LINEグループで投資を勧められ、指示されたアプリを入れて、実在の金融機関の名前を冠した口座の話を信じて入金してしまう。警察庁の暫定値では、令和8年8月末までのSNS型投資詐欺の認知件数が7,097件に上っています。
本記事で取り上げる「LN DP」は、Google Playで配布されているアプリで、開く取引サイトの表示名は「LN Dark Pool」です。LINEグループ「共創資産運用クラブM3」で「Liquidnetの個人機関口座」を勧められた相談者は、複数の個人名義の口座へ振込を重ねました。
調べると、アプリそのものは外の設定で開く先を決める入れ物で、取引サイトの会社紹介はマレー語でBain Capital Venturesを名乗っていました。実在のLiquidnetは、個人投資家にサービスを提供しないと明記しています。
アプリのプログラム、ドメインの記録、名前を使われた事業者と公的機関の資料から経緯をたどり、作り手・名乗る名前・振込先のどこで食い違いに気づけるかを弁護士が解説します。
LN DPに関するトラブルの概要

今回の相談は、LINEグループで「Liquidnetの個人機関口座」を勧められ、Google Playのアプリ「LN DP」を入れたことから始まりました。アプリが開く取引サイトの上部には「LN Dark Pool」と表示されますが、Liquidnetの名前はどこにも出てきません。
この章では、アプリを入れさせる勧誘についての金融庁の注意喚起、実在のLiquidnetがサービスの対象としている相手、Liquidnet自身が公開している偽アプリの例、LN DPのプライバシーポリシーの4点を取り上げます。
金融庁はグループチャットの後にアプリを入れさせる勧誘を手口として挙げている
金融庁は、SNSを使った投資詐欺の手口をまとめたページで「証券口座を装ったスマホアプリが使われている事例」として5つの特徴を挙げています。その最初の項目が、グループチャットなどで勧誘した後に、口座を開くためだとしてアプリを入れさせるというものです。
▼アプリのインストールを求める手口を挙げる金融庁の注意喚起

出典:金融庁
これらの注意喚起が本記事のトラブルと同一の案件であることまでは確認できませんが、今回もLINEグループで投資の話を聞いた後に、Google PlayからLN DPを入れるよう指示されています。公式のストアから入れる手順のため、正規の口座開設と同じ感覚で進めやすかったとみられます。
実在のLiquidnetは機関投資家向けの事業者で個人の投資は扱わないとしている
実在のLiquidnetは、TP ICAPグループに属する証券の仲介業者です。公式サイトの詐欺についての注意のページでは、冒頭で次のように述べています。
TP ICAP Group does not offer services to retail investors. Any purported investment opportunities aimed at individual investors are fraudulent.
TP ICAPグループは個人投資家にサービスを提供しておらず、個人に向けた投資の話は詐欺だという意味です。同じページは、Liquidnetは機関投資家向けの仲介だけを行い、個人向けの投資は扱わないとも明記しています。
▼個人投資家にサービスを提供しないとする実在のLiquidnet

出典:Liquidnet
日本法人のリクイドネット証券株式会社も、法令に基づく開示のページで「特定投資家向けサービスを提供しており」と示しています。グループ全体として、一般の個人投資家を相手にした事業ではないことが分かります。
▼特定投資家向けとするリクイドネット証券の開示

出典:Liquidnet
個人に機関口座を開かせるという勧誘の話は、実在のLiquidnetの案内とかみ合いません。LN DPや取引サイトが実在のLiquidnetによって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
Liquidnet自身もその名前を使った偽アプリの例を公式サイトに掲げている
同じページの「Latest Alerts」の欄には、「Please be advised that the apps below are fraudulent:」(以下のアプリは詐欺です)として、「Liquidnet PRO」を名乗る中国語のサイトやApp Storeのアプリの画面が並んでいます。
▼Liquidnetの名前を使った偽アプリの例を示す公式の警告

出典:Liquidnet
この欄にLN DPは載っていません。ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。Liquidnetの名前が以前から偽のアプリに使われ、名前を使われた側が自ら警告を出していることは、勧誘の話を確かめる手掛かりになります。
LN DPのプライバシーポリシーは運営会社の名前も所在地も示していない
Google PlayのLN DPのページには、プライバシーポリシーへのリンクがあります。開くと、ひな形を作る無料のサービスで作られた英文で、用語の定義に次の2つの項目があります。
Company (referred to as either “the Company”, “We”, “Us” or “Our” in this Privacy Policy) refers to LN DP.
Country refers to: Japan
▼会社の欄にアプリ名が入るLN DPのプライバシーポリシー

