今回の相談は、マッチングアプリで知り合った女性から投資の話を持ちかけられたのが始まりです。警察庁は、こうした出会いから始まる投資の勧誘をSNS型ロマンス詐欺の手口の一つとして警戒するよう求めています。
相談者はLINEで連絡を取りながら、NFTと暗号資産の取引サイトを名乗るSUTO(sutotrade.com)にイーサリアムを送りました。少額を引き出せたあとに入金が増え、出金しようとすると税金と保証金を求められて指定された口座へ振り込んでいます。
調べると、SUTOの取引画面のプログラムには、実在の取引所の相場に運営側の数値を足して値段を作り、損益も運営側の金額に置き換える仕組みがありました。利用規約は別の取引所の文書を写したもので、SUTOの運営会社はどこにも書かれていません。
本記事では、sutotrade.comの画面と規約、取引のプログラムを調べた結果を弁護士が公的機関の資料とともに解説します。引き出す前に税金や保証金を払うよう言われた場合の考え方も取り上げます。
SUTOに関するトラブルの概要

相談者は、マッチングアプリで知り合った女性から投資の話を持ちかけられ、LINEで連絡を取り合うようになりました。案内されたのは、「SUTO」を名乗るNFTと暗号資産の取引サイト(sutotrade.com)です。資産が増えたところで出金しようとすると、税金や保証金の支払いを求められました。
この章では、SUTOが名乗っている事業の中身、暗号資産の証拠金取引に必要な金融庁の登録、マッチングアプリをきっかけとする詐欺についての警察庁の統計、出金の際に税金や保証金を求められた国民生活センターの相談事例を順に確かめます。
SUTOはNFTの売買と暗号資産の先物取引をうたうが運営する会社がどこにも書かれていない
sutotrade.com のトップ画面には、NFTのコレクションの一覧と「入金」「出金」「資産」のボタンが並び、画面の下のメニューには「NFT」「取引」「マイ資産」があります。ロゴの横とブラウザのタブには「SUTO」とだけ書かれています。
▼NFTの一覧と入金・出金のボタンが並ぶSUTOのトップ画面

出典:SUTO
ページのソースを表示すると、検索エンジン向けのキーワードは「ETH無期限先物、安全安心、暗号資産取引」です。説明文も「信頼性の高いグローバルな暗号資産取引所」と名乗っています。NFTの売買だけでなく、イーサリアムの先物取引を扱う暗号資産取引所として宣伝されていることが分かります。
▼ETH無期限先物をうたうトップ画面のソース

出典:SUTO
一方で、画面にも利用規約にも、SUTOを運営する会社の名前や所在地、登録番号は見当たりません。利用規約が契約の相手方として挙げているのは別の会社の名前で、この点は不審点の章で取り上げます。sutotrade.comが日本で登録を受けた業者によって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
暗号資産の証拠金取引を日本の利用者に提供するには金融庁の登録が要る
業者を相手に証拠金を預け、暗号資産の値上がりや値下がりの差額をやり取りする取引は、金融商品取引法の「店頭デリバティブ取引」として扱われます。これを業として行うことは「金融商品取引業」に含まれ、同法第29条は次のように定めています。
金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。
SUTOのリスク警告のページは、サービスに「Spot and Derivatives services」(現物とデリバティブのサービス)が含まれると書き、契約を「derivative contracts of high financial risks」(リスクの高いデリバティブ契約)と呼んでいます。
登録を受けないまま日本の利用者にこうした取引を提供していれば、法律に反する可能性があります。SUTOが金融庁の登録を受けているかどうかは、次の章で照会の結果とともに確かめます。
SNS型ロマンス詐欺では出会いのきっかけの3割をマッチングアプリが占める
警察庁は、SNSやマッチングアプリなどで出会った相手と直接会わないままやり取りを続け、恋愛感情や親近感を抱かせて金銭をだまし取る手口を「SNS型ロマンス詐欺」として注意を呼びかけています。
特設ページの集計では、令和8年1月〜6月の認知件数2,509件のうち、最初に接触した手段はマッチングアプリが753件(30.0%)で最も多くなっています。被害にあったときの連絡の手段は、LINEが2,344件(93.4%)です。
▼最初の接触はマッチングアプリが最多とする警察庁の集計

