ほかの投資詐欺でも使われやすい仕掛けです。ここでは、米国の登録書類、チャットの言葉で決まる出金の条件、国内で買わせた暗号資産の送金、実在の名前の利用の4つについて、悪用されやすい理由を確かめます。

米国の登録はそれだけで信用の裏付けにはならないとFinCEN自身が警告している

FinCENは、Binicseの書類が示していた登録の検索ページの冒頭で、詐欺に注意するよう呼びかけています。検索に載っているというだけで会社を信用してはいけないという趣旨の一文です。

(前略)
You should not trust a company only because it is listed in the MSB Registrant Search.
(後略)

▼検索に載るだけで信用しないよう求めるFinCENの注意

binicse-検索に載るだけで信用しないよう求めるFinCENの注意

出典:FinCEN

MSBの登録は届け出で、FinCENが事業の中身を審査して認めるものではありません。一方、日本の資金決済法は、海外の暗号資産の交換業者による勧誘について次のように定めています。

第六十三条の二の登録を受けていない外国暗号資産交換業者は、国内にある者に対して、第二条第十五項各号に掲げる行為の勧誘をしてはならない。

米国の書類が並んでいても、日本の登録がなければ日本の人を勧誘できない可能性があります。Binicseの名前も書類上の会社名も、金融庁の登録の一覧には見当たりませんでした。

出金の条件を相手の言葉だけで増やせると追加の入金を断りにくい

出金の条件がサイトの規約ではなく、チャットの言葉で伝えられると、相手は「取引量」「預入」「手数料」と、あとから条件をいくらでも足せます。期限を区切られると、本当にそういう決まりがあるのかを確かめる時間もありません。

すでに大きな残高が画面に表示されていると、それを失いたくない気持ちから求めに応じてしまいやすくなります。条件を告げられたら、その条件がサイトの規約やヘルプのどこに書かれているかを相手に示してもらってください。示せないなら支払いはしないことです。

暗号資産を買わせて偽の登録業者へ送らせる流れをFinCENが2024年に警告している

FinCENは2024年12月の警告で、詐欺の一部として、被害者に暗号資産の交換業者で暗号資産を買わせ、偽の登録業者へ送らせる手口があると指摘しています。サイトに登録の写しを掲げる手口にも触れていました。

▼暗号資産を買わせて送らせる手口を挙げるFinCENの警告

binicse-暗号資産を買わせて送らせる手口を挙げるFinCENの警告

出典:FinCEN

日本でも、金融庁と警察庁は2026年8月6日、暗号資産の交換業者の団体に対し、「暗号資産購入後の一定期間の暗号資産の出庫制限」などの対策を改めて要請しました。国内で正規に買った暗号資産でも、送った先が詐欺の相手なら取り戻すのは難しくなります。

正規の事業者と似た名前を使うと調べた人が本物の情報に行き着いてしまう

Binicseの会社概要は、英語版と繁体字版では「using the Trust Wallet mobile app」と、正規のTrust Walletの名前を出していました。日本語版だけは「WEB3 Walletモバイルアプリ」と書き換えられています。

▼正規のTrust Walletの名前が出る英語版の会社概要

binicse-正規のTrust Walletの名前が出る英語版の会社概要

出典:Binicse(binicse.com)

実在のウォレットや取引所の名前が文中にあると、名前で検索した人は正規の事業者の情報を読み、それで安心してしまうおそれがあります。調べるときは名前ではなく、サイトのアドレスと運営会社の登録を確かめ、迷ったら信頼できる第三者に相談してください。

【参考】

・FinCEN-MSB Registrant Search

・FinCEN-FinCEN Alert on Fraud Schemes Abusing FinCEN’s Name, Insignia, and Authorities for Financial Gain

・e-Gov法令検索-資金決済に関する法律

・金融庁-暗号資産を用いた詐欺被害等防止に向けた対策の一層の強化について

・Binicse(https://binicse.com/api/config/about?lang=en-us)

