今回の相談は、広告を見たあと電話で相手とつながり、暗号資産とアップルの株に関する話を勧められたのが始まりです。金融庁も、国内の上限を遥かに上回る高いレバレッジを宣伝する無登録の海外業者に注意を呼びかけています。
相談者が案内されたのは、FX・CFDの業者「Yensai」を名乗るサイト(yensai-jp.com)です。このサイトに向けて暗号資産を送り、相手が指定した銀行口座へも振り込みました。「Yensai」は、実在の証券会社エンサイドットコム証券の英文社名と同じ綴りです。
調べると、Yensaiは「東京の株式会社」を名乗りながら法人番号が見つからず、日本の登録業者には認められない最大1000倍のレバレッジをうたっていました。取引サイトのログイン画面には、「日保ネクスト」という別の名前が残っています。
本記事では、サイトとプログラムの調査結果を、正規のエンサイドットコム証券や金融庁の資料と突き合わせて弁護士が解説します。また高い倍率をうたう業者を勧められたときの確かめ方も紹介します。
Yensaiを装う偽サイトに関するトラブルの概要

相談者は、広告を見たあと電話で相手とつながりました。勧められたのは暗号資産とアップルの株に関する話です。相談者は、FX・CFDの業者「Yensai」を名乗るサイト(yensai-jp.com)に向けて暗号資産を送り、相手が指定した銀行口座へも振り込みました。
「Yensai」は、国債の取引の仕組みを運営する実在の証券会社、エンサイドットコム証券の英文社名と同じ綴りです。ここでは、正規のエンサイドットコム証券の会社概要と注意喚起、FXの高いレバレッジについての金融庁の注意喚起、警察庁の統計を順に確かめます。
Yensaiは国債の取引システムを運営するエンサイドットコム証券の英文社名
正規のエンサイドットコム証券の会社概要には、英文社名として「Yensai.com Co.,Ltd.」と記されています。事業目的は「日本国債の私設取引システムの運営」です。株主には大手の証券会社が並び、ページの下部には「関東財務局長(金商)第51号」の登録番号が載っています。
▼英文社名がYensaiと記された正規の会社概要

出典:エンサイドットコム証券
一方、yensai-jp.com は「東京を拠点とする FX・CFD のオンラインブローカー」と名乗り、個人に向けて為替や株式のCFDを案内しています。yensai-jp.com が正規のエンサイドットコム証券によって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
正規のエンサイドットコム証券は個人への投資勧誘を行わないと注意を呼びかけている
正規のエンサイドットコム証券は、2026年9月2日、「当社名および金融商品取引業者登録番号を使用した投資勧誘にご注意ください」と題したお知らせを掲載しました。広告から誘導する勧誘と似た名前のサイトについて、次のように説明しています。
(前略)
当社が入手した情報によると、インターネット広告や動画等を通じて投資関連サービスへ誘導する勧誘が行われ、その過程において、当社名および当社の金融商品取引業者登録番号が使用されていたことを確認しております。 また、当社に類似する名称を使用したウェブサイト等の存在も確認しておりますが、これらの勧誘、広告、ウェブサイトおよび提供されているサービス等は、当社とは一切関係ございません。
当社は、主として機関投資家のお客様を対象とした業務を行っており、個人のお客様や一般事業会社のお客様に対し、インターネット広告、SNS、動画配信サービス、電子メール等を利用して投資勧誘を行うことはございません。
(後略)
▼個人へ勧誘しないと明記した正規の注意喚起

出典:エンサイドットコム証券
お知らせは、相談者が暗号資産を送る前から掲載されていました。注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、「Yensai」の名前で個人に投資を勧める広告や電話は、正規のエンサイドットコム証券が行うものではありません。
金融庁は国内の上限を超える高いレバレッジを宣伝する無登録業者に注意を促している
日本で登録を受けたFX業者は、個人の顧客との取引で、預かった証拠金の25倍を超える取引をさせることができません。金融庁は「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」のページで、この上限を大きく超える倍率を売り文句にする業者について、次のように注意を促しています。
(前略)
また、無登録の海外所在業者の中には、例えば日本国内のレバレッジ規制※を遥かに上回る高レバレッジを「宣伝文句」として、FX取引の勧誘を行っている例が見受けられます。
※レバレッジ規制とは、預託した証拠金の25倍を超える額のFX取引を禁止する規制。
(後略)
▼高い倍率の宣伝に注意を促す金融庁のページ