出典:警察庁
これらの統計が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、本件の相談者も、マッチングアプリで知り合った女性とLINEで連絡を取り合っていました。出会いはアプリでも、やり取りはLINEへ移るという流れは統計の示す形と重なります。
出金を申し出ると税金や保証金を求められる相談が国民生活センターに寄せられている
2022年8月に国民生活センターが公表した暗号資産のトラブルの資料には、SNSで知り合った女性に指示されたアプリで暗号資産の取引をした人の相談事例が載っています。引き出そうとした後の経緯は次のとおりです。
(前略)
利益が出たので引き出したいと女性に伝えたところ、税金や保証金を立て続けに請求され、合計約170万円をクレジットカードで支払った。(中略)業者のアプリに運営業者情報は書かれていない。
(後略)
出会いのきっかけがSNSで、支払いの方法がクレジットカードである点は本件と異なります。この事例が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、請求の名目が税金と保証金で、サイトの運営元も書かれていない点は本件にも当てはまります。
運営会社の名前がないサイトで、残高を引き出す条件として先にお金を払うよう言われたら、振り込みを止めて専門家に相談してください。払ったお金が戻ってくる保証はどこにも示されていません。
【参考】
・SUTO(https://sutotrade.com/)
・SUTO-Cryptocurrency Trading Risk Disclosure Statement(https://sutotrade.com/risk)
・国民生活センター-SNSやマッチングアプリ、友人・知人からの誘いをきっかけとした暗号資産のトラブル-その話、うのみにしないで-
SUTOへ誘導され被害につながるまでの経緯

ここでは、マッチングアプリでの出会いとLINEでのやり取り、SUTOでの少額の取引と出金、入金の増加、そして出金の際に求められた税金と保証金の振込までを相談の内容に沿って順にたどります。
マッチングアプリで知り合った女性とLINEでやり取りを始める
相談の記録によると、相談者はマッチングアプリで知り合った女性から投資の話を持ちかけられ、LINEで連絡を取るようになりました。案内された取引のサイトが、「SUTO」を名乗る sutotrade.com です。
マッチングアプリは本来、人と知り合うための場です。そこで出会った相手が投資を勧めてくる流れは、前の章で見た警察庁の注意喚起と重なります。知り合って間もない相手から取引サイトを紹介されたら、登録やお金の送付の前に、そのサイトの運営会社と金融庁の登録を確かめてください。
少額の出金ができたことで暗号資産を送る額が増えていく
相談者は初めのうち少額で取引し、出金もできたことから取引を続けました。その後、「資金が多ければ利益も増える」という趣旨のことを言われ、入金の額が少しずつ増えていきました。
入金は、国内の暗号資産交換業者で用意したイーサリアム(ETH)をSUTOへ送る形で行われています。一度引き出せたという経験が、サイトを信用して入金を重ねるきっかけになっています。入金の画面に何が書かれているかは、不審点の章でプログラムの文言とあわせて示します。
出金しようとすると税金と保証金を求められ指定の口座へ振り込む
ある程度の資産ができて出金しようとした段階で、相談者は相手から税金と保証金の支払いを求められました。税金の名目の振込先は、サイトのサポートから案内された銀行口座です。税金の分の振込は、この口座に対して行われました。
それまでの入金はイーサリアムの送付でしたが、税金の支払いは、取引サイトの外にある銀行口座への振込でした。取引の利益にかかる税金を、取引サイトが案内する口座へ払う必要があるのかどうかは、不審点の章で利用規約とあわせて取り上げます。
マッチングアプリで知り合った女性とLINEでやり取りを始め、SUTOで少額を引き出せたことから入金を重ねました。そして出金しようとした段階で税金と保証金を求められ、指定の口座へ振り込んでいます。被害は、引き出そうとしたときに求められた支払いによって、送った暗号資産のほかにも広がりました。出金前の支払い要求は、副業から取引へ誘導し利益の5%を請求する事例でも確認できます。
SUTOの関連サイトの情報を調査した結果