出典:LN DP
会社を指す欄にアプリ名がそのまま入り、法人名や住所はどこにもありません。利用者の情報を預かる相手が誰なのかを、このポリシーからは確かめられません。アプリに入金する前に、ストアのページからポリシーを開き、運営会社の名前と所在地があるかを見てください。
【参考】
・金融庁-それ詐欺です!SNS上の投資勧誘にご注意ください!
・Liquidnet-Scams + Fraud(https://www.liquidnet.com/scams-and-fraud)
・Liquidnet-Liquidnet Japan Legal Information(https://www.liquidnet.com/liquidnet-japan-legal-information)
・Google Play-LN DP(https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sjkfikksz.clsk&hl=ja&gl=JP)
・LN DP-Privacy Policy(https://www.freeprivacypolicy.com/live/81c3dcd8-7fc2-42f1-b7b8-64de612171ab)
LN DPへ誘導され被害につながるまでの経緯

LN DPにたどり着くまでには、SNSでの勧誘、LINEグループへの参加、アプリの導入という段階がありました。グループへの誘導、Google Playからの登録、「個人機関口座」と運用プランの案内、個人名義の口座への振込の4つの場面に分けて見ていきます。
SNSの投資の勧誘から共創資産運用クラブM3というLINEグループへ誘導される
最初の接点は、SNS上で受けた投資の誘いです。相談者はそこから「共創資産運用クラブM3」という名前のLINEグループへ招かれ、グループの中で個別に連絡を取ってくる人物とやり取りを始めています。
「資産運用クラブ」という名前は、投資の勉強会のような印象を与えます。グループという場で投資の話を聞くと、それだけで話が確かなもののように感じられやすくなります。ただし、グループの名前は運営する側がいくらでも付けられるものです。
Google PlayからLN DPを入れるよう指示され招待コードで登録する
やり取りの中で、相談者はGoogle Playから「LN DP」というアプリを入れるよう指示されました。アプリが開く取引サイトの登録画面には、携帯番号とパスワードのほかに「招待コード」の欄があります。
▼招待コードの欄があるLN DPの取引サイトの登録画面

出典:siduiwtw.uuyidghh.com
相談者は、相手から伝えられた招待コードを入れて会員登録をしました。招待コードを入れて登録する作りは、勧誘を受けた人だけが使う閉じたサービスであることをうかがわせます。誰の紹介で入ったかを、運営する側が把握できる仕組みとみられます。
Liquidnetの個人機関口座や日次10%をうたう複利成長プランを案内される
登録の後、相談者は「Liquidnet」の個人機関口座を開くことと、日次収益10%をうたう「複利成長435%プラン」の説明を受けました。機関投資家の名前を冠した口座と、毎日の利益が積み上がるという運用の話で入金を促されています。特別な口座をうたう勧誘の例として、LINEで機関口座を開設させIPO代金を求める事例も確認してください。
前の章で見たとおり、実在のLiquidnetは個人投資家にサービスを提供していません。「個人のための機関口座」という説明は、名前を使われた側の案内と食い違っています。勧誘で聞いた社名は、口座を開く前に、その会社自身の公式サイトで確かめる必要があります。
振込先として複数の個人名義の口座を示され送金を繰り返す
2026年8月から9月までの間、相談者が送金した先は、いずれも個人の名前の口座でした。名義は振込ごとに異なり、Liquidnetという会社の名前でもアプリの名前でもありません。
取引サイトの入金画面には、「資金の入金と証明書の提出については、カスタマーサポートへお問い合わせください」という注意書きが表示される作りです(ログインが必要な画面のため、プログラムそのものを取得して確認しました)。
入金の手続きそのものが、サポートとの個別のやり取りを前提にしていることが分かります。
振り返ると、SNSの勧誘、資産運用クラブを名乗るLINEグループ、Google Playのアプリ、実在の社名を冠した口座の話が重なり、個人名義の口座への振込につながりました。こうした振込が重なった時点で、相談者は当事務所への相談に踏み切りました。
【参考】
・siduiwtw.uuyidghh.com(https://siduiwtw.uuyidghh.com/)
・Google Play-LN DP(https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sjkfikksz.clsk&hl=ja&gl=JP)
LN DPの関連サイトの情報を調査した結果