出典:金融庁
同じページは、無登録の海外所在業者について「業務の実態等の把握が難しく、仮にトラブルが生じたとしても業者への追及は極めて困難」だとして、契約しないよう求めています。FXの業者を名乗るサイトを勧められたら、示されている最大の倍率が25倍を超えていないかを最初に確かめてください。
SNS型投資詐欺の最初の接触はバナーなどの広告が最も多い
警察庁が2026年5月に公表した令和7年の確定値によると、SNS型投資詐欺の認知件数は9,523件(+3,110件、+48.5%)、被害額は1,288.0億円(+416.9億円、+47.9%)でした。
被害者が最初に接触した手段では、バナー等広告が3,785件(+884件、+30.5%)で最も多く、ダイレクトメッセージの3,549件を上回っています。バナー等広告の内訳では、YouTubeが1,024件で最も多くなっています。
これらの統計が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、本件も広告がきっかけでした。広告から電話や見知らぬサイトへ誘われ、初めて名前を聞く業者にお金を送るよう求められたときは、送金の前に専門家に相談してください。
【参考】
・Yensai(https://yensai-jp.com/)
・エンサイドットコム証券-会社概要(https://www.yensai.com/company/outline.html)
・エンサイドットコム証券-当社名および金融商品取引業者登録番号を使用した投資勧誘にご注意ください(https://www.yensai.com/company/pressrelease/20260902.html)
・警察庁-令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)
Yensaiを装う偽サイトへ誘導され被害につながるまでの経緯

ここでは、広告をきっかけにした電話でのやり取りから、Yensaiを名乗るサイトの案内、暗号資産の送付と銀行口座への振込までを相談の内容に沿って順にたどります。サイトの中身を調べた結果は、次の章から示します。
広告を見たあとに電話で相手とやり取りを始める
相談の記録によると、相談者は広告を目にしたあと電話で相手とつながりました。始まりは広告でも、話はそのあとに電話を通じて進んでいます。前の章で見た正規のエンサイドットコム証券のお知らせも、勧誘の入口として「インターネット広告」を挙げていました。
電話でのやり取りは、メッセージのように画面に文字が残りません。勧められた内容や業者の名前を、あとから自分で見返して確かめにくいのが電話の勧誘の特徴です。勧誘を受けたら、相手の名乗った会社名と説明の要点をその場で書き留めておいてください。
暗号資産とアップルの株の話からYensaiの取引サイトへ案内される
相談者は、勧められた話を暗号資産とアップルの株に関する内容だったと申告しています。案内されたのは、FX・CFDの業者「Yensai」を名乗るサイト(yensai-jp.com)でした。口座の開設やログインのボタンを押すと、取引用の別のアドレス(yensai-jp.trading)の画面に移ります。
yensai-jp.com は、株式CFDのページで米国株を、暗号資産CFDのページではビットコインなどの値動きの取引を案内しています。勧められたアップルの株や暗号資産の話は、このサイトの品ぞろえと重なります。サイトで「アップルの株」を取引すると何を持つことになるのかは不審点の章で取り上げます。
暗号資産の送付と銀行口座への振込の2つの方法でお金を渡す
相談の記録には、国内の暗号資産交換業者の口座からビットコインを送った記録が残っており、送り先はYensaiのサイトとされています。これとは別に、相手が指定した銀行口座への振込も行っています。
yensai-jp.com のよくある質問は、入出金の方法を「銀行振込に対応しています。」と答えるだけで、暗号資産で入金する方法は公開されたページのどこにも書かれていません。サイトが案内していない手段でも、お金が送られていたことになります。
広告をきっかけに電話で相手とつながり、暗号資産とアップルの株の話からYensaiを名乗るサイトを案内されて、暗号資産の送付と銀行口座への振込の2つの方法でお金を渡しました。Yensaiをめぐる被害は、このような流れでつながっていきました。
Yensaiを装う偽サイトの関連サイトの情報を調査した結果