この章では、sutotrade.com がいつ、どのように用意されたのかを、ドメインの登録情報(RDAP)と証明書の記録から確かめます。続いて金融庁の登録の有無を照会し、最後に同じサーバーで動く別のサイトとの関係を見ていきます。記録はいずれも2026年10月13日に照会しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| アドレス | sutotrade.com(www.を付けたアドレスでは開かない) |
| 名乗る名前 | SUTO(ロゴの表記とブラウザのタブ) |
| 取得日時 | 2026年6月9日 17時13分(日本時間) |
| 登録を扱った事業者 | Gname.com Pte. Ltd.(有効期限は2027年6月9日) |
| 同じ作りのサイト | 同じサーバーに少なくとも2つ |
| 運営会社・所在地の表示 | なし |
sutotrade.comのアドレスと証明書は2026年6月9日の同じ日に用意されている
sutotrade.com のRDAPには、登録の日時として2026年6月9日8時13分17秒(協定世界時)が記録されています。日本時間では6月9日の夕方5時過ぎです。所有者の欄に人や会社の名前はなく、受け付けたのは Gname.com Pte. Ltd. です。
▼2026年6月9日の登録を示すsutotrade.comの登録情報

出典:rdap.verisign.com
暗号化に使う証明書も、6月9日から有効なものが出ています。アドレスの取得と公開の準備が同じ日にそろっていることになります。Internet Archiveに残る2017〜2018年の記録は、今回の取得より前の広告の見出しを並べただけのページで、今のSUTOとは関係がありません。
金融庁の一括検索や暗号資産交換業者の登録一覧にSUTOの名前はない
登録を受けた金融事業者を横断して探せる金融庁の一括検索で、「SUTO」を照会しました。結果の欄は「該当するデータはありませんでした。」の一文だけで、アドレスの綴りの「sutotrade」に替えても変わりません。
▼「SUTO」で該当がない金融庁の一括検索の結果

出典:金融庁
金融庁が公表している暗号資産交換業者の一覧(令和8年9月1日現在)にも、警告書を送った無登録の業者の一覧にもSUTOは出てきません。運営会社の名前が示されていない以上、照会の手がかりは名前とアドレスだけです。ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。
同じサーバーには名前とロゴの文字だけが違う同じ作りのサイトが少なくとも2つある
sutotrade.comが置かれたサーバー(104.233.166.200)では、別の名前を名乗るサイトが2つ動いています。トップ画面のファイルを比べると、3つとも1バイトの違いもありません。
プログラムを調べたところ、画面の文言を集めた設定は3つとも273項目で、異なるのはサイト名・問い合わせ先のメールアドレス・サイトのアドレスの3項目だけでした。ロゴも、同じ記号に添える文字を替えただけのものです。
ファイルの日付では、取引や出金の処理は3つのサイトで同じ日付のままでした。名前の設定とロゴだけが、それぞれのアドレスを取ってから1日以内に書き換えられています。SUTOは、同じ作りのサイトの名前を差し替えて出されたものの1つとみられます。
ほかにも、sutotrade.comの公開の状況について次のことを確認しました。
- Googleのセーフブラウジングで調べても、危険なサイトとの判定はなくブラウザの警告は出ない(2026年10月13日時点)
- サイトの画面を記録するurlscan.ioやarchive.todayには、sutotrade.com の記録がない
- 同じサーバーのアドレスには、sutotrade.com を含めて8つのドメインが向けられている
勧められた暗号資産の取引サイトは、名前を金融庁の一括検索と登録一覧で探すところから始めてください。見つからなければ、RDAPで取得日も確かめます。勧誘を受けた時期から数か月以内に取られたアドレスなら、入金の前に立ち止まることが大切です。
【参考】
・rdap.verisign.com-sutotrade.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/sutotrade.com)
・crt.sh-sutotrade.com(https://crt.sh/?q=sutotrade.com)
・SUTO(https://sutotrade.com/)
SUTOに関する不審点