この章では、Google PlayのLN DPのページ、取引サイトのドメインと証明書、同じ証明書に並ぶ別のアドレス、サポートの窓口のドメイン、会社紹介が示すアドレスの5点を見ます。アプリの公開と前後して、取引サイトと窓口の準備が短い間に整えられていました。
下の表は、関係するアドレスとアプリの記録上の日付をまとめたものです。表の日付のうち、ドメインは登録の記録の協定世界時を、アプリはGoogle Playに出ている日付をそのまま載せました。
| 対象 | アドレス・名前 | 記録上の日付 |
|---|---|---|
| アプリ | LN DP(Google Play) | リリース日 2026年7月13日/最終更新日 2026年7月25日 |
| 取引サイト | uuyidghh.com | 登録日 2026年1月29日/最初の証明書 2026年7月18日 |
| サポートの窓口 | siohniv.com | 登録日 2026年7月26日 |
| 会社紹介が示す公式サイト | angsana1my.com | 登録日 2025年12月9日 |
| 実在のベインキャピタル | baincapital.com | 登録日 1999年3月13日 |
Google PlayのLN DPはツールに分類され市場データとニュースのアプリとして公開されている
Google PlayのLN DPは、デベロッパー名が「JEFF JACK KRANTZ」、カテゴリが「ツール」で、ダウンロード数は50以上と表示されています。ストアの画像の欄には、「マーケット」「日経平均」や「指値」「成行」のボタンが並ぶ株の取引画面が使われています。
▼株の取引画面を載せるGoogle PlayのLN DPのページ

出典:Google Play
一方、「このアプリについて」の説明に並ぶのは「リアルタイム市場データ」「金融ニュース」といった機能だけです。口座を開く、入金する、株を売買するといった、勧誘で聞いた使い方は説明文に書かれていません。リリース日は2026年7月13日、最終更新日は7月25日です。
▼市場データとニュースをうたうLN DPのアプリの説明

出典:Google Play
取引サイトのドメインは2026年1月に取得され7月に証明書が発行されている
ドメインの登録情報を公開するRDAPで調べると、取引サイトのuuyidghh.comは2026年1月29日に取得されています。プログラムを調べたところ、取引サイトが株価を受け取る先のドメインの1つも、同じ日の同じ秒に取得されていました。
▼2026年1月29日に取得されたuuyidghh.comの登録記録

出典:rdap.verisign.com
通信を暗号化する証明書の発行記録では、取引サイトのアドレスsiduiwtw.uuyidghh.comの最初の証明書は7月18日付です。アプリのリリースの5日後で、相談者が振込を始めた8月より前に取引サイトを開く準備が整っていたことになります。
▼2026年7月18日に発行された取引サイトの証明書の記録

出典:Cert Spotter
同じ証明書に並ぶ別のアドレスでも同じ取引サイトが開く
前の画像の2件目の記録を見ると、同じ7月18日の証明書に、siduiwtw.uuyidghh.comと並んで「www.erseimno.com」というアドレスが載っています。1枚の証明書に並ぶアドレスは、同じ管理者が用意したものとみられます。
▼別のアドレスwww.erseimno.comで開く同じ取引サイト

出典:www.erseimno.com
実際にwww.erseimno.comを開くと、同じロゴとボタンの画面が表示されます。アドレスが変わっても同じ取引サイトにつながるため、アドレスの見た目だけで本物かどうかを判断するのは困難です。アプリが開く先のアドレスが入れ替わっても、利用者には気づきにくい作りです。
チャットの窓口のドメインはアプリの最終更新の翌日に取得されている
取引サイトが公開しているデータには、サポートの窓口のアドレスとして「custom.siohniv.com」が書かれています。このsiohniv.comの登録日は2026年7月26日で、Google PlayのLN DPが最後に更新された7月25日の翌日です。
▼アプリの更新の翌日に取得されたサポートの窓口のドメイン