この章では、3つのアドレスの登録情報(RDAP)と証明書の発行記録、名乗る会社の法人番号と金融庁の登録、会社概要が示す住所の3つの方向から、Yensaiの実体を確かめます。表の内容は、2026年10月13日にそれぞれの記録を引いて確かめたものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| アドレス | yensai-jp.com(会社概要などのサイト)/yensai-jp.trading(取引サイト)/yensai-jp.net(問い合わせ先のメールアドレスのドメイン) |
| 名乗る名前 | Yensai(ロゴの表記は「yensai」、取引サイトのブラウザのタブは「Yensai-jp」) |
| 名乗る運営会社 | Yensai Trading株式会社 |
| 所在地の表示 | 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー7F(The Executive Centre) |
| 電話番号の表示 | +81 50-3095-2670 |
| 取得日時 | 2026年8月9日 22時16分(日本時間)。3つとも同じ |
| 登録を扱った事業者 | Dynadot Inc(有効期限は2027年8月9日) |
▼東京発のFX・CFD業者を名乗るyensai-jp.comのトップ

出典:Yensai(yensai-jp.com)
yensai-jp.comなど3つのアドレスが秒まで同じ時間に登録されている
RDAPで3つのアドレスの登録情報を引くと、yensai-jp.com、yensai-jp.trading、yensai-jp.net のいずれも、2026年8月9日13時16分05秒(協定世界時)に登録されています。日本時間では8月9日22時16分05秒で、3つが全く同じ時間に取られたことになります。
▼同じ秒に登録された3つのアドレスの登録情報

出典:rdap.verisign.com/rdap.identitydigital.services
3つの登録を扱ったのはいずれもDynadot Incで、RDAPには持ち主の名前も会社名も記されていません。会社概要のサイト、取引サイト、メールの3つの役割のアドレスを最初から1つの組としてまとめて取得していたことがうかがえます。
通信の暗号化に使う証明書も、翌8月10日に3つのアドレスの分がそろいました。登録は相談者が暗号資産を送るおよそ1か月半前のことで、サイトはできてから日の浅いうちに相談者の目に触れたとみられます。
名乗るYensai Trading株式会社は法人番号公表サイトにも金融庁にも見当たらない
yensai-jp.com の会社概要は、運営会社を「Yensai Trading株式会社」とし、事業内容を「FX・CFDに関する情報提供およびオンラインブローカー事業」と記しています。規約とプライバシーポリシーも、同じ会社名で書かれています。
▼Yensai Trading株式会社を名乗る会社概要の表

出典:Yensai(yensai-jp.com)
国税庁の法人番号公表サイトで「Yensai Trading」を部分一致で検索すると、登記が閉鎖された会社まで含めても「入力された条件に該当するデータが存在しません。」と表示されます。日本の株式会社であれば割り当てられるはずの法人番号が、この名前では見つかりません。
▼Yensai Tradingで該当がない法人番号公表サイト

出典:国税庁
金融庁の金融事業者一括検索で「エンサイ」と入れると、表示されるのは正規のエンサイドットコム証券株式会社の1件だけです。画面の上部には、「実在の事業者を騙った詐欺もありますのでご注意ください。」という一文も出ます。英字の「Yensai」で引いた結果は0件でした。
▼エンサイで正規の1社だけが出る金融庁の一括検索

出典:金融庁
会社概要の所在地は住所だけ借りることもできるレンタルオフィスと一致
会社概要が示す「グラントウキョウサウスタワー7F(The Executive Centre)」は、レンタルオフィスを運営するThe Executive Centreの東京の拠点です。公式ページにも「〒100-6607 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー 7階」とあります。
▼同じ住所を示すレンタルオフィスの公式ページ