ここではSUTOに関する不審点として、SUTOの取引画面の値段・チャート・損益の作り、銘柄「NFT/USDT」の値段、税金や保証金の支払いとサイトの仕組みの関係、利用規約の中身の6点を取り上げます。
いずれも、画面に表示される数字や手続きが運営する側の手元で決められる作りであることを示しています。
取引画面はログインしないと開けませんが、画面を動かすプログラム(JavaScriptのファイル)はログインせずにブラウザで開けます。以下は、2026年10月13日に取得したプログラムと画面を調べた結果です。
取引画面の値段は実在の取引所の相場に運営側の数値を足して作られている
プログラムを調べたところ、SUTOの取引画面は、海外の暗号資産取引所Huobi(現在のHTX)が公開している相場の情報を受け取って値段と注文の一覧を作っています。受け取る先として、Huobiの相場の配信のアドレス(api-aws.huobi.pro)が書かれています。
▼Huobiの相場の配信につなぐ取引画面のプログラム

出典:SUTO
受け取った値段には、0から1の乱数を6で割った小さな揺れを加えたうえで、「total_control_points」という数値が足されます。この数値は、サーバーに「get_control_points」(直訳すると「制御の点数を取得」)という名前で2秒ごとに問い合わせて受け取るものです。
▼相場の値段に運営側の数値を足すプログラム

出典:SUTO
サーバー側がこの数値を変えれば、利用者の画面の値段だけが実際の相場から上や下へずれることになります。実際にどのように使われたかまでは確認できませんが、値段を運営側の判断で動かせる仕組みが組み込まれています。
チャートの過去の値動きも運営側の数値に合わせて描き直される
値段の推移を示すチャートのプログラムにも、同じ仕組みがあります。サーバーから、期間ごとの開始と終了の時刻と、その間に加える数値を受け取ります。そのうえで、該当する期間のローソク足の終値・高値・安値に数値を割り振り、チャートを描き直します。
▼期間ごとの数値でチャートの足を描き直すプログラム

出典:SUTO
今の値段だけをずらすと、過去のチャートとのつながりが不自然になります。過去の足まで書き換えることで、ずらした値段がなめらかな値動きの結果のように見える作りになっています。
損益は運営側が決めた金額があれば相場と関係なくその金額が表示される
保有している取引の損益を計算する部分では、まず値段の差から損益を求めます。ところが、サーバーから届く「control_profit」という金額が0でなければ計算した損益を使わず、その金額に0〜1割の乱数分を上乗せした値を表示します。
▼運営側の金額で損益を置き換える取引画面のプログラム

出典:SUTO
つまり、画面に出る「損益」は、利用者の売買の結果とは限りません。利益が出ているように見せることも、損が出ているように見せることも運営側の金額ひとつでできる作りです。
銘柄NFT/USDTの値段は相場を半分にして5000を足した数字になっている
プログラムが扱う銘柄の1つ「NFT/USDT」は、さらに作りが異なります。受け取った相場の値段を半分にし、5000.25を足した数字を値段として表示します。注文の数量も、半分にして300.25を足しています。
▼値段を半分にして5000.25を足すNFT/USDTの処理

出典:SUTO
プログラムに書かれたこの銘柄の説明の文も、イーサリアムを紹介する英文がそのまま使われています。NFT/USDTの値段は、どこかの市場で付いた値段をそのまま映したものではありません。
税金や保証金を銀行口座へ振り込ませる仕組みはサイトのどこにもない
SUTOの利用規約は、税金について13条で次のように定めています。
(前略)
Users must also factor, to the extent of their local law all aspects of taxation, the withholding, collection, reporting and remittance to their appropriate tax authorities.
(後略)
利用者は、地元の法律に従って、税の源泉徴収・徴収・申告・納付のすべてを自分にとって適切な税務当局に対して行うという内容です。税金は利用者が税務当局に納めるもので、SUTOに払う仕組みは規約に書かれていません。
▼税金は利用者が税務当局に納めると定めた利用規約13条

出典:SUTO
画面の文言をまとめた設定にも、「税」や「tax」の文字は日本語・英語・中国語のどれにもありません。ログインしないと開けない入金の画面は、プログラムそのものを取得して文言を確認しました。案内はウォレットアドレスへの送金と証明のアップロードだけで、銀行振込の入金先は出てきません。
▼ウォレットアドレスへの送金だけを案内する入金の文言