出典:siduiwtw.uuyidghh.com、rdap.verisign.com
前の章で見たとおり、入金の手続きはこの窓口とのやり取りを前提にしています。アプリの更新、窓口のドメインの取得、相談者の振込が、2026年の7月末から8月にかけて続いていることになります。
会社紹介が公式サイトとして示すアドレスは2025年12月に取得されている
取引サイトの会社紹介は、公式サイトとして「https://angsana1my.com/」を示しています。このドメインの登録日は2025年12月9日で、名乗っているベインキャピタルの公式サイトbaincapital.comは1999年3月の取得です。
▼26年以上離れたangsana1my.comとbaincapital.comの登録日

出典:rdap.verisign.com
会社紹介の本文は、1984年から続くというパートナーの文化を掲げています。それに対して、公式サイトとされるアドレスは1年もたっていない新しいものです。長い歴史をうたう会社の公式サイトが、ごく最近取得されたアドレスであれば、それ自体が疑う理由になります。
取引サイトについては、ほかに4つの記録も見ています。
- Googleのセーフブラウジングでsiduiwtw.uuyidghh.comを調べると、「安全ではないコンテンツは見つかりませんでした」と表示される
- ウェブページの保存サービスInternet Archiveとurlscan.ioに、uuyidghh.comの記録はない
- 取引サイトは配信の中継サービスCloudflareを通しており、同じサーバーにある別のサイトはたどれない
- 金融庁の金融事業者一括検索で「LN Dark Pool」を調べると、該当する業者は出てこない
▼LN Dark Poolで該当がない金融庁の金融事業者一括検索

出典:金融庁
ただし、掲載がないことが安全の根拠にはなりません。LN DPのように公開から数か月のアプリやサイトは、当局や検索の側がまだ把握していない場合があるためです。ストアにアプリがあり、検索で何も出てこなくても、入金の前に運営会社の名前と登録を確かめてください。
【参考】
・Google Play-LN DP(https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sjkfikksz.clsk&hl=ja&gl=JP) ・RDAP-uuyidghh.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/uuyidghh.com)
・Cert Spotter-uuyidghh.com(https://api.certspotter.com/v1/issuances?domain=uuyidghh.com&include_subdomains=true&expand=dns_names)
・www.erseimno.com(https://www.erseimno.com/)
・siduiwtw.uuyidghh.com-サポートの窓口のデータ(https://siduiwtw.uuyidghh.com/api/index/getCzhiurl) ・RDAP-siohniv.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/siohniv.com)
・RDAP-angsana1my.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/angsana1my.com)
・RDAP-baincapital.com(https://rdap.verisign.com/com/v1/domain/baincapital.com)
・Google透明性レポート-セーフブラウジングのサイトステータス(https://transparencyreport.google.com/safe-browsing/search?url=siduiwtw.uuyidghh.com)
LN DPに関する不審点

この章では不審点として、アプリの中身、開く先の決め方、会社紹介の名前、会社紹介が示す公式サイト、ほかの画面に出る名前、ローン契約の6点を取り上げます。前の2つはアプリのプログラムから、後の4つはログインしなくても開ける取引サイトの画面から分かることです。
LN DPのアプリそのものには市場データやニュースの画面がない
Google Playで配布されていた版(1.0.2)のプログラムを調べたところ、LN DPが持つ画面は、起動時の画面と、ウェブのページを表示する枠(WebView)の2つだけでした。説明にある「リアルタイム市場データ」や「金融ニュース」を表示する画面は、アプリの中にありません。
つまりLN DPは、どこかのウェブサイトを開いて見せるための入れ物とみられます。ストアの画像の欄に載っていた株の取引画面も、アプリの機能ではなく開かれる取引サイトと同じ作りの画面です。相談者がアプリの中で見ていたのは、ウェブ上の取引サイトだったとみられます。
アプリが開く取引サイトは外部の設定で決められ日本時間で時間帯を区切る項目もある
同じ版のプログラムでは、アプリは起動するたびにアプリの外に置かれた設定を読みに行きます。設定には「開く先のアドレス」「切り替えの有無」「開く時間帯」の項目があり、時間帯は日本時間(Asia/Tokyo)の07:00から23:30として判定される作りです。
10月6日時点の開く先はsiduiwtw.uuyidghh.comでした。運営する側は、アプリを作り直してストアに出し直さなくても、開く先のサイトを差し替えられることになります。判定の処理は、広く使われる部品と同じ名前の場所に置かれ、名前も読めない文字に置き換えられていました。
取引サイトの会社紹介はマレー語でBain Capital Venturesを名乗っている
取引サイトの「会社紹介」は、見出しは日本語でも本文はマレー語です。名乗っている会社は「Bain Capital Ventures LLC (BCV)」で、「Laman web syarikat(会社のウェブサイト)」として「https://angsana1my.com/」が示されています。
▼マレー語でBain Capital Venturesを名乗る会社紹介