出典:The Executive Centre
同社のメニューには、個室のレンタルオフィスのほかに「バーチャルオフィス」も並んでいます。会社の住所として名前や所在地だけを借りる使い方もできるため、有名なビルの住所が書かれていても、その会社がそこで事業をしている裏付けにはなりません。法人番号の見つからない会社名と組み合わされていればなおさらです。
ほかに、3つのアドレスがどこまで知られているかを示す記録も調べました。
- Googleのセーフブラウジングで調べても、3つのアドレスに危険なサイトとの判定はなく、ブラウザの警告は出ない(2026年10月13日時点)
- ウェブページの保存サービスInternet Archiveには、yensai-jp.com の記録がなく、取引サイトの記録が2026年10月2日の2件あるだけ。サイトの記録を集めるurlscan.ioにも2件しかない
- 金融庁が無登録で金融商品取引業を行う者として公表している業者の一覧にも、Yensaiの名前はない。ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません
FXや株のCFDを扱う会社を名乗るサイトを勧められたら、まず金融庁の一括検索で日本語の社名を引き、法人番号公表サイトで運営会社の名前を確かめてください。アドレスが取られて数か月しかたっていなければ、送金を急がず信頼できる第三者に相談することをおすすめします。
【参考】
・Yensai(https://yensai-jp.com/)
・Yensai-会社概要(https://yensai-jp.com/about/)
・rdap.verisign.com-yensai-jp.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/yensai-jp.com)
・rdap.identitydigital.services-yensai-jp.trading(https://rdap.identitydigital.services/rdap/domain/yensai-jp.trading)
・rdap.verisign.com-yensai-jp.net(https://rdap.verisign.com/net/v1/domain/yensai-jp.net)
・The Executive Centre-グラントウキョウサウスタワー(https://www.executivecentre.com/ja-jp/office-space/tokyo-grantokyo-south-tower/)
・金融庁-無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について(HTML版)
・Google-透明性レポート(セーフブラウジングのサイト ステータス)
Yensaiを装う偽サイトに関する不審点

ここではYensaiに関する不審点として、最大1000倍のレバレッジ、登録番号の表示、アップルの株の取引の中身、取引サイトのログイン画面、取引画面の設定、ページが作られた日時の6つを取り上げます。
どれにも共通するのは、日本の会社と日本の法律を掲げながら、日本の登録業者には認められない条件をうたい、画面やプログラムには別の名前やよそで作られた跡が残っていることです。取り上げる画面とプログラムは、いずれも2026年10月13日に開いて確かめたものです。
最大1000倍のレバレッジは日本の登録業者に認められた上限の40倍にあたる
yensai-jp.com の取引条件のページは、「最大レバレッジ」として「1:1000」を掲げ、必要な証拠金の割合を「0.1%〜」と示しています。口座タイプのページでも、2つの口座がともに「最大 1:1000」です。
▼最大1000倍のレバレッジを掲げる取引条件のページ

出典:Yensai(yensai-jp.com)
日本で登録を受けた業者は、個人とのFX取引で取引の額の4%以上の証拠金を預からなければなりません。金融先物取引業協会は、この規制の結果を次のようにまとめています。
(前略)
すなわち、2010年8月1日から1年間はレバレッジの上限は50倍、2011年8月1日以降は上限が25倍となったのです。
(後略)
▼個人のFXの上限を25倍とする協会の説明

出典:一般社団法人金融先物取引業協会
サイトが掲げる1000倍は、日本の登録業者に認められた上限の40倍にあたる数字です。個別の株のCFDでは、金融商品取引業等に関する内閣府令が取引の額の20%以上の証拠金を求めており、上限は5倍とさらに低くなります。
ところが、yensai-jp.com の利用規約は、日本の法律に従い、争いがあれば東京地方裁判所で解決すると定めています。日本の会社と日本の法律を掲げながら、日本の登録業者には許されない倍率をうたっていることになります。
▼日本法と東京地方裁判所を定めるYensaiの利用規約