出典:SUTO
出金の手数料も、出金する額から差し引く計算で、別に振り込ませる処理はありません。設定にある「証拠金」は取引の注文に使う言葉で、出金の処理には出てきません。税金や保証金を銀行口座へ振り込ませる手続きは、SUTOのサイトの仕組みの外で求められたものです。
利用規約は正規のBingXの文書の写しで契約の相手方もBingXの会社のまま
SUTOの利用規約・プライバシーポリシー・免責事項・リスク警告の4つは、暗号資産取引所の正規のBingXが公開している文書と文の大半が同じです。文ごとに比べたところ、利用規約では336の文のうち332の文が、BingXが2026年1月ごろに掲載していた版と一致しました。
利用規約が契約の相手方として挙げる「Nieve Cruz PA Corporation」は、正規のBingXが「Licenses and Authorizations in Panama」のページで、2025年3月11日にパナマで登記された会社として紹介しています。
▼Nieve Cruz PA CorporationをパナマのBingXの会社とする紹介

出典:BingX
規約の8.3.3には、「(To be re-confirmed with BX Business)」(BXの事業部門に再確認すること)という書きかけの注記まで残っています。BingXの規約を写した際に、そのまま持ち込まれたとみられます。
▼BingXの社内向けの注記が残る利用規約の8.3.3

出典:SUTO
名前や仕組みを勧誘する側が利用しているだけで、SUTOの運営者が誰なのかは規約からも分かりません。紛争は香港で仲裁により解決すると定めていますが、日本の消費者を守る法律がどこまで認められるかは別の問題で、返金をあきらめる理由にはなりません。
【参考】
・SUTO-取引画面のプログラム(https://sutotrade.com/static/js003/trade/h5_trade.js)
・SUTO-チャートのプログラム(https://sutotrade.com/static/js003/trade/h5_kline.js)
・SUTO-画面の文言の設定(https://sutotrade.com/static/js003/i18n/i18n_jp.json)
・SUTO-Customer Agreement(https://sutotrade.com/agreement)
・BingX-Customer Agreement(https://bingx.com/en/support/articles/360033286474)
・BingX-Licenses and Authorizations in Panama(https://bingx.com/en/support/articles/16131922884367)
実在の相場を映す取引画面が投資詐欺に悪用されやすい理由

SUTOのような取引サイトが勧誘に使われやすい理由を、4つの面から見ていきます。本物の相場を借りた値動き、有名な作品の名前を付けたNFTの一覧、名前を差し替えるだけで増やせるサイト、そして招待制と「毎日安定した収益」という案内です。
実在の取引所の相場を映せば値動きは本物と見分けがつかない
前の章で見たとおり、SUTOの取引画面は、実在の取引所が公開している相場を受け取って値段を作っています。そのため、ニュースやほかの取引所で見るイーサリアムの値動きと、画面の値動きはほぼ同じように上下します。
細かな乱数の揺れが加わるため、値段は絶えず動いて見えます。運営側の数値で値段が少しずらされても、利用者が別の画面と見比べて違いに気づくのは難しいとみられます。本物の値動きに見えることが、サイトそのものを信用させる材料になります。
有名な作品の名前を並べたNFTの一覧は高い価値があるように見える
SUTOのトップ画面には、人気のアニメや漫画の作品名を付けたものを含めNFTのコレクションが並びます。それぞれに「最低価格」と「取引量」が表示され、多くの人が売り買いしているように見えます。
▼名前が違っても同じ数字が並ぶトップ画面の2つの一覧