出典:siduiwtw.uuyidghh.com
下のほうには、米国の証券取引委員会(SEC)の登録番号として「CRD #145652」まで載せています。一方で、勧誘で聞いたLiquidnetの名前は、会社紹介にも取引サイトのどの画面にも出てきません。プログラムを調べても、Liquidnetという語は1か所もありませんでした。
会社紹介が示す公式サイトは実在のベインキャピタルが認めたドメインに含まれていない
実在のベインキャピタルは、詐欺とサイバーセキュリティについての警告のページを日本語でも公開しています。そこには「ベイン・キャピタル’が唯一承認したウェブサイトは、以下のドメインを通じて掲載されています。他のウェブサイトのドメインは、承認されていません。」とあり、ドメインの一覧が続きます。
▼angsana1my.comが含まれないベインキャピタルの承認ドメイン

出典:Bain Capital
このページで「angsana」を検索すると、0件です。会社紹介が示すangsana1my.comは、実在のベインキャピタルが認めたドメインではありません。同じページは、テレグラムやシグナルなどのアプリを通じて金銭や口座の詳細を求めることは決してないとも述べています。
▼LINEでの送金の依頼を否定するベインキャピタルの注意喚起

出典:ベインキャピタル
日本法人のサイトも、従業員がLINE等のSNSアカウントで振込や送金を頼むことはないと明記しています。取引サイトが実在のベインキャピタルによって運営されていることを示す情報は確認できませんでした。
私たちについてと利用規約にはさらに別の名前とマレーシアの監督が書かれている
「私たちについて」のページを開くと、こちらもマレー語で、今度は「BOCOM CLUB」という名前が出てきます。BOCOM CLUBの支援のもとで投資の仕組みを作ってきたという内容で、会社紹介のBain Capital Venturesとは別の名前です。
▼マレー語でBOCOM CLUBを名乗る私たちについて

出典:siduiwtw.uuyidghh.com
「ユーザー規約」のページも、中身はマレー語の個人情報の方針です。法人の顧客について「最終的な受益者(Bain Capital Ventures LLC)」の情報を集めるという文や、自社を「マレーシアの金融部門の監督を受ける機関」とする文があり、日本の利用者向けの規約は見当たりません。
▼マレーシアの監督をうたうマレー語のユーザー規約

出典:siduiwtw.uuyidghh.com
プログラムを調べたところ、日本語の文言は本来トルコ語に使う枠に入れられ、株価の配信もトルコ株と米国株の2つでした。日本以外の国に向けて作られたものを、日本向けに転用した可能性があります。
ログインせずに読めるローン契約は貸付をする業者の名前を示していない
取引サイトには「借入契約」のページもあり、ログインしなくても読めます。第4条には「本サービスにおける貸付は、当社が提携する日本国内の登録貸金業者より提供されます。」とありますが、その貸金業者の名前も登録番号も、契約のどこにも書かれていません。
▼貸金業者の名前がない取引サイトの借入契約