Binicseの不審点を見抜く方法

確かめてから送金を止める。名前・取得日・書類の番号を比べる。出金条件の記載箇所を尋ねる。記録を残して第三者に相談。事案名「binicse.com」を右上に示す説明図。

Binicseの不審点の多くは、比較的簡単に確かめられるものでした。ここでは、確かめるのにかかる手間が小さい順に6つの見方を並べ、Binicseで分かったことを添えます。最初の2つは数秒から1分ほどで確認可能です。

  • ブラウザのタブの名前と、相手やサイトが名乗る名前が同じか
    • 相談者の画面の名前はBinicseでしたが、今のタブは「BitterBeat」です。名乗る名前とタブの名前が食い違うときは、サイトが作り替えられている可能性があります。
  • RDAPでアドレスの取得日を見る
    • binicse.comは最初の送金の87日前に取得され、別名のアドレス3つは名前が替わったころに約1分半の間で取得されていました。取得したばかりのアドレスに送金するのは避けてください。
  • 示された書類の番号を、書類に書かれた発行元の照会画面に入れて名前を比べる
    • Binicseの設立書類とFinCENの登録の写しは、番号で照会すると別の会社の名前が出ました。書類の写しは、発行元の記録と見比べて初めて意味を持ちます。
  • 金融庁の暗号資産交換業者登録一覧で名前を引く
    • BinicseもBitterBeatも、日本の登録の一覧にありませんでした。米国の書類が並んでいても、日本の登録がなければ日本の人を勧誘できない可能性があります。
  • 出金の条件が、サイトの規約やヘルプのどこに書かれているかをその場で示してもらう
    • 取引量や追加の預入といった条件は、Binicseのプログラムのどこにもありませんでした。チャットの言葉だけで示された条件なら、支払いを止めてください。
  • 指定の口座への振込や、国内で買った暗号資産の送金を求められたらまず相談する
    • 相談者は、相手の指定した口座への振込とイーサリアムの送金を重ねていました。相手に急かされても、送る前に一度手を止めて専門家に相談してください。

ここまでの見方で一つでも引っかかる点があれば、それ以上お金を送らずに、画面と相手とのやり取りを保存して信頼できる第三者に相談してください。相手がアドレスや名前を替えても、手元の記録は残ります。

【参考】

・rdap.verisign.com-binicse.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/binicse.com)

・コロラド州務長官-Validate a certificate

・FinCEN-MSB Registrant Search

・金融庁-暗号資産交換業者登録一覧

Binicseに関する口コミや被害事例

検索結果と被害談を分ける。本人の被害投稿は確認できなかった。返金の宣伝は口コミの根拠にしない。類似事例を同一案件と決めつけない。事案名「binicse.com」を右上に示す説明図。

利用者の声を探すため、2026年10月14日にBinicseの名前とアドレスで書き込みを調べました。この章では、被害談の有無、検索で目立つ返金の宣伝、国民生活センターが紹介する似た流れの相談を取り上げます。

Binicseの名前やアドレスで探しても利用者の被害情報は見つからない

Binicse、BitterBeat、ビタービートの名前や、binicse.comのアドレスで、X、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる、爆サイなどの書き込みを探しましたが、利用者本人が被害を書いた投稿は確認できませんでした。

知恵袋には、出金の際に「取引量不足」と言われたという質問がいくつかあります。ただ、いずれも本件より前の時期のもので、サイトの名前も勧誘の流れも本件と一致するものは見当たりませんでした。同じ言葉が出てくるだけでは同じ相手とは言えません。

Binicseの名前で出回る返金の宣伝は別の事案の文面を名前だけ替えたもの

Binicseの名前で検索すると、上位に並ぶのは、返金や調査を持ちかける業者や個人の記事と動画です。個人を名乗る投稿には「私自身も過去に同じような被害に遭った」と書き、LINEや別のメッセージアプリの個人のアカウントへ誘うものがありました。