出典:SUTO
ところが、別々の一覧を比べると、名前が違うのに最低価格と取引量の並びは同じです。1番目はどちらも「159.00」と「3328」、2番目はどちらも「695.00」と「2341」でした。一覧の数字は実際の売買から集計されたものではなく、ページに書き込まれた固定の値とみられます。
名前とメールとアドレスの3か所を替えれば別の名前の取引所がひとつ増える
関連サイトの章で見たとおり、SUTOと同じサーバーには、名前とロゴの文字だけが違う同じ作りのサイトが少なくとも2つあります。画面の文言をまとめた設定のうち、サイト名・メールアドレス・サイトのアドレスの3か所を替えれば、別の名前の取引所ができあがります。
同じサーバーの3つのアドレスは、2026年5月から6月にかけて数週間おきに取得されていました。ある名前で被害の情報が出回っても、運営する側は別の名前で同じ画面を用意し直すだけで済みます。名前で検索して評判を調べても、別の名前のサイトの情報には行き当たりにくくなります。
招待制と毎日の安定収益をうたえば仲間うちだけの特別な話に見える
ログインしないと開けないサポートの画面の「よくある質問」には、次のような答えがプログラムに書かれていました。
システム内で商品取引に参加することで、毎日安定した取引収益を得ることができます。すべての収益は銀行口座へ出金することが可能です。
▼毎日安定した収益と招待制をうたうよくある質問の文言

出典:SUTO
会員登録については「新規会員は既存会員の招待によってのみ登録できます。」と答え、登録の画面にも招待コードの欄があります。
一方で、同じサイトのリスク警告は、取引が大きな損失を招くおそれのあるデリバティブだと書いています。「毎日安定した収益」という案内は、サイト自身の説明とも食い違っています。
知り合った相手から招待されて始める取引は、自分だけに開かれた特別な機会のように感じやすいものです。招待コードを受け取ってお金を入れる前に、そのサイトについて信頼できる第三者に相談してください。
【参考】
・SUTO(https://sutotrade.com/)
・SUTO-画面の文言の設定(https://sutotrade.com/static/js003/i18n/i18n_jp.json)
・SUTO-会員登録(https://sutotrade.com/register)
・SUTO-Cryptocurrency Trading Risk Disclosure Statement(https://sutotrade.com/risk)
SUTOの不審点を見抜く方法

SUTOでは、値段・損益・人気の数字から出金の際に求められた税金の額まで、相談者の目に入る数字の多くがサイトの側で決められる作りでした。以下では、数字の種類ごとに6つの確かめ方を挙げ、SUTOで何が分かったかを添えます。
- 値段:画面の値動きだけを根拠に入金を増やさない
- SUTOの取引画面は、実在の取引所の相場に運営側の数値を足して値段を作り、過去のチャートまで描き直す作りでした。値動きが本物らしく見えても、その画面が正しい値段を示している保証にはなりません。
- 損益:表示された利益は出金できるまで数字にすぎない
- SUTOのプログラムは、運営側の金額があれば相場から計算した損益を捨て、その金額を表示します。画面の利益が増えても、それを理由に追加の入金をしないでください。
- 最低価格と取引量:一覧の数字が名前を替えても同じでないかを見る
- SUTOのトップ画面では、名前の違うNFTに同じ最低価格と取引量が並んでいました。銘柄「NFT/USDT」の値段も、相場を半分にして5000.25を足した数字です。人気や価値を示す数字が、実際の売買から来ているとは限りません。
- 税金や保証金の額:取引サイトや個人の口座に払うものかを考える
- SUTOの規約は、税金は利用者が税務当局に納めると定めています。国税庁をかたる詐欺への注意を促すページでも、国税庁は納付のために口座を指定して振込みを求めることはないと説明しています。出金の条件として税金を払うよう言われたら、まず疑ってください。
- 取得日:RDAPでアドレスがいつ取られたかを見る
- sutotrade.com は2026年6月9日に取られたアドレスで、同じ作りのサイトが別の名前で数週間おきに用意されていました。勧誘の数か月前に取られたアドレスなら、運営の実績はほとんどないと考えられます。
- 登録番号:金融庁の登録と運営会社の名前を探す
- 暗号資産の証拠金取引を日本の利用者に提供するには金融庁の登録が要りますが、SUTOは一括検索で見つからず、運営会社の名前もありません。規約の契約の相手方は別の取引所の会社でした。登録番号も会社名も示さないサイトに入金する前に、専門家に相談してください。
SUTOのように、取引サイトの画面に出る数字は、運営する側の手で書き換えられる場合があります。出どころを確かめられない数字を前にしたら入金を止め、LINEのやり取りとサイトのアドレスを手元に残して、信頼できる第三者に見てもらってください。
【参考】
・rdap.verisign.com-sutotrade.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/sutotrade.com)
・SUTO-Customer Agreement(https://sutotrade.com/agreement)
SUTOに関する口コミや被害事例