出典:siduiwtw.uuyidghh.com
第6条は、30日以上返済がなければ債権を回収専門機関へ移し、給与や資産の差押えもあり得るとしています。第8条は、第三者がアカウントで借りた場合でも本人がすべての責任を負うと定めています。
プログラムを調べたところ、出金は申請の後に「システム審査」を経る作りで、状態の表示には「審査失敗」もありました。融資の審査も出金の審査も、運営する側が決める作りがすでに用意されていることになります。融資を勧められたら、借りる前に信頼できる第三者に相談してください。
【参考】
・Google Play-LN DP(https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sjkfikksz.clsk&hl=ja&gl=JP)
・siduiwtw.uuyidghh.com-会社紹介(https://siduiwtw.uuyidghh.com/#/subPackages/more/company/index)
・Bain Capital-詐欺およびサイバーセキュリティに関する警告(https://www.baincapital.com/fraud-and-cybersecurity-warning-japanese)
・ベインキャピタル-ベインキャピタル社員を騙った投資勧誘にご注意ください(https://www.baincapital.co.jp/cyber-fraud-alert)
・siduiwtw.uuyidghh.com-私たちについて(https://siduiwtw.uuyidghh.com/#/subPackages/more/aboutUs/aboutUs)
・siduiwtw.uuyidghh.com-ユーザー規約(https://siduiwtw.uuyidghh.com/#/subPackages/login/deal)
・siduiwtw.uuyidghh.com-借入契約(https://siduiwtw.uuyidghh.com/#/subPackages/deal/loanDeal)
Google Playで配布されるアプリが悪用されやすい理由

今回の勧誘では、取引の入り口としてGoogle Playのアプリが使われました。公式のストアにあるという安心感、ストアの表示の決まり方、アプリの中で開くサイトの差し替え、同じ名義で続く別のアプリの4点から、ストアのアプリが悪用されやすい理由を見ていきます。
公式のストアから入れたアプリは審査を通ったものとして信用されやすい
ストアの外から入れさせるアプリや設定のファイルは、それだけで警戒すべき対象です。一方、Google Playから入れるアプリは、ふだん使っている銀行や証券会社のアプリと同じ手順で手に入ります。同じ手順で入れられることが、そのまま正規のサービスであるかのような印象につながります。
前の章で見たとおり、LN DPそのものは取引サイトを開く入れ物で、取引の中身はアプリの外のサイトにあります。ストアで配布されていても、アプリが開く先のサイトや、その運営会社の素性までが確かめられたことにはなりません。
ストアの説明やカテゴリはデベロッパー自身の申告にもとづいている
ストアに並ぶ説明文やカテゴリ、データの扱いの欄は、アプリを出す側が自分で書いて申告するものです。データの扱いの欄について、Google Playのヘルプは、正確な申告を行う責任はデベロッパーが単独で負うとしています。
▼申告の責任はデベロッパーにあるとするGoogle Playのヘルプ

出典:Google Play Console ヘルプ
LN DPの欄には「データは収集されません」と表示されていますが、携帯番号や銀行口座を登録するのは、アプリが開く取引サイトのほうです。ストアの表示は、アプリの外で何が起きるかまでは教えてくれません。説明文やカテゴリが勧誘の話と合っているかを、利用者が自分で確かめる必要があります。
アプリの中で開くサイトは配布した後からでも入れ替えられる
LN DPは、アプリの外の設定に書かれたアドレスを開く作りでした。開く先を書き換えれば、ストアのページはそのままで、利用者が目にする中身だけが変わります。Google Playのポリシーは、こうした見えない機能を戒めています。
▼遠隔で有効になる機能を禁じるGoogle Playのポリシー

出典:Google Play Console ヘルプ
「虚偽の振る舞い」のページの「振る舞いの透明性」には「アプリの審査を回避する方法は認められません。」とあります。すべきでないこととして挙がっているのが「遠隔で、または一定の時間が経過すると有効化されるように設計された、非掲載または非表示の機能を含める。」です。
外の設定で開く先を変え、時間帯でも区切れるLN DPの作りは、このポリシーに当たる可能性があります。ポリシーがあっても、配布された後に中身を差し替えるアプリをストアの側がすぐに見つけられるとは限りません。
同じデベロッパー名で別の名前のアプリが続けて公開されている
Google Playで「JEFF JACK KRANTZ」の名前を開くと、LN DPのほかに3本のアプリが並びます。2026年6月15日のEBSIS、7月13日のLN DP、7月17日のUDM APAC、9月16日のVIRELTONEと、数か月のうちに次々とリリースされています。
▼JEFF JACK KRANTZの名前で並ぶ4本のアプリ