出典:Yensai(yensai-jp.com)
東京の会社を名乗りながら金融商品取引業者の登録番号をどこにも示していない
金融商品取引法第37条は、登録を受けた業者が広告をするときに、商号や名称とあわせて「金融商品取引業者等である旨及び当該金融商品取引業者等の登録番号」を表示するよう定めています。正規のエンサイドットコム証券の会社概要にも、ページの下部に「関東財務局長(金商)第51号」とあります。
一方、yensai-jp.com のトップのページのソースを開き、「登録番号」で検索しても一致は0件です。ほかの15のページの本文にも、「登録番号」「関東財務局」「金商」の文字は1つもありませんでした。
▼登録番号の文字が0件のトップのページのソース

出典:Yensai(yensai-jp.com)
「東京を拠点とする」会社がFXやCFDの口座を開かせるのであれば、本来は登録を受け、その番号を示しているはずです。登録番号の表示がないFX・CFD業者のサイトには、口座を開いたりお金を送ったりしないでください。
アップルの株の取引は株そのものを持たない差金決済の取引として用意されている
yensai-jp.com の株式CFDのページは、「株式CFDなら、世界の有名企業の個別株を、現物株を保有することなく取引できます。」と説明しています。CFDは、値動きの差額だけをやり取りする取引で、株を買って株主になるわけではありません。
▼現物株を持たない取引と説明する株式CFDのページ

出典:Yensai(yensai-jp.com)
プログラムを調べたところ、取引画面の銘柄の一覧は、ログインせずに開ける設定のデータとして配られており、その中に種類を「stocks」とする「APPLE」が含まれていました。暗号資産CFDのページも、「暗号資産そのものを保有することなく」と書いています。
▼取引画面の設定に並ぶ株の銘柄のAPPLE

出典:shink-sec.ibitsecure.com
このサイトでアップルの株を「買った」つもりでも、実際の株を持つことにはなりません。相手から株の取引と説明された場合は、現物の株を買うのかCFDなのかを確かめることが大切です。
取引サイトのログイン画面にYensaiとは別の名前が表示されている
取引サイト(yensai-jp.trading)のログイン画面を開くと、右側には「Yensai-jpにログイン」と表示されます。ところが、左上には「日保ネクストクライアントポータル」という、Yensaiとは別の名前が出ています。口座を作る登録の画面も同じです。
▼日保ネクストという別の名前が出るログイン画面

出典:Yensai(yensai-jp.trading)
ログイン画面の見出しの名前が、サイトの名前と一致していません。別の名前で使われていた画面を作り替え、一部を置き換え忘れた可能性があります。名前の食い違いは、利用者の目に最初に触れる画面に残っています。
取引画面の設定に実在の証券会社の英語名に似せた別の名前が残っている
プログラムを調べたところ、yensai-jp.trading の取引画面は、Yensaiのものではない別のドメインのシステムから読み込まれていました。そのシステムがログインせずに返す設定には、問い合わせ用のメールアドレスとロゴの置き場所として、実在の証券会社の英語名に似せた別の名前が書かれています。
▼別の名前のメールとロゴが残る取引画面の設定

出典:shink-sec.ibitsecure.com
その名前の取引サイトは今も動いており、同じ取引システムにつながっています。Yensaiの取引画面は、別の名前で使われている仕組みを共有して動いているとみられます。画面に表示される残高や取引の結果が、どこで管理されているのかを利用者が確かめる手段はありません。
取引サイトのページはアドレスを取得する1か月前に作られている
WordPressで作られたサイトは、ページの一覧を公開データとして返します。yensai-jp.trading の公開データを開くと、23のページの作成日時はいずれも2026年7月8日から9日で、アドレスが取られた8月9日より1か月早い日付です。
▼localhostで作られた取引サイトのページの公開データ