SUTOに触れた投稿を、X(旧Twitter)・Yahoo!知恵袋・5ちゃんねる・爆サイなどで探しました。その結果に続けて、名前で検索したときに目立つ記事の中身と警察庁が紹介している暗号資産の被害の事例を取り上げます。
SUTOという短い名前で探しても被害の書き込みには行き当たらない
2026年10月13日と14日に、「sutotrade」や「SUTO 詐欺」「SUTO 出金」などで投稿を探しましたが、SUTOで取引をして被害にあったという書き込みは見つかりませんでした。X、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねる、爆サイ等のいずれも同じです。
「SUTO」は4文字の短い名前のため、知恵袋では芸能や政治の話題など、取引サイトとは関係のない質問が並びます。被害の声が表に出ていないだけという可能性もあります。同じ作りのサイトが別の名前で動いていることも、書き込みが見つかりにくい理由の1つとみられます。
SUTOの名前で探すと目立つのは返金や相談をうたう記事
一方で、SUTOやsutotrade.com の名前で検索すると、調査会社や返金の手伝いをうたう事業者の記事が数件並びます。同じ被害者の立場だと名乗ってLINEやTelegramでの相談へ誘うブログや、相談の窓口へ案内するXの投稿も見られます。
消費者庁は、被害を取り戻す条件として「返金を受けるには、別の投資商品を購入する必要がある」などと言われる手口を挙げ、持ちかけられたときの対応を次のように示しています。
きっぱりと断り、対応に困った場合には、一人で悩まず、消費生活相談窓口に相談しましょう。
この注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、SUTOの被害を取り戻せると持ちかける連絡が、新たな被害の入り口になるおそれがあります。まず頼る先は、弁護士や各地の消費生活センターのように、連絡先と立場を自分で確かめられるところを検討してください。
警察庁が紹介する暗号資産の取引を勧められた被害の事例
警察庁のSNS型ロマンス詐欺の特設ページには、オンラインで知り合った相手から暗号資産の話を持ちかけられた男性の事例が載っています。被害額は合計約700万円です。
マカオ在住の30代独身を自称する女とオンラインで知り合う。
(中略)
暗号資産を購入するとの名目で指定された口座に複数回振込入金してお金をだまし取られた。
▼暗号資産の購入の名目で振り込ませた警察庁の事例

出典:警察庁
この事例では、暗号資産を買う名目で指定の口座に振り込んでおり、出金の際の税金や保証金の話は出てきません。この事例が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、オンラインで知り合った相手から暗号資産の話を持ちかけられ、指定された口座へ振り込む点は本件の相談者の経験と重なります。
【参考】
SUTOに関する口コミが少ない理由

2026年6月9日に取得されたsutotrade.comは、この記事の執筆時点でアドレスの歴史が4か月ほどです。画面を記録するurlscan.ioやarchive.todayにも記録がなく、外から見える痕跡はほとんどありません。被害を受けた人の声が集まるには、まだ日が浅いとみられます。
さらに、同じ作りのサイトが名前を替えて同じサーバーで動いています。同じ仕組みで被害を受けた人がいても、覚えている名前はサイトごとに違います。書き込みは複数の名前に分かれてしまい、SUTOという1つの名前の口コミとしては積み重なりにくくなります。
会員を招待だけで受け付ける作りも影響しているとみられます。SUTOのよくある質問は、新しい会員は既存の会員の招待でしか登録できないと説明しています。
知り合った相手から招待された人だけが使うサイトなら、利用者どうしが情報を交わす場も生まれにくく、評判が外に出てきにくい可能性があります。
日が浅く、名前が分かれ、招待された人だけが使う。SUTOの口コミの少なさは、こうした事情の重なりから生じているとみられます。検索で何も出てこないことを安心の材料にはせず、引き出しの条件として何かの支払いを持ち出されたら、送金の前に専門家に相談してください。