出典:Google Play
説明文は「財務管理プラットフォーム」「資産管理アシスタント」「映画を視聴できます」「市場相場」とばらばらで、1つの作り手が出すアプリとしては、ちぐはぐな並びです。1本が消されても、別の名前のアプリをすぐ出し直せるため、アプリの名前だけを手掛かりにしていると、新しいアプリに気づくことができません。
【参考】
・Google Play Console ヘルプ-Google Play のデータ セーフティ セクションの情報を提供する(https://support.google.com/googleplay/android-developer/answer/10787469?hl=ja)
・Google Play Console ヘルプ-虚偽の振る舞い(https://support.google.com/googleplay/android-developer/answer/17006354?hl=ja)
・Google Play-JEFF JACK KRANTZ(https://play.google.com/store/apps/developer?id=JEFF+JACK+KRANTZ&hl=ja&gl=JP)
LN DPの不審点を見抜く方法

LN DPの件では、アプリを出した作り手、アプリの中で名乗られている会社、お金の送り先のそれぞれに、利用者が自分で確かめられる食い違いがありました。作り手、名乗る名前、振込先の順に、入金の前に見ておきたい点を挙げます。
- 作り手:ストアのデベロッパー名と説明文が、勧誘で聞いた会社や使い方と合っているかを見る
- LN DPのデベロッパーは人の名前のような「JEFF JACK KRANTZ」で、説明文は市場データとニュースのツールでした。口座を開いて株を売買するアプリなのに、ストアの表示が別の用途をうたっていれば、その時点で疑う理由になります。
- 作り手:プライバシーポリシーに、運営会社の名前と所在地が書かれているかを見る
- LN DPのポリシーは、会社の欄にアプリ名が入っているだけでした。個人情報やお金を預ける相手の名前が分からないアプリには、登録の情報も入金も渡さないでください。
- 名乗る名前:アプリの中の会社紹介や規約の社名が、勧誘で聞いた社名と一致するかを見る
- 勧誘ではLiquidnet、取引サイトの会社紹介ではBain Capital Ventures、別のページではBOCOM CLUBと、名前が1つにそろっていませんでした。マレー語など日本語でない本文が出てきたら、それも食い違いの1つです。
- 名乗る名前:会社紹介にある公式サイトのアドレスを、名前を使われた会社自身の案内と照らし合わせる
- 会社紹介が示したangsana1my.comは、実在のベインキャピタルが認めたドメインの一覧にありませんでした。名前を使われた会社の公式サイトで、そのアドレスを検索してみてください。
- 名乗る名前:勧誘で聞いた会社が、そもそも個人を相手にしているかを公式サイトで確かめる
- 実在のLiquidnetは、個人投資家にはサービスを提供しないと公式に明記しています。「個人でも特別に機関の口座を使える」という話は、その会社の案内と食い違っていないかを最初に確かめます。
- 振込先:個人の名前の口座を示されたら、振り込む前に手を止めて記録を残す
- 会社の名前ではない口座への振込は、正規の口座開設や入金では考えにくい手順です。振込先の名義、案内を受けた日時、LINEのやり取りの画面、アプリの名前とストアのページを、消える前に保存しておきます。
LN DPのように、ストアに並ぶアプリでも、開く先のサイトを後から差し替えられる作りのものがあります。少しでも食い違いに気づいたら、それ以上の入金を止め、保存した記録を持って専門家に相談してください。
【参考】
・Google Play-LN DP(https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sjkfikksz.clsk&hl=ja&gl=JP) ・Liquidnet-Scams + Fraud(https://www.liquidnet.com/scams-and-fraud)
・Bain Capital-詐欺およびサイバーセキュリティに関する警告(https://www.baincapital.com/fraud-and-cybersecurity-warning-japanese)
LN DPに関する口コミや被害事例