出典:Yensai(yensai-jp.trading)
各ページの元のアドレスを示す項目も、23ページすべてが「localhost:8093」でした。localhostは、作業する人の手元のパソコンを指す名前です。取引サイトのページは、手元で作ったものをアドレスの取得後に移してきたとみられます。
会社概要のサイトも、16のページの作成日時がすべて「2026-08-24T07:30:58」の同じ秒でした。1ページずつ書いたのではなく、まとめて流し込んだとみられます。ログイン画面に残る別の名前とあわせると、Yensaiのために一から作ったサイトとは考えにくい状況です。
▼16ページが同じ秒に作られた会社概要のサイトの公開データ

出典:Yensai(yensai-jp.com)
【参考】
・Yensai-取引条件(https://yensai-jp.com/trading-conditions/)
・Yensai-利用規約(https://yensai-jp.com/terms/)
・Yensai-株式CFD(https://yensai-jp.com/stock-cfd/)
・Yensai-ログイン画面(https://yensai-jp.trading/signin/)
・Yensai-取引サイトの公開データ(https://yensai-jp.trading/wp-json/wp/v2/pages?per_page=100)
・Yensai-会社概要のサイトの公開データ(https://yensai-jp.com/wp-json/wp/v2/pages?per_page=100)
・shink-sec.ibitsecure.com-取引画面の設定(https://shink-sec.ibitsecure.com/ja/platform/json/trading-platform)
・一般社団法人金融先物取引業協会-個人顧客を相手方とするFX取引に係る証拠金規制(https://www.ffaj.or.jp/regulation/customers/)
Yensai(エンサイドットコム証券)の名称が悪用されやすい理由

ここでは、個人になじみのない証券会社の名前、英文の社名だけの名乗り、国内の会社らしく見せる住所と規約、看板を掛け替えられる取引システムという4つの面から、Yensaiの名前が悪用されやすい理由を見ていきます。
個人向けの窓口を持たない証券会社の名前は利用者が正規の情報に行き着きにくい
正規のエンサイドットコム証券は、国債の取引の仕組みを運営する会社で、お知らせでも「主として機関投資家のお客様を対象とした業務」と説明しています。個人が口座を開いて取引する相手ではないため、個人がその名前を目にする機会はあまりありません。
名前を調べると、金融庁の登録を受けた実在の会社が見つかります。実在する登録業者だという事実が、かえって勧誘を信じる材料に使われるおそれがあります。正規の会社が個人とどう関わるのかを知らなければ、同じ名前のFX業者があっても不自然だと気づきにくくなります。
英文の社名だけを使えば日本語の社名や登録番号を出さずに済む
yensai-jp.com が名乗るのは「Yensai」と「Yensai Trading株式会社」だけで、日本語の社名「エンサイドットコム証券」も登録番号も出てきません。金融庁の一括検索で英字の「Yensai」と引いても、結果は0件です。
日本語の社名にたどり着けない人は、登録を確かめる入口で止まってしまいます。反対に、正規の会社にたどり着いた人は、同じ会社だと思い込むかもしれません。英文の社名だけを使えば、どちらに転んでも利用者に確かめさせにくい名乗り方になります。
東京の一等地の住所と日本法の規約を並べると国内の会社らしく見える
yensai-jp.com には、丸の内の高層ビルの住所、「株式会社」の会社名、日本法と東京地方裁判所を定める規約、円で示した最低入金額、「24/5 日本語サポート」の表示が並びます。どれも、日本の会社が運営するサイトだと思わせる材料です。
しかし、住所はレンタルオフィスのもので、会社名には法人番号が見つからず、規約が従うとする日本の法律が求める登録番号もありません。国内の会社らしさをいくつ並べても、登録と登記の裏付けにはなりません。住所や規約の見た目で決めず、信頼できる第三者に相談して裏付けを確かめてください。
1つの取引システムに多くの業者名が登録され看板だけを掛け替えられる
プログラムを調べたところ、Yensaiの取引画面のプログラムには、業者ごとに表示を切り替えるための対応表があり、97の業者名とアドレスが並んでいました。Yensaiの名前はその中になく、表示を切り替える対象に入らない業者も同じ画面を使っているとみられます。
取引サイトには、訪問者の記録を別のサーバーへ送る仕組みも組み込まれています。サイトの記録を集めるurlscan.ioで調べると、同じ送り先のサーバーにつながるサイトは、本件を含めて16のドメインにのぼりました。
名前とロゴを差し替えれば、同じ仕組みを別の業者として出し直せる作りで、1つのサイトが止められても看板を替えて勧誘を続けられる可能性があります。見覚えのない業者名でも、中身は以前と同じ仕組みということがあり得ます。
Yensaiを装う偽サイトの不審点を見抜く方法