同じ文面は、別の事案の名前に差し替えた形でも出回っています。本件の相談にない「IPO株への当選」や「サービス料」を、Binicseの手口として書いた投稿もありました。名前だけを入れ替えて量産されたものなので、本件の口コミとしてはとり上げられません。

返金をうたって近づく相手に連絡すると、さらにお金を求められるおそれがあります。金融庁は、登録のない業者とのトラブルについて、相談先を次のように案内しています。

登録のない業者は、金融庁や財務局による検査・監督の対象ではなく、また、一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)も利用できないなど、利用者保護を図ることができません。トラブル解決であれば弁護士かお近くの消費生活センターに、騙されたとお考えであれば、お近くの警察にご相談されることをお勧めしています。
(後略)

国内の取引所で買った暗号資産を指定のサイトへ送らされた20代の相談事例

国民生活センターは、暗号資産のもうけ話についての注意喚起の中で、2023年10月に受け付けた20歳代の男性の相談を紹介しています。

(前略)
暗号資産の投資を勧められ、最初の投資として、指示に従って国内の暗号資産取引所のアプリで2万円相当の暗号資産を購入し、指定された投資サイトへ送付した。
(中略)
再度、40万円相当の暗号資産を投資サイトへ送付し、利益が出たので、出金しようと投資サイトへ連絡すると、出金には12%の税金がかかり、約5,800ドル(約86万円)を支払わなければ出金できないと言われた。
(後略)

▼国内で買った暗号資産を投資サイトへ送った相談事例

binicse-国内で買った暗号資産を投資サイトへ送った相談事例

出典:国民生活センター

これらの事例が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、国内で買った暗号資産を指定のサイトへ送り、出金しようとすると支払いを求められる流れは本件と同じです。違うのは、事例が2023年のもので求められた名目が税金だった点です。

名目が税金でも取引量でも、出金のために先にお金を払わせる点は変わりません。払っても引き出せる保証はないので、払う前に消費生活センターや弁護士などの専門家に相談してください。

【参考】

・金融庁-(5) 暗号資産に関する相談事例等及びアドバイス等

・国民生活センター-【20代要注意!】暗号資産のもうけ話

Binicseに関する口コミが少ない理由

口コミが集まりにくい構造。ログインしないと中身が見えない。名前とアドレスが切り替わる。投稿の少なさは安全を示さない。事案名「binicse.com」を右上に示す説明図。

binicse.comは、ログインしないとどのページもログイン画面に戻り、登録した人にしか中身が見えません。ページの中には、このサイトを検索エンジンに載せないよう指示する記述(noindex)まで入っています。外から見る手段が限られ、評判として書き込まれる機会そのものが少なくなるとみられます。

相談したときの名前はBinicse、今のタブはBitterBeatで、入口のbitterbeat.comは開くたびに3つのアドレスのどれかへ飛ばします。覚えている名前やアドレスが人によって違えば、書き込みは散らばり、一つのサイトの口コミとして積み重なりにくくなります。

検索の上位に並ぶのは、前の章で見た返金の宣伝です。名前だけを替えた体験談が並ぶと、本物の被害談はその中に埋もれてしまいます。検索で見つかる記事の多さは、被害の書き込みの多さを表しているわけではありません。

Binicseの書き込みが少ないのは、安全の証しではなく、外から見えにくい作りや名前の切り替えが重なった結果とみられます。口コミの有無で判断せず、出金の条件や追加の入金の話が出た時点で、支払いの前に専門家に相談してください。

LAWYER

弁護士紹介

翔躍法律事務所 代表弁護士 近藤裕之

翔躍法律事務所 代表弁護士

近藤 裕之

登録番号
60051

元裁判官。裁判官として民事事件に携わったほか、法務省大臣官房参事官として国の訟務にも従事しました。

主な経歴

  1. 仙台地方裁判所 判事補
  2. 東京地方裁判所 判事
  3. 東京地方裁判所 民事第18部 判事
  4. 法務省大臣官房参事官(訟務担当)

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