LN DPについて、X(旧Twitter)、Yahoo!知恵袋、掲示板で、アプリ名や取引サイトの表示名、LINEグループの名前を手掛かりに投稿を探しました。本件の名前を挙げた投稿は見つかりませんでしたが、「機関口座」をめぐる似た相談が知恵袋に寄せられています。
Xや掲示板ではLN DPや共創資産運用クラブの被害の投稿は見当たらない
2026年10月時点で、XではLN DP、LN Dark Pool、共創資産運用クラブ、Liquidnetの個人機関口座のいずれについても、被害や勧誘を伝える投稿は確認できませんでした。掲示板の5ちゃんねると爆サイも同じで、名前を挙げて被害を書いたスレッドはありませんでした。
Google PlayのLN DPのページにも、評価やレビューは1件も付いていません。ダウンロード数が50以上という小さなアプリで、利用者の声がストアに残っていないことも口コミで判断できない理由の1つです。
Yahoo!知恵袋には機関口座の入金先が個人の口座になる理由を説明されたという相談がある
2026年1月30日の質問には、相手から受け取ったとみられる説明の文面が、そのまま貼り付けられています。機関口座の機密性を理由に、一時的に個人の口座を使うことがあると説明されたうえで、詐欺ではないかと尋ねる内容です。
投資する機関口座から
特にご説明させていただきますが、機関口座の機密性のため、機関との資金管理では時々一時的な個人口座を使用することがあります。これは特定の口座要件と資金処理の効率を満たすためです。この方法は金融取引では珍しくなく、特に国際取引においては、各国の金融システムの規範が異なるため、一時的な個人口座の使用は国際的な資金移動を迅速に処理するのに役立ちます。
ご安心ください、すべての入金口座は厳格に審査され、認証を受けており、すべての資金の流れには記録があり、関連する法規制に従っています。
これは詐欺とかではないですか?
▼機関口座の入金先が個人口座だと説明された知恵袋の相談

出典:Yahoo!知恵袋
機関口座への入金と、個人の口座を使うことの説明が並ぶ点は本件と重なります。ただし、LINEやアプリ、Liquidnetの名前は出てこず、同じ運営者によるものかは確認できません。どれだけ丁寧な説明が付いていても、個人の口座への入金を求める点は変わりません。
Yahoo!知恵袋にはLINEで勧められたアプリの分類を不審に思った相談もある
2025年2月4日の質問は、LINEで株の取引を勧められ、機関口座への入金を促された人からの相談です。入れるよう言われたアプリについて、アプリ名の下の表示が気になったと書かれています。
LINEで株の取引を勧められてます。機関口座というところに入金すれば条件の良い株を購入できて資産が増えると入金を促されました。
アプリもあるのですがアプリ名の下にユーティリティと書いてありますが、これはアプリではないのでしょうか?このアプリに入金して、このアプリから有利な株を購入出来ると言ってますが詐欺ではないでしょうか?
このアプリの「パスワードを忘れた場合」と「お問い合わせ」はタップしても反応しません。
▼機関口座とアプリの分類を不審に思った知恵袋の相談

出典:Yahoo!知恵袋
LINE、機関口座、金融ではない分類のアプリという組み合わせは、「ツール」に分類されたLN DPと似ています。一方で、ストアの種類やアプリの名前は分からず、時期も本件の1年半ほど前です。分類の表示に違和感を覚えたら、入金の前に立ち止まる手掛かりになります。
【参考】
・Yahoo!知恵袋-2026年1月30日の質問(機関口座の入金先が一時的な個人口座だと説明されたという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12324838002)
・Yahoo!知恵袋-2025年2月4日の質問(LINEで勧められた機関口座のアプリの分類を不審に思ったという相談)(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14310442654)
LN DPに関する口コミが少ない理由

まず、呼び名が1つに定まりません。勧誘ではLiquidnet、ストアではLN DP、画面ではLN Dark Pool、会社紹介ではBain Capital Ventures、別のページではBOCOM CLUBです。人によって覚えている名前が違うため、同じアプリの話として口コミが集まりにくくなります。
次に、使う人そのものが少ないアプリです。登録には勧誘する側から伝えられる招待コードを入れる作りで、Google Playのダウンロード数は50以上、レビューは0件でした。勧誘を受けた人の中だけで使われるため、外の人の目に触れる機会がほとんどなく、書き込みの数も増えにくいとみられます。
さらに、勧誘から入金までが閉じた連絡の中で完結します。勧誘はLINEグループと個別の連絡で行われ、入金はサポートの窓口とのやり取りを前提にしていました。取引サイトの過去の画面を残した記録もありません。経緯をたどれる材料が外に出ないため、検索して見つかる情報として残りにくい状態です。
検索して何も出てこなくても、それは安心してよいという意味ではありません。LINEのやり取り、振込の明細、アプリのストアのページを保存し、次の入金を求められる前に専門家に相談してください。
【参考】
・Google Play-LN DP(https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sjkfikksz.clsk&hl=ja&gl=JP)