Yensaiのサイトには、「東京の会社」「日本法に準拠」「最大1000倍」といった、利用者を安心させたり引きつけたりする言葉が並んでいました。不審点は、こうした売り文句を1つずつ裏付けと突き合わせると見えてきます。
ここでは、サイトがうたう売り文句を6つ取り上げ、それぞれを何で確かめればよいかと、Yensaiでどうだったかを並べます。
- 「Yensai」という名前:日本語の社名に引き直して登録を確かめる
- 金融庁の一括検索は日本語の社名で登録されているため、英字の「Yensai」では0件でした。日本語の社名で見つかった正規のエンサイドットコム証券は、個人に投資を勧めないとお知らせで明言しています。
- 「東京の株式会社」:法人番号公表サイトで会社名を地図や公式ページで住所を引く
- 「Yensai Trading株式会社」は法人番号公表サイトで見つからず、住所はバーチャルオフィスも扱うレンタルオフィスのものでした。住所の立派さは、会社がそこで営業している証拠になりません。
- 「最大1000倍」:個人のFXなら25倍を超えていないかを見る
- 日本の登録業者は、個人とのFX取引で25倍を超えるレバレッジを提供できません。1000倍をうたう時点で、日本の登録を受けた業者のサービスではないと考えてください。
- 「日本法に準拠」:日本の業者に求められる登録番号の表示を探す
- Yensaiの規約は日本法と東京地方裁判所を定めながら、サイトのどこにも登録番号がありませんでした。日本の業者を名乗るのに番号がなければ、口座を開く前に手を止めてください。
- 「アップルの株」:株そのものを買うのかCFDなのかを確かめる
- Yensaiが扱う株は、現物株を持たないCFDとして用意されていました。株の取引を勧められたら、何を買い、どこに記録されるのかを相手の説明ではなく書面や画面で確かめることが大切です。
- 「Yensai-jpにログイン」:同じ画面にほかの名前がないか、アドレスがいつ取られたかを見る
- Yensaiのログイン画面には「日保ネクスト」という別の名前が残り、3つのアドレスは送金の1か月半ほど前に同じ秒で取られていました。名前の食い違いや取られたばかりのアドレスに気づいたら、送金の前に専門家に相談してください。
売り文句は、どれもサイトが自分で書いている言葉にすぎません。裏付けの取れない売り文句が見つかったら、それ以上お金を送らず、相手の電話番号やサイトのアドレスを控えたうえで信頼できる第三者に相談してください。
【参考】
・一般社団法人金融先物取引業協会-個人顧客を相手方とするFX取引に係る証拠金規制(https://www.ffaj.or.jp/regulation/customers/)
・rdap.verisign.com-yensai-jp.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/yensai-jp.com)
Yensaiを装う偽サイトに関する口コミや被害事例

口コミは、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、掲示板、電話番号の口コミサイトなどで、Yensaiの名前、3つのアドレス、サイトが示す電話番号を使って探しました。被害を書いた投稿は見当たらず、見つかったのは電話番号への書き込み1件と同じ形の勧誘についての公的機関の相談事例です。
Yensaiやyensai-jp.comの名前で被害を書いた投稿は見当たらない
2026年10月13日の時点で、Xにも、Yahoo!知恵袋にも、5ちゃんねるや爆サイの掲示板にも、YensaiやYensai Trading株式会社、3つのアドレスに触れた書き込みは見つかりませんでした。正規のエンサイドットコム証券のお知らせを紹介する投稿も確認できませんでした。
Xで「エンサイ」と書かれた投稿は、野菜の空芯菜(エンサイ)やアイドルグループの愛称を話題にしたものばかりでした。名前で探すと、投資の話とは関係のない投稿に埋もれてしまいます。
一方、名前とアドレスで検索すると、Yensaiを詐欺かどうかと取り上げる記事が上位に出てきます。これは返金をうたう業者の宣伝で、LINEの相談窓口へ誘う作りでした。被害を取り戻せるとうたう業者への相談は、二次被害につながるおそれがあります。
サイトが示す電話番号にはアドレスが取られる前から迷惑電話の書き込みがある
yensai-jp.com がお問い合わせの先として示す電話番号(+81 50-3095-2670)は、050から始まる番号です。電話番号の情報を集めるサイトjpnumber.comでこの番号のページを開くと、事業者の情報は登録されておらず、口コミの欄に次の書き込みが1件あります。
外国訛りの迷惑電話
▼外国訛りの迷惑電話と書かれた電話番号の口コミ(2026年6月1日)

出典:jpnumber.com
書き込みの日付は2026年6月1日で、アドレスが取られた8月9日より2か月余り前です。050の番号は別の利用者に割り当て直されることもあるため、同じ相手がかけたものとまでは言い切れません。それでも、サイトができる前から、この番号で知らない人に電話がかけられていた可能性があります。
電話の勧誘では、相手が名乗る会社名と、実際にお金を受け取る者が同じだとは限りません。見覚えのない番号から投資の話を持ちかけられたら、その場で決めず送金の前に専門家に相談してください。
海外業者から国内より高い倍率を勧められたFX取引の相談事例
FX取引の勧誘で倍率の高さが誘い文句に使われた例は、国民生活センターの報道発表資料にもあります。2024年1月に公表された資料の【事例3】は、投資グループで次のように誘われた人の相談です。
(前略)
LINEで友達申請してきた人から、株情報の交換をするグループに誘われた。そのグループ内で、「海外の FX 取引の情報が入手できる。国内より高倍率の取引が可能だ」と誘われて、海外 FX の口座を開くことにした。
(後略)
相談者はその後、利益が出たと示された口座から引き出そうとして、「海外取引税」の名目でさらに振り込むよう求められています。入口はSNSの投資グループで、広告と電話から始まった本件とは経路が違います。
これらの相談が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、「国内より高倍率」を売りにする誘い方は、1000倍を掲げるYensaiの取引条件と重なります。高い倍率を勧められたら、その時点で日本の登録業者ではないと疑ってください。
【参考】
・jpnumber.com-050-3095-2670(https://www.jpnumber.com/ipphone/numberinfo_050_3095_2670.html)
・国民生活センター-SNS上の投資グループで勧誘される詐欺的なFX取引トラブル-その仲間、信じて大丈夫?-
Yensaiを装う偽サイトの口コミが少ない理由

Yensaiのアドレスが取られたのは2026年8月9日で、サイトはまだ立ち上げられてから2か月ほどです。Internet Archiveに残る記録は取引サイトの2件だけで、urlscan.ioの記録も2件です。人の目に触れて書き込みが重なるには、時間がまだ足りていないとみられます。
次に検索に使う言葉が、別の話題と重なっている点も見逃せません。「Yensai」や「エンサイ」で探すと、正規のエンサイドットコム証券の会社案内やお知らせ、野菜の空芯菜の話題が先に並びます。被害を書いた人がいても、その書き込みはほかの話題に埋もれ、口コミとして積み重なりにくくなります。
また勧誘の進め方も関係しています。本件の入口は広告で、その後のやり取りは電話でした。メッセージアプリの会話のように画面を残して投稿することができないため、受けた勧誘の内容をそのまま人に見せられる形で残しにくいです。
書き込みが集まるだけの時間がなく、名前で探しても別の情報が先に出て、勧誘は電話で進む。この3つがそろうと、被害があっても表に出てきにくいと考えられます。書き込みがないことを、安心の材料にしないでください。日本語の社名で登録を確かめ、追加の送金を求められたら、払う前に専門家に相談しましょう。